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ダルクガルド
ルーキー
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ウィナとゲルファスは、ウルフレイジ・レジェンズのプレイルームへ向かっていた。ダルクガルドの使者が去った後も、ゲルファスは執拗にウィナへ愚痴を言い続けている。
「3時間だぞ、3時間! 聞いている間も立ちっぱなしで、足が攣りそうになったんだからな」
「しつこいな……さっきから3時間、3時間と呪文みたいにさ。そんな長話する大佐も悪いんだよ。それかあんたの日頃の行いが悪いんじゃないの?」
ウィナは小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら、プレイルームのドアを開けた。見ると、部屋の中央に下着姿のミルエダが立っており、その隣には去年入隊したミゲロの姿があった。
「はあっ!?」
「なにやってんだおまえら!」
ミゲロはウィナとゲルファスを見ると、しどろもどろの様子で言い訳を始めた。
「ち、ち、ち、違うんです! ガナス・スーツの着用方法を説明していたら、この人がいきなり脱ぎ出したんですよ」
ウィナは呆れた顔でミルエダに問い掛ける。
「あんた、なにしてんの?」
「えっ、ガナス・スーツは裸の状態で着るものだから、脱いだ方が早いと思って。軍の組織に加わったからには、こんなことで恥ずかしがってちゃいけないかと」
「……い、いや。そういう問題じゃなくてね」
ウィナは手で顔を覆いながら、大きく溜息を吐いた。
「こっちへ来な。ちゃんと女性用の更衣室があるから、そこでこれからは着替えるんだよ」
「分かりました!」
ミルエダは着ていた服を手に取り、ウィナの後に付いて更衣室へ向かった。
「ミゲロよ……」
ゲルファスはミゲロの肩へ静かに手を置いた。
「す、すいません! 僕の説明が足りなかったばっかりに……」
「いいものを見せてもらったぜ」
ウィナは振り向くと「ゲルファス!」と怒りの形相で一喝した。そして女性用の更衣室へ入り、ウィナは目の前にあった電子カタログをミルエダに手渡す。
「これに目を通しな」
「ガナス・スーツの製品カタログですね」
「そうさ、自分に合った装備をこの中から選ぶんだよ。前にも説明があったと思うけど、ウルドテック、マーダン、ネオゲージがアタイたちのお得意さんだからね」
「ウィナさんはどの企業を選んだんですか?」
「アタイはウルドテックかな。弾を避けるには徹底したスーツの軽量化が必要だから、ウルドテックはこの点に定評があるのさ」
「どうしてこの3社だけに絞られてるんですか? 他にもガナス・スーツを開発している企業はあると思いますけど」
「審査の基準は大量生産ができる設備があるかどうか。特注品みたいなものはゲームでは扱えないんだよ。金を掛けてスーツの仕様を細かく調整すれば、いくらでも性能を上げることができるからね」
「なるほど……」
「とりあえず着てみなよ。着た後は、隣にあるコントロールルームに入るんだ」
ミルエダはウィナと同じウルドテック社のスーツを選び、悪戦苦闘しながらスーツの着用に成功した。
「……よ、ようやく着ることができました」
「よし、じゃあ隣の部屋へ行こうか」
ウィナはIDカードをドアの横にあるスライドに差し込み、正面にある開錠用パネルにセキュリティ番号を入力した。二人はコントロールルームに入ると、ウィナは中央にあるカプセルポッド室を指差し、そこへミルエダに入るよう指示した。
「あそこのカプセルポッドに入ると、ガナス・スーツのデータをすべて読み取ってくれるよ。そのデータはウルフレイジ・レジェンズに転送されて、自分がゲームの中を歩いてるような感覚になれるのさ」
「わ、分かりました!」
ミルエダはウィナに言われた通り、戸惑いながらもカプセルポッドの中に入って次の指示を待った。ウィナは、コントロールルームにある入力デバイスを一通り操作すると、マイクを使ってミルエダに話し掛けた。
「準備はいい?」
「は、はい! いつでも行けます」
「じゃあ、ガナス・スーツのヘッドギアから脳へ直接信号を送るから、データ転送時にしばらく意識がなくなったような感覚になるよ。次に目が覚めた時は、ウルフレイジ・レジェンズの戦場マップに立っているから覚悟しといて」
ミルエダは緊張気味に、ポッド内に設置してあるモニターへ向かって頷いた。そして次の瞬間、脳内にランダムな電子音が響き渡り、なにが起きたかも分からずそのまま意識を失った。
……そして30分後。
「う、うーん」
時間の感覚もなく目を覚ましたミルエダは、周囲の景色がカプセルポッドの中ではなく、広大な砂漠地帯になっていることに気が付いた。ふと横を見ると、同じガナス・スーツを着たウィナが立っていた。
「あっ、ウィナさん」
「ようやく目を覚ましたね。慣れれば5分くらいで起きるけど、あんたは30分だったよ」
「すいません……」
「まあいいさ、でも早く慣れなきゃね。ここは戦場フィールドとしてシミュレートされてるから、実際の試合ではすぐに目を覚まさないと一瞬で殺されるよ」
「は、はい!」
「じゃあ行こうか。まずはあの高層ビルを目指して進んでみよう。ガナス・スーツの装備や武器の細かい説明は、歩きながらしてあげるから」
ウィナの後をミルエダは嬉しそうに追い掛けた。一方で、ダルクガルドとの親善試合は3日後に迫っていた。
「3時間だぞ、3時間! 聞いている間も立ちっぱなしで、足が攣りそうになったんだからな」
「しつこいな……さっきから3時間、3時間と呪文みたいにさ。そんな長話する大佐も悪いんだよ。それかあんたの日頃の行いが悪いんじゃないの?」
ウィナは小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら、プレイルームのドアを開けた。見ると、部屋の中央に下着姿のミルエダが立っており、その隣には去年入隊したミゲロの姿があった。
「はあっ!?」
「なにやってんだおまえら!」
ミゲロはウィナとゲルファスを見ると、しどろもどろの様子で言い訳を始めた。
「ち、ち、ち、違うんです! ガナス・スーツの着用方法を説明していたら、この人がいきなり脱ぎ出したんですよ」
ウィナは呆れた顔でミルエダに問い掛ける。
「あんた、なにしてんの?」
「えっ、ガナス・スーツは裸の状態で着るものだから、脱いだ方が早いと思って。軍の組織に加わったからには、こんなことで恥ずかしがってちゃいけないかと」
「……い、いや。そういう問題じゃなくてね」
ウィナは手で顔を覆いながら、大きく溜息を吐いた。
「こっちへ来な。ちゃんと女性用の更衣室があるから、そこでこれからは着替えるんだよ」
「分かりました!」
ミルエダは着ていた服を手に取り、ウィナの後に付いて更衣室へ向かった。
「ミゲロよ……」
ゲルファスはミゲロの肩へ静かに手を置いた。
「す、すいません! 僕の説明が足りなかったばっかりに……」
「いいものを見せてもらったぜ」
ウィナは振り向くと「ゲルファス!」と怒りの形相で一喝した。そして女性用の更衣室へ入り、ウィナは目の前にあった電子カタログをミルエダに手渡す。
「これに目を通しな」
「ガナス・スーツの製品カタログですね」
「そうさ、自分に合った装備をこの中から選ぶんだよ。前にも説明があったと思うけど、ウルドテック、マーダン、ネオゲージがアタイたちのお得意さんだからね」
「ウィナさんはどの企業を選んだんですか?」
「アタイはウルドテックかな。弾を避けるには徹底したスーツの軽量化が必要だから、ウルドテックはこの点に定評があるのさ」
「どうしてこの3社だけに絞られてるんですか? 他にもガナス・スーツを開発している企業はあると思いますけど」
「審査の基準は大量生産ができる設備があるかどうか。特注品みたいなものはゲームでは扱えないんだよ。金を掛けてスーツの仕様を細かく調整すれば、いくらでも性能を上げることができるからね」
「なるほど……」
「とりあえず着てみなよ。着た後は、隣にあるコントロールルームに入るんだ」
ミルエダはウィナと同じウルドテック社のスーツを選び、悪戦苦闘しながらスーツの着用に成功した。
「……よ、ようやく着ることができました」
「よし、じゃあ隣の部屋へ行こうか」
ウィナはIDカードをドアの横にあるスライドに差し込み、正面にある開錠用パネルにセキュリティ番号を入力した。二人はコントロールルームに入ると、ウィナは中央にあるカプセルポッド室を指差し、そこへミルエダに入るよう指示した。
「あそこのカプセルポッドに入ると、ガナス・スーツのデータをすべて読み取ってくれるよ。そのデータはウルフレイジ・レジェンズに転送されて、自分がゲームの中を歩いてるような感覚になれるのさ」
「わ、分かりました!」
ミルエダはウィナに言われた通り、戸惑いながらもカプセルポッドの中に入って次の指示を待った。ウィナは、コントロールルームにある入力デバイスを一通り操作すると、マイクを使ってミルエダに話し掛けた。
「準備はいい?」
「は、はい! いつでも行けます」
「じゃあ、ガナス・スーツのヘッドギアから脳へ直接信号を送るから、データ転送時にしばらく意識がなくなったような感覚になるよ。次に目が覚めた時は、ウルフレイジ・レジェンズの戦場マップに立っているから覚悟しといて」
ミルエダは緊張気味に、ポッド内に設置してあるモニターへ向かって頷いた。そして次の瞬間、脳内にランダムな電子音が響き渡り、なにが起きたかも分からずそのまま意識を失った。
……そして30分後。
「う、うーん」
時間の感覚もなく目を覚ましたミルエダは、周囲の景色がカプセルポッドの中ではなく、広大な砂漠地帯になっていることに気が付いた。ふと横を見ると、同じガナス・スーツを着たウィナが立っていた。
「あっ、ウィナさん」
「ようやく目を覚ましたね。慣れれば5分くらいで起きるけど、あんたは30分だったよ」
「すいません……」
「まあいいさ、でも早く慣れなきゃね。ここは戦場フィールドとしてシミュレートされてるから、実際の試合ではすぐに目を覚まさないと一瞬で殺されるよ」
「は、はい!」
「じゃあ行こうか。まずはあの高層ビルを目指して進んでみよう。ガナス・スーツの装備や武器の細かい説明は、歩きながらしてあげるから」
ウィナの後をミルエダは嬉しそうに追い掛けた。一方で、ダルクガルドとの親善試合は3日後に迫っていた。
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