191 / 249
第6章 王都
191ー沢山あるよ
しおりを挟む
「余分に生地を持っているなら、王子殿下に差し上げたいんだが」
「分かりました。今出しますか?」
「え……?」
「お祖父さま、色々あるので……え?」
「いや、ココ。もしかして亜空間にか?」
「はい。沢山ありますよ。防御力大から小まで」
「……」
「プハハハ」
ロディ兄がプルプルと震えながら笑っている。なんでだよ。
「ココ、流石に言葉がないよ」
「あら、あなた。もう私は慣れましたわよ。ふふふ」
ばーちゃんまで笑ってるよ。もういい加減に慣れて欲しいもんだ。
本当に沢山持たされたんだ。ミリーさんったら心配性。
「ココ、男性用の色でいい」
「黒とかブルーとかですか? でも王子殿下なら白も必要ですよね。あ、あと模様が入っているのと入っていないのもあってぇ……」
と、次から次へと俺は生地を出していった。またロディ兄が笑っている。
「ココ、それくらいで良いよ。フハハハ」
「兄さま、そうですか? でも、第2王子殿下の分とか、王女様の分とかも必要じゃないですか?」
「ああ、そうだね。ふふふ」
「ココちゃん、領地でどれだけ生地を織ったの?」
「もうあたしには分からない位、種類も数もあります」
「まあ……!」
「アハハハ!」
とうとうロディ兄が声をあげて笑い出した。
「ロディ、どこまで作るつもりなんだ?」
「お祖父様、当然領民全員の分ですよ」
「それはまた……」
な、俺よりロディ兄の方がおかしいだろう? 俺、そこまで思ってないもん。そんな数、とんでもないと思ってるもん。でもこのペースだと可能かも知れない。
「この兄妹は領地から出したら駄目だったのじゃないだろうか?」
「あなた、常識を教えませんと」
「ああ、そうだな」
と、祖父母はため息をついていた。
祖父母が色々と選び、普段着るシャツから上着まで一式作れるだけの生地を持って行くことになった。俺はもう関係ないぞ。
「ココちゃん、女性用の下着は余分にあるかしら?」
「はい、お祖母さま。沢山ありますよ」
「そうなの!? 私、余分に貰えるかしら?」
「はい。お祖母さま、可愛いピンクもありますよ」
「あら!」
「レースがヒラヒラなのも可愛いです」
「まあ、素敵ね!」
こんなノリは母そっくりだ。話していて安心するぜ。
「お前ばかりずるいぞ」
「あら、だってあなたは黒がよろしいんでしょう?」
「いや、黒だけでは不便だ」
「じゃあ、お祖父さま。白も出しますか?」
「ああ、頼むよ」
と、また下着をどんどん出す。
「これ、本当に着け心地が良いのよ。苦しくないの」
「そうでしょう?」
そうなんだよ、そうなんだよ。咲と色々生地の角度を変えたりカッティングを考えたりして作ったんだ。締め付けるだけが能じゃないってな。
「エリアちゃん達の予備も欲しいわね」
「はい、お祖母さま」
と、結局沢山の下着を出すことになった。
「ココ、こんなに持って来ているとは思わなかったよ」
「ロディ兄さま、ミリーさんです」
「ミリーさんがどうした?」
「ミリーさんが、どうせ亜空間に入れるんだからと沢山持たされたんです。何かあったらと言って」
「そうか。流石だ」
「ちょっと心配性ですよね」
「有難いことだね」
「はい」
本当だよ。こんなに思ってくれるなんてさ。俺が何も言わなくても、きっと今頃だってあれやこれやと作っているんだと思う。みんな、働き者だよ。
もう俺はする事ないだろうと部屋に戻ろうとしたんだ。
「そうだわ、ココちゃん。領地のスイーツなんだけど」
はいはい、なんだ?
「あれ、お店で出せるでしょう?」
「え? お祖母さま、そうですか?」
「そうよ、あんなに美味しいものは王都にはないわ」
と、言われてもなぁ。
「あれは料理人達の努力の成果ですよ」
「でもココちゃんが言い出したのでしょう?」
「あたしはこんなのが食べたいと言っただけです」
「ククク」
またロディ兄が笑いだした。
「ココ、レシピはココだろう?」
「そうですか?」
「そうだよ」
そうだっけかなぁ? 俺覚えてないぞ。もしかして記憶が戻る前の話しなんじゃないか?
「お嬢、色々やらかしてるって言ったッスよね」
「リュウ、そうなの?」
「そうッス」
おやおや、俺が原因らしい。
「お祖母さま、あたしは何をすれば良いですか?」
「手軽にお持ち帰りできるようなスイーツを考えて欲しいのよ」
「お持ち帰りですか」
「ほら、シュークリームなんて良いでしょう?」
「ああ、そうですね。中のクリームを季節毎に変えたりして」
「まあ! 中のクリームを変えるの!?」
「はい。マロンクリームとか美味しいですよね。エクレアも良いかも」
「ココちゃん、エクレアってなあに?」
と、墓穴を掘った。それから俺は厨房でエクレアがどんなものかを料理人に話した。でも、既にシュークリームを作れる料理人達だから簡単だった。チョコがまだあまり普及していないんだ。だから、シュークリームよりエクレアの方がお値段が割高になりそうだ。
こんな商売をしてどうすんのかね。じーちゃんもばーちゃんも忙しいだろうに。
「テイクアウトの店を任せてみようかと思ってね」
なるほどね。自分でするのではなくて人を使うと。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
「分かりました。今出しますか?」
「え……?」
「お祖父さま、色々あるので……え?」
「いや、ココ。もしかして亜空間にか?」
「はい。沢山ありますよ。防御力大から小まで」
「……」
「プハハハ」
ロディ兄がプルプルと震えながら笑っている。なんでだよ。
「ココ、流石に言葉がないよ」
「あら、あなた。もう私は慣れましたわよ。ふふふ」
ばーちゃんまで笑ってるよ。もういい加減に慣れて欲しいもんだ。
本当に沢山持たされたんだ。ミリーさんったら心配性。
「ココ、男性用の色でいい」
「黒とかブルーとかですか? でも王子殿下なら白も必要ですよね。あ、あと模様が入っているのと入っていないのもあってぇ……」
と、次から次へと俺は生地を出していった。またロディ兄が笑っている。
「ココ、それくらいで良いよ。フハハハ」
「兄さま、そうですか? でも、第2王子殿下の分とか、王女様の分とかも必要じゃないですか?」
「ああ、そうだね。ふふふ」
「ココちゃん、領地でどれだけ生地を織ったの?」
「もうあたしには分からない位、種類も数もあります」
「まあ……!」
「アハハハ!」
とうとうロディ兄が声をあげて笑い出した。
「ロディ、どこまで作るつもりなんだ?」
「お祖父様、当然領民全員の分ですよ」
「それはまた……」
な、俺よりロディ兄の方がおかしいだろう? 俺、そこまで思ってないもん。そんな数、とんでもないと思ってるもん。でもこのペースだと可能かも知れない。
「この兄妹は領地から出したら駄目だったのじゃないだろうか?」
「あなた、常識を教えませんと」
「ああ、そうだな」
と、祖父母はため息をついていた。
祖父母が色々と選び、普段着るシャツから上着まで一式作れるだけの生地を持って行くことになった。俺はもう関係ないぞ。
「ココちゃん、女性用の下着は余分にあるかしら?」
「はい、お祖母さま。沢山ありますよ」
「そうなの!? 私、余分に貰えるかしら?」
「はい。お祖母さま、可愛いピンクもありますよ」
「あら!」
「レースがヒラヒラなのも可愛いです」
「まあ、素敵ね!」
こんなノリは母そっくりだ。話していて安心するぜ。
「お前ばかりずるいぞ」
「あら、だってあなたは黒がよろしいんでしょう?」
「いや、黒だけでは不便だ」
「じゃあ、お祖父さま。白も出しますか?」
「ああ、頼むよ」
と、また下着をどんどん出す。
「これ、本当に着け心地が良いのよ。苦しくないの」
「そうでしょう?」
そうなんだよ、そうなんだよ。咲と色々生地の角度を変えたりカッティングを考えたりして作ったんだ。締め付けるだけが能じゃないってな。
「エリアちゃん達の予備も欲しいわね」
「はい、お祖母さま」
と、結局沢山の下着を出すことになった。
「ココ、こんなに持って来ているとは思わなかったよ」
「ロディ兄さま、ミリーさんです」
「ミリーさんがどうした?」
「ミリーさんが、どうせ亜空間に入れるんだからと沢山持たされたんです。何かあったらと言って」
「そうか。流石だ」
「ちょっと心配性ですよね」
「有難いことだね」
「はい」
本当だよ。こんなに思ってくれるなんてさ。俺が何も言わなくても、きっと今頃だってあれやこれやと作っているんだと思う。みんな、働き者だよ。
もう俺はする事ないだろうと部屋に戻ろうとしたんだ。
「そうだわ、ココちゃん。領地のスイーツなんだけど」
はいはい、なんだ?
「あれ、お店で出せるでしょう?」
「え? お祖母さま、そうですか?」
「そうよ、あんなに美味しいものは王都にはないわ」
と、言われてもなぁ。
「あれは料理人達の努力の成果ですよ」
「でもココちゃんが言い出したのでしょう?」
「あたしはこんなのが食べたいと言っただけです」
「ククク」
またロディ兄が笑いだした。
「ココ、レシピはココだろう?」
「そうですか?」
「そうだよ」
そうだっけかなぁ? 俺覚えてないぞ。もしかして記憶が戻る前の話しなんじゃないか?
「お嬢、色々やらかしてるって言ったッスよね」
「リュウ、そうなの?」
「そうッス」
おやおや、俺が原因らしい。
「お祖母さま、あたしは何をすれば良いですか?」
「手軽にお持ち帰りできるようなスイーツを考えて欲しいのよ」
「お持ち帰りですか」
「ほら、シュークリームなんて良いでしょう?」
「ああ、そうですね。中のクリームを季節毎に変えたりして」
「まあ! 中のクリームを変えるの!?」
「はい。マロンクリームとか美味しいですよね。エクレアも良いかも」
「ココちゃん、エクレアってなあに?」
と、墓穴を掘った。それから俺は厨房でエクレアがどんなものかを料理人に話した。でも、既にシュークリームを作れる料理人達だから簡単だった。チョコがまだあまり普及していないんだ。だから、シュークリームよりエクレアの方がお値段が割高になりそうだ。
こんな商売をしてどうすんのかね。じーちゃんもばーちゃんも忙しいだろうに。
「テイクアウトの店を任せてみようかと思ってね」
なるほどね。自分でするのではなくて人を使うと。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
87
お気に入りに追加
2,978
あなたにおすすめの小説
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
婚約破棄は誰が為の
瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。
宣言した王太子は気付いていなかった。
この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを……
10話程度の予定。1話約千文字です
10/9日HOTランキング5位
10/10HOTランキング1位になりました!
ありがとうございます!!
元悪役令嬢はオンボロ修道院で余生を過ごす
こうじ
ファンタジー
両親から妹に婚約者を譲れと言われたレスナー・ティアント。彼女は勝手な両親や裏切った婚約者、寝取った妹に嫌気がさし自ら修道院に入る事にした。研修期間を経て彼女は修道院に入る事になったのだが彼女が送られたのは廃墟寸前の修道院でしかも修道女はレスナー一人のみ。しかし、彼女にとっては好都合だった。『誰にも邪魔されずに好きな事が出来る!これって恵まれているんじゃ?』公爵令嬢から修道女になったレスナーののんびり修道院ライフが始まる!
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる