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第3章 領地の防御

101ー咲の趣味

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「なんだとぉッ!! 私の留守を狙ってかッ!!」
「あなた、お義父様達がいらしたので大丈夫ですわ。それに、スライムなんかには負けませんわ」
「おぉうッ!! そうだなッ! スライム如きメイド達だけでも楽勝だなッ!」

 あ、やっぱそうなんだ。うちのメイドさん達強いんだね。

「ココ、生地はあるのかな?」

 ロディ兄、突然話が変わったぞ。

「はい、ロディ兄さま。黒でしたらありますよ」
「じゃあそれでいつも作っている店で作ってもらおう。こうなったら急ごう。お祖父様、それでも良いですね?」
「構わんぞ! でも、ココが着ていた様なのが良いぞぅッ!」

 え、気に入ったのか?

「あれは、カッコよかったッ! リュウも揃いだっただろう?」
「はい、そうッス」
「ココ、デザインは誰がしたのかな?」
「サキです」
「テヘッ」

 咲が顔の横でピースしながらウインクしている。あざとい。この場でそのリアクションは違うと思うぞ。
 え? て言うか王子の話はもう終わりなのか? 大きな出来事だと思うぞ?
 と、俺は思っていたんだけど、どんどん話は服の方へと進んでいく。

「ココ様、今話しても仕方がないのですよ。フィル君の目が覚めてからでっす」

 なるほどね。

「サキにそんな才能があるなんてね」
「ロディ兄さま、才能というか……サキの好みです」
「そうなのかい?」
「はい。そうです」
「ねえ、ロディ。この際だから隊服も一新しましょうか? どうせこれから作るのだし」
「おうッ! それは良いなッ!」

 あらら、父や母まで乗り気だよ。

「サキ、デザインを考えてみてくれないかしら?」
「奥様ぁ、良いんですかぁ?」
「母さま、サキの趣味ですよ?」
「いいわよ。だってメイド服の時だってサキが考えたの可愛らしかったわ」
「はいぃ! 頑張りますぅ!」

 あらら、何か変な事になってしまったぞ。
 咲、自慢気にしてるんじゃないよ。

「エヘッ!」

 ああ、あざとい。あざとすぎるぜ。ウインクしてんじゃねーよ。

「それと、父上。盗賊団に捕らえられていた人達を保護したのです」
「ああ、聞いている」
「その内、女性2名は国へ帰りたいと申しております」
「ああ、それならワシがレオシスのところまで盗賊団を護送する際、一緒に連れて行こう」
「お祖父様、お願いできますか?」
「おうッ、そりゃあ国には帰りたいだろう。保護した者達の体調も考えてしばらくはここで養生させてやりたい」
「お義父様、それはもちろんですわ」
「それ以外の者はどうするんだ?」
「あなた、小さな兄妹ですのよ」
「そうなのかッ!?」

 そうなんだよ、まだ子供なんだ。

「父さま、まだ7歳と3歳です。シュンとアキといいます」
「なんだとぉッ! そんな小さな子供をッ!」
「あなた、聞いて下さいな。国には家族もいないそうなのです。最近起こった暴動に巻き込まれて、両親を亡くしたそうなのですよ」
「なんとッ!! かわいそうな事をッ!」
「ですので、ここで保護しようと思いますの」
「ああ、それが良いぞッ!」
「サキ、連れてきてちょうだい」
「はいぃ、奥様ぁ」

 他所ではどうだか俺は全然知らないが、うちでは保護する子達だけでなく、働く人達も1度は必ず父と母に面談するんだ。これは父だけでなく、ずっと代々の辺境伯が続けてきた事らしい。
 別に何か特別な事をする訳ではない。ただ会って少し話をするだけだ。

「失礼しますぅ」

 咲が2人を連れて入ってきた。緊張しているのか、驚いているのか咲の後ろに隠れている。

「シュン、アキ、私の父さまと母さまよ。ご挨拶できる?」
「ココさま……はい」

 兄のシュンに半分隠れながらもアキも出てきた。

「シュンです。ほら、アキ。挨拶できるか?」
「う……アキでしゅ」
「お利口さんだわ。シュン、アキ、こちらにいらっしゃい」

 母が2人に向かって手を伸ばす。

「はい」

 兄のシュンがアキと手を繋いで母の元へとゆっくりと移動した。
 そして、母が2人をそっとふんわりと抱き締める。

「怖かったわね。辛かったわね。悲しい思いもしたのね。もう大丈夫よ」
「え……」
「……にーしゃん」
「そうだ、もう大丈夫だぞ」
 
 父も2人の頭を優しく撫でる。

「は、はい。ありがとうございます」
「……え……グシュ……うぇ~ん」
「あらあら、大丈夫よ。もう何も心配いらないわ」

 もう大丈夫だぞ。安心していいんだ。辛い経験をしたのだろうが、うちの領地で保護されて良かったんだ。絶対に悪いようにはしないからな。大丈夫だ。
 そんな気持ちを込めて、俺も2人の背中を摩る。

「ココさま……」
「うん、大丈夫よ。父さまと母さまがちゃんと面倒みてくれるわ。これからは沢山食べて、温かいところでゆっくり眠るの。大きくなったら一緒にお勉強しましょう」
「ココさま……う、お、おれ……うわぁ~ん……」

 お兄ちゃんは今まで我慢していたのだろう。やっと泣けたんだ。大丈夫だからな。
 2人は一頻り泣いた。その後は晴れ晴れとした笑顔になっていた。小さな2人がこの地に足を下ろした瞬間だ。
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