168 / 249
第5章 王都へ
168ー協力者
しおりを挟む
「お力になりましょう!」
あぁ、本当に意気投合しているぜ。
「おぉ、本当ですか!?」
「はい、追手がくるのでしょう? その時に足止めしましょう!」
おやおや、やる気だよ。信じられる人っぽくて良かったよ。
「たしか奥方のご実家はセーデルマン侯爵家だと記憶しております。以前、少しお話した事があるのですよ。あのお方も気持ちの良いお方だ」
王都で修繕費の申請の際に母の実家に世話になった事があるそうだ。世の中どこで繋がっているのか分からないもんだね。
その修繕費で街の街道を整備し上下水道を整備したそうだ。
所謂、補助金の申請だ。それを着服している様な領主もいるのに、この伯爵はちゃんと整備していた。それどころか、不足分は自腹を切っている。
「いくら社交シーズンだからと言われても、態々王都まで出向いて何を考えているのか分からない貴族と交流する気にもならんのです。そんな時間があったら領地の仕事をしている方が良い。子供達には申し訳ないのですが」
うちだってそうだ。社交シーズンだ何だと言われても、誰も王都へは行かない。そんな時間があったら1頭でも多く魔物を討伐する。領地の平和を守る。そんな家だ。
こんな伯爵もいるんだな。
そして俺達はその街を出発した。
伯爵夫妻だけでなく、嫡男も見送りに出てきてくれていた。
令嬢は1年も寝込んでいたんだ。まだ体力が戻っていない。でも、もう大丈夫だ。少しずつ元気になるさ。
「若さまぁ、良かったですねぇ」
「な、そうだな」
「ホント思い出して良かったッスよ」
そっちかよ! 令嬢の病が治った事を喜ぼうぜ。
「それはもちろんッス」
隆は飄々としている。前世もこんな感じだったなぁ。なのに酒に溺れて暴力を振るう父親から姉の咲を守っていたんだ。普段はこんなだが、芯のしっかりした男だと思いたい。
「若、また馬に乗るッスか?」
「おうよ」
「俺も乗りたいッス」
そっか。馬車で来ているから隆の馬がないんだな。
「仕方ないから御者台にいるッス」
意味不明だ。まぁ、幌馬車の中に乗っているよりは前が開けるからマシなのか?
「ッスね」
なんでも『ッス』で済ますんじゃねーぞ。で、俺はやっぱりだ。
「ディオシスお祖父さまぁ! 乗せてくださいぃー!」
「おう! ココ、今日は早いな」
「飽きました!」
「アハハハ!」
まあ、毎回こんな感じだ。俺達は順調に王都へ進んでいた。次が最後の街だという所まで来ていた。
その街の広場で、またメイドさん達と咲や隆が歌を披露して小銭を稼ぎ、いつも通りにちょっと小綺麗な宿に泊まっていた。
父の元に領地から早馬で文が届いた。領地にいるスカイラン領主隊隊長からだ。実はこのスカイラン隊長が父の影武者になっていたんだ。
体形もよく似ているし、声も同じ様に大きい。だから丁度良いだろうと決まった。
そのスカイラン隊長からの文には、一言で言うと……『バレてしまった』とあった。
「まあ、よく頑張ったよ」
「そうだね」
と、ロディ兄とディオシスじーちゃんは冷静だ。
「なんとッ!!」
「あれがバレたかぁッ!」
と、相変わらず声が大きい父とユリシスじーちゃんだ。ずっとバレないとでも思っていたのだろうか?
「あんなに完璧に似ていたのにぃッ!」
「ああ、完璧だったぞッ!」
おう、バレないと思っていたらしいぞ。この2人良いコンビだな。さすが実の親子だ。そっくりじゃん。
一方のディオシスじーちゃんはロディ兄とそっくりだ。こっちも良いコンビだ。
「早馬で今日だから3~4日はかかるんじゃないか?」
「いや、お祖父様。2~3日と考えておく方が良いでしょう」
ロディ兄とディオシスじーちゃんはもう次の事を考えている。まあ、そりゃ追ってくるよな。それをどうするのかだ。まさか、攻撃してきたりするのだろうか? 王子殿下が一緒なのにさ。
「口封じに掛かるでしょうね」
「ええ」
口封じ!? 誰のだよ? 俺達か?
「ココ、もちろん全員のだ。殿下も含めてね」
「なんとッ! 非情なッ!」
なんだって!? 王子もかよ。見境なしなのかよ。父はもう煩いよ。
しかし、ロディ兄とディオシスじーちゃんの考えは一緒だった。ここで王子の口も塞いでおけばクーデターの首謀者へと担ぎ上げる事ができる。それを狙っているんだ。
そして、それに加担した貴族達を一網打尽にする。それが、一番手っ取り早い方法だろうと。
「先日のイェブレン伯爵にもこの事を連絡しておきましょう」
「そうだな、それがいい」
そうして、前の街に向かって早馬が出された。足止めしてくれるのは良いんだけど、危険な事をしないでほしい。俺達は毎日鍛練をしているから多少の事は何とかなる。だけど、平和に領地を治めている伯爵だ。体形を見てもまさか腕っぷしが強いとは思えない。無茶はしないでほしい。それも、しっかりと文に書かれた。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます!
今日はちびっ子~お休みです。基本、2日に1度投稿できればと思います。
現在、『ボクは光の国の転生皇子さま!2』の書籍化作業もあり、もしかしたら投稿が遅くなったりお休みしてしまうかも知れません。申し訳ありません。
あぁ、本当に意気投合しているぜ。
「おぉ、本当ですか!?」
「はい、追手がくるのでしょう? その時に足止めしましょう!」
おやおや、やる気だよ。信じられる人っぽくて良かったよ。
「たしか奥方のご実家はセーデルマン侯爵家だと記憶しております。以前、少しお話した事があるのですよ。あのお方も気持ちの良いお方だ」
王都で修繕費の申請の際に母の実家に世話になった事があるそうだ。世の中どこで繋がっているのか分からないもんだね。
その修繕費で街の街道を整備し上下水道を整備したそうだ。
所謂、補助金の申請だ。それを着服している様な領主もいるのに、この伯爵はちゃんと整備していた。それどころか、不足分は自腹を切っている。
「いくら社交シーズンだからと言われても、態々王都まで出向いて何を考えているのか分からない貴族と交流する気にもならんのです。そんな時間があったら領地の仕事をしている方が良い。子供達には申し訳ないのですが」
うちだってそうだ。社交シーズンだ何だと言われても、誰も王都へは行かない。そんな時間があったら1頭でも多く魔物を討伐する。領地の平和を守る。そんな家だ。
こんな伯爵もいるんだな。
そして俺達はその街を出発した。
伯爵夫妻だけでなく、嫡男も見送りに出てきてくれていた。
令嬢は1年も寝込んでいたんだ。まだ体力が戻っていない。でも、もう大丈夫だ。少しずつ元気になるさ。
「若さまぁ、良かったですねぇ」
「な、そうだな」
「ホント思い出して良かったッスよ」
そっちかよ! 令嬢の病が治った事を喜ぼうぜ。
「それはもちろんッス」
隆は飄々としている。前世もこんな感じだったなぁ。なのに酒に溺れて暴力を振るう父親から姉の咲を守っていたんだ。普段はこんなだが、芯のしっかりした男だと思いたい。
「若、また馬に乗るッスか?」
「おうよ」
「俺も乗りたいッス」
そっか。馬車で来ているから隆の馬がないんだな。
「仕方ないから御者台にいるッス」
意味不明だ。まぁ、幌馬車の中に乗っているよりは前が開けるからマシなのか?
「ッスね」
なんでも『ッス』で済ますんじゃねーぞ。で、俺はやっぱりだ。
「ディオシスお祖父さまぁ! 乗せてくださいぃー!」
「おう! ココ、今日は早いな」
「飽きました!」
「アハハハ!」
まあ、毎回こんな感じだ。俺達は順調に王都へ進んでいた。次が最後の街だという所まで来ていた。
その街の広場で、またメイドさん達と咲や隆が歌を披露して小銭を稼ぎ、いつも通りにちょっと小綺麗な宿に泊まっていた。
父の元に領地から早馬で文が届いた。領地にいるスカイラン領主隊隊長からだ。実はこのスカイラン隊長が父の影武者になっていたんだ。
体形もよく似ているし、声も同じ様に大きい。だから丁度良いだろうと決まった。
そのスカイラン隊長からの文には、一言で言うと……『バレてしまった』とあった。
「まあ、よく頑張ったよ」
「そうだね」
と、ロディ兄とディオシスじーちゃんは冷静だ。
「なんとッ!!」
「あれがバレたかぁッ!」
と、相変わらず声が大きい父とユリシスじーちゃんだ。ずっとバレないとでも思っていたのだろうか?
「あんなに完璧に似ていたのにぃッ!」
「ああ、完璧だったぞッ!」
おう、バレないと思っていたらしいぞ。この2人良いコンビだな。さすが実の親子だ。そっくりじゃん。
一方のディオシスじーちゃんはロディ兄とそっくりだ。こっちも良いコンビだ。
「早馬で今日だから3~4日はかかるんじゃないか?」
「いや、お祖父様。2~3日と考えておく方が良いでしょう」
ロディ兄とディオシスじーちゃんはもう次の事を考えている。まあ、そりゃ追ってくるよな。それをどうするのかだ。まさか、攻撃してきたりするのだろうか? 王子殿下が一緒なのにさ。
「口封じに掛かるでしょうね」
「ええ」
口封じ!? 誰のだよ? 俺達か?
「ココ、もちろん全員のだ。殿下も含めてね」
「なんとッ! 非情なッ!」
なんだって!? 王子もかよ。見境なしなのかよ。父はもう煩いよ。
しかし、ロディ兄とディオシスじーちゃんの考えは一緒だった。ここで王子の口も塞いでおけばクーデターの首謀者へと担ぎ上げる事ができる。それを狙っているんだ。
そして、それに加担した貴族達を一網打尽にする。それが、一番手っ取り早い方法だろうと。
「先日のイェブレン伯爵にもこの事を連絡しておきましょう」
「そうだな、それがいい」
そうして、前の街に向かって早馬が出された。足止めしてくれるのは良いんだけど、危険な事をしないでほしい。俺達は毎日鍛練をしているから多少の事は何とかなる。だけど、平和に領地を治めている伯爵だ。体形を見てもまさか腕っぷしが強いとは思えない。無茶はしないでほしい。それも、しっかりと文に書かれた。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます!
今日はちびっ子~お休みです。基本、2日に1度投稿できればと思います。
現在、『ボクは光の国の転生皇子さま!2』の書籍化作業もあり、もしかしたら投稿が遅くなったりお休みしてしまうかも知れません。申し訳ありません。
76
お気に入りに追加
2,980
あなたにおすすめの小説
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。
職業選択の自由~ネクロマンサーを選択した男~
新米少尉
ファンタジー
「私は私の評価を他人に委ねるつもりはありません」
多くの者達が英雄を目指す中、彼はそんなことは望んでいなかった。
ただ一つ、自ら選択した道を黙々と歩むだけを目指した。
その道が他者からは忌み嫌われるものであろうとも彼には誇りと信念があった。
彼が自ら選んだのはネクロマンサーとしての生き方。
これは職業「死霊術師」を自ら選んだ男の物語。
~他のサイトで投稿していた小説の転載です。完結済の作品ですが、若干の修正をしながらきりのよい部分で一括投稿していきますので試しに覗いていただけると嬉しく思います~
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる