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ダルクガルド
シュラミア
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「ウィナ、お姉ちゃんを撃ってみなさい」
幼い頃のウィナは、姉であるシュラミアにハンドガンを手渡された。そのハンドガンとは、ウィナの父親がセルタロズパイク社で開発し、かつては名銃と謳われた『ZRP M7 バスターロック』である。
「……嫌だよ、お姉ちゃん」
「大丈夫だから、私たちには特別な能力があるの。お父さんとお母さんのお墓の前で、それを証明してあげる」
姉の目が真剣だと悟ると、ウィナは震えながら銃を構えた。父親が銃の開発に携わっていたとはいえ、8歳のウィナは銃を握ったことさえなく、まして撃つのも初めてだった。しかし興味はあったのか、銃の構造はマニュアルを読んで理解していた。
「勇気を出しなさいウィナ。私たち二人は、この荒んだ世の中で強く生きていかねばならないの。銃声を肌で感じなさい。そうすればあなたにも見えてくるものがあるから」
「……分かった」
ウィナは呼吸を整え、銃口をシュラミアの頭に向けた。引き金に指を添えると、ウィナの額から大量の汗が噴き出す。そして一粒の汗が地面に落ちるタイミングで引き金を引き、周囲に乾いた銃声が鳴り響いた。
「ほらね、当たらない」
ウィナは恐怖で目を瞑っていたが、姉の声で閉じていた目をゆっくり開けた。見ると、頬にかすり傷を付けた姉が、何事もなかったように澄ました顔で立っている。どうやら首を傾けて銃弾を避けたらしい。
「私たちは銃の弾道が光の線となって見えるんだよ。だから撃った弾をすべて避けることができるんだ」
「ウィナにも見えるの?」
「もちろん。試しにあの壁を撃ってごらん」
ウィナはシュラミアの指差した方向へ銃を構えた。そして一発だけ壁に向かって弾を撃ち込むと、撃った瞬間に赤い光の線のようなものが見えた。
「……ホントだ!」
「でしょ、練習すれば鮮明に見えるようになるからね」
シュラミアはウィナの頭を優しく撫でた。そして用意していた花束を両親の墓に添えると、ウィナと一緒にしばらく墓石に刻まれた名前を見つめていた。シュラミアは頬に伝わる涙を拭うと、ウィナの肩に手を置き、なにかを決意したかのような目で話し掛けた。
「よく聞いてウィナ、お父さんは×〇■▼に、お母さんは▲□◎◆に殺されてしまった。いつか必ず復讐しなければならないの。それが私たちの宿命でもあるから」
「……お姉ちゃん?」
「この国を取り戻すため一緒に戦い続けよう。例え過酷な運命を与えられたとしても、神様がくれたこの能力で必ず乗り越えられる。私たち二人は戦場の中で認められ、英雄視され、そして両親に誓った願いも叶えられるはず」
「願いってなに?」
「×〇■▼と▲□◎◆の殲滅」
ウィナは「殲滅」という言葉の意味が分からないため、首を傾げながらシュラミアを見つめていた。ウィナにとっては、姉と一緒に幸せに暮らすことがなにより大切なのだ。しかし、お互いに抱える価値観の違いは、例え幼くても明確に感じ取っていた。
「……お姉ちゃん」
「ん?」
「よく分かんないけど、お姉ちゃんが幸せになるならウィナは手伝うよ。せんめつっていうのができるまで、一緒に頑張ろうね」
「……ありがとう、ウィナ」
シュラミアは再びウィナの頭を優しく撫でた。今まで固く手を握りしめていたのか、その掌には汗が滲み出てじっとりと濡れていた。
幼い頃のウィナは、姉であるシュラミアにハンドガンを手渡された。そのハンドガンとは、ウィナの父親がセルタロズパイク社で開発し、かつては名銃と謳われた『ZRP M7 バスターロック』である。
「……嫌だよ、お姉ちゃん」
「大丈夫だから、私たちには特別な能力があるの。お父さんとお母さんのお墓の前で、それを証明してあげる」
姉の目が真剣だと悟ると、ウィナは震えながら銃を構えた。父親が銃の開発に携わっていたとはいえ、8歳のウィナは銃を握ったことさえなく、まして撃つのも初めてだった。しかし興味はあったのか、銃の構造はマニュアルを読んで理解していた。
「勇気を出しなさいウィナ。私たち二人は、この荒んだ世の中で強く生きていかねばならないの。銃声を肌で感じなさい。そうすればあなたにも見えてくるものがあるから」
「……分かった」
ウィナは呼吸を整え、銃口をシュラミアの頭に向けた。引き金に指を添えると、ウィナの額から大量の汗が噴き出す。そして一粒の汗が地面に落ちるタイミングで引き金を引き、周囲に乾いた銃声が鳴り響いた。
「ほらね、当たらない」
ウィナは恐怖で目を瞑っていたが、姉の声で閉じていた目をゆっくり開けた。見ると、頬にかすり傷を付けた姉が、何事もなかったように澄ました顔で立っている。どうやら首を傾けて銃弾を避けたらしい。
「私たちは銃の弾道が光の線となって見えるんだよ。だから撃った弾をすべて避けることができるんだ」
「ウィナにも見えるの?」
「もちろん。試しにあの壁を撃ってごらん」
ウィナはシュラミアの指差した方向へ銃を構えた。そして一発だけ壁に向かって弾を撃ち込むと、撃った瞬間に赤い光の線のようなものが見えた。
「……ホントだ!」
「でしょ、練習すれば鮮明に見えるようになるからね」
シュラミアはウィナの頭を優しく撫でた。そして用意していた花束を両親の墓に添えると、ウィナと一緒にしばらく墓石に刻まれた名前を見つめていた。シュラミアは頬に伝わる涙を拭うと、ウィナの肩に手を置き、なにかを決意したかのような目で話し掛けた。
「よく聞いてウィナ、お父さんは×〇■▼に、お母さんは▲□◎◆に殺されてしまった。いつか必ず復讐しなければならないの。それが私たちの宿命でもあるから」
「……お姉ちゃん?」
「この国を取り戻すため一緒に戦い続けよう。例え過酷な運命を与えられたとしても、神様がくれたこの能力で必ず乗り越えられる。私たち二人は戦場の中で認められ、英雄視され、そして両親に誓った願いも叶えられるはず」
「願いってなに?」
「×〇■▼と▲□◎◆の殲滅」
ウィナは「殲滅」という言葉の意味が分からないため、首を傾げながらシュラミアを見つめていた。ウィナにとっては、姉と一緒に幸せに暮らすことがなにより大切なのだ。しかし、お互いに抱える価値観の違いは、例え幼くても明確に感じ取っていた。
「……お姉ちゃん」
「ん?」
「よく分かんないけど、お姉ちゃんが幸せになるならウィナは手伝うよ。せんめつっていうのができるまで、一緒に頑張ろうね」
「……ありがとう、ウィナ」
シュラミアは再びウィナの頭を優しく撫でた。今まで固く手を握りしめていたのか、その掌には汗が滲み出てじっとりと濡れていた。
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