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第4章 立ち向かう

130ー休憩させないと

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 子供って凄いなぁ。アッという間に成長するんだ。て、俺も今は子供なんだった。
 シュンとアキは最近辛い事があったばかりだ。なのに、もう先に進んでいる。毎日朝から王子と一緒に走って、それからクリスティー先生や母に勉強を教わったりマナーを教わったりしているそうだ。

「あの子達、本当に良い子よ。なんでも素直に覚えるのよ」

 と、母がベタ褒めだった。
 そして、午後からはアキがお昼寝するんだ。まだ幼児だからな。
 その時、シュンは何をしているのかというと、じーちゃん達や霧島と一緒に剣の鍛練をしているんだ。

「おれ、強くなるんだ! じーちゃん達みたいにカッコよくなりてー!」

 と、言っているそうだ。そんな事を言われたらじーちゃん達は嬉しいに決まっている。
 じーちゃん達だけでなく、シゲ爺までシュンを可愛がっている。
 そして、アキが起きたら一緒に使用人について庭師の手伝いをしたり、鶏舎や牛舎にいる魔物の世話をしている。
 危なくないか? と、聞いた事があるんだが。

「まさか側には行かせませんよ。ちゃんと見てますから大丈夫です」

 と、使用人が言っていた。
 周りの皆にも可愛がられ、シュンは目標を決めたみたいだ。

「おれ、大人になったら領主隊に入るんだッ! じーちゃん達と一緒に魔物をやっつけるんだッ!」

 なんて可愛い事を言っているらしい。じーちゃん達長生きしなきゃだぞ。
 領主隊に入ったシュンと一緒に魔物討伐しなきゃいけないぞ。大変だ。
 アキはというと、じーちゃん達は勿論なんだがクリスティー先生に懐いてしまっている。クリスティー先生が終日子供達と一緒にいる事が要因なんだけど。
 でも、アキはクリスティー先生から回復魔法を教わっている。
 防御壁を破られた時も、ヒールの範囲回復をして俺達を驚かせた。それが嬉しかったらしいんだ。自分も役に立てる事があるんだと思ったそうだ。
 それから、クリスティー先生について補助魔法を学んでいる。補助魔法とは、攻撃力を上げるブーストや防御力を上げるプロテクト、そして回復魔法だ。自分にではなく、一般的に自分以外の人を癒したり守ったりする魔法に興味があるのだそうだ。教えているクリスティー先生が言うには。

「アキちゃんは光魔法の適正があるのですよ。獣人にしては珍しいのでっす。そして、魔法のセンスが抜群でっす」

 と、言っていた。クリスティー先生も楽しそうに教えている。この兄妹は健気だ。俺は最初に保護した時、その場に居て悲惨な状態だったのを見ている。だから余計にそう思う。
 あんな経験をして、その上両親まで亡くしているんだ。なのに、みんなの役に立ちたいなんて健気な事を言う。俺は涙がでるよ。

「お嬢さまぁ、おじさんですかぁ?」

 ほら、咲だ。余計な事を言うんじゃないよ。折角俺が浸っているのにさ。

「サキ、おやつをもらいに行こう」
「はいですぅ」
「シュン、アキ、一緒に行こう」
「うん!」
「あい!」

 ああ、可愛い。俺は前世も今世でも末っ子だ。自分に弟や妹がいたらこんな感じなのかと思う。アキなんて超可愛い。
 そう考えるとロディ兄が俺を猫可愛がりする気持ちも分かる様な気がする。

「えぇ~、ロディ様は特別ですよぅ」

 また咲だ。本当に余計な事ばっか言うんじゃないよ。
 厨房でおやつをもらった。今日は、蜂蜜レモン味のカップケーキだ。
 レモンを蜂蜜で甘く煮て刻んだものが中に入っている。俺、これ好き。超美味しい。

「ココしゃま、おいしそう」
「ね、美味しいわよ。作業場に持って行ってみんなで一緒に食べましょうね」
「あい」

 話しながら尻尾がパタパタと動いている。ああ、可愛い。語彙力がどっかに行ってしまったが、可愛いしか出てこない。

「おやつで~すッ!」
「あら、アキちゃん。もらってきてくれたの?」

 と、1番年長さんのミリーさんが言う。

「あぁ、甘い良い匂い~」

 と、匂いに釣られて織機で生地を織っていたマニューさんとナタリーさんがやって来た。

「お茶入れますね」

 と、ルリアさんと新人さん2名がミニキッチンへと向かう。

「今日はね~、かっぷけーき!」
「まあ、美味しそうだわ」
「蜂蜜レモン味よ」
「蜂蜜レモンですか、珍しくないですか?」
「マニューさん、そう? うちではよく出てくるわよ。あたしこれ好きなの」
「お嬢様が好きだからじゃないですか?」
「きっとそうね」

 と、ナタリーさんとミリーさんが話している。
 このメンバーは休憩だと言わないとずっと作業をしているからな。おやつを持ってくるのが日課になってしまっている。

「ああ、太りそう」

 と、色っぽいマニューさんが言っている。

「マニューさんは少し位太っても大丈夫ですよ」
「そうよ、問題はナタリーよ」
「えぇーッ、あたしですかぁ!?」

 と、とばっちりを受けている。

「どう? どこまで進んでいるの?」

 おやつになるとこの場所と決まってしまった中央の広いテーブルに着いて俺が聞いた。皆も椅子を其々持ってきている。

「最後のシゲ爺の分に取り掛かってますよ」
「もうそんなにできたの?」
「はい、みんな張り切ってますからね」

 みんなに頼んでいたのは、父と兄2人にじーちゃん達とシゲ爺の分だ。
 先にできた父と兄2人にはもう渡してある。じーちゃん達とシゲ爺は一緒に渡そうと話していた。
 母はもう既に試着もして満足している。父や兄達の評判も上々だ。

「まさか、咲にこんな才能があったなんて」

 と、驚かれた。なんせ前世のアニメを参考にしたデザインだ。この世界ではちょっとハイカラなんだよ。
 ハイカラだよ。ハイセンスとかじゃなくてな。そこまで最先端じゃない。でも、ありそうでないデザインとでも言うのか。
 何より、生地が良い。今までのものとは比べ物にならない位着心地が良い。身体の動きを妨げないんだ。
 これは大きい。魔物を討伐したりする際に自分の身体能力を100パーセント出せるという事だからな。大事だ。


   ◇            ◇            ◇

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