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第4章 立ち向かう

131ー若の日?

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「殿下も大きくなられましたね」
「そうなのよ、ミリーさん。急に成長されたわよね」
「ソフィさんが言ってましたけどぉ、夜中に身体が痛くなる事があるそうですよぅ」

 お、成長痛だね。俺はそんなの全くなかったけど。だからってチビだった訳じゃないぞ。普通だ。平均よりちょい高い位だ。前世だけどな。

「もう一回り大きなサイズの物を用意しておく方が良いでしょうか?」
「え、最近作り直さなかった?」
「作りましたよ。でも成長期の男の子ってすぐに大っきくなりませんか?」
「あー、どうしよ?」
「もう後はシゲ爺の分だけなのでホワイトシャツだけじゃなくて上着も作りたいですね」

 おやおや、ルリアさんやる気だね。今ミシンが一番忙しいのじゃないのか?

「もうミシンはみんなが使えますから」

 そうなのか? いつの間に覚えたんだ? みんなスゲーじゃん。

「織機もですよ。みんな織れます」
「サキさん、またデザインして欲しいです!」

 いや、ちょっと待て待て。王子の上着をデザインさせても良いのか? またどっかのアニメから引っ張ってくるぞ。

「えぇ~、お嬢さまぁ良いですかぁ~?」
「いや、流石にそれは母さまに聞いてからね」
「はぁ~いぃ」

 で、そんな話が出たので母とティータイムの時に聞いてみた。

「良いんじゃないかしら。ついでにお父様とバルト達のも作りましょう」

 え……マジで? チャレンジャーだな。

「あぁ、このお茶美味しいわ。サキはお茶を入れるのが上手ね」

 いや、母さぁ。折角、お茶を味わっているところを申し訳ないんだけどさ、そんな事を話しているんじゃないんだよ。相変わらず呑気だな。

「構わないわよ。サキだって程々って事を知っているもの」

 え、そうかぁ~?

「お嬢さまぁ、知ってますようぅ」
「本当に?」
「はいぃ」
「じゃあ、デザインして母さまに見てもらってからね」
「はいぃ!」

 ああ、また張り切っちゃうよ。あのアニメの誰それが着ていた服とかだぜ。

「ふふふぅ」

 あんまりだったら、きっと母が止めるだろう。
 そんな平和な日々が戻っていたんだ。数日後にはシゲ爺の分も完成し、隊服も揃った。完璧じゃん、て俺達は取り敢えず満足していた。

「ココ、まだ満足してはいけない。領民達の魔石がまだ手付かずだ。ほら、ゴブリンを相当数討伐したのだろう? あの時の魔石がね……」

 と、ロディ兄は満足していないらしい。
 ちょっと平和になるとさ、人間ってそれに慣れちゃうんだよ。危機感が薄れてくる。俺は特にそうらしい。
 とっても可愛いシュンとアキ兄妹と一緒に遊んだり、霧島と遊んだりノワと散歩をしたり。例の変な夢も暫く見なかったし、毎日とっても健やかに過ごしていたんだ。

「アンアン!」
「ノワ! 行くわよ~!」
「アン!」

 俺がノワ用に態々作ってもらったフリスビー型のおもちゃ。布で作った物だ。丈夫な布を数枚重ねて、縁にはロープを入れて芯にした。それを思いっきり遠くへ飛ばす。
 ノワがそれに向かって駆けていく。
 あの時……魔物が入り込んだ時はもっと早く走っていた。ノワの全速力ってどれ位なんだろう? と思いながら投げたんだが、ノワにとっては全速力で走るほどでもなかったらしい。
 シュタッとノワがジャンプしフリスビーをキャッチした。楽勝じゃんか。あんなに遠くに投げたのに。裏の鍛練場の端から端までとまではいかないが、俺的には全力で投げたんだ。

「お嬢、甘いッスね」
「リュウ、そうなの?」
「甘々ッス」

 あ、ヒデーな。

「ノワ!」

 隆が呼ぶとノワがフリスビーを咥えて戻ってきた。尻尾を振りながら走ってくる。つぶらな瞳が可愛いぞぅ。

「行くぞッ! 取ってこぉ~いッ!」

 隆がブワンと身体全体を使ってフリスビーを投げた。

「リュウ、お前すげーな」
「お嬢、若になってるッス」
「いや、マジで。ホント、びっくりだ」
「だから、超若ッス」

 現代ッ子みたいな話し方になってしまっているが。
 隆が投げたフリスビーは、なんと鍛練場の端から端まで飛んでいったんだ。
 だが、それでもノワは楽勝だ。トップスピードじゃないんだ。なんなら尻尾もまだ振ってますよ的な余裕があるんだ。
 そして、華麗なジャンピングキャッチだ。

「アン!」

 おっと、その前に一声可愛く鳴くことも忘れない。な、余裕だろ?

「あぁ~、もうびっくりしすぎてなんも言葉がねーわ」
「ほら、また若ッス」
「なんだあれ、犬じゃねーだろ」
「だから犬じゃないッス」
「そうだったわ」
「今日は若ッスね」

 はいはい、お嬢に戻るよ。

「リュウ、ぶっちゃけノワはどれ位の距離を取れるの?」
「フリスビーッスか?」
「そう」

 フリスビーって呼んでも良いのか? この世界には無い物だと思うんだが。

「じゃあ、何て言うんッスか?」
「ま、そうだよな」
「あれ、この鍛練場位なら余裕ッス。だからそれ以上は分からないッス」
「マジかよ」
「まだ若ッスか?」
「いや、もうびっくりだよ」
「スよね。さすがフェンリル」
「ああ、そうだった」

 いかんね、隆と話しているとついつい若バージョンになってしまう。
 男同士だからさ。て、違うって。今は女児だって。

「お嬢、シュンも走るの超早いッス」
「そりゃあ、獣人だもの」
「そうなんスよ。で、流石猫獣人ッス」
「そうなの? どんなところが?」
「ピョン、クルッ、シュタッッス」

 意味不明。お前ホント語彙力が情けないことになっているぞ。いくら身体で表現するにしても残念すぎる。動きだけでは分からんぞ。

「だからぁ、超高い木の上からピョンってジャンプしてクルッって1回転してシュタッって着地するんッス」
「え……」

 なんだと!?

「そんな危ない事をさせてんのか?」
「いや、偶々っス」
「どう偶々なんだよ」
「アキが遊んでいたボールが木の上に乗ったんッス。てか、シゲ爺が乗せてしまったんス。シゲ爺も調子に乗りますからね。で、それをシュンが取れるって言って木に登ったんッス」
「何やってんだよ」
「今日は若が多い日ッスね」

 もう、なんでも良いよ。俺より1歳下なのにさ、索敵はできるし身体能力も半端ねーってどうなってんだよ。ノワといいシュンといい、怪我すんじゃねーぞ。
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