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人生を斜交いに生きた男 実話  17

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又、トイレが有っても義眼を外して洗うのも人の目を避けたりと、兎に角難儀だった。
 正常な人は涙が出て潤うのだが手術をした目の方は涙がヤニになってしまうのだ。それと3日も義眼を入れないと肉が盛り上がって義眼が入らなくなるのでと注意を受けた。自然の力は凄い。

 毎日、毎日馬車馬の様に働いていたが、一応週一の休みがあるが、これも部屋にいると落ち着かない。誰かが欠勤すると呼び出しが掛かるので、行くあてが無くても部屋からでる様にしていた。金もあまり無いのに時間潰しには苦心したり、余計な金を浪費したりで、心身共に心から寛いだ休みは殆ど無かった。
 工場は正月1日だけ休み、2日から仕事に年始周りの贈答品に洋菓子、和菓子が売れるので。パン部門は大掃除や機械点検メンテナンスも従業員を酷使していたのだ。

 かれこれ2年経過した頃に、小麦粉を納品している運転手と日頃冗談を言う仲で
 「小田よ、よう頑張っているな、実はなぁ六甲の方で個人経営のケーキ屋が1人募集してるがどうや⁉️」
 話を持ってきたのだ。日頃からここには不満を持っていたので
 〈渡りに船やないか〉
 その話に乗る事にして次の休日に面接に行ったら主人に気に入られて来月からと決まった。保証人とかは言われなかったのは個人経営なので煩くなかったのか⁉️
 翌日、工場長に退職したいと伝えると昼過ぎに事務所に呼ばれて、初めて入るので少し緊張しながらドアを開けると12畳位の部屋に縦長に、手前が事務員3人奥の方に社長なのか50才位で恰幅の良いデップリとして黒眼鏡を掛けて、作家の 松本清張 に似ている。その手前に痩せギスの専務が
 「小田辞めるんやて!行くとこあるんか」 威嚇した様な口振りに、日頃の不満が爆発した、どうせ辞める気だったので。
 「安い給与でこき使いやがって、飯は不味いは、寮費は高いわ、残業代は誤魔化すはまるでボッタクリやなぁ。労働者を食い物にしやがって」
 ぶちまけたら、元々青い白い顔の専務が赤くなり
 「わ、わしに面と向かって歯向かってきたんわ小田しかいないで」
 「皆んな思っているが言えないんや。足元見やがって」   続く
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