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自己紹介をしよう

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そもそもクレナイには僕がおじいちゃんに拾われて、育てられた理由から話さなければいけなかった。

僕は純粋な人族ではなく、おじいちゃんと同じ竜人族……のうす~い血を引く「まじりもの」だ。殆ど人間と変わりないのだけど、そんな僕をおじいちゃんが拾って育ててくれた。


「同胞を放ってはおけんさ」


おじいちゃんはそう笑っていたけど、死んだ両親のどちらかだって自分の祖先に竜人がいたなんて気づいていただろうか?

おとぎ話程に語られる希少な竜人が竜の姿で現れた時、幼い僕は驚いて悲しみの涙も引っ込んだ気がする。


―――――――――



自覚として僕自身は人族なんだけど、本当に極わずかな所で竜人としての能力が備わっているらしい。

体力も知力も人族のそれで、それが何なのか今までずっとわからなかったけれど、まさか竜人や獣人にしかないと言われる番いがいたとは驚きだ。


「つがい……番い、なの?クレナイが?僕の?」


「おやスイには自覚無しだったのかね?既に深い結び付きができておるぞ。……ちと一方的が過ぎるようだがの」


少し目を細めて僕を見る、おじいちゃんの紫色の瞳には何が見えているのだろうか。


「祖父殿、そのツガイとはなんだ。番い……番う相手、伴侶という認識でいいか。異世界から引き寄せた、とはどういう意味か」


クレナイの言葉に、おじいちゃんはふむと呟いて宙を見た。ああそうだ、僕は番いという部分に驚いたけれど、他にも分からない点は沢山ある。

クレナイの口から聞いていなかった、彼がここに来る理由が僕なのかもしれない。彼の「里」から僕が引き離してしまったのかもしれないのだ。


じわりと緊張する空気を打ち払うように、おじいちゃんは両手を打つとカラカラと笑った。


「そうであった、自己紹介がまだであったな!私はジズル、この子の育ての親だ。孫が欲しかったのでな、じいちゃんと呼ばせておるがまだピチピチの400歳の竜人であるぞ。可愛い嫁と無愛想な息子が竜王国におる」


さあおまえ達の番だと促されて、僕は今更ながらの自己紹介をした。


「えっと?スイ、です。両親は小さい頃に無くなって、それからおじいちゃんとこの森で暮らしてます。昔むかしの祖先に竜人が居るみたいだけど、僕は全然普通。25歳になるかな?」


クレナイ相手に今更なのかもしれないけど、思い起こせば僕たちの最初の頃は言葉も通じなくてこんな話もしていなかった。改まって話すタイミングもなかなか無くて、想いが通じあった今どこかで話そうと思っていた話が出来たのは、ちょうど良かったのかも知れない。


「む?スイもう25か!早いの~!おじいちゃんがこの家を出てからまだ1年程度かと思っていたが……それは番も出来てしまうなあ」


「おじいちゃんが居なくなってからもう5年半……6年も経つよ?」


この家はおじいちゃんの隠れ家だ。四方を深い木々に囲まれたユノスの森は、竜形態になっても目立たなくて良いからとその昔笑って話ていた。

人族には恐ろしい魔物だって、竜人を怯えて近づいてこないのだから凄い。


「ふむ、それは悪いことをした。どうも我々は時間の感覚が違うからいなんなあ。スイもこの家から離れて自由にしても良かったのだぞ?」


「ううん、ここはおじいちゃんとの大事な家だし……僕が守りたかったんだよ」


長命種であるおじいちゃんとの時間の流れは全く違う、けれども育ててくれたおじいちゃんとの思い出を、僕は少しでも守りたかった。


「ス、スイ……っ!可愛いやつめ~~!!!」


がば、と僕に抱きつこうとするおじいちゃんを、相変わらず僕を膝に抱えるクレナイが制した。


「祖父殿、スイは私の伴侶だ。例え育て子であろうとも易々と触れてもらっては困る」


「むむ、なんと心の狭い……。異界の者とはいえ番いとは竜人と執着っぷりが変わらんのかの、全く私の可愛い孫が……」


守るように僕をきつく抱きしめるクレナイ。嬉しいような、恥ずかしいような。まだ僕はこの距離感に慣れていないのだ。


「では最後にオレも。……クレナイ、オレの里では紅の意味を持つ名だ。xxxの一族の者であり、里は恐らく戦火にのまれ同胞は殆どが死んだだろう。祖父殿の言う通り、ここではない世界から来たと考えている」






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