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第6章 王都
233ー設置
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「どうやって設置するんだ?」
と、覗き込みながら興味津々に聞いてくるのは第1王子だ。城の見学パスをくれたのは良いんだけど、何故がずっと付いて来る。
「殿下、何も付いて来られなくても」
「ロディ、気になるだろう? 興味があるだろう。キリシマは今日もいるのか?」
そう言ってずっと付いて来る。第1王子が動くと人も動くんだよ。お付きの侍従だろう、護衛の騎士だろう、それに侍女まで付いて来る。ゾロゾロと目立つんだ。
「そうか? ロディ」
「はい、殿下」
「そうか、なら仕方ない。私は部屋で待つとしよう」
待つのかよ。終わったら報告に来いって事だな。そして第1王子はゾロゾロと人を従えながら去って行った。あれ? 護衛の騎士が増えてないか? どこにいたんだ?
「ココ、とにかく進めよう」
「はい、兄さま」
俺はバッグに入っている霧島を見る。
「おう、いつでもいいぜ」
今日は起きてんじゃん。足を前に投げ出して、ペタンと座っている。
「なんだよ、いつも寝ているみたいに言うなよ」
だって前は腹出して寝てたじゃん。
「もう寝ねーよ!」
はいはい。じゃあ、やっちまおうぜ。5箇所あるからな。
「おうよ」
霧島はバッグの中からいつもの様に指を出す。今日は目もちょびっと出している。そして、クイッと動かした。すると、何処からともなく魔法陣がブワンッと現れた。そして、また霧島が指をクイッと下に動かした。
魔法陣がゆっくりと地面へと移動した。キラキラと光る大きな魔法陣だ。だが、普通だと見えないんだ。俺は鑑定眼で見ているから見えるんだ。クリスティー先生が不可視にしてくれている。
精神干渉の魔法陣とは違って、クリスティー先生が作った魔法陣は白っぽくてキラキラしている。
気持ちの問題なのだろうか? いや、そんな事はない。精神干渉の魔法陣は色で例えると濃いグレーだ。精神干渉と解呪なのだから違っていて当然なのだが、クリスティー先生が作ったものとは全く違う。
「相変わらず、とんでもないわね」
「ハッハッハ! ドラゴンの俺様にとってはどうって事ないぜ!」
「ちょっと、声が大きいわよ」
「あ、すまん」
で、魔石はどうすんだ?
「その魔法陣の中心に置いてくれ」
「中心ね、ここら辺かしら?」
「おう、それで完了だ」
ほう、魔法陣と魔石か。両方で魔力を受け止める感じか?
「両方で魔力を受け止めてシールドに変換するんだ」
なるほどね……て、全然仕組みは分かんねーけどな。強力だという事だけは分かるぞ。
「ココ、もういいのか?」
「はい、兄さま。次に行きましょう」
それを5箇所に設置した。そして、今は第1王子の執務室で完了報告だ。
「もう終わったのか?」
「はい、設置だけですので」
「ロディ、やはり見たかったな」
この王子は何にでも興味津々なんだな。霧島にも興味を示していたから。
「で、当日に大聖堂の者達が発動させるのか?」
「はい。その手筈になっております」
「大聖堂も形無しだからな。まさか神聖な場である筈の大聖堂まで精神干渉されているとは思わなかった」
全くだ。俺もびっくりしたよ。しかも、トップの教皇が1番深い精神干渉だったんだ。
「一体、いつ、どこでだ? 全く分からん」
「敵は巧妙です。しかも何年も前からです」
「ああ。フィルドラクスには辛い思いをさせてしまった」
「明日、ご本人に仰ると宜しいかと」
「そうだな。大きくなっただろうな」
そんなになのか? 1番上のお兄ちゃんとしては心配なのか? 第1王子が寂しげな目をする。
「もう何年も会っていない。兄弟だというのに……」
ああ、後悔しているんだ。お互いに精神干渉されていたんだ。仕方ない事だと思うし、不可抗力だろう。それでも、後悔して気持ちを掛ける。いい兄じゃん。
「フィルの髪も瞳も綺麗な色だろう。あれは私達兄弟の憧れだったんだ」
「殿下、王家の色とか言う事に拘っておられるのなら……」
「いや、ディオシス殿。拘っている訳ではない。分かっている。個性だとな」
「それならば、申し上げる事はありません」
「だが……」
「殿下?」
「妹のマールミーアだ。あれは異常なほど執着していた」
「今、勉強なさっている事でしょう」
「アハハハ。毎日大叔母上からは苦情の文が届くがな」
毎日とは……それは酷いな。
「今までどうして放っておいたのだとキツイお叱りを受けた。ココアリア嬢にも迷惑をかけたな」
「いえ、とんでもありません」
「明日はフィルも来るのだな。顔を見るのを楽しみにしていると伝えてくれ」
良い兄ちゃんだ。仲が悪い訳ではなかったんだな。今の問題が解決したらフィルドラクス殿下も一緒に平和に城で過ごせるようになると良いな。
「マールミーアが起こした事だが、ハーレイ侯爵とその令嬢にも罪を償ってもらう」
それはなぁ……俺は別に良いんだ。王女に言われて断れなかったのだろうし、侯爵も精神干渉されていたし。
「ココ、そんな訳にはいかないんだ」
「そうだ。ココアリア嬢はこの国の守護神と言われる辺境伯のご令嬢なのだからな」
結局、罰金で済むらしい。王女が無理強いした事と、精神干渉を鑑みての減刑だった。俺はそれで充分だと思う。
☆ ☆ ☆
読んで頂き有難うございます!
今日はハルちゃんはお休みです。
宜しくお願いします!
と、覗き込みながら興味津々に聞いてくるのは第1王子だ。城の見学パスをくれたのは良いんだけど、何故がずっと付いて来る。
「殿下、何も付いて来られなくても」
「ロディ、気になるだろう? 興味があるだろう。キリシマは今日もいるのか?」
そう言ってずっと付いて来る。第1王子が動くと人も動くんだよ。お付きの侍従だろう、護衛の騎士だろう、それに侍女まで付いて来る。ゾロゾロと目立つんだ。
「そうか? ロディ」
「はい、殿下」
「そうか、なら仕方ない。私は部屋で待つとしよう」
待つのかよ。終わったら報告に来いって事だな。そして第1王子はゾロゾロと人を従えながら去って行った。あれ? 護衛の騎士が増えてないか? どこにいたんだ?
「ココ、とにかく進めよう」
「はい、兄さま」
俺はバッグに入っている霧島を見る。
「おう、いつでもいいぜ」
今日は起きてんじゃん。足を前に投げ出して、ペタンと座っている。
「なんだよ、いつも寝ているみたいに言うなよ」
だって前は腹出して寝てたじゃん。
「もう寝ねーよ!」
はいはい。じゃあ、やっちまおうぜ。5箇所あるからな。
「おうよ」
霧島はバッグの中からいつもの様に指を出す。今日は目もちょびっと出している。そして、クイッと動かした。すると、何処からともなく魔法陣がブワンッと現れた。そして、また霧島が指をクイッと下に動かした。
魔法陣がゆっくりと地面へと移動した。キラキラと光る大きな魔法陣だ。だが、普通だと見えないんだ。俺は鑑定眼で見ているから見えるんだ。クリスティー先生が不可視にしてくれている。
精神干渉の魔法陣とは違って、クリスティー先生が作った魔法陣は白っぽくてキラキラしている。
気持ちの問題なのだろうか? いや、そんな事はない。精神干渉の魔法陣は色で例えると濃いグレーだ。精神干渉と解呪なのだから違っていて当然なのだが、クリスティー先生が作ったものとは全く違う。
「相変わらず、とんでもないわね」
「ハッハッハ! ドラゴンの俺様にとってはどうって事ないぜ!」
「ちょっと、声が大きいわよ」
「あ、すまん」
で、魔石はどうすんだ?
「その魔法陣の中心に置いてくれ」
「中心ね、ここら辺かしら?」
「おう、それで完了だ」
ほう、魔法陣と魔石か。両方で魔力を受け止める感じか?
「両方で魔力を受け止めてシールドに変換するんだ」
なるほどね……て、全然仕組みは分かんねーけどな。強力だという事だけは分かるぞ。
「ココ、もういいのか?」
「はい、兄さま。次に行きましょう」
それを5箇所に設置した。そして、今は第1王子の執務室で完了報告だ。
「もう終わったのか?」
「はい、設置だけですので」
「ロディ、やはり見たかったな」
この王子は何にでも興味津々なんだな。霧島にも興味を示していたから。
「で、当日に大聖堂の者達が発動させるのか?」
「はい。その手筈になっております」
「大聖堂も形無しだからな。まさか神聖な場である筈の大聖堂まで精神干渉されているとは思わなかった」
全くだ。俺もびっくりしたよ。しかも、トップの教皇が1番深い精神干渉だったんだ。
「一体、いつ、どこでだ? 全く分からん」
「敵は巧妙です。しかも何年も前からです」
「ああ。フィルドラクスには辛い思いをさせてしまった」
「明日、ご本人に仰ると宜しいかと」
「そうだな。大きくなっただろうな」
そんなになのか? 1番上のお兄ちゃんとしては心配なのか? 第1王子が寂しげな目をする。
「もう何年も会っていない。兄弟だというのに……」
ああ、後悔しているんだ。お互いに精神干渉されていたんだ。仕方ない事だと思うし、不可抗力だろう。それでも、後悔して気持ちを掛ける。いい兄じゃん。
「フィルの髪も瞳も綺麗な色だろう。あれは私達兄弟の憧れだったんだ」
「殿下、王家の色とか言う事に拘っておられるのなら……」
「いや、ディオシス殿。拘っている訳ではない。分かっている。個性だとな」
「それならば、申し上げる事はありません」
「だが……」
「殿下?」
「妹のマールミーアだ。あれは異常なほど執着していた」
「今、勉強なさっている事でしょう」
「アハハハ。毎日大叔母上からは苦情の文が届くがな」
毎日とは……それは酷いな。
「今までどうして放っておいたのだとキツイお叱りを受けた。ココアリア嬢にも迷惑をかけたな」
「いえ、とんでもありません」
「明日はフィルも来るのだな。顔を見るのを楽しみにしていると伝えてくれ」
良い兄ちゃんだ。仲が悪い訳ではなかったんだな。今の問題が解決したらフィルドラクス殿下も一緒に平和に城で過ごせるようになると良いな。
「マールミーアが起こした事だが、ハーレイ侯爵とその令嬢にも罪を償ってもらう」
それはなぁ……俺は別に良いんだ。王女に言われて断れなかったのだろうし、侯爵も精神干渉されていたし。
「ココ、そんな訳にはいかないんだ」
「そうだ。ココアリア嬢はこの国の守護神と言われる辺境伯のご令嬢なのだからな」
結局、罰金で済むらしい。王女が無理強いした事と、精神干渉を鑑みての減刑だった。俺はそれで充分だと思う。
☆ ☆ ☆
読んで頂き有難うございます!
今日はハルちゃんはお休みです。
宜しくお願いします!
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