上 下
26 / 137
第一章

26ー魔道具

しおりを挟む
「紹介しましょう」

 お父様がユリウスに手招きします。

「我が家専属魔導師のユリウスです。今回、色々と魔道具を考案作成してくれております」

 ユリウスが柔らかい物腰で挨拶します。

「ユリウス・ウェールズと申します。考案作成と申しましても、ルルーシュア様の考案が殆どですので心苦しいのですが。皆様、今からお配りするブレスレットをお付け下さい」

 ユリウスと試行錯誤した結果、普段からつけられる様に豪華すぎないシンプルなブレスレットにしました。

「男性はシャツの袖の中に、女性も袖の中に。肌へ直接、接する様にお着け下さい」

 侍従と侍女から配られました。
 透明の小さな石が所々に埋め込まれた、ブレスレットです。

「これは……本当に魔道具ですか?」

 ガウェイン侯爵、そう思いますよね。だって、どう見てもアクセサリーにしか見えないですよね。

「ブレスレットをご覧下さい。透明の石が埋め込まれているのがお分かりになるでしょうか?」
「可愛いブレスレットですね。普段から着けたくなりますわ」

 エレイン嬢、良い事言いました! だって武骨な物は嫌ですもん。

「そう言って頂けると、半分成功です。これは常に着けて頂きたいのです」
「男性も常にですか」

 ガウェイン侯爵が仰ってます。

「はい、これは魔道具です。状態異常、その中でも魅了をレジストする魔法を付与しております」
「「魅了ですと…!?」」
「そんな……もう失われたスキルではないのですか?」

 侯爵様お二人が驚いてらっしゃいます。

「ルル、ご説明しなさい」

 お父様からご指示です。

「はい、では私からご説明致します。実は私、鑑定と言うスキルを持っております」
「鑑定ですか……それは一体どういった?」

 クロノス侯爵、不思議そうです。

「対象者のスキルや状態等を見る事ができます」
「それは、何といいますか……例えば、私がスキルを持っていれば自由に見る事ができると言う事ですか?」
「お父様、ルル様が無闇矢鱈とスキルを使って見たりなさる訳ないじゃないですか」

 あら、エレイン嬢が嬉しい事を言ってくれました!

「はい、まさかそんな不躾なことは致しません。ですが、今日お茶会で鑑定スキルを使用しました。私の婚約者であるレオン殿下からアドバイスを頂き、本日お茶会に出席されていた令嬢のお一人を鑑定致しました」
「ルル様、シャーロット・プロセル男爵令嬢ですね?」
「その通りよ、エレイン様。鑑定結果はもうお分かりだと思いますが、シャーロット嬢は魅了を使われておりました」
「「なんとっ!!」」

 令嬢のパパお二人、驚いてますね。

「レオン殿下、お願いします」

 皇子モードのレオン様に説明をバトンタッチです。

「ああ、私から説明させて頂く。魅了とは、文献でしか見る事のないスキルとお思いでしょう。確かに、実際に目で確認する事はできないので、そう思われても仕方ありません。ルルーシュア嬢の様に、鑑定スキルでもない限り。鑑定スキルを持っていても、魅了のレベルが高ければ見られない可能性があります。しかし、帝国には実際に魅了を使われた過去があるのです。それも、たった3代前の陛下の治世時にです。帝国では、ティシュトリア公爵夫人の血統に、まれにですが鑑定スキルを持った者が産まれております。3代前に魅了を使われた際も、公爵夫人の家系の鑑定スキルを持った者が見破り事なきを得ております。今回の男爵令嬢の周りの状況と似通っていた事もあり、念の為に今日のお茶会での鑑定を勧めたのです」

 侯爵お二人や令嬢も固まってますね。

「では……では、学園でのあの不自然な取り巻き様も、魅了のせいだったのですか?」

 ジュノー令嬢がポロポロ涙を流されました。

「ジュノー様、私は早くに学園を出てしまいましたので存じ上げなかったのですが、辛い思いをされていたのですね。でも、今ここにいる皆はジュノー様を助けようと集まったのですよ。皆、ジュノー様の味方です」
「ルルーシュア様、皆様、本当にどう感謝してよいのか……」

 もう、ジュノー様涙が止まりませんよ。

「さ、ジュノー。落ち着いてお話を聞こうじゃないか」
「はい、お父様」
「では、ご説明させて頂きます」

 ユリウスが魔道具の説明を始めました。

「先程も申し上げた様に、これは魔道具です。ルルーシュア様と私とで魅了を防ぐ効果を付与しております。これを着けた方が、もしも魅了を使われたら魔道具が反応してビリッと刺激があります。そして、埋め込まれた透明の石が漆黒へと変わります。腕への刺激と、石の色の変化で確認できます。先程、お話にありました様に、彼の男爵令嬢は頻繁に魅了を使用している様です。ですので、必ずこの魔道具を身に付けてご自分を守って下さい。私からは以上です。ご質問が御座いましたら……」
「これは王家の方々にも?」

 エレイン様のお父様です。

「はい、勿論です。王家の方々には早急にお渡しするつもりです。また、第2王子の誕生日パーティーに参加される主要な方々の分も作成するつもりでおります」
「そんな数をですか!」
「はい、会場内で何が起こるか予測できませんので。出来る限りの準備をしたいと思います」
「なんとも……言葉がないな……」
「この魔道具をつければ、現在魅了されている方々も正気に戻られるのでしょうか?」

 うん、エレイン様良い質問だわ。

「残念ながら、分かりません。掛けようとする魅了はレジストできますが、もう既に掛けられている魅了に関してはなんとも……。私の予測ですが、魅了されている期間にもよるのではないかと考えます。つまり、1年より1ヶ月、1ヶ月より1週間、1週間より1日です。しかし別途、状態異常を回復する解呪薬も試作中です。完成すれば魅了はとけましょう。ですが、まずは魅了を防ぐ事が大事です。お渡しした魔道具を必ず身につけて下さい。パーティー以外でもです。どこで遭遇するか分かりませんので」
「分かりましたわ。肌身離さず身につけます」
「他にご質問がなければ……では、私からは以上でございます」

 ふぅ……空気が重い……。
 紅茶飲もうっと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

処理中です...