現世で平凡だった俺が異世界転生したら平凡じゃない新たな人生が始まりました。

〜第二章〜 ギルド冒険者編

王女様の護衛をする事になりました⑲

　カインとロイドの激しい戦いが始まってもう二十分は経った。ロイドは完全に体が温まり、動きはどんどんと速くなっていく。正直言って、ロイドは俺よりも剣の腕は確実に上だ。これは今戦ってもよく分かった。今の俺はロイドの攻撃を防ぐのに精一杯、反撃を仕掛ける余裕が無い。
　勝機があるとするならば、ロイドの一瞬の隙を突くしか無い。だがそんなのがあるかどうかすら分からない。

「僕の隙でも探ってるのかい？」

　ロイドは俺の心を見透かしたように話す。その瞬間、カインには何か得体の知れない恐怖が襲い掛かる。

「無駄だよ。僕に隙なんて無い。絶対にね」

　今のカインに襲い掛かっている恐怖は、ロイドの圧倒的な威圧感と、相手の心理状態を見抜く力、そして世界最強の子供と呼ばれるに値する強さを目の前にしての恐怖。
　ロイドは確かに強い。俺が今まで戦ってきた中でも最強レベルだ。下手をしたら俺の父さんを超えるレベルに今彼はいる。

「僕は今まで沢山の人と戦ってきた。何十何百と数え切れない程にね。そして僕は今、この世界で最強の子供として立っている。だから、隙なんて与えないし、見せもしない」

　本当にさっきまで泣いていたとは思えないほどの涼しい顔をして、ロイドは堂々と語っていた。
　確かに、今のロイドには隙なんてないのかも知れない。
　だけど、無いなら作れば良いだけの話だ。もう、隙を探すのは辞めにする。今から俺は第二の刃を持って、このロイドを確実に倒す。はっきり言って使いたくは無かった。使ったら間違いなく面倒な事になる。

　でも俺は誰にも負けないとユリアに約束をしてしまった。可愛い妹の悲しむ姿は見たくない。だから俺は本気で戦う事を覚悟する。

「･･････人が話しているのに危ない事をするね」

　カインはロイドに剣をぶん投げて、最初で最後の大勝負を仕掛ける。ロイドは投げられた剣を軽々と弾き飛ばす。すると、ロイドの目の前からカインは姿を消していた。

「そこか」

　ロイドは瞬時に後ろを振り向き、カインを捉える。カインを捉えたロイドは、裏を取ったカインよりも速く、鋭く、剣を振り下ろす。

「君の体術は素晴らしいものだが、それでは僕に届かない」

　ロイドは最後の足掻きが体術だった事に意外感を覚えながら、そのまま一直線に剣を振り下ろす。

「体術だったらね」

　そして次の瞬間、眩い閃光と雷鳴が鳴り響くと、次の瞬間、ロイドは地面に倒れ込む。
　今の一瞬の光景に、俺以外の人間は誰一人として何が起こったか理解していなかった。

　そして、これが俺の第二の刃、魔法による攻撃。
　ロイドは確実に剣を投げた瞬間から体術が来るとしか想定していなかった。それを逆に利用して魔法による攻撃で完全に不意を突いた。
　それに普通剣士が魔法を使う事は無い。これは俺だからできるロイドの倒し方だった。

「おい、今あいつ魔法を使ったぞ！」

「マジかよ･･････。あんな魔法を使える剣士なんて聞いた事ねぇよ･･････」

　二人の戦いを見ていたローレンの学校の七年生と、フリスカの学校の七年生、先生達もみんな驚いた表情していた。
　そしてカインとロイドの戦いは、カインの勝利で幕を閉じた。