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第5章 冒険者4か月目
95話 最初の街へ
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―――エルフェル・ブルグ、滞在16日目
「さてと、出発前に最終確認だ。ヒロトにまともに見せるのは初めてだな」
出発に備え、購入した品々を含めた荷物整理や、使っていた部屋の掃除を一通り終えた早朝。
オレたちは談話室に集合していた。
全員揃ったことを確認したサディエルが、バサリ! と1枚の大きめの紙を広げる。
「これは……世界地図!?」
「そっ。ちょっと事情があって、今まで見せてなかった奴な」
初めて見せられた世界地図を思わず凝視してしまう。
行きは荷馬車だったし、文字も読めないし、サディエルとクレインさんが基本ルートの調整をしていたってのもあるけど、普通はこう、世界観説明として世界地図から入って、ここにはこの国、こんな街みたいな解説があるわけだが、すっかり忘れていた。
「まず、俺らが今居る場所、エルフェル・ブルグがここだ」
きゅきゅ、とサディエルはある部分に赤い丸を付ける。
連峰と呼ぶに相応しい標高を持つ、多くの山々に自然城壁の如く囲まれていた場所であり、平坦な道と呼べるルートがどこにも見当たらない状態だ。
「この唯一、山脈が無い方面って……」
「魔王……カインさんが領地として居る場所だ。エルフェル・ブルグは、前門が魔族、後門が自然の大山脈と言う四面楚歌な場所になる。その為、この国を訪れる方法は2つ、山越えか、海路となる」
サディエルは、ここまでルートを逆順に赤色でなぞって行く。
エルフェル・ブルグに最も近い街、港町、海路を抜けて、古代遺跡の国と、覚えのある国や街と思われる場所を、遡っているのだが……
「すっっごい、遠回りしている」
「安全かつ荷物の運び入れの都合で、寄らないといけない街や国があったからな。徒歩だったら、もうちょっと距離は短縮されていたけど、ヒロトの体力を考慮すると船旅が3週間、残り5か月と1週間が徒歩になる。それで……何でこれを最初に見せなかったかの答えなんだが」
赤色のペンが、ある街で止まった。
その街が赤い丸で囲まれた所で、オレは改めて世界地図の全体を見る。
……そして、何でサディエルたちが "今" になって、オレにこれを見せたかを理解した。
「最初の街からエルフェル・ブルグって、見た目だけならめっちゃ近い!?」
「あぁ。地図上での単純な直線距離だけなら、すごく近く見えるんだ」
サディエルの回答を聞いて、オレは唖然としてしまう。
つまり、行きにそのルートを通ることが出来れば、もっと早くエルフェル・ブルグに到着出来たというわけだ。
「何で! って、怒って言う場面なのかもしれないけど、流石に今回ばかりは、オレもその答えが分かるよ」
この世界に来た当初のオレだったら、きっとこの最短ルートを知らされていたらこう答えただろう。
困難の度合いを全く考えず、そのルートを使ってエルフェル・ブルグへ行きたい!…‥と。
「ヒロト、何でかを説明出来るよな? 負け筋の点でよろしく」
「了解、アルム。この世界に来た当初のオレを連れて、と言う条件で最短ルートを選べなかった理由は2つ。1つは、山越えするだけの体力及び知識が無い」
エルフェル・ブルグを囲うように広がる山々は、1つ1つの標高がとても高い。
ぱっと見だけでも、3000メートルぐらいはゆうに超えているような見た目をしており、そんな場所を登頂してさらに下山となると、相応の準備と体力が必要になる。
だけど、単純に登って降りて、と言う話で終わるわけがない。
下手に山道から逸れようもんなら、遭難してしまい大変どころの騒ぎじゃない。
山道は山道でも、断崖絶壁を慎重に通らないといけない可能性だってある。
なにより、標高が高くなれば高くなるほど空気が薄くなり、高山病などの危険も高まるのだ。
「2つ目は、その道中での魔物及び盗賊との戦闘……自衛力が皆無なオレが、みんなとはぐれでもしたら、その時点で生存が絶望的になってしまう」
「正解だ。この世界に来た当初にこの説明をしたとしても、自分のことで頭がいっぱいでパニックになっていたヒロトに、正常判断が下せるかと言われたら」
「無理、だよね。だからこそ、皆はこのことを黙ってくれていた」
幸いだったのは、その可能性にサディエルたちがいち早く気づいたことだ。
オレから最短ルートの話題を逸らし、直視しなければいけない問題を提示し、今のままでは普通に生き残ることすら難しいのだと悟らせる。
その上で、時間は掛かるけど安全なルートを行くことに納得出来るようにしてくれた。
もしも、彼らがその説明を省いていたら……きっと、どこかで不満いっぱいになって、単独行動をしていたかもしれない。
「サディエルがさ、オレの目標達成表に『死なないこと』って内容を掲げて来た時、何言ってるんだそんな当たり前な事を、って思っていたんだけど……」
「簡単に納得出来ることではありませんよ、ヒロト」
「リレル……」
オレの顔を見て、リレルは微笑んだ。
「当時の貴方にとっては、その優先度が高かっただけです。ですが、周りを見る余裕が出来た今であれば、別解も見えて来た……だからこそ、悔しいんですよね?」
「そう、だな。そうだと思う」
きっと、この感情に言葉を付けるなら、"悔しい" なんだろう。
きっかけは、アルムと衝突した日だ。
あの日を境に、見えなかった世界が一気に開けた。
何でどうしてと、疑問だけをぶつけて考える気がなかったオレの中で、ただの異世界、ただのファンタジーだと思っていた世界が、まるでパズルのピースのように、ピッタリと合致する感覚。
そこから先は、本当に単純で簡単だった。
同時に思った。何でこんな簡単なことにずっと気づけなかったのか……と言う、悔しさだ。
この時、サディエルはこういった。
召喚されてからあの日までの間に、サディエルたちが説明てくれた内容1つ1つは、エルフェル・ブルグに行くだけならば、必要のない知識だと。
確かに、行くだけならば必要はなかった。
だけど、今こうして生きて、五体満足でいる為には、必須だった知識。
「ほんっっと、難しいよね。必要なこと、必要じゃない事、それをどう伝えるか……難しすぎる」
「あっははは。どうしても時間が掛かることだから仕方ない。省略していいことでもないからさ」
「そうだね。よし! 本題入ろう、本題!」
気合を入れ直し、オレはサディエルにそう伝える。
彼は小さく笑った後、すぐに表情を戻す。
「わかった。これからあの洞窟遺跡へ向かうわけだが、一先ずの目的地はここ……ヒロトにとっては、最初に訪れたあの街。"アンファーグル" になる」
アンファーグル、それがあの街の名前か。
「そして、肝心のルートになるんだが……候補は3つ、いや、実質2つだ」
「却下になった1つは?」
「魔物や盗賊からの襲撃が最も少なくなるルートだ。それだけ聞くと、そこを選びたくなるが……標高が最も高い場所を通ることになり、圧倒的に危険だ。自然は怖いからな」
「オレの世界でも、標高が高い山ってのはかなり危険で、毎年結構な死者が出ている」
「魔物が居ない世界ですらそれなんだ。四六時中自然の脅威に晒され、圧倒的に生存率が下がる為、最も標高が高いルートは却下だ」
これは納得だな。
サディエルの言う通り、自然の脅威は人間ではどうしようも出来ない。
となれば、人間でどうにかなるルートを選ぶのが必然となる。
「残る2つは、当然ながら魔物と盗賊からの襲撃率で別れている。道のりだけなら最も安全だけど、エルフェル・ブルグから出発する冒険者や荷馬車が襲われる危険が高いルートと、少しばかり険しい道故に襲撃頻度が下がるルートだ」
襲撃率を選ぶか、道のりの良さを選ぶことになるのか。
行きはよいよい、帰りは怖い……ってわけだな。
「それで、どのルートを行くんだ?」
「少しばかり険しい道故に襲撃頻度が下がるルートだ」
アルムの問いかけに、サディエルは迷いなく答えた。
「理由は単純に、対ガランドを想定してのことだ。最終決戦地は洞窟遺跡だと想定していたが、先日ヒロトから色々聞かせて貰って、もう1つ襲撃候補が増えた」
そこまで言うと、サディエルはオレに視線を向けてくる。
オレは頷いて、彼の言葉を引き継ぐ。
「ガランドは、最初こそこっちを侮って色々ミスってくれたけど、次は確実に万全な状態でこっちを襲撃してくる。ここまでは、アルムとリレルも認識しているよね?」
「あぁ、大丈夫だ」
「問題ありません、続けて頂けますか? ヒロト」
2人の返答を聞いて、オレは説明を続ける。
「万全な状態であると同時に、オレたちにとって "最も襲って欲しくない" タイミングを狙ってくると思う」
「どういうことだ?」
「オレの世界のテンプレでさ、このタイミングで襲って欲しくないなって思う瞬間は、だいたい襲撃フラグになるんだ」
そう。実にシンプルで単純だ。
オレたちの視点から、最も勝ち筋がつぶれる瞬間……潰しきれなかった負け筋を、狙いすましたかのようにピンポイントで狙われる。
そして、主人公たちは口を揃えてこう言うんだ『よりにもよって、こんなタイミングで!』っとね。
「最も最悪な展開は、オレら全員が、何かしらの理由で散り散りにならなきゃいけなくなること。サディエルが1人になった瞬間を狙っての襲撃だ」
「なるほどな。あちらにとっては最高な条件ってわけで、それを無視してまで洞窟遺跡に陣取っているわけがない、と言う事か」
「でしたら尚更、魔物や盗賊からの襲撃率が下がるルートを選ぶに越したことはありませんね」
ただ、この件を口に出した以上は覚悟をする必要もある。
アルムたちもそれは理解しているのだろう、必死にどうするか考え込む。
「こればかりは、出たとこ勝負にしかならない。どれだけ危険でも、散開して逃げなきゃいけない場面も出てくるだろう」
「出来る限り、サディエルが1人にならないよう行動しよう。そして、離れ離れになった時に備えて、どう動くかの検討もする。山登りは2週間後からだよね?」
オレの問いかけに、サディエルは頷く。
「あぁ。まずは山脈の入り口までに2週間、山越えに1週間、平地に戻って2週間。道中にある国や街での休憩を兼ねた滞在期間を合計2週間、日程の猶予としての予備日で1週間。合計で約2か月の道のりだ」
今日で、この世界に来て112日目。
今の日程を加算すると、168日~172日の付近で、最初の街アンファーグルに到着するわけだ。
半年が約180日だから、かなりの猶予があるようにも見える。
だけど、ガランドのことを考えると、僅かの予備日すらも一瞬で吹き飛びかねない。
「山越えに入る前に、もう1度しっかりと打ち合わせをする予定だ。まずは、その手前まで行こう」
「了解」
「わかりました」
「オッケー!」
最終打ち合わせが終了し、オレたちは各々の荷物を持つ。
これまでは荷馬車のお陰で楽をさせて貰ったけど、今日からは自分たちの足で1日中歩き続けることになる。
1日歩きっぱなしに耐える為にも、行きの3か月間で頑張って運動して体力付けて来たんだ。
異世界に来た当初、碌な荷物も持っていないのに足がガックガクになっていたオレとは違うのだ。
大丈夫、今日まで頑張って来たオレなら出来る!
……ただの徒歩だろ、と思わないで欲しい。本当に1日歩き続けるとか辛いんだから。
『うおっと、危ない! 間に合った!』
そこに、またしても聞き覚えのある声が聞こえて来た。
数日前にもこのパターン、有った気がするんですが。
オレが心の中でツッコミを入れていると、やはり派手さも何もなく彼が現れた。
「やぁみんな、出発前にごめんね!」
「お忙しい中、申し訳ありません」
魔王カイレスティンことカイン君と、その伴侶であるミルフェリアことミリィちゃんだ。
「カインさんに、ミリィさん?」
「何かあった?」
「先日はバークライスが近くに居たから、言えなかったことを伝えに来た」
言えなかったこと?
どんな要件か見当がつかず、オレたちは首を傾げる。
「魔族の "顔" についてをね、説明しておこうと思って」
「顔……? 生まれたばかりの魔族に、何で顔がないかってことですか?」
「そうそう。それを説明しとかないと、君らがピンチになる可能性があるから」
オレらが、ピンチに。
ますます訳が分からない。
こちらの疑問符乱立を他所に、カイン君は指を鳴らす。
すると、彼の隣にローブの人物が姿を現した。
顔は、相変わらず深くかぶったフードのせいで見えない。
「……!? 魔族!?」
「あぁ大丈夫、襲わないから。彼は俺の右腕で最も信頼している部下なんだ。さてと……アインス、フード取って」
「承知しました」
カイン君の言葉に従って、ローブの人物……アインスと呼ばれた魔族は、フードを後ろにずらす。
そこに現れた顔は……
「カイン君と、同じ!?」
「そう。これが、"顔" を欲しがる理由なんだ。魔族は俺の魔力から作り出した核が本体って話しただろ? 顔の造形も可能ではあるんだが、どういうわけか全員俺と同じ顔になってしまう」
「魔王様と同じ顔の魔族がわらわら……うわぁ、なるほどな」
アルムがその光景を想像してか、うへぇ、と嫌そうな表情を浮かべる。
「同じ顔があっちこっちに有ったら、流石に悪夢ですね」
「その通り。だから、人間に恐怖を与えるついでに、"顔" を頂いて、俺とは別の人相になって貰っていたんだ」
切実と言うべきなのか、くだらないと言うべきなのか。
見ようによっては、心底どーでもいい理由で、"顔" が必要だったわけか。
それを『ついで』で、人間への恐怖心を煽ることに利用するあたりが、せこいっつーか。
「あー、分かった。俺らがピンチになるって、それを利用してガランドが近づいてくる可能性があるってことか」
「……そっか! カイン君の顔で、何気なく近づかれたら、こっちは警戒を一瞬解いてしまう」
「それの防止の為さ。ついでに、俺は君らがガランドとの決着をつけた上で、洞窟遺跡に到着するまでは、一切顔を出す予定はないから。万が一にでも俺の顔をした奴が出てきたら、注意してくれ」
ありがたいご忠告なわけだけど……
「何で、そこまで……」
「言ったでしょ。ヒロト兄ちゃんには、俺と同じ失敗はして欲しくないからね。君がちゃんと元の世界に帰ることが出来れば、俺も色々と吹っ切れることが出来るんだ。心の整理の為に、利用させて貰っているだけさ」
カイン君は、オレの肩をポンと叩く。
その隣に居たミリィちゃんが、オレに小さな袋を渡して来た。
「ってわけで、道中気を付けて!」
「こちら、少ないですが私が作ったクッキーになります。日持ちしますので小腹が空いた時にお食べください。皆様の旅路に、幸あらん事を」
それだけ言うと、カイン君たち3人はあっさりと姿を消した。
最後の最後まで、嵐のようにやって来て、嵐のように去っていったよ、あの魔王様とそのお妃様たちは。
================================
「クレインさん、レックスさん。長い間、お世話になりました」
「うむ、気を付けて行ってきなさい」
「吉報をお待ちしておりますよ」
オレたちはそれぞれ、クレインさん、レックスさんと握手を交わす。
サディエルだけは、同じく見送りに来たフットマンさんたちに挨拶して、相変わらずもみくちゃにされている。
「何で魔術省で働くんだよお前-! クレイン様に雇ってもらえばよかったのに!」
「そうだそうだ!」
「いや、叩くなよ!?」
フットマンやってた頃から、こんなノリだったんだろうな。
何とか解放されたサディエルと共に、オレたちは改めて一礼してから、クレインさんの屋敷を後にする。
そのまま、エルフェル・ブルグの外へ通じる城門に近づくと……
「よっ、いい旅立ち日和だな」
「そろそろだと思ってな。アークシェイドと共に待っていたよ」
「アーク!」
「バークライスさん!」
アークさんと、バークライスさんがそこに居た。
まず、バークライスさんがオレたちと握手を交わす。
「サディエル、アルム、リレル。お前たちはとにかく無事に戻って来い、待っているからな」
「はい」
「分かりました」
「頑張ります」
「ヒロト君。ここでお別れとなるが、この世界で沢山見聞きしたこと、感じたこと、それを糧に頑張りなさい」
「はい! ありがとうございます、バークライスさん」
挨拶が終わると、バークライスさんは控えていたアークさんに視線を送る。
それを受け取り、アークさんも順番に握手を交わす。
「ヒロト君。多分みんなが言ってるだろうから、おれからはこれだけ送る。全力でやってこい!」
「分かりました! アークさんも、ありがとうございます」
「アルム君、リレルさん。何度も申し訳ないが、サディの奴をよろしく頼む」
「勿論です」
「はい、お任せください」
オレたち3人との挨拶を終え、アークさんはサディエルに近づく。
2人は互いに腕をガツンと当てて、不敵な笑みを浮かべる。
「分かってるよな? ちゃんと帰って来い」
「耳にタコが出来ているよ。大丈夫だ、ちゃんと帰って来るから」
そのまま、ガシッと握手を交わした。
「さぁ、行くか! アルム、リレル、ヒロト!」
「おう!」
「行きましょう!」
「目指せ、アンファーグル!」
―――第5章 冒険者4か月目【不器用な3人組編】 完
「さてと、出発前に最終確認だ。ヒロトにまともに見せるのは初めてだな」
出発に備え、購入した品々を含めた荷物整理や、使っていた部屋の掃除を一通り終えた早朝。
オレたちは談話室に集合していた。
全員揃ったことを確認したサディエルが、バサリ! と1枚の大きめの紙を広げる。
「これは……世界地図!?」
「そっ。ちょっと事情があって、今まで見せてなかった奴な」
初めて見せられた世界地図を思わず凝視してしまう。
行きは荷馬車だったし、文字も読めないし、サディエルとクレインさんが基本ルートの調整をしていたってのもあるけど、普通はこう、世界観説明として世界地図から入って、ここにはこの国、こんな街みたいな解説があるわけだが、すっかり忘れていた。
「まず、俺らが今居る場所、エルフェル・ブルグがここだ」
きゅきゅ、とサディエルはある部分に赤い丸を付ける。
連峰と呼ぶに相応しい標高を持つ、多くの山々に自然城壁の如く囲まれていた場所であり、平坦な道と呼べるルートがどこにも見当たらない状態だ。
「この唯一、山脈が無い方面って……」
「魔王……カインさんが領地として居る場所だ。エルフェル・ブルグは、前門が魔族、後門が自然の大山脈と言う四面楚歌な場所になる。その為、この国を訪れる方法は2つ、山越えか、海路となる」
サディエルは、ここまでルートを逆順に赤色でなぞって行く。
エルフェル・ブルグに最も近い街、港町、海路を抜けて、古代遺跡の国と、覚えのある国や街と思われる場所を、遡っているのだが……
「すっっごい、遠回りしている」
「安全かつ荷物の運び入れの都合で、寄らないといけない街や国があったからな。徒歩だったら、もうちょっと距離は短縮されていたけど、ヒロトの体力を考慮すると船旅が3週間、残り5か月と1週間が徒歩になる。それで……何でこれを最初に見せなかったかの答えなんだが」
赤色のペンが、ある街で止まった。
その街が赤い丸で囲まれた所で、オレは改めて世界地図の全体を見る。
……そして、何でサディエルたちが "今" になって、オレにこれを見せたかを理解した。
「最初の街からエルフェル・ブルグって、見た目だけならめっちゃ近い!?」
「あぁ。地図上での単純な直線距離だけなら、すごく近く見えるんだ」
サディエルの回答を聞いて、オレは唖然としてしまう。
つまり、行きにそのルートを通ることが出来れば、もっと早くエルフェル・ブルグに到着出来たというわけだ。
「何で! って、怒って言う場面なのかもしれないけど、流石に今回ばかりは、オレもその答えが分かるよ」
この世界に来た当初のオレだったら、きっとこの最短ルートを知らされていたらこう答えただろう。
困難の度合いを全く考えず、そのルートを使ってエルフェル・ブルグへ行きたい!…‥と。
「ヒロト、何でかを説明出来るよな? 負け筋の点でよろしく」
「了解、アルム。この世界に来た当初のオレを連れて、と言う条件で最短ルートを選べなかった理由は2つ。1つは、山越えするだけの体力及び知識が無い」
エルフェル・ブルグを囲うように広がる山々は、1つ1つの標高がとても高い。
ぱっと見だけでも、3000メートルぐらいはゆうに超えているような見た目をしており、そんな場所を登頂してさらに下山となると、相応の準備と体力が必要になる。
だけど、単純に登って降りて、と言う話で終わるわけがない。
下手に山道から逸れようもんなら、遭難してしまい大変どころの騒ぎじゃない。
山道は山道でも、断崖絶壁を慎重に通らないといけない可能性だってある。
なにより、標高が高くなれば高くなるほど空気が薄くなり、高山病などの危険も高まるのだ。
「2つ目は、その道中での魔物及び盗賊との戦闘……自衛力が皆無なオレが、みんなとはぐれでもしたら、その時点で生存が絶望的になってしまう」
「正解だ。この世界に来た当初にこの説明をしたとしても、自分のことで頭がいっぱいでパニックになっていたヒロトに、正常判断が下せるかと言われたら」
「無理、だよね。だからこそ、皆はこのことを黙ってくれていた」
幸いだったのは、その可能性にサディエルたちがいち早く気づいたことだ。
オレから最短ルートの話題を逸らし、直視しなければいけない問題を提示し、今のままでは普通に生き残ることすら難しいのだと悟らせる。
その上で、時間は掛かるけど安全なルートを行くことに納得出来るようにしてくれた。
もしも、彼らがその説明を省いていたら……きっと、どこかで不満いっぱいになって、単独行動をしていたかもしれない。
「サディエルがさ、オレの目標達成表に『死なないこと』って内容を掲げて来た時、何言ってるんだそんな当たり前な事を、って思っていたんだけど……」
「簡単に納得出来ることではありませんよ、ヒロト」
「リレル……」
オレの顔を見て、リレルは微笑んだ。
「当時の貴方にとっては、その優先度が高かっただけです。ですが、周りを見る余裕が出来た今であれば、別解も見えて来た……だからこそ、悔しいんですよね?」
「そう、だな。そうだと思う」
きっと、この感情に言葉を付けるなら、"悔しい" なんだろう。
きっかけは、アルムと衝突した日だ。
あの日を境に、見えなかった世界が一気に開けた。
何でどうしてと、疑問だけをぶつけて考える気がなかったオレの中で、ただの異世界、ただのファンタジーだと思っていた世界が、まるでパズルのピースのように、ピッタリと合致する感覚。
そこから先は、本当に単純で簡単だった。
同時に思った。何でこんな簡単なことにずっと気づけなかったのか……と言う、悔しさだ。
この時、サディエルはこういった。
召喚されてからあの日までの間に、サディエルたちが説明てくれた内容1つ1つは、エルフェル・ブルグに行くだけならば、必要のない知識だと。
確かに、行くだけならば必要はなかった。
だけど、今こうして生きて、五体満足でいる為には、必須だった知識。
「ほんっっと、難しいよね。必要なこと、必要じゃない事、それをどう伝えるか……難しすぎる」
「あっははは。どうしても時間が掛かることだから仕方ない。省略していいことでもないからさ」
「そうだね。よし! 本題入ろう、本題!」
気合を入れ直し、オレはサディエルにそう伝える。
彼は小さく笑った後、すぐに表情を戻す。
「わかった。これからあの洞窟遺跡へ向かうわけだが、一先ずの目的地はここ……ヒロトにとっては、最初に訪れたあの街。"アンファーグル" になる」
アンファーグル、それがあの街の名前か。
「そして、肝心のルートになるんだが……候補は3つ、いや、実質2つだ」
「却下になった1つは?」
「魔物や盗賊からの襲撃が最も少なくなるルートだ。それだけ聞くと、そこを選びたくなるが……標高が最も高い場所を通ることになり、圧倒的に危険だ。自然は怖いからな」
「オレの世界でも、標高が高い山ってのはかなり危険で、毎年結構な死者が出ている」
「魔物が居ない世界ですらそれなんだ。四六時中自然の脅威に晒され、圧倒的に生存率が下がる為、最も標高が高いルートは却下だ」
これは納得だな。
サディエルの言う通り、自然の脅威は人間ではどうしようも出来ない。
となれば、人間でどうにかなるルートを選ぶのが必然となる。
「残る2つは、当然ながら魔物と盗賊からの襲撃率で別れている。道のりだけなら最も安全だけど、エルフェル・ブルグから出発する冒険者や荷馬車が襲われる危険が高いルートと、少しばかり険しい道故に襲撃頻度が下がるルートだ」
襲撃率を選ぶか、道のりの良さを選ぶことになるのか。
行きはよいよい、帰りは怖い……ってわけだな。
「それで、どのルートを行くんだ?」
「少しばかり険しい道故に襲撃頻度が下がるルートだ」
アルムの問いかけに、サディエルは迷いなく答えた。
「理由は単純に、対ガランドを想定してのことだ。最終決戦地は洞窟遺跡だと想定していたが、先日ヒロトから色々聞かせて貰って、もう1つ襲撃候補が増えた」
そこまで言うと、サディエルはオレに視線を向けてくる。
オレは頷いて、彼の言葉を引き継ぐ。
「ガランドは、最初こそこっちを侮って色々ミスってくれたけど、次は確実に万全な状態でこっちを襲撃してくる。ここまでは、アルムとリレルも認識しているよね?」
「あぁ、大丈夫だ」
「問題ありません、続けて頂けますか? ヒロト」
2人の返答を聞いて、オレは説明を続ける。
「万全な状態であると同時に、オレたちにとって "最も襲って欲しくない" タイミングを狙ってくると思う」
「どういうことだ?」
「オレの世界のテンプレでさ、このタイミングで襲って欲しくないなって思う瞬間は、だいたい襲撃フラグになるんだ」
そう。実にシンプルで単純だ。
オレたちの視点から、最も勝ち筋がつぶれる瞬間……潰しきれなかった負け筋を、狙いすましたかのようにピンポイントで狙われる。
そして、主人公たちは口を揃えてこう言うんだ『よりにもよって、こんなタイミングで!』っとね。
「最も最悪な展開は、オレら全員が、何かしらの理由で散り散りにならなきゃいけなくなること。サディエルが1人になった瞬間を狙っての襲撃だ」
「なるほどな。あちらにとっては最高な条件ってわけで、それを無視してまで洞窟遺跡に陣取っているわけがない、と言う事か」
「でしたら尚更、魔物や盗賊からの襲撃率が下がるルートを選ぶに越したことはありませんね」
ただ、この件を口に出した以上は覚悟をする必要もある。
アルムたちもそれは理解しているのだろう、必死にどうするか考え込む。
「こればかりは、出たとこ勝負にしかならない。どれだけ危険でも、散開して逃げなきゃいけない場面も出てくるだろう」
「出来る限り、サディエルが1人にならないよう行動しよう。そして、離れ離れになった時に備えて、どう動くかの検討もする。山登りは2週間後からだよね?」
オレの問いかけに、サディエルは頷く。
「あぁ。まずは山脈の入り口までに2週間、山越えに1週間、平地に戻って2週間。道中にある国や街での休憩を兼ねた滞在期間を合計2週間、日程の猶予としての予備日で1週間。合計で約2か月の道のりだ」
今日で、この世界に来て112日目。
今の日程を加算すると、168日~172日の付近で、最初の街アンファーグルに到着するわけだ。
半年が約180日だから、かなりの猶予があるようにも見える。
だけど、ガランドのことを考えると、僅かの予備日すらも一瞬で吹き飛びかねない。
「山越えに入る前に、もう1度しっかりと打ち合わせをする予定だ。まずは、その手前まで行こう」
「了解」
「わかりました」
「オッケー!」
最終打ち合わせが終了し、オレたちは各々の荷物を持つ。
これまでは荷馬車のお陰で楽をさせて貰ったけど、今日からは自分たちの足で1日中歩き続けることになる。
1日歩きっぱなしに耐える為にも、行きの3か月間で頑張って運動して体力付けて来たんだ。
異世界に来た当初、碌な荷物も持っていないのに足がガックガクになっていたオレとは違うのだ。
大丈夫、今日まで頑張って来たオレなら出来る!
……ただの徒歩だろ、と思わないで欲しい。本当に1日歩き続けるとか辛いんだから。
『うおっと、危ない! 間に合った!』
そこに、またしても聞き覚えのある声が聞こえて来た。
数日前にもこのパターン、有った気がするんですが。
オレが心の中でツッコミを入れていると、やはり派手さも何もなく彼が現れた。
「やぁみんな、出発前にごめんね!」
「お忙しい中、申し訳ありません」
魔王カイレスティンことカイン君と、その伴侶であるミルフェリアことミリィちゃんだ。
「カインさんに、ミリィさん?」
「何かあった?」
「先日はバークライスが近くに居たから、言えなかったことを伝えに来た」
言えなかったこと?
どんな要件か見当がつかず、オレたちは首を傾げる。
「魔族の "顔" についてをね、説明しておこうと思って」
「顔……? 生まれたばかりの魔族に、何で顔がないかってことですか?」
「そうそう。それを説明しとかないと、君らがピンチになる可能性があるから」
オレらが、ピンチに。
ますます訳が分からない。
こちらの疑問符乱立を他所に、カイン君は指を鳴らす。
すると、彼の隣にローブの人物が姿を現した。
顔は、相変わらず深くかぶったフードのせいで見えない。
「……!? 魔族!?」
「あぁ大丈夫、襲わないから。彼は俺の右腕で最も信頼している部下なんだ。さてと……アインス、フード取って」
「承知しました」
カイン君の言葉に従って、ローブの人物……アインスと呼ばれた魔族は、フードを後ろにずらす。
そこに現れた顔は……
「カイン君と、同じ!?」
「そう。これが、"顔" を欲しがる理由なんだ。魔族は俺の魔力から作り出した核が本体って話しただろ? 顔の造形も可能ではあるんだが、どういうわけか全員俺と同じ顔になってしまう」
「魔王様と同じ顔の魔族がわらわら……うわぁ、なるほどな」
アルムがその光景を想像してか、うへぇ、と嫌そうな表情を浮かべる。
「同じ顔があっちこっちに有ったら、流石に悪夢ですね」
「その通り。だから、人間に恐怖を与えるついでに、"顔" を頂いて、俺とは別の人相になって貰っていたんだ」
切実と言うべきなのか、くだらないと言うべきなのか。
見ようによっては、心底どーでもいい理由で、"顔" が必要だったわけか。
それを『ついで』で、人間への恐怖心を煽ることに利用するあたりが、せこいっつーか。
「あー、分かった。俺らがピンチになるって、それを利用してガランドが近づいてくる可能性があるってことか」
「……そっか! カイン君の顔で、何気なく近づかれたら、こっちは警戒を一瞬解いてしまう」
「それの防止の為さ。ついでに、俺は君らがガランドとの決着をつけた上で、洞窟遺跡に到着するまでは、一切顔を出す予定はないから。万が一にでも俺の顔をした奴が出てきたら、注意してくれ」
ありがたいご忠告なわけだけど……
「何で、そこまで……」
「言ったでしょ。ヒロト兄ちゃんには、俺と同じ失敗はして欲しくないからね。君がちゃんと元の世界に帰ることが出来れば、俺も色々と吹っ切れることが出来るんだ。心の整理の為に、利用させて貰っているだけさ」
カイン君は、オレの肩をポンと叩く。
その隣に居たミリィちゃんが、オレに小さな袋を渡して来た。
「ってわけで、道中気を付けて!」
「こちら、少ないですが私が作ったクッキーになります。日持ちしますので小腹が空いた時にお食べください。皆様の旅路に、幸あらん事を」
それだけ言うと、カイン君たち3人はあっさりと姿を消した。
最後の最後まで、嵐のようにやって来て、嵐のように去っていったよ、あの魔王様とそのお妃様たちは。
================================
「クレインさん、レックスさん。長い間、お世話になりました」
「うむ、気を付けて行ってきなさい」
「吉報をお待ちしておりますよ」
オレたちはそれぞれ、クレインさん、レックスさんと握手を交わす。
サディエルだけは、同じく見送りに来たフットマンさんたちに挨拶して、相変わらずもみくちゃにされている。
「何で魔術省で働くんだよお前-! クレイン様に雇ってもらえばよかったのに!」
「そうだそうだ!」
「いや、叩くなよ!?」
フットマンやってた頃から、こんなノリだったんだろうな。
何とか解放されたサディエルと共に、オレたちは改めて一礼してから、クレインさんの屋敷を後にする。
そのまま、エルフェル・ブルグの外へ通じる城門に近づくと……
「よっ、いい旅立ち日和だな」
「そろそろだと思ってな。アークシェイドと共に待っていたよ」
「アーク!」
「バークライスさん!」
アークさんと、バークライスさんがそこに居た。
まず、バークライスさんがオレたちと握手を交わす。
「サディエル、アルム、リレル。お前たちはとにかく無事に戻って来い、待っているからな」
「はい」
「分かりました」
「頑張ります」
「ヒロト君。ここでお別れとなるが、この世界で沢山見聞きしたこと、感じたこと、それを糧に頑張りなさい」
「はい! ありがとうございます、バークライスさん」
挨拶が終わると、バークライスさんは控えていたアークさんに視線を送る。
それを受け取り、アークさんも順番に握手を交わす。
「ヒロト君。多分みんなが言ってるだろうから、おれからはこれだけ送る。全力でやってこい!」
「分かりました! アークさんも、ありがとうございます」
「アルム君、リレルさん。何度も申し訳ないが、サディの奴をよろしく頼む」
「勿論です」
「はい、お任せください」
オレたち3人との挨拶を終え、アークさんはサディエルに近づく。
2人は互いに腕をガツンと当てて、不敵な笑みを浮かべる。
「分かってるよな? ちゃんと帰って来い」
「耳にタコが出来ているよ。大丈夫だ、ちゃんと帰って来るから」
そのまま、ガシッと握手を交わした。
「さぁ、行くか! アルム、リレル、ヒロト!」
「おう!」
「行きましょう!」
「目指せ、アンファーグル!」
―――第5章 冒険者4か月目【不器用な3人組編】 完
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