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第6章 王都
215ー盲点
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何度見ても反則だ。指1つで部屋中を解呪なんて真似できない。
「キリシマ、凄いじゃない」
「へへん、俺様の力はこんなもんじゃないぜ」
「これでもう部屋全体が解呪されているの?」
「おうよ、当然じゃないか」
「キリシマは凄いね」
「ロディ兄さま、驚きですよね」
「ああ。一瞬だったよ」
「あたぼうよ」
なら、二手に分かれようぜ。その方が早いじゃん。
「ココ、お前無理すんなよ。自分の魔力量の限界を分かってんのか?」
「無理はしないわよ。限界なんて分からないもの」
「倒れんじゃねーぞ」
「大丈夫よ」
俺達が二手に分かれようとした時だ。
「ロディシス様!」
メイドのお姉さんが走ってきた。スカートを翻して……翻しすぎだ。膝上がチラチラ見えているぞ。色っぺーな。
「どうした?」
「直ぐに戻って下さい! 領地の奥様から連絡があったらしいです!」
「母上から? なんだ?」
「早急にお知らせしたい事があるそうです」
なんだ? 何かあったのか?
「キリシマ、クリスティー先生に聞けないの?」
「おう、聞いてみるぜ」
霧島が念話でクリスティー先生に何があったのかを聞く。
「ココ、取り敢えず戻るぞ。計画の練り直しだ」
「どうして?」
「教会だ」
「教会?」
「キリシマ、もしかして司教様から何か言われたのか?」
「そうらしい。詳しい事は戻ってからだ」
なんだよ、なんだよー。ここにて何で教会なんだ?
俺達は慌ててグスタフじーちゃんの屋敷に戻った。
「ロディ、ココ、よく戻った」
「お祖父様、何があったのですか?」
「キリシマ、頼む」
「おうよ」
霧島がクリスティー先生と連絡を取る。
クリスティー先生が、急遽念話で伝えてきた事だ。
領地の教会にいる司教様が相談に訪れたのだそうだ。
父達が王都にいるなら教会本部を見てきて欲しいと言ってきたんだ。どうやら、本部と連絡が取れないらしい。そんな事は今までなかったことなのだそうだ。
教会は定期的に報告書を上げているそうなんだ。それに対しての返答が届かなくなったそうだ。
「何度文を出しても一向に返答がないんだってよ。それで、何かあったのかと心配しているんだと」
「まさか、教会も?」
「ロディ兄さま、その可能性はありますね」
「よし、私が行こう」
「いえ、私が行きましょう。私なら王都に来たので挨拶に来たと言っても不自然ではないでしょう」
グスタフじーちゃんが行くと言っていたが、ディオシスじーちゃんが手を挙げた。
「しかし……」
「お祖父様、そうしましょう。いきなり侯爵のお祖父様が行くと不自然です。ディオシスお祖父様に任せましょう」
「そうか? ディオシス殿、頼めますか?」
「ええ。勿論です」
「ディオシスお祖父さま、私も行きます」
「ココ、もしかしたら危険かも知れないんだぞ」
「でも、私が行かなければもしもの場合に解呪できません」
「それはそうなんだが……」
「じーちゃん、俺も行くぜ」
「キリシマ、ココを頼めるか?」
「ああ、もちろんだ!」
それから、直ぐに俺達は教会の本部へと向かった。
如何にも、王都にやってきたから挨拶にという設定でだ。ディオシスじーちゃん、ロディ兄、従者のランス、それに咲と隆だ。
「まさか教会が関与しているとは思えんのだが」
「いや、じーちゃん。盲点だったからな。もしかしたら、もしかするぜ」
ガラガラと石畳の道を馬車は教会本部へと向かう。まさかここで教会が出て来るとは思わなかった。だが、先入観って事だって考えられるからな。精神干渉に関わっているかどうかは行ってみないと分からない。
「でも、ココ。このタイミングでだ。用心しろよ」
「分かってるわ」
霧島が、バッグの中から顔だけ出してそう言う。
なんだか嫌な感じだよな。
「だろ?」
「ええ」
王都にある教会本部は城の直ぐ横にある大聖堂にある。うちの領地にいる司教様もここから派遣されている。本当は司教様は一教区に1つある大きな教会にいるはずなんだ。
うちの領地にある教会はそれ程大きくはない。それでも、司教様が派遣されている理由は、辺境伯領だからだ。
国の要所を守る辺境伯領だから、司祭様だけでなく司教様も派遣されているんだ。
それともう1つ理由がある。こっちの祖父母が話していた様に、目新しい物や便利な物、それに食料もそうだ。辺境伯領から発信される事が多いからなのだそうだ。文化や経済の面から見ても要所だと大聖堂が判断しているのだろう。
なんて、俺は全く知らなかったけどな。
「ココ、もう着くよ。油断をしてはいけないよ」
「はい、お祖父さま」
大聖堂が目の前に見えてきた。隣にある城とは違って白っぽい鉱石か何かで建てられた大聖堂。デカイな。俺が知っている領地にある教会の何倍あるんだ? て話だよ。ここに司教様よりもお偉いさんがいるんだ。
馬車が大聖堂の前にある馬車止めに止まった。
「でっけーな」
「お嬢さまぁ、言葉使いがぁ」
「あ、ごめん」
「今は若じゃないッスよ」
「分かってるわよ」
つい、出ただけじゃん。それにしてもデカイ。見上げるほどの建物だ。正面のひと際高い屋根に大聖堂のシンボルがついている。アーチ形の窓と後ろ側に控える塔、石積みの壁は良い色合いに風化しアイビーの様な植物が下半分を覆っている。三角の屋根が青空に伸びていた。並びには鐘楼もある。ここの鐘が日に3度鳴るんだ。朝、正午、夜とな。ここの鐘だったんだな。知らなかったぜ。
「お嬢さまぁ」
「なんだよ、サキ」
「領地でも教会の鐘が鳴ってますよぅ」
「分かってるって」
正面の入口は開け放たれている。普通に司祭様達が見えるぞ。王都民の姿も見える。
「平常通りって感じですね」
と、ランスが言った様に、普通に違和感はない。
そのまま、俺達が入ろうとしたんだ。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
「キリシマ、凄いじゃない」
「へへん、俺様の力はこんなもんじゃないぜ」
「これでもう部屋全体が解呪されているの?」
「おうよ、当然じゃないか」
「キリシマは凄いね」
「ロディ兄さま、驚きですよね」
「ああ。一瞬だったよ」
「あたぼうよ」
なら、二手に分かれようぜ。その方が早いじゃん。
「ココ、お前無理すんなよ。自分の魔力量の限界を分かってんのか?」
「無理はしないわよ。限界なんて分からないもの」
「倒れんじゃねーぞ」
「大丈夫よ」
俺達が二手に分かれようとした時だ。
「ロディシス様!」
メイドのお姉さんが走ってきた。スカートを翻して……翻しすぎだ。膝上がチラチラ見えているぞ。色っぺーな。
「どうした?」
「直ぐに戻って下さい! 領地の奥様から連絡があったらしいです!」
「母上から? なんだ?」
「早急にお知らせしたい事があるそうです」
なんだ? 何かあったのか?
「キリシマ、クリスティー先生に聞けないの?」
「おう、聞いてみるぜ」
霧島が念話でクリスティー先生に何があったのかを聞く。
「ココ、取り敢えず戻るぞ。計画の練り直しだ」
「どうして?」
「教会だ」
「教会?」
「キリシマ、もしかして司教様から何か言われたのか?」
「そうらしい。詳しい事は戻ってからだ」
なんだよ、なんだよー。ここにて何で教会なんだ?
俺達は慌ててグスタフじーちゃんの屋敷に戻った。
「ロディ、ココ、よく戻った」
「お祖父様、何があったのですか?」
「キリシマ、頼む」
「おうよ」
霧島がクリスティー先生と連絡を取る。
クリスティー先生が、急遽念話で伝えてきた事だ。
領地の教会にいる司教様が相談に訪れたのだそうだ。
父達が王都にいるなら教会本部を見てきて欲しいと言ってきたんだ。どうやら、本部と連絡が取れないらしい。そんな事は今までなかったことなのだそうだ。
教会は定期的に報告書を上げているそうなんだ。それに対しての返答が届かなくなったそうだ。
「何度文を出しても一向に返答がないんだってよ。それで、何かあったのかと心配しているんだと」
「まさか、教会も?」
「ロディ兄さま、その可能性はありますね」
「よし、私が行こう」
「いえ、私が行きましょう。私なら王都に来たので挨拶に来たと言っても不自然ではないでしょう」
グスタフじーちゃんが行くと言っていたが、ディオシスじーちゃんが手を挙げた。
「しかし……」
「お祖父様、そうしましょう。いきなり侯爵のお祖父様が行くと不自然です。ディオシスお祖父様に任せましょう」
「そうか? ディオシス殿、頼めますか?」
「ええ。勿論です」
「ディオシスお祖父さま、私も行きます」
「ココ、もしかしたら危険かも知れないんだぞ」
「でも、私が行かなければもしもの場合に解呪できません」
「それはそうなんだが……」
「じーちゃん、俺も行くぜ」
「キリシマ、ココを頼めるか?」
「ああ、もちろんだ!」
それから、直ぐに俺達は教会の本部へと向かった。
如何にも、王都にやってきたから挨拶にという設定でだ。ディオシスじーちゃん、ロディ兄、従者のランス、それに咲と隆だ。
「まさか教会が関与しているとは思えんのだが」
「いや、じーちゃん。盲点だったからな。もしかしたら、もしかするぜ」
ガラガラと石畳の道を馬車は教会本部へと向かう。まさかここで教会が出て来るとは思わなかった。だが、先入観って事だって考えられるからな。精神干渉に関わっているかどうかは行ってみないと分からない。
「でも、ココ。このタイミングでだ。用心しろよ」
「分かってるわ」
霧島が、バッグの中から顔だけ出してそう言う。
なんだか嫌な感じだよな。
「だろ?」
「ええ」
王都にある教会本部は城の直ぐ横にある大聖堂にある。うちの領地にいる司教様もここから派遣されている。本当は司教様は一教区に1つある大きな教会にいるはずなんだ。
うちの領地にある教会はそれ程大きくはない。それでも、司教様が派遣されている理由は、辺境伯領だからだ。
国の要所を守る辺境伯領だから、司祭様だけでなく司教様も派遣されているんだ。
それともう1つ理由がある。こっちの祖父母が話していた様に、目新しい物や便利な物、それに食料もそうだ。辺境伯領から発信される事が多いからなのだそうだ。文化や経済の面から見ても要所だと大聖堂が判断しているのだろう。
なんて、俺は全く知らなかったけどな。
「ココ、もう着くよ。油断をしてはいけないよ」
「はい、お祖父さま」
大聖堂が目の前に見えてきた。隣にある城とは違って白っぽい鉱石か何かで建てられた大聖堂。デカイな。俺が知っている領地にある教会の何倍あるんだ? て話だよ。ここに司教様よりもお偉いさんがいるんだ。
馬車が大聖堂の前にある馬車止めに止まった。
「でっけーな」
「お嬢さまぁ、言葉使いがぁ」
「あ、ごめん」
「今は若じゃないッスよ」
「分かってるわよ」
つい、出ただけじゃん。それにしてもデカイ。見上げるほどの建物だ。正面のひと際高い屋根に大聖堂のシンボルがついている。アーチ形の窓と後ろ側に控える塔、石積みの壁は良い色合いに風化しアイビーの様な植物が下半分を覆っている。三角の屋根が青空に伸びていた。並びには鐘楼もある。ここの鐘が日に3度鳴るんだ。朝、正午、夜とな。ここの鐘だったんだな。知らなかったぜ。
「お嬢さまぁ」
「なんだよ、サキ」
「領地でも教会の鐘が鳴ってますよぅ」
「分かってるって」
正面の入口は開け放たれている。普通に司祭様達が見えるぞ。王都民の姿も見える。
「平常通りって感じですね」
と、ランスが言った様に、普通に違和感はない。
そのまま、俺達が入ろうとしたんだ。
☆ ☆ ☆
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今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
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