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第5章 王都へ
160ー角兎とイノシシ
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よくそんな土地を探し出したものだ。
ディオシスじーちゃんの話を聞きながら進んで行くと、前方に小さな村が見えてきた。木々も増えてきた。
丁度、緩やかな丘と丘の間という場所だ。平原というよりは、少し盆地の様になっている。木々が立ち並び小川も流れている。その中にひっそりとその村はあった。
防御壁とは到底呼べない、貧相な木でできた柵があり、十数軒の家が並んでいる。20軒あるだろうか? そんな小さな村だった。
柵の中には畑も作ってある。土壌が良いのだろうか、畑には立派な野菜が生っていた。何かの野菜だろう緑の葉も大きく青々としている。その奥には少しだが小麦畑もある。
鶏舎もあった。飼っているのは鶏なのだろうか? 卵が採れるな。それにしては大きい。多分、鶏の様な魔物の一種なのだろう。だが、飼いならされている様で大人しく柵の中で放し飼いにされている。並びには牛舎もあった。ミルクを採るのだろう。ミルクを入れておく様な缶が並んでいる。ああ、きっとこれらをみんな領地から持ってきたんだろうな。
小川には小さいが水車があった。あれで、小麦を粉にするのだろう。
十分に村人が食べていけるような環境に見える。よく見ると、柵が所々修繕されている。野生のイノシシにでも破られたか?
村の中では小さな子供達もいた。元気な声をあげて遊んでいる。
良い村だ。裕福ではないかも知れないが、食べるのには困らないだろう環境で、平和そうだ。俺達が進んで行くと村人達が見に出てきた。この村は誰がまとめているのだろう?
「ほら、あの1番奥の家が村長の家だよ」
ディオシスじーちゃんが指す方を見ると、1番奥の家の前で老人が立っていた。
「お祖父さま、平和な村ですね」
「そうだね、長閑で良い村だ」
「はい」
父がその老人の前で馬を降りる。
村長らしき老人が上半身を曲げて挨拶をしている。
「村長、久しぶりだな」
「辺境伯さま、お変わりないようでなによりでございます。此度はまたご足労頂き有難い事です」
いつも大きな父の背中が今はより大きく見えた。なんて頼り甲斐のある背中なんだ。
「元気でやっているようで良かった」
「ありがとうございます」
父と村長は話しながら家の中へと入って行った。
馬車の中で待っているのもなんだし、俺は馬車から降りようかなっと。
「お嬢さまぁ、フラフラしたら駄目ですよぅ」
「サキ、そんな事しないわよ」
フラフラしようにもさ、こんな小さな村だ。どこに行くんだよ。
俺が馬車を降りると遊んでいた子供達が寄ってきた。
「なあなあ兄ちゃん、辺境伯さまの知り合いなのか?」
「そうだよ」
「へぇ~、スゲーなッ」
「そうか?」
「うん! 辺境伯さまにはお世話になってるって母ちゃんが言ってた」
「そうなんだ。なあ、何して遊んでたんだ? 仲間に入れてくれよ」
「いいぞ」
子供達がこっちこっちと手招きをする。
良いなぁ、素朴な良い子達だ。皆、身綺麗にしている。特別腹を空かせている様子もなく元気に遊んでいる。村の生活はなんとかなっているらしい。
「若、あんまり離れないで下さいよ」
「リュウ、分かってる」
「兄ちゃん、若なのか?」
「そう呼ばれてるだけだ」
「へぇ~、なんかカッケーなッ」
「そうか?」
なんて他愛もない話しをしながら子供達の輪の中に混じっていた。
しばらくして父が村長と一緒に出てきた。
「皆の者ッ、よく聞けぃ! そこの林の中から角兎とイノシシが出るそうだ! 例年になく数が多いらしい! 良いかッ!? 討伐するぞぉッ!」
角兎にイノシシか。大したことないが、父の指示が出た。よしよし、良い運動になる。
「若、行くッスか?」
「当然だろ」
「そうッスよね」
「若さまぁ」
咲がもうあのスケスケの服から着替えて町娘の様な恰好をしている。但し、腰には剣帯がありそこには当然剣が刺してある。鞭もあるぞ。
そして、俺にも剣帯と短剣を渡してきた。
「サキ、ありがとう」
「はいぃ」
「おまえ、いつの間に着替えたんだよ」
「ふふふぅ。町娘バージョンですぅ」
また、顔の横でピースをしながらウインクしている。はいはい、分かったよ。好きにしてくれ。
俺と咲、隆の3人で林へと入って行く。
「兄ちゃん! 気を付けろよ!」
「おうよッ!」
さっき一緒に遊んでいた子供達が声を掛けてくれる。良い子じゃん。
俺、前世や今も末っ子だからさぁ。自分より小さい子は可愛いんだよなぁ。
「ないものねだりッスね」
「リュウ、うるさいよ」
もちろん隆も帯剣している。さあ、久しぶりに思い切り身体を動かせるぞ。
「おぉらぁーーーッ!」
林の中からもうじーちゃんの声が聞こえてくる。相変わらず大きな声だ。しかもよく通る。
「ユリシスお祖父さまだ」
「もうやってるッスね」
「出遅れたな」
「まだまだこれからッス」
「かなり多いみたいですよぅ」
「そうなんだ?」
林の中を走りながら話していると、チラホラと角兎が出てきた。頭に角のある兎がピョンピョンと突っ込んでくる。いくら兎でも頭に鋭い角があるんだ。まともに当たったら怪我だけではすまないだろう。子供達には危険だ。
ディオシスじーちゃんの話を聞きながら進んで行くと、前方に小さな村が見えてきた。木々も増えてきた。
丁度、緩やかな丘と丘の間という場所だ。平原というよりは、少し盆地の様になっている。木々が立ち並び小川も流れている。その中にひっそりとその村はあった。
防御壁とは到底呼べない、貧相な木でできた柵があり、十数軒の家が並んでいる。20軒あるだろうか? そんな小さな村だった。
柵の中には畑も作ってある。土壌が良いのだろうか、畑には立派な野菜が生っていた。何かの野菜だろう緑の葉も大きく青々としている。その奥には少しだが小麦畑もある。
鶏舎もあった。飼っているのは鶏なのだろうか? 卵が採れるな。それにしては大きい。多分、鶏の様な魔物の一種なのだろう。だが、飼いならされている様で大人しく柵の中で放し飼いにされている。並びには牛舎もあった。ミルクを採るのだろう。ミルクを入れておく様な缶が並んでいる。ああ、きっとこれらをみんな領地から持ってきたんだろうな。
小川には小さいが水車があった。あれで、小麦を粉にするのだろう。
十分に村人が食べていけるような環境に見える。よく見ると、柵が所々修繕されている。野生のイノシシにでも破られたか?
村の中では小さな子供達もいた。元気な声をあげて遊んでいる。
良い村だ。裕福ではないかも知れないが、食べるのには困らないだろう環境で、平和そうだ。俺達が進んで行くと村人達が見に出てきた。この村は誰がまとめているのだろう?
「ほら、あの1番奥の家が村長の家だよ」
ディオシスじーちゃんが指す方を見ると、1番奥の家の前で老人が立っていた。
「お祖父さま、平和な村ですね」
「そうだね、長閑で良い村だ」
「はい」
父がその老人の前で馬を降りる。
村長らしき老人が上半身を曲げて挨拶をしている。
「村長、久しぶりだな」
「辺境伯さま、お変わりないようでなによりでございます。此度はまたご足労頂き有難い事です」
いつも大きな父の背中が今はより大きく見えた。なんて頼り甲斐のある背中なんだ。
「元気でやっているようで良かった」
「ありがとうございます」
父と村長は話しながら家の中へと入って行った。
馬車の中で待っているのもなんだし、俺は馬車から降りようかなっと。
「お嬢さまぁ、フラフラしたら駄目ですよぅ」
「サキ、そんな事しないわよ」
フラフラしようにもさ、こんな小さな村だ。どこに行くんだよ。
俺が馬車を降りると遊んでいた子供達が寄ってきた。
「なあなあ兄ちゃん、辺境伯さまの知り合いなのか?」
「そうだよ」
「へぇ~、スゲーなッ」
「そうか?」
「うん! 辺境伯さまにはお世話になってるって母ちゃんが言ってた」
「そうなんだ。なあ、何して遊んでたんだ? 仲間に入れてくれよ」
「いいぞ」
子供達がこっちこっちと手招きをする。
良いなぁ、素朴な良い子達だ。皆、身綺麗にしている。特別腹を空かせている様子もなく元気に遊んでいる。村の生活はなんとかなっているらしい。
「若、あんまり離れないで下さいよ」
「リュウ、分かってる」
「兄ちゃん、若なのか?」
「そう呼ばれてるだけだ」
「へぇ~、なんかカッケーなッ」
「そうか?」
なんて他愛もない話しをしながら子供達の輪の中に混じっていた。
しばらくして父が村長と一緒に出てきた。
「皆の者ッ、よく聞けぃ! そこの林の中から角兎とイノシシが出るそうだ! 例年になく数が多いらしい! 良いかッ!? 討伐するぞぉッ!」
角兎にイノシシか。大したことないが、父の指示が出た。よしよし、良い運動になる。
「若、行くッスか?」
「当然だろ」
「そうッスよね」
「若さまぁ」
咲がもうあのスケスケの服から着替えて町娘の様な恰好をしている。但し、腰には剣帯がありそこには当然剣が刺してある。鞭もあるぞ。
そして、俺にも剣帯と短剣を渡してきた。
「サキ、ありがとう」
「はいぃ」
「おまえ、いつの間に着替えたんだよ」
「ふふふぅ。町娘バージョンですぅ」
また、顔の横でピースをしながらウインクしている。はいはい、分かったよ。好きにしてくれ。
俺と咲、隆の3人で林へと入って行く。
「兄ちゃん! 気を付けろよ!」
「おうよッ!」
さっき一緒に遊んでいた子供達が声を掛けてくれる。良い子じゃん。
俺、前世や今も末っ子だからさぁ。自分より小さい子は可愛いんだよなぁ。
「ないものねだりッスね」
「リュウ、うるさいよ」
もちろん隆も帯剣している。さあ、久しぶりに思い切り身体を動かせるぞ。
「おぉらぁーーーッ!」
林の中からもうじーちゃんの声が聞こえてくる。相変わらず大きな声だ。しかもよく通る。
「ユリシスお祖父さまだ」
「もうやってるッスね」
「出遅れたな」
「まだまだこれからッス」
「かなり多いみたいですよぅ」
「そうなんだ?」
林の中を走りながら話していると、チラホラと角兎が出てきた。頭に角のある兎がピョンピョンと突っ込んでくる。いくら兎でも頭に鋭い角があるんだ。まともに当たったら怪我だけではすまないだろう。子供達には危険だ。
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