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第6章 王都
223ー王女様だから
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なんだよ、面白くねーな。咲まで首を横に振っている。
俺はずっと、思ってたんだ。敵は自分の姿を見せずに、精神干渉やら毒なんて卑怯な手ばっか使ってくる。もっと堂々とやってみろってんだ。俺はいつでも受けて立つぜ。
鬱憤が溜まってたんだよ。やっていいなら、思いっきり暴れてやるんだけどな。
まだ我慢らしい。じーちゃん達がもう動いているなら、きっと場所も直ぐに突き止めるだろう。その時まで力を温存だ。
俺と咲は立派な貴族の屋敷に連れて来られた。これ、誰の屋敷なんだ? グスタフじーちゃんなら知っているだろうな。そして、入れられた部屋も普通の……いや、かなり豪華な貴族の部屋だった。
猿轡を噛まされ、手足を縛られて放置プレイだ。
しかし、また咲と一緒かよ。前にもこんな事あったよな。
すると、咲がブルブルッと顔を振っていとも簡単に猿轡を外した。
「お嬢さまぁ、大丈夫ですかぁ?」
「んんー」
「あ、それ外しますねぇ」
と、言っていつの間にか手の縄も解いている。こいつ、いつの間に? どうやったんだ? やっぱ色んなところに色んなものを隠し持っているのか?
「ふはッ、また咲と一緒だな」
「本当ですぅ」
「ここ、誰の屋敷なんだ?」
「さあ、誰でしょうぅ?」
咲が簡単に猿轡を外し、手足の縄も解いた。咲の手には手のひらに収まる程度の小さなナイフが握られている。やっぱ持ってたんだ。え? そんなところに隠していたのか? と、そんなところとは俺の口からは言えない。
手足が自由になった俺達は、部屋の中を見て回っていた。
窓から外を見ると、貴族街の中らしい。城の屋根がすぐそこに見えている。
どこのどいつだよ。ムカつくなぁ。
すると、いきなりドアが開いた。入って来たのは……
「あら? 縄を解いてしまったの?」
第1王女だった。豪華なドレスを着ている第1王女が入って来たんだ。いや、夜会じゃないんだからさ。そのドレスはどうなの? その後ろに、例の迷惑な侯爵令嬢がいた。こっちは普段着るようなシンプルなロングのドレスワンピースだ。
この屋敷は、前宰相のボリス・ハーレイ侯爵のお邸だったんだ。
「構わないからお座りなさい」
そう、偉そうに言ってくる第1王女のマールミーア・ヴェルムナンド。相変わらずド派手で、胸を大きく開けたドレスに孔雀の様な大きな羽根とレースの飾りがついた小さな帽子を頭に乗っけている。オレンジの瞳を囲むように太いアイラインとグリーンのアイシャドー。口紅は真っ赤だ。ピエロかよ。
その第1王女が真ん中のソファーにゆったりと座った。
その隣のソファーに、おどおどとしたオリヴィア・ハーレイ侯爵令嬢が座る。
俺は仕方なく、その向かい側のソファーに座った。咲は俺の後ろに立っている。
「あまりロディシス様とは似ていないのね」
うッせーよ。てか、オリヴィア嬢だよ。解呪したよな。どうして一緒にこんな事してんだよ。
念のためにもう1度見ておこう。と、鑑定眼で見た。俺と目を合わせようともしない。
やっぱ正気じゃん。王女殿下に言われたら何でもしますってか? 悪い事は悪いと注意しなきゃ駄目だろう。本当の臣下ってのはそうなんじゃないのか?
「私はね、いつもロディシス様にお話していたのよ。なのに分かってくださらないから仕方がないのですわ」
何を言ってんだ? この王女、おかしいぞ。まあ、精神干渉を受けているんだから普通ではないよな。
「なのにロディシス様があなたと仲良さそうに話しているのを見せつけられて」
兄妹なんだから普通だろうよ。黒い何かの羽根がふんだんに使われた洋扇を口元に持っていきナヨナヨと悲しそうな表情をする。
「これはね、私への試練なのだと思ったのですわ」
何が試練だよ。自分にも婚約者がいるんだろうが。パチンと小さな音をたてて洋扇を閉じ、それで俺を指す。
「ですので、今日はあなたと仲良くなろうと思ったのですわ。有難いと思いなさい。これもロディシス様の為なのですわ」
いや、願い下げだ。仲良くなんてなりたくないぜ。何がロディ兄の為だよ。ちげーだろう。自分の為なんだろう?
「さあ、王都で今最先端のスイーツを用意させたのよ。辺境の田舎から出てきたのだから知らないでしょう? シュークリームと言うのよ」
ぶふッ。うちの料理人がこっちのシェフに教えたもんなんだけど。
「ふふふ」
ほらみろ。咲まで笑っているよ。
「食べなさい。とっても美味しいわよ」
「結構です」
「あら、食べた事ないでしょう? 無理しなくてもいいのよ」
「いえ、いつでも食べられますから」
「まあ、ホッホッホ。そんな嘘をつかなくてもよろしくってよ。辺境の田舎者なのは分かっているのですから」
「いえ、うちの領地で作った物ですから」
「え……」
王女にオリヴィア嬢が耳打ちした。きっと、ばーちゃんの店だからとでも話しているんだろう。
「い、いいわ。じゃあ、私が直々に文字を教えて差し上げましょう。あなたはまだ文字も知らないでしょう? 王都ではね、こんなに美しい物があるのよ」
と、取り出したのは……そうだよ。あのガラスペンだ。ベタ過ぎて笑えるぜ。
「それ、あたしが第2王子殿下に差し上げた物です」
「え……」
第2王子からもらったのか? それとも奪ったのか?
「も、もういいわ。とにかく! 私と仲良くなりなさいッ!」
ビシッと洋扇で俺を指す。その洋扇やめろ。そんなので人を指すなんて失礼だとは思わないのか? 王女だからいいのか? 俺はムカつくぜ。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いします!
別サイト(なろう)でリリの2巻の書影を公開してます。宜しければご覧ください!
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俺と咲は立派な貴族の屋敷に連れて来られた。これ、誰の屋敷なんだ? グスタフじーちゃんなら知っているだろうな。そして、入れられた部屋も普通の……いや、かなり豪華な貴族の部屋だった。
猿轡を噛まされ、手足を縛られて放置プレイだ。
しかし、また咲と一緒かよ。前にもこんな事あったよな。
すると、咲がブルブルッと顔を振っていとも簡単に猿轡を外した。
「お嬢さまぁ、大丈夫ですかぁ?」
「んんー」
「あ、それ外しますねぇ」
と、言っていつの間にか手の縄も解いている。こいつ、いつの間に? どうやったんだ? やっぱ色んなところに色んなものを隠し持っているのか?
「ふはッ、また咲と一緒だな」
「本当ですぅ」
「ここ、誰の屋敷なんだ?」
「さあ、誰でしょうぅ?」
咲が簡単に猿轡を外し、手足の縄も解いた。咲の手には手のひらに収まる程度の小さなナイフが握られている。やっぱ持ってたんだ。え? そんなところに隠していたのか? と、そんなところとは俺の口からは言えない。
手足が自由になった俺達は、部屋の中を見て回っていた。
窓から外を見ると、貴族街の中らしい。城の屋根がすぐそこに見えている。
どこのどいつだよ。ムカつくなぁ。
すると、いきなりドアが開いた。入って来たのは……
「あら? 縄を解いてしまったの?」
第1王女だった。豪華なドレスを着ている第1王女が入って来たんだ。いや、夜会じゃないんだからさ。そのドレスはどうなの? その後ろに、例の迷惑な侯爵令嬢がいた。こっちは普段着るようなシンプルなロングのドレスワンピースだ。
この屋敷は、前宰相のボリス・ハーレイ侯爵のお邸だったんだ。
「構わないからお座りなさい」
そう、偉そうに言ってくる第1王女のマールミーア・ヴェルムナンド。相変わらずド派手で、胸を大きく開けたドレスに孔雀の様な大きな羽根とレースの飾りがついた小さな帽子を頭に乗っけている。オレンジの瞳を囲むように太いアイラインとグリーンのアイシャドー。口紅は真っ赤だ。ピエロかよ。
その第1王女が真ん中のソファーにゆったりと座った。
その隣のソファーに、おどおどとしたオリヴィア・ハーレイ侯爵令嬢が座る。
俺は仕方なく、その向かい側のソファーに座った。咲は俺の後ろに立っている。
「あまりロディシス様とは似ていないのね」
うッせーよ。てか、オリヴィア嬢だよ。解呪したよな。どうして一緒にこんな事してんだよ。
念のためにもう1度見ておこう。と、鑑定眼で見た。俺と目を合わせようともしない。
やっぱ正気じゃん。王女殿下に言われたら何でもしますってか? 悪い事は悪いと注意しなきゃ駄目だろう。本当の臣下ってのはそうなんじゃないのか?
「私はね、いつもロディシス様にお話していたのよ。なのに分かってくださらないから仕方がないのですわ」
何を言ってんだ? この王女、おかしいぞ。まあ、精神干渉を受けているんだから普通ではないよな。
「なのにロディシス様があなたと仲良さそうに話しているのを見せつけられて」
兄妹なんだから普通だろうよ。黒い何かの羽根がふんだんに使われた洋扇を口元に持っていきナヨナヨと悲しそうな表情をする。
「これはね、私への試練なのだと思ったのですわ」
何が試練だよ。自分にも婚約者がいるんだろうが。パチンと小さな音をたてて洋扇を閉じ、それで俺を指す。
「ですので、今日はあなたと仲良くなろうと思ったのですわ。有難いと思いなさい。これもロディシス様の為なのですわ」
いや、願い下げだ。仲良くなんてなりたくないぜ。何がロディ兄の為だよ。ちげーだろう。自分の為なんだろう?
「さあ、王都で今最先端のスイーツを用意させたのよ。辺境の田舎から出てきたのだから知らないでしょう? シュークリームと言うのよ」
ぶふッ。うちの料理人がこっちのシェフに教えたもんなんだけど。
「ふふふ」
ほらみろ。咲まで笑っているよ。
「食べなさい。とっても美味しいわよ」
「結構です」
「あら、食べた事ないでしょう? 無理しなくてもいいのよ」
「いえ、いつでも食べられますから」
「まあ、ホッホッホ。そんな嘘をつかなくてもよろしくってよ。辺境の田舎者なのは分かっているのですから」
「いえ、うちの領地で作った物ですから」
「え……」
王女にオリヴィア嬢が耳打ちした。きっと、ばーちゃんの店だからとでも話しているんだろう。
「い、いいわ。じゃあ、私が直々に文字を教えて差し上げましょう。あなたはまだ文字も知らないでしょう? 王都ではね、こんなに美しい物があるのよ」
と、取り出したのは……そうだよ。あのガラスペンだ。ベタ過ぎて笑えるぜ。
「それ、あたしが第2王子殿下に差し上げた物です」
「え……」
第2王子からもらったのか? それとも奪ったのか?
「も、もういいわ。とにかく! 私と仲良くなりなさいッ!」
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