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第2章 王都からの刺客!?
49ーぶどう畑
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馬車がゴトゴトと進む。教会から街を出て、畑が広がる地域を通り過ぎ森の直ぐそばを通り果樹園の方へと進んで行く。
「殿下、見て下さい。ほら、あの辺りがもう果樹園ですよ」
「森のすぐ脇を通るんだね」
「はい。森の養分が果樹園を豊かにしているんですよ」
「森の?」
「はい。森は魔物が生息しているので危険です。でも、それだけじゃないんですよ。腐葉土の養分が土を豊かにするんです」
「あの果樹園のある場所もそうなの?」
「はい。あそこは以前、森の一部でした」
緩やかな傾斜地に規則的に並んだぶどう棚が見えてきた。以前は森の端だった場所を少しずつ開拓し果樹園にしたんだ。
いくら、魔物が生息する危険な森だと言っても生態系を壊すことはできない。木をすべて伐採するなんて事はできない。そんな事をすれば、それこそ何が起こるか分からない。それに、森は恵みを齎してくれる事もあるんだ。
だから、少しだけだ。必要な分だけ木々を切り出し少しずつ広げて作った果樹園。その一角、水はけの良い傾斜地一面にぶどう畑がある。その並びに小規模だがワイナリーがある。果樹園の奥、森側にはちゃんと魔物避けの防御壁もある。
「広いんだね。あれが全部ぶどうなのかい?」
「そうですよ。凄いでしょう?」
「ああ、初めて見たよ」
良い天気だ。ぶどう棚に絡まるぶどうの葉の緑色が青空に映える。
俺は前世、ぶどう畑なんて見た事がなかった。あれが、ぶどう棚と言う事すら知らなかった。その事を考えると、今の方が自然に囲まれて豊かな生活をしているのかも知れない。ま、スマホやPCが無いのはちょっとだけ不便だけどな。
「お嬢さまぁ?」
「ん? 何でもないわ」
「もう着きますよぅ」
「うん」
ぶどう畑に到着して馬車から降りると1人の老人が走って来た。おいおい、走って大丈夫か? て、位の老人だ。元気に叫びながら手を振り走って来る。
「おじょうーーー!!」
なんだなんだ? この世界の老人は元気だな。
「お嬢、シゲ爺さんッス」
ん? シゲ爺さん……ああ、思い出した! 俺が、育てて欲しいと色々無茶言った爺さんだ。
本名を、シゲルーチェと言う。賢そうな名前がまた似合わないんだよ。髪はもう全部白髪で、前と頭頂部の毛がない。横と後ろにだけ、もしょもしょした白髪があるんだ。それに、いつも小汚い格好をしていて、手に杖を持っている。使っているところを見た事ないんだけどな。一体、何の為の杖なんだろう。もしかして、武器か?
だが、このシゲ爺さん。できる男なんだぜ。森にあった木を植樹して立派に育て上げる。シゲ爺さんの右に出る者はいない。本当は凄い爺さんなんだ。
「シゲ爺!!」
「お嬢! 大っきくなったなぁ! アハハハ!」
俺は思わずシゲ爺さんに飛び付いてしまった。そんな俺を受け止め抱き上げるシゲ爺。腰は大丈夫か?
「シゲ爺、元気にしてた?」
「あたりめーだ! お嬢も少しは令嬢らしくなったか!?」
「まあ! 失礼ね!」
「アハハハ!」
と、まあ少々口の悪い元気な爺さんだ。
「奥様、ロディ様、よくお越し下さった!」
「アハハハ。シゲ爺さん元気そうだね」
「本当、もうココは重いでしょう?」
「なぁに! お嬢くらい軽いもんだ! ワッハッハッ!」
うん、豪快だ。
「おや、こちらの坊ちゃんは?」
「シゲ爺さん、秘密だよ」
「ロディ様、何です?」
「第3王子のフィルドラクス殿下だ」
「な、な、なんと!!」
シゲ爺が慌てて俺を下ろして頭を下げる。
「ああ、やめて下さい。普通にしてください。今日は世話になるね」
「いや、とんでもねー! こんな小汚いとこによういらして下さった!」
あ、小汚いって言った。小汚いのはシゲ爺だけだぞ。
「ねえ、シゲ爺。ぶどうはどう?」
「ああ、今年もよくできたぞ。美味いぞ」
「じゃあ、ジュースも?」
「美味いぞ!」
「やった!」
「アハハハ! お嬢はジュースが好きだからなぁ」
「だって、あんなに美味しいぶどうジュースはないわ!」
「ココ嬢、そんなになの?」
「そうですよ、殿下」
「楽しみだ」
先ずは、ぶどう狩だぜ。
「ぶどうって、こうして生っているんだね。知らなかったよ」
「あたしもですよ」
「そう?」
「はい。ぶどう棚って言う事も知りませんでした。全部、シゲ爺に教わったんです」
「これ、どうやって捥ぐの?」
「実をそっと持つんです。それで、ハサミでこの硬いところを切ります。ほら」
俺は説明しながら、実際にやってみせる。房も大きい、1粒が大きいな。
「お嬢に聞いて交配を重ねた品種です。今年のも甘くて美味いですよ」
俺、何か言ったっけ? 全然覚えてないからスルーしておこう。
◇ ◇ ◇
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「殿下、見て下さい。ほら、あの辺りがもう果樹園ですよ」
「森のすぐ脇を通るんだね」
「はい。森の養分が果樹園を豊かにしているんですよ」
「森の?」
「はい。森は魔物が生息しているので危険です。でも、それだけじゃないんですよ。腐葉土の養分が土を豊かにするんです」
「あの果樹園のある場所もそうなの?」
「はい。あそこは以前、森の一部でした」
緩やかな傾斜地に規則的に並んだぶどう棚が見えてきた。以前は森の端だった場所を少しずつ開拓し果樹園にしたんだ。
いくら、魔物が生息する危険な森だと言っても生態系を壊すことはできない。木をすべて伐採するなんて事はできない。そんな事をすれば、それこそ何が起こるか分からない。それに、森は恵みを齎してくれる事もあるんだ。
だから、少しだけだ。必要な分だけ木々を切り出し少しずつ広げて作った果樹園。その一角、水はけの良い傾斜地一面にぶどう畑がある。その並びに小規模だがワイナリーがある。果樹園の奥、森側にはちゃんと魔物避けの防御壁もある。
「広いんだね。あれが全部ぶどうなのかい?」
「そうですよ。凄いでしょう?」
「ああ、初めて見たよ」
良い天気だ。ぶどう棚に絡まるぶどうの葉の緑色が青空に映える。
俺は前世、ぶどう畑なんて見た事がなかった。あれが、ぶどう棚と言う事すら知らなかった。その事を考えると、今の方が自然に囲まれて豊かな生活をしているのかも知れない。ま、スマホやPCが無いのはちょっとだけ不便だけどな。
「お嬢さまぁ?」
「ん? 何でもないわ」
「もう着きますよぅ」
「うん」
ぶどう畑に到着して馬車から降りると1人の老人が走って来た。おいおい、走って大丈夫か? て、位の老人だ。元気に叫びながら手を振り走って来る。
「おじょうーーー!!」
なんだなんだ? この世界の老人は元気だな。
「お嬢、シゲ爺さんッス」
ん? シゲ爺さん……ああ、思い出した! 俺が、育てて欲しいと色々無茶言った爺さんだ。
本名を、シゲルーチェと言う。賢そうな名前がまた似合わないんだよ。髪はもう全部白髪で、前と頭頂部の毛がない。横と後ろにだけ、もしょもしょした白髪があるんだ。それに、いつも小汚い格好をしていて、手に杖を持っている。使っているところを見た事ないんだけどな。一体、何の為の杖なんだろう。もしかして、武器か?
だが、このシゲ爺さん。できる男なんだぜ。森にあった木を植樹して立派に育て上げる。シゲ爺さんの右に出る者はいない。本当は凄い爺さんなんだ。
「シゲ爺!!」
「お嬢! 大っきくなったなぁ! アハハハ!」
俺は思わずシゲ爺さんに飛び付いてしまった。そんな俺を受け止め抱き上げるシゲ爺。腰は大丈夫か?
「シゲ爺、元気にしてた?」
「あたりめーだ! お嬢も少しは令嬢らしくなったか!?」
「まあ! 失礼ね!」
「アハハハ!」
と、まあ少々口の悪い元気な爺さんだ。
「奥様、ロディ様、よくお越し下さった!」
「アハハハ。シゲ爺さん元気そうだね」
「本当、もうココは重いでしょう?」
「なぁに! お嬢くらい軽いもんだ! ワッハッハッ!」
うん、豪快だ。
「おや、こちらの坊ちゃんは?」
「シゲ爺さん、秘密だよ」
「ロディ様、何です?」
「第3王子のフィルドラクス殿下だ」
「な、な、なんと!!」
シゲ爺が慌てて俺を下ろして頭を下げる。
「ああ、やめて下さい。普通にしてください。今日は世話になるね」
「いや、とんでもねー! こんな小汚いとこによういらして下さった!」
あ、小汚いって言った。小汚いのはシゲ爺だけだぞ。
「ねえ、シゲ爺。ぶどうはどう?」
「ああ、今年もよくできたぞ。美味いぞ」
「じゃあ、ジュースも?」
「美味いぞ!」
「やった!」
「アハハハ! お嬢はジュースが好きだからなぁ」
「だって、あんなに美味しいぶどうジュースはないわ!」
「ココ嬢、そんなになの?」
「そうですよ、殿下」
「楽しみだ」
先ずは、ぶどう狩だぜ。
「ぶどうって、こうして生っているんだね。知らなかったよ」
「あたしもですよ」
「そう?」
「はい。ぶどう棚って言う事も知りませんでした。全部、シゲ爺に教わったんです」
「これ、どうやって捥ぐの?」
「実をそっと持つんです。それで、ハサミでこの硬いところを切ります。ほら」
俺は説明しながら、実際にやってみせる。房も大きい、1粒が大きいな。
「お嬢に聞いて交配を重ねた品種です。今年のも甘くて美味いですよ」
俺、何か言ったっけ? 全然覚えてないからスルーしておこう。
◇ ◇ ◇
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