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第一章

14ーモモちゃん男前

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 サンドキングクラブを無事に討伐し、お邸に戻ってきました。
 蟹鍋するならお野菜もね。て、事でモモと一緒にうちの庭師のニコラを探してます。
 あ、いたいた。やっぱり畑にいました。

「ニコラー!」
「おぅ、ルル嬢様。どうした?」
「ニコラ、今お野菜は何があるのかしら?」
「野菜か。今はここら辺だな」

 ニコラが指差してる方を見ると……

「ニコラ、これって……」
「ああ、ルル嬢様が小さい頃に美味しいから育てて! て、言って持ってきた野菜だ。でも食べても水っぽいからさ、あんまり食べなくなってきてな。時々スープに入れる位だ」
「ニコラ、有難う! コレ調理場に持って行って!」
「ルル嬢様、食べるのか?」
「そうよ。今日はこのお野菜で蟹鍋よ! ニコラも食べてね」

 ニコラは白菜を二畝も作ってくれていました。横には大根も。これで蟹鍋できるわ。
 あとはぽん酢よね。んー、ぽん酢は無理っぽいなぁ。
 どうしようかなぁ。て、目線の先に黄色い丸い物が……

「ねえ、ニコラ。もしかしてあの黄色いのも私が育ててって言った?」
「ああ、そうだよ。隣の小さいグリーンの実もだ。小さいルル嬢様が、苗木を抱えて引きずって持ってきたんだ。だいぶ増えただろ? どっちもレモーネ程酸っぱくないし、香りがいいからって、副料理長がよく使うんだ」

 子供の頃の私って、何しているのかしら。苗木を探して持って来たの? どんな幼児よ。ちょっと怖いわ。

「ニコラ、これも調理場に持って行ってほしいわ。こっちのもお願い。んー後は醤油よね……」
「あるぞ」
「嘘……」
「豆から作った黒い調味料だろ? あれは今でも料理長が使ってる筈だぞ。魚の出汁に良く合うって言ってな」
「そうなの? 魚の出汁? 全然気付かなかったわ」
「うちの領の食べ物が美味しいのは、ルル嬢様のおかげだ」

 マジですか……私、本当に色々やらかしてたんだわ。でも全然覚えてないんだけど。
 きっと自分が食べたかっただけなのね。日本て食べ物は美味しいし豊富だもんね。

「ルル嬢様が学園に入学して王都に行ってから、帰ってこれなかったからな。忘れてしまったんだろ」
「でも……ニコラ、変わらず育ててくれて有難う」
『ルル、リアンカが探してるわ』

 あら、モモ。そうなの? 何かしら?

「じゃあ、ニコラ。お願いね」
「ああ、分かった」


「ルル様ー!」
「リアンカここよ。どうしたの?」
「ルル様、モモちゃんも。旦那様と奥様がお呼びです」

 やだ、私また何かしたかしら?

「サロンでお待ちですよ」
「分かったわ。モモもなの?」
「はい、そうです。モモちゃんが喋れる事が知れましたよ」
「あぁー、別に隠してた訳じゃないのよ。タイミングがね、なくて」
「わふぅ」


 さて、サロンです。
 お父様にお母様、ラウ兄様ジュード兄様、レオン様、執事のガイウスに薬師のディアナ、魔導師のユリウス、お母様付の侍女で兄妹の母親でもあるエポナもいます。
関係者全員集合ね。

「お父様、お母様、お呼びですか?」
「ルル、少し話を聞きたくてね。座りなさい。モモもだ。全員集まって貰ったのは、皆で共有しておきたかったからだ」

 座ったら直ぐにリアンカが紅茶を出してくれました。

「先に少しいいかしら? ラウアース」
「母上、なんでしょう?」
「貴方達、その香ばしい匂いは何かしら?何を食べてきたの?」

 お母様鋭い! 港で焼き蟹食べたから匂いが着いてるのね。ヤダわ。

「母上、匂いが付いてるとはすみません。これは港でサンドキングクラブを焼いて食べた匂いです」
「貴方達、本当にあのサンドキングクラブを食べたの!?」
「はい、母上。焼いても中の身はジューシーで美味しかったですよ」
「お母様、まだまだサンドキングクラブは沢山あるので夕食に焼き蟹と、蟹鍋をして食べましょう!」
「ルル、そんな問題ではないのよ。貴方はもう、領主の令嬢なのに。学園に入って少しはおとなしくなったと思ってたのに」

 やだ、心外だわ。

「お母様、私は元々おとなしいですよ」
「ブフッ!! 天然かよ!」

 またレオン様が噴いてるわ。失礼ね。

「良いではないか。ルルは変わらず可愛いぞ!」

 お父様も変わらず脳筋です。

「まあ、いいわ。あなた、お話を進めて下さい」
「ああ。ルル、モモの事をユリウスに聞いたんだが、話せるとは本当なのか?」
「はい、お父様。別に隠すつもりもなかったのですが。モモ、何かお話してくれる?」 
「フェンリルに戻ってから話せる様になったのよ。変わらずルルを守護するから宜しくね」
「本当に喋った……」

 お父様、お口が開いてます。

「でも父上。シルバーフェンリルは神の眷属ですから、意思疎通ができても不思議ではないのでは?」
「ラウアース様、その通りです。私も今日初めてお話したのですが、モモちゃんは守護しているルル様だけでなく、他の者とも普通にお話ができるのですね。素晴らしい事です。ですが……」
「ユリウス分かってます。公にはしない方が良いのですね」
「はい、奥様。その通りです。急ぎ、ティシュトリア家の紋章入りの首輪を用意しました。軽く結界と盗難防止も付与しています。フェンリルだと言うだけでも珍しいのに、眷属で話せるとなると……」
「知れたらあのバカな王家が何を言ってくるか、分かったものじゃないわね」
「奥様……」

 お母様、よっぽど王家が嫌いなのね。

「ルル、モモ、聞いた通りだ。外部の人には気をつけなさい」
「分かりました。お父様」
『モモちゃん、なんか大変な事になってるわ』
『そうね。でもね、ルル。フェンリルの私にかなう人間はいないわ』
『そうだろうけど……モモ、気をつけるに越した事ないわ』
「わふん……」

「父上、モモに関してもう一つあります」
「ラウアース、なんだ?」
「ルル、今日キングクラブ討伐の時に、モモは魔法を使わなかったか?」

 あー!! そうだった! 忘れてた!

『モモちゃん! ヤバイわ!』
『ルル、いいのよ。今世のルルの家族は信用しているわ』
「私は神の眷属です。縁あって前世からルルを守護してます。魔法の一つや二つ、使えても不思議ではないでしょう? 今後、ルルが討伐に出るなら、私も今迄通り一緒に出ます。今迄は能力が解放されていなかったし、小さくて何も出来なかったけど、これからは必要なら魔法でルルをサポートします」
「モモちゃんッ!!」

 お母様がモモに抱きついてます。

「わふっ!」
「モモちゃん、ルルをお願いね。ルルなら大丈夫だと分かっていても、私は心配なのよ」
「大丈夫よ。ルルは私が守るわ」
「私も守るぞ!」
「俺だって、傷一つ付けさせないさ」
「俺もだ!」
「ルル嬢、良かったな」

 前世にはなかった気持ちが湧き出てきます。

「私は大丈夫です。でも、お父様お母様お兄様の家族で心から良かったと思います。有難うございます」
『モモ、有難う』
『ふふ、前世にはなかった家族の愛情ね』
『そうなのね』

 こうして、モモの事もすんなり受け入れられました。
 さ、これから蟹パーティーよ!

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