203 / 249
第6章 王都
203ー侯爵令嬢も?
しおりを挟む
「とっても綺麗な髪色なのね」
ああ、隆の派手な金髪が目についたらしい。派手だからな。だって第1王女は派手好きじゃん?
「ありがとうございます」
「私もそんな色が良かったわ」
王女はキャメルブロンドだ。俺はそう大して変わりはないだろうと思う。
「王女殿下の髪もお綺麗です」
「そんな事はないわ。中途半端よ。くすんでいるし」
「いえ、お可愛らしいと思います」
「そう?」
「はい」
「そうかしら、ふふふ」
ふふふ……と笑いながら通り過ぎて行った。良かった。内心ビクビクしたぜ。
「びっくりッスね」
「リュウの派手な髪色の所為ね」
「そうッスか?」
「そうよ、コンプレックスなのかもね」
「髪色がッスか?」
「そうよ。ほら、王家の色とか言ってたじゃない」
「ああ、そう言えば言ってたッスね」
「くだらないわ」
「そうッスね」
「それよりも、こっそり1発解呪しておけばよかったわ」
「お嬢、イケイケッスね」
俺達は庭にでた。この時期に咲くバラが色とりどりに咲いている。真紅のバラから淡いピンク、オレンジ掛かったピンク、白、手入れされ見事に咲いていた。その中をチラチラと見え隠れしている黒いもの。あれは……
「ノワ!?」
「アン!『ココ!』」
「本当にノワッスね」
ノワが小さな身体で飛ぶように走ってきた。ビュンッて音がしそうだ。
「ノワちゃ~ん! こんなところにいたのね」
俺はしゃがみ込んで、ノワを撫でる。撫でまくる。
「アン!『いっぱい解呪したぞ』」
「そう、偉いわ~!」
「アンアン!『おれ、がんばる!』」
ああ、ノワは癒しだよ。文句なしに可愛いね。
「あ、ココさま。ノワちゃんここにいたのね」
メイドさんがノワを探していたらしい。慌ててやってきた。
「もうノワちゃんったら覚えちゃったから勝手にどんどん行っちゃうんですよ」
「アン」
「ノワ、メイドのお姉さんと一緒にいないとダメじゃない」
「アンアン『だっておれもう覚えたぞ』」
「でもね、メイドさんと一緒にいなきゃダメよ」
「アウゥ」
「ね、ノワお願い」
「アン『わかったぞ』」
ノワちゃん張り切っているね。さて、ノワのお陰でどれだけ解呪できたのか見てみようかなっと。
俺と隆は、ノワとメイドさんの後をついて城の奥から外側へ向かって歩いていた。
「あれ? お嬢。あのご令嬢何してるんスか?」
「え? どこ?」
ここはまだ誰でも入れる場所じゃないんだ。高位貴族でも家族の誰かがこの区域で働いていて、その人を訪ねてくるような人位しか入れない。
ちゃんと申請をして手続きをしないと入れない区域だ。その中庭にお供もつけないで1人ポツンと立っている令嬢がいたんだ。
近づいていくと、いかにも高そうなドレスに手入れの行き届いたサラ艶のピンクブロンドの髪にリボンをつけていた。毛先を大きくカールさせている。その令嬢に隆が声を掛ける。
俺は念のため、隆の後ろにそっと隠れていた。
「失礼ですが、どなたかとお約束でしょうか?」
普段は『ッス』しか言わない隆が、ちゃんと丁寧な言葉を使っている。なんだよ、話そうと思えばちゃんと話せるんじゃないか。普段ももう少し言葉を使って欲しいもんだ。
「え……?」
「いえ、この辺りは許可がないと入れないところですので」
「ええ、知っているわ。あなたは一体何なの?」
「私は第2王子ニコルクス殿下の従者にございます」
「あら、そうなの!? 殿下は今どちらにおられるのかしら? 私、殿下にお会いしたいの」
「いえ、ご令嬢はどうしてこちらにおられるのですか? 許可はございますか?」
「失礼ね! 私は侯爵令嬢なのよ!」
「ですので、許可は……」
「許可なんかないわよ! 侯爵令嬢には必要ないわッ! 殿下はどこにおられるか聞いているのよ! さっさと案内くらいしなさいッ!」
いやいや、この令嬢何言ってんだ? 身分に関係なく、この区域は許可が必要だろう。
「アウ」
「ノワ、どうしたの?」
ノワが足元で小さな声で俺を呼んだ。
「アウ『あの人解呪しなきゃだぞ』」
そうなのか? 俺は鑑定眼で令嬢を見る。
「ああ、ノワ。お願い」
「アン」
そう一鳴きすると、ノワはトコトコと令嬢の足元に行きスリスリと擦り寄った。
「アン」
「え? 何? 犬?」
「アン、クゥ~ン」
「まあ、なんて可愛いのかしら! ワンちゃん、いらっしゃい」
令嬢はノワに手を伸ばす。すると……
「アン」
令嬢がノワに手を伸ばし少し近付いただけだ。それだけなのに、令嬢の背中や首筋辺りから黒いモヤモヤが浮き出てきた。
「あら? なにかしら? ちょっとクラクラするわね」
令嬢の足元がふらつきノワの前にしゃがみ込んだ。モヤモヤはまだ出ている。令嬢の頭の上で大きな黒い靄になったそれは、まだ留まろうとしているように見えた。
「リュウ、精神干渉が深いわ」
「お嬢、ダメッスよ」
「放っておけないわよ」
俺が解呪に出ようとした。すると、ノワがいきなり令嬢に飛び着いた。
「アン!」
「まあ、どうしたの!?」
令嬢が尻尾をフリフリしているノワをしっかりと抱っこする。すると、留まろうとしていた黒いモヤモヤがヒュゥ~ッと抜け出て何処かに飛び去っていった。
「まあ、可愛いわね」
令嬢はなんともない様だ。
「ふらついたりしませんか?」
念のため、隆が令嬢に聞いた。
「え? なんともないわよ。どうしたの? え? どうしたのかしら? 私どうしてお城になんかいるの?」
「迷いこまれたようです。お送りしましょう」
「いえ、大丈夫よ。1人で帰れるわ」
「お付きの方はおられないのですか?」
「本当ね、どうしたのかしら?」
すると、遠くで「お嬢さまぁ~!」と呼ぶ声がする。
「ああ、探しているわね。大丈夫よ、ありがとう。ワンちゃんもありがとう」
何もなかったかの様に令嬢は去って行った。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願い致します!
ああ、隆の派手な金髪が目についたらしい。派手だからな。だって第1王女は派手好きじゃん?
「ありがとうございます」
「私もそんな色が良かったわ」
王女はキャメルブロンドだ。俺はそう大して変わりはないだろうと思う。
「王女殿下の髪もお綺麗です」
「そんな事はないわ。中途半端よ。くすんでいるし」
「いえ、お可愛らしいと思います」
「そう?」
「はい」
「そうかしら、ふふふ」
ふふふ……と笑いながら通り過ぎて行った。良かった。内心ビクビクしたぜ。
「びっくりッスね」
「リュウの派手な髪色の所為ね」
「そうッスか?」
「そうよ、コンプレックスなのかもね」
「髪色がッスか?」
「そうよ。ほら、王家の色とか言ってたじゃない」
「ああ、そう言えば言ってたッスね」
「くだらないわ」
「そうッスね」
「それよりも、こっそり1発解呪しておけばよかったわ」
「お嬢、イケイケッスね」
俺達は庭にでた。この時期に咲くバラが色とりどりに咲いている。真紅のバラから淡いピンク、オレンジ掛かったピンク、白、手入れされ見事に咲いていた。その中をチラチラと見え隠れしている黒いもの。あれは……
「ノワ!?」
「アン!『ココ!』」
「本当にノワッスね」
ノワが小さな身体で飛ぶように走ってきた。ビュンッて音がしそうだ。
「ノワちゃ~ん! こんなところにいたのね」
俺はしゃがみ込んで、ノワを撫でる。撫でまくる。
「アン!『いっぱい解呪したぞ』」
「そう、偉いわ~!」
「アンアン!『おれ、がんばる!』」
ああ、ノワは癒しだよ。文句なしに可愛いね。
「あ、ココさま。ノワちゃんここにいたのね」
メイドさんがノワを探していたらしい。慌ててやってきた。
「もうノワちゃんったら覚えちゃったから勝手にどんどん行っちゃうんですよ」
「アン」
「ノワ、メイドのお姉さんと一緒にいないとダメじゃない」
「アンアン『だっておれもう覚えたぞ』」
「でもね、メイドさんと一緒にいなきゃダメよ」
「アウゥ」
「ね、ノワお願い」
「アン『わかったぞ』」
ノワちゃん張り切っているね。さて、ノワのお陰でどれだけ解呪できたのか見てみようかなっと。
俺と隆は、ノワとメイドさんの後をついて城の奥から外側へ向かって歩いていた。
「あれ? お嬢。あのご令嬢何してるんスか?」
「え? どこ?」
ここはまだ誰でも入れる場所じゃないんだ。高位貴族でも家族の誰かがこの区域で働いていて、その人を訪ねてくるような人位しか入れない。
ちゃんと申請をして手続きをしないと入れない区域だ。その中庭にお供もつけないで1人ポツンと立っている令嬢がいたんだ。
近づいていくと、いかにも高そうなドレスに手入れの行き届いたサラ艶のピンクブロンドの髪にリボンをつけていた。毛先を大きくカールさせている。その令嬢に隆が声を掛ける。
俺は念のため、隆の後ろにそっと隠れていた。
「失礼ですが、どなたかとお約束でしょうか?」
普段は『ッス』しか言わない隆が、ちゃんと丁寧な言葉を使っている。なんだよ、話そうと思えばちゃんと話せるんじゃないか。普段ももう少し言葉を使って欲しいもんだ。
「え……?」
「いえ、この辺りは許可がないと入れないところですので」
「ええ、知っているわ。あなたは一体何なの?」
「私は第2王子ニコルクス殿下の従者にございます」
「あら、そうなの!? 殿下は今どちらにおられるのかしら? 私、殿下にお会いしたいの」
「いえ、ご令嬢はどうしてこちらにおられるのですか? 許可はございますか?」
「失礼ね! 私は侯爵令嬢なのよ!」
「ですので、許可は……」
「許可なんかないわよ! 侯爵令嬢には必要ないわッ! 殿下はどこにおられるか聞いているのよ! さっさと案内くらいしなさいッ!」
いやいや、この令嬢何言ってんだ? 身分に関係なく、この区域は許可が必要だろう。
「アウ」
「ノワ、どうしたの?」
ノワが足元で小さな声で俺を呼んだ。
「アウ『あの人解呪しなきゃだぞ』」
そうなのか? 俺は鑑定眼で令嬢を見る。
「ああ、ノワ。お願い」
「アン」
そう一鳴きすると、ノワはトコトコと令嬢の足元に行きスリスリと擦り寄った。
「アン」
「え? 何? 犬?」
「アン、クゥ~ン」
「まあ、なんて可愛いのかしら! ワンちゃん、いらっしゃい」
令嬢はノワに手を伸ばす。すると……
「アン」
令嬢がノワに手を伸ばし少し近付いただけだ。それだけなのに、令嬢の背中や首筋辺りから黒いモヤモヤが浮き出てきた。
「あら? なにかしら? ちょっとクラクラするわね」
令嬢の足元がふらつきノワの前にしゃがみ込んだ。モヤモヤはまだ出ている。令嬢の頭の上で大きな黒い靄になったそれは、まだ留まろうとしているように見えた。
「リュウ、精神干渉が深いわ」
「お嬢、ダメッスよ」
「放っておけないわよ」
俺が解呪に出ようとした。すると、ノワがいきなり令嬢に飛び着いた。
「アン!」
「まあ、どうしたの!?」
令嬢が尻尾をフリフリしているノワをしっかりと抱っこする。すると、留まろうとしていた黒いモヤモヤがヒュゥ~ッと抜け出て何処かに飛び去っていった。
「まあ、可愛いわね」
令嬢はなんともない様だ。
「ふらついたりしませんか?」
念のため、隆が令嬢に聞いた。
「え? なんともないわよ。どうしたの? え? どうしたのかしら? 私どうしてお城になんかいるの?」
「迷いこまれたようです。お送りしましょう」
「いえ、大丈夫よ。1人で帰れるわ」
「お付きの方はおられないのですか?」
「本当ね、どうしたのかしら?」
すると、遠くで「お嬢さまぁ~!」と呼ぶ声がする。
「ああ、探しているわね。大丈夫よ、ありがとう。ワンちゃんもありがとう」
何もなかったかの様に令嬢は去って行った。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願い致します!
71
お気に入りに追加
2,980
あなたにおすすめの小説
元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
まさか転生?
花菱
ファンタジー
気付いたら異世界? しかも身体が?
一体どうなってるの…
あれ?でも……
滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。
初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる