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口づけ ※

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 なぜ、こんなことを? これは口づけだろう?僕は男で君の親で――問いただしたい事はたくさんあるのに、急に真剣な瞳に射貫かれて何も聞けなくなる。

 空気が、変わった。

 ただの宿の一室が、神聖な場に変わったような気さえする。
 クレナイの纏う空気が聖なるものに変化し、言葉を発することすらおこがましく感じられ、指の一本すら動かすことは憚られる。
 静かに、二つの赤が隠された。

「xxxx、xxxxxxxxx―――」

 クレナイはまだ息の整わない僕の両手を握りしめ目を閉じると、出会った頃の聞き慣れ無い言葉で何かを呟やき始めた。それは低く甘い美声が、どこか異国の歌を歌っているようでもある。
 神秘的な雰囲気のこの室内で、僕は閉じられた瞳に落ちる睫毛の影をじっと見つめてしまった。

「xxxスイxx、xxクレナイxxxxxxxxx――――」

 あ、僕の名前を言っている。
 長い長い歌を聞いたようだ。滞りなく流れるその言葉を聞きながら、長いような短いようなそんな時間を僕はじっと見守る。
 そうして見つめていた、彼の瞼がゆっくり開いた。

 僕は、言葉を失った。

 酷く嬉しそうな、まるで大輪の華が開くように微笑むクレナイ。
 愛しさと喜びが混じったその顔は、決して養い親に向けるものではなく。

「スイ、愛してる」

 蜂蜜のような甘い声を耳元で囁かれ、そっと彼の腕の中に閉じ込められた。

「ずっとこうしたかった。スイが俺の事こどもとしか見てないのは知ってる。
 でも好きな相手に離れていけなんて言われるなら、俺はもう我慢したくない。俺は一度も、スイを親だと思ったことはないよ。初めて会った時から、ずっとスイが好きだったんだ」

 僕だって、クレナイが好きだ。世界で一番大切だ。でもそれは養い子としてであって家族愛だ、恋愛ではない。

「スイは俺の事好きだろう」

 頷く。
 好きだ。大切だ。その気持ちは揺るがない。

「……これは?嫌?」

 そっと小さく唇にキスを落とされる。

「す、き」

 ちゅっ、ちゅっ、と啄むように吸われる。合わさっては離れるその唇が気持ち良くて、離れていくそれが名残惜しい。

「じゃあこれは……嫌か?」

 優しく手を取られ、クレナイの脚の間に導かれる。
 ズボンの上から触れたそこは、とても硬く勃ち上がっていた。

「いや、じゃ……ない」

 初めて触る彼のソコは、とても熱くて大きくて。スボンの上からでもその形がはっきりと分かるくらいに張り出していた。
 初めて男の勃起したモノに触れたが嫌悪感は無かった。その事に自分でも驚いた位だ。

「あ……」

 クレナイは僕のソコにも触れてきた。触られて、僕のそれも緩く主張している事に気がついた。

「スイも勃ってる……嬉しい」

「やだ……そんなの、言っちゃやだよ……」

 そんなご機嫌な顔で言わないで欲しい。恥ずかしくて顔を上げられない。
 
「可愛い、スイ、可愛い。俺だけのxxx、スイ、愛してる」

 顔中にキスを降らせながら、クレナイは僕のズボンを引き下ろしペニスを直接触ってきた。

「あ……!?」

 初めてそこに感じる他人の感触に、僕の腰はブルリと震える。
 そのまま握りこまれると、僕のペニスは彼の大きな手の中にすっぽりと納まってしまった。
 クレナイはそのまま上下に動かす。

「ん!あ、やぁ……っ!クレナイ……っ、クレナイ!やだぁ……っ」

 強烈な快感の波が僕を襲い、思わず腰が浮く。チカチカとする視界に、クレナイの張り出したズボンが目に入った。

 お返しだとか、仕返しだとか、そんな考えは一切なかった。ただ僕が受けているこの激しい快感を、それをくれる愛し子にも与えたいと思って彼のペニスを取り出した。

「っ……!ス、スイ……ッ、スイ……」

 先走りの液体で既に濡れていたソレは、思ってた以上に大きくて熱い。巨大すぎるそれを両手で掴むと、たどたどしいながらも同じように扱いた。

「は、はぁっ、……っあ!クレナイ……クレナイ……ッ」

「スイ……スイ、好きだ、愛してる……スイ……ッ」

 ぐちゅぐちゅとした粘着質な音をさせながら、お互いのモノを扱きあった。
 いつの間にか倒れ込んだベッドの上で、切なそうに顔を歪めるクレナイの顔を見ると胸の鼓動が強くなる。

「いい……っ!クレ、ナイ……気持ちい……、ん!」

「俺も……!好きだ、スイ……スイッ」

 どちらともなく近付いて唇を重ねた。息を吸うのに離れる一瞬さえ惜しくて、舌を絡めてまた唇を合わせた。
 荒い呼吸はまるで獣のようだ。普段の自分たちからは考えられないような野生的な衝動に突き動かされるがままに、手を動かし腰を突き出して相手を誘う。

 僕は突然理解した。
 クレナイを、この男が欲しいのだと。親でも子でもなく、一人の男として求めている気持ちが、確かに自分の中にあった事を。

 こんな状況で気が付くなんてどうかしている。でも分かってしまった。クレナイが自分以外とこんな行為をするなんて、それはとても許せないと。
 幸せになって欲しいと思ってた。誰かと家族を作ればいいと本気で思っていたはずなのに、そこに生じるこの生々しい行為を失念していた。

 この艶かしく息を荒げるこの男を、他の誰かに渡せるのか。自分以外の人間と、こんな事をするのか。
 否。答えは否だ。
 そんなこと、許せる訳がない。
 自分の中にある独占欲。嫉妬心。
 今まで感じたことのない激しい感情と、ペニスに集まる激流に飲まれて狂いそうだ。

「クレ……っクレナイ……!好き……っ!すき……ぃ!」

 衝動の赴くままに声を荒げた。
 そう口にすることで、この濁流を何処かに逃せるような気さえした。

「すき……!すき……っ!んんんぅ!!」

 ギラギラとした目つきの男が荒々しく唇を蹂躙していく。息すらさせまいと言わんばかりに、角度を変えて呼吸も嬌声も全てを飲み込んだ。
 ぐちぐちと音を上げるペニスはお互いはち切れそうに膨らんで熱く硬く、高まる熱は解放を求めて集まる。

「~~っっっ!!!」  

「っ、スイ……!」

 つま先までピンと伸ばして、今まで類を見ない程の快楽を放った。
 ドクドクと熱いものが腹の上に出てくる。広がる青臭い匂いは僕だけのものじゃなかった。
 名残惜しむようにお互いゆっくりと舌を絡めて呼吸を整える。

「はぁ……っ、好き、好きだよクレナイ」

「……家族としてか?」

「ばか。そうじゃなく好きってこと……。僕だけのクレナイに、なってってこと……」

 合わせる唇がグッと深くなる。
 普段無口なこの男の感情が、この激しい口付けに現れているようだ。

「ん、……っんふ……っ」

「離さない。スイ、xxxxxxxx……」

 ぐちゅ、と動いた腰から粘着質な音がする。
 脚に硬い熱が触れていた。

「え……っ」

 さっき出した、よね?
 ガチガチに大きいままのソレに思わず目を見張る。

「ごめんスイ、もう一度……」

 色っぽい目で見つめられてゾクゾクする。でも。

「えっ、待って……僕もう……っ」

「俺が全部する。スイは寝てるだけでいいから……ちょっと足貸して」
 
「ひ、あっ!そんなの……!」

 ヌルヌルとした精液を潤滑剤にして、クレナイは僕の両足を交差させて掴みあげると、そこにペニスを差し込み腰を動かし初めた。
 そのペニスの感触と、肩で息をしながらいやらしく動くクレナイの姿を見ていると、何だか僕まで熱くなってくる。

「はぁ……っ、スイ、スイ、好きだ……xxxx……っ」

「……っう……あ」

「今度はちゃんと……っ」

 ちゃんと?なんだろう。

 クレナイのもたらす波にさらわれ、煽られ、その後何度も吐精された時には、そんな事はすっかり忘れていたのである。
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