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第6章 王都
193ー第2王子
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「実は色々聞きたい事があってな」
「兄上、私から話します」
「ああ」
第2王子が話し出した。その内容は……
実は、例のガラスペンにえんぴつだ。あれはやはり辺境伯領の物なのか? と聞かれたんだ。
「私はまだ手に入れられていないのです。みんな持っているのに……」
と、悔しそうに手を握り締めて言った。なんでも、第2王子の周りの学生が次々と使い出し、贈り物にも良いと聞いたらしい。学園で流行っているのは、多分姉達がいるからじゃないか? 嬉しがって何本も持って帰ったし。えんぴつなんて、普段の授業でノートをとるのに、とっても良いわ。なんて、話していた。
で? だから第2王子は何が言いたいんだ?
「兄上が着ておられる下着も辺境伯領産だと聞いたんだ。それもきっと学園でエリアリア嬢達が話していた物なのだろう? 私は何も知らなかった!」
で?
「その……だから……」
だから? プクク。この王子、頼りないと言うより自分の感情に素直なんだな。
「ココ、持っているかい?」
あ、ロディ兄が先に言っちゃったよ。欲しいと言わせたかったのに。
「兄さま……」
「あるんだろう?」
「そうなのか!? 是非、私も欲しいんだ!」
おう、身を乗り出して言ったよ。そんなに素直に言われるとちょっと嬉しい。
「ありますよ。今出しますか?」
「え……?」
「あぁ、でもガラスペンはシンプルな物しか持っていないのです。ちょっと凝った物は姉が全部持って行ってしまって……」
「エリアリア嬢か!?」
「はい。アンジェリカ様もですね」
「またあの2人か!?」
また?
「あの2人はシュークリームやエクレアも自慢するんだ。ああ、アイスクリームにプリンもだ。私は食べた事がないのに」
姉とアンジェリカ嬢は何をしているんだ? 第2王子に自慢してどうすんだよ? もしかして反応を楽しんでないか? この第2王子、いちいち素直に反応するんだ。だから俺もつい『欲しい』と言わせたくなったんだ。
「クククク……」
「ロディ、あの2人は直ぐに調子に乗るのが悪い癖だ」
「お祖父様、本当ですね」
「さすがに食べ物は持っていないわよね? ココちゃん」
「ありますよ」
「え……?」
「はい……?」
「持っているのか?」
「はい、ありますよ。出しますか? 食べてみられますか?」
「ああ、是非!」
「なんだ? そんなに美味いものなのか?」
「イザークス殿下、スイーツですわ」
「スイーツとは?」
おやおや、イザークス第1王子はスイーツをご存じないと。駄目だねぇ。遅れているよ。
「殿下、今話しておりましたシュークリーム等の甘い菓子の事を近頃ではそう呼ぶのです」
「そうなのか? セーデルマン侯爵はよく知っていたな」
「ハハハ、私も存知ませんでした。しかし、当家にはエリアリアやアンジェリカ嬢が出入りしておりますので、それで知りました」
「なるほど、王都の流行りを作っているのは学園の女子だという。その最先端なのだな」
いやいや、そんな大したもんじゃないだろう。
潜入していたうちのメイドさんが、気を利かせて皿を出してきた。
「お祖父さま、良いのですか? 毒見とか……」
「そうだな。殿下、先ず私が頂きましょう」
「いや、構わん。頂こう」
「兄上、私もです!」
はいはい、いくらでも出すぜ。
先ずは、そのスイーツからだ。
「これが、シュークリームといいます。中にカスタードクリームが入っています。こっちがエクレアです。チョコレートを掛けてあります」
「チョコレートだとッ!?」
「はい、殿下。チョコレートです」
「わ、私はまだ食べた事がないんだ」
「そうなのですか?」
「王都ではそう珍しくはありませんわよ」
と、祖母が追い打ちをかける。そうだよな、俺も王都観光で食べたぞ。
そして、アイスクリームだ。なんでこんなに亜空間に入れていたのかって? だって食べたいじゃん、それだけだよ。どれも日持ちしないだろう? アイスクリームなんて直ぐに溶けてしまう。だから、そんなの関係ない亜空間にそこそこの量を入れていたんだ。
「これが、アイスクリームです。冷たいですよ」
「冷たいのか!?」
「はい、殿下。ミルクと卵と砂糖で作ったものです。直ぐに溶けてしまいますよ」
「おぉー!」
ハハハ、この王子ほんと素直で可愛いじゃん。プリンも出してあげようではないか。おっと、でもこの王子も精神干渉を受けているのか?
「ココ、こっそり見てみなさい」
とうとうじーちゃんまで言い出した。
はいはい。俺は無言で頷いた。そして、心の中で『鑑定』だ。
「あー、お祖父さま。駄目駄目です」
「そうか」
1発いっとこうか? ん? いつでもやるぞ?
「ココ、待ちなさい。ココもエリアそっくりだね」
「えぇ、ロディ兄さま、そんな事ありません」
「何!? ココアリア嬢もなのかッ!?」
ん? 何がだ?
「エリアリア嬢とアンジェリカ嬢はもう私の手には負えないんだ。本当に強いんだ。あの2人は一体どこを目指しているのだか」
「アハハハ」
とうとう、祖父とロディ兄が声を出して笑いだした。
「ご迷惑をお掛けしているのですかな?」
「いや、迷惑ではないんだ。ただ、悔しくてな」
そんな事を話し乍ら、王子2人は俺が出したスイーツに夢中だ。
「美味いものだな」
「兄上、そうでしょう? これを自慢されるのですよ」
「自慢したくなる気持ちも分かるな」
「兄上! いつも自慢される私の身にもなってください」
ああ、これはあの2人。王子をイジって楽しんでるな。決まりだよ。人が悪いなぁ。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
「兄上、私から話します」
「ああ」
第2王子が話し出した。その内容は……
実は、例のガラスペンにえんぴつだ。あれはやはり辺境伯領の物なのか? と聞かれたんだ。
「私はまだ手に入れられていないのです。みんな持っているのに……」
と、悔しそうに手を握り締めて言った。なんでも、第2王子の周りの学生が次々と使い出し、贈り物にも良いと聞いたらしい。学園で流行っているのは、多分姉達がいるからじゃないか? 嬉しがって何本も持って帰ったし。えんぴつなんて、普段の授業でノートをとるのに、とっても良いわ。なんて、話していた。
で? だから第2王子は何が言いたいんだ?
「兄上が着ておられる下着も辺境伯領産だと聞いたんだ。それもきっと学園でエリアリア嬢達が話していた物なのだろう? 私は何も知らなかった!」
で?
「その……だから……」
だから? プクク。この王子、頼りないと言うより自分の感情に素直なんだな。
「ココ、持っているかい?」
あ、ロディ兄が先に言っちゃったよ。欲しいと言わせたかったのに。
「兄さま……」
「あるんだろう?」
「そうなのか!? 是非、私も欲しいんだ!」
おう、身を乗り出して言ったよ。そんなに素直に言われるとちょっと嬉しい。
「ありますよ。今出しますか?」
「え……?」
「あぁ、でもガラスペンはシンプルな物しか持っていないのです。ちょっと凝った物は姉が全部持って行ってしまって……」
「エリアリア嬢か!?」
「はい。アンジェリカ様もですね」
「またあの2人か!?」
また?
「あの2人はシュークリームやエクレアも自慢するんだ。ああ、アイスクリームにプリンもだ。私は食べた事がないのに」
姉とアンジェリカ嬢は何をしているんだ? 第2王子に自慢してどうすんだよ? もしかして反応を楽しんでないか? この第2王子、いちいち素直に反応するんだ。だから俺もつい『欲しい』と言わせたくなったんだ。
「クククク……」
「ロディ、あの2人は直ぐに調子に乗るのが悪い癖だ」
「お祖父様、本当ですね」
「さすがに食べ物は持っていないわよね? ココちゃん」
「ありますよ」
「え……?」
「はい……?」
「持っているのか?」
「はい、ありますよ。出しますか? 食べてみられますか?」
「ああ、是非!」
「なんだ? そんなに美味いものなのか?」
「イザークス殿下、スイーツですわ」
「スイーツとは?」
おやおや、イザークス第1王子はスイーツをご存じないと。駄目だねぇ。遅れているよ。
「殿下、今話しておりましたシュークリーム等の甘い菓子の事を近頃ではそう呼ぶのです」
「そうなのか? セーデルマン侯爵はよく知っていたな」
「ハハハ、私も存知ませんでした。しかし、当家にはエリアリアやアンジェリカ嬢が出入りしておりますので、それで知りました」
「なるほど、王都の流行りを作っているのは学園の女子だという。その最先端なのだな」
いやいや、そんな大したもんじゃないだろう。
潜入していたうちのメイドさんが、気を利かせて皿を出してきた。
「お祖父さま、良いのですか? 毒見とか……」
「そうだな。殿下、先ず私が頂きましょう」
「いや、構わん。頂こう」
「兄上、私もです!」
はいはい、いくらでも出すぜ。
先ずは、そのスイーツからだ。
「これが、シュークリームといいます。中にカスタードクリームが入っています。こっちがエクレアです。チョコレートを掛けてあります」
「チョコレートだとッ!?」
「はい、殿下。チョコレートです」
「わ、私はまだ食べた事がないんだ」
「そうなのですか?」
「王都ではそう珍しくはありませんわよ」
と、祖母が追い打ちをかける。そうだよな、俺も王都観光で食べたぞ。
そして、アイスクリームだ。なんでこんなに亜空間に入れていたのかって? だって食べたいじゃん、それだけだよ。どれも日持ちしないだろう? アイスクリームなんて直ぐに溶けてしまう。だから、そんなの関係ない亜空間にそこそこの量を入れていたんだ。
「これが、アイスクリームです。冷たいですよ」
「冷たいのか!?」
「はい、殿下。ミルクと卵と砂糖で作ったものです。直ぐに溶けてしまいますよ」
「おぉー!」
ハハハ、この王子ほんと素直で可愛いじゃん。プリンも出してあげようではないか。おっと、でもこの王子も精神干渉を受けているのか?
「ココ、こっそり見てみなさい」
とうとうじーちゃんまで言い出した。
はいはい。俺は無言で頷いた。そして、心の中で『鑑定』だ。
「あー、お祖父さま。駄目駄目です」
「そうか」
1発いっとこうか? ん? いつでもやるぞ?
「ココ、待ちなさい。ココもエリアそっくりだね」
「えぇ、ロディ兄さま、そんな事ありません」
「何!? ココアリア嬢もなのかッ!?」
ん? 何がだ?
「エリアリア嬢とアンジェリカ嬢はもう私の手には負えないんだ。本当に強いんだ。あの2人は一体どこを目指しているのだか」
「アハハハ」
とうとう、祖父とロディ兄が声を出して笑いだした。
「ご迷惑をお掛けしているのですかな?」
「いや、迷惑ではないんだ。ただ、悔しくてな」
そんな事を話し乍ら、王子2人は俺が出したスイーツに夢中だ。
「美味いものだな」
「兄上、そうでしょう? これを自慢されるのですよ」
「自慢したくなる気持ちも分かるな」
「兄上! いつも自慢される私の身にもなってください」
ああ、これはあの2人。王子をイジって楽しんでるな。決まりだよ。人が悪いなぁ。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
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