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第4章 立ち向かう
129ーとにかく可愛い
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「おや、ココ様は何を召し上がっているのですか?」
「クリスティー先生、マドレーヌです。美味しいですよ」
「私も頂きましょう」
はいはい、ほらすぐにメイドのおねーさんが動いているよ。
廊下から大きな声が聞こえてきた。
「だから俺の力は強すぎるんだよ!!」
「ワッハッハッハ!! なんだそれはッ!」
ああ、じーちゃん達と霧島だ。ノワもいるのかな?
「あ、母さま。シュンとアキにはビックリしましたッ」
「ふふふ、そうでしょう」
「母さまは知っていたのですか?」
「ええ、ついさっきね。防御壁を破られた時にちょうどその話をしていたのよ」
「小さな子供は成長が早いですねッ」
クリスティー先生、そういう事なのか?
「シュンとアキは獣人でっす。この領地や国には殆どおりませんね。これからは2人を見守っていこうと思ってまっす」
色んな意味で見守るんだろうな。だって実験大好きなクリスティー先生だから。
「ココ様、失礼な事を考えてますか?」
「いいえ、クリスティー先生」
俺は読まれやすいんだった。気を付けよう。
しかし、俺は前世でも縄張り争いの様な事も無きにしも非ずだった。なんせ、一応は看板を出している組の若頭だ。そんな自分の立場も理解していた。だからという訳ではないが、誰かに突然襲われるかも知れないと覚悟をしている。そんな状況に慣れているんだ。
だが、この邸の者達はそれ以上だ。だって、前世の世界には魔物なんていないんだから。
防御壁が破られた。そこから魔物が入って来た。そして、黒装束の男達もだ。そんな事があったのに、どうだ。この日常感は。
メイドのお姉さんまで、日常に戻っている。いや、正確な事をいうと後片付けに忙しそうだ。ついさっきまで剣を手にしていたのにさ。
俺の記憶が戻る前はどうだったのだろう。まだ8歳の女の子がこんな事があっても平気だったのだろうか?
「お嬢さまぁ、何難しい事を考えてんですかぁ?」
「サキ、なんでもないわ」
なんでもないさ。きっと考えても仕方ないことなんだ。だって、今は俺なんだから。
それからの作業場のみんなの集中力はとんでもなかった。
あの時、魔物が押し寄せていた時に皆同じ事を思ったんだ。もっと早く隊服を作っていればと。当然、隊服を例の特殊な生地で作ったからといって、魔物に何をされても大丈夫という訳ではない。訳ではないのだが、それでも少しでもと皆思ったんだ。
だから、作業場も新しくなった事だし急ピッチで作業は進んでいった。
とにかく糸から生地にしないと話は進まない。
今まで1人織機担当で頑張ってくれていたマニューさんにみんな教わり、織機3台がフル稼働だった。
そうして出来上がった生地を業者へと渡し隊服を縫ってもらう。
俺は、ちょっと心配だったよ。そんなに必死で働いて欲しかった訳じゃないんだ。
どっちかというと、のんびり自分のペースで働いて欲しかった。
それが、アッという間にみんな技術を習得したんだ。そして、次から次へと要望に応えていった。よく頑張ってくれている。充分過ぎる程なんだ。
なのにだ。今まで以上のピッチで動き出した。大丈夫か? 無理していないか?
倒れたり怪我したりしないでくれよ。と、俺は心の中で祈った。
「お嬢様、みんなそんな柔じゃありませんよ」
「でも、ミリーさん。心配なのよ。本当に無理しないでね」
「お嬢様! 甘いおやつがあればモチベーションアップですッ!」
とは、1番年下のナタリーさんだ。
「本当ね、甘いものは皆大好きだから」
と、誰よりも甘党なミリーさんが言う。
「そんな事、任せてちょうだい」
「お嬢様、有難うございます」
そんな事で良いならいくらでも持ってくるさ。
俺は、恵まれているんだな。家族にも周りの人達にも。
「ココしゃま~」
「こら、アキ。邪魔したらダメだよ」
「あら、シュンにアキ」
「ココ様、邪魔じゃねーか?」
「大丈夫よ。どうしたの?」
「俺たちココ様のマネをして書いてみたんだ」
「あら、何をかしら?」
シュンが手に持っていた紙をひろげた。A4サイズを2枚並べて繋げた程度の紙だ。
そこには、可愛いイラストと一緒に文字の一覧表が書かれていた。
「お上手ッ!」
「お嬢さまぁ、何ですかぁ?」
「サキ、見てよ。シュンとアキが書いたんですって」
俺は咲や皆に見える様に広げて見せる。
どうだよ? こんなちびっ子が書いたと思えない出来じゃないか?
「まあ、上手ですぅ」
「本当に上手ね。子供らしい文字が可愛いわ」
ちょっと丸っこい文字に子供らしいイラスト。ほんわかしていて俺はとっても良いと思う。
「エヘヘ~」
「そ、そうか?」
「シュンとアキ2人で書いたの?」
「アキね~、色塗ったの~」
「俺が下書きしたんだ。アキは色を塗ったり花を描いたり」
「凄いじゃないッ」
大人やプロが描いた様にきっちりとはしていないんだ。色だって所々大幅にはみ出ているところだってある。でも、ちゃんと花だとかウサギだとかは分かるんだ。文字もつい最近覚えたにしては上出来だよ。少し辿々しいところはあるけれど、それでも上手に書けている。何という文字か分からないなんて事は一切ない。きっと丁寧に書いたのだろう事が伺える。
「クリスティー先生、マドレーヌです。美味しいですよ」
「私も頂きましょう」
はいはい、ほらすぐにメイドのおねーさんが動いているよ。
廊下から大きな声が聞こえてきた。
「だから俺の力は強すぎるんだよ!!」
「ワッハッハッハ!! なんだそれはッ!」
ああ、じーちゃん達と霧島だ。ノワもいるのかな?
「あ、母さま。シュンとアキにはビックリしましたッ」
「ふふふ、そうでしょう」
「母さまは知っていたのですか?」
「ええ、ついさっきね。防御壁を破られた時にちょうどその話をしていたのよ」
「小さな子供は成長が早いですねッ」
クリスティー先生、そういう事なのか?
「シュンとアキは獣人でっす。この領地や国には殆どおりませんね。これからは2人を見守っていこうと思ってまっす」
色んな意味で見守るんだろうな。だって実験大好きなクリスティー先生だから。
「ココ様、失礼な事を考えてますか?」
「いいえ、クリスティー先生」
俺は読まれやすいんだった。気を付けよう。
しかし、俺は前世でも縄張り争いの様な事も無きにしも非ずだった。なんせ、一応は看板を出している組の若頭だ。そんな自分の立場も理解していた。だからという訳ではないが、誰かに突然襲われるかも知れないと覚悟をしている。そんな状況に慣れているんだ。
だが、この邸の者達はそれ以上だ。だって、前世の世界には魔物なんていないんだから。
防御壁が破られた。そこから魔物が入って来た。そして、黒装束の男達もだ。そんな事があったのに、どうだ。この日常感は。
メイドのお姉さんまで、日常に戻っている。いや、正確な事をいうと後片付けに忙しそうだ。ついさっきまで剣を手にしていたのにさ。
俺の記憶が戻る前はどうだったのだろう。まだ8歳の女の子がこんな事があっても平気だったのだろうか?
「お嬢さまぁ、何難しい事を考えてんですかぁ?」
「サキ、なんでもないわ」
なんでもないさ。きっと考えても仕方ないことなんだ。だって、今は俺なんだから。
それからの作業場のみんなの集中力はとんでもなかった。
あの時、魔物が押し寄せていた時に皆同じ事を思ったんだ。もっと早く隊服を作っていればと。当然、隊服を例の特殊な生地で作ったからといって、魔物に何をされても大丈夫という訳ではない。訳ではないのだが、それでも少しでもと皆思ったんだ。
だから、作業場も新しくなった事だし急ピッチで作業は進んでいった。
とにかく糸から生地にしないと話は進まない。
今まで1人織機担当で頑張ってくれていたマニューさんにみんな教わり、織機3台がフル稼働だった。
そうして出来上がった生地を業者へと渡し隊服を縫ってもらう。
俺は、ちょっと心配だったよ。そんなに必死で働いて欲しかった訳じゃないんだ。
どっちかというと、のんびり自分のペースで働いて欲しかった。
それが、アッという間にみんな技術を習得したんだ。そして、次から次へと要望に応えていった。よく頑張ってくれている。充分過ぎる程なんだ。
なのにだ。今まで以上のピッチで動き出した。大丈夫か? 無理していないか?
倒れたり怪我したりしないでくれよ。と、俺は心の中で祈った。
「お嬢様、みんなそんな柔じゃありませんよ」
「でも、ミリーさん。心配なのよ。本当に無理しないでね」
「お嬢様! 甘いおやつがあればモチベーションアップですッ!」
とは、1番年下のナタリーさんだ。
「本当ね、甘いものは皆大好きだから」
と、誰よりも甘党なミリーさんが言う。
「そんな事、任せてちょうだい」
「お嬢様、有難うございます」
そんな事で良いならいくらでも持ってくるさ。
俺は、恵まれているんだな。家族にも周りの人達にも。
「ココしゃま~」
「こら、アキ。邪魔したらダメだよ」
「あら、シュンにアキ」
「ココ様、邪魔じゃねーか?」
「大丈夫よ。どうしたの?」
「俺たちココ様のマネをして書いてみたんだ」
「あら、何をかしら?」
シュンが手に持っていた紙をひろげた。A4サイズを2枚並べて繋げた程度の紙だ。
そこには、可愛いイラストと一緒に文字の一覧表が書かれていた。
「お上手ッ!」
「お嬢さまぁ、何ですかぁ?」
「サキ、見てよ。シュンとアキが書いたんですって」
俺は咲や皆に見える様に広げて見せる。
どうだよ? こんなちびっ子が書いたと思えない出来じゃないか?
「まあ、上手ですぅ」
「本当に上手ね。子供らしい文字が可愛いわ」
ちょっと丸っこい文字に子供らしいイラスト。ほんわかしていて俺はとっても良いと思う。
「エヘヘ~」
「そ、そうか?」
「シュンとアキ2人で書いたの?」
「アキね~、色塗ったの~」
「俺が下書きしたんだ。アキは色を塗ったり花を描いたり」
「凄いじゃないッ」
大人やプロが描いた様にきっちりとはしていないんだ。色だって所々大幅にはみ出ているところだってある。でも、ちゃんと花だとかウサギだとかは分かるんだ。文字もつい最近覚えたにしては上出来だよ。少し辿々しいところはあるけれど、それでも上手に書けている。何という文字か分からないなんて事は一切ない。きっと丁寧に書いたのだろう事が伺える。
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