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失恋
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失恋をした。
俺じゃないし、隣で泣いている幼馴染の森永でもない。
「だから、おまえが泣く必要はないだろ?フラレたのは田中なんだし」
俺の部屋のティッシュを惜しみなく使う森永は、大きな目を赤くして鼻水を垂らしながら悲しみにくれていた。友達に彼女ができてそしてフラレるなんて、俺たちの年代ならよくある話だろうに。
「だってさ……あんな、あんなに仲良かったじゃん田中と彼女……元カノ。それ、それなのに乗り換えられるなんて……っあんまりじゃん……っ!田中結婚考えてたのにさぁ」
いや、高校生の恋愛で結婚を視野に入れるのはだいぶ……重いぞ田中。
「はぁ……森永、友達の失恋でそんな泣いててどうするんだお前。自分が失恋したら死ぬんじゃないか?」
呆れ気味にそう伝えれば、一瞬で森永の動きが止まる。そして、まるで錆び付いた玩具のように俺の顔を眺めると。
「うえ……っうええええ……!!」
「ちょ、森永……っえっおい泣くなって!」
滝のように泣き出したから俺は慌てに慌てた。さっきまでの涙は序の口だと言わんばかりの流れっぷりだ。慌ててティッシュを引き出して森永の目元に当ててやる。
「えざきぃ~ばかぁ~あほぉ~っ!おま、おまええ~っ!」
俺の腕にしがみついて、何を想像したのか号泣しながら悪態をつくのが、俺の長年の片思いの相手だ。
一体誰を相手に失恋の想像をしたのやら。俺は意識して恋愛の話なんてした事が無かったけれど、こいつにも好きな相手が居るんだろうか。
ひっくひっくとしゃっくり上げる森永を胸に抱いて、背中をトントンと叩いてやる。少しずつおさまる涙に照れが湧いたのか、ギュッとしがみついてくる森永が可愛くて仕方がない。
「大丈夫、おまえが失恋したらまた慰めてやるよ」
伝えられないこの想いは、お前の失恋を喜ばないように努力できるだろうか?
森永の返事はない。ただしがみつく力が少しだけ強くなった。
今はしばらく、この幼馴染の距離感でお前を守るよ。
俺じゃないし、隣で泣いている幼馴染の森永でもない。
「だから、おまえが泣く必要はないだろ?フラレたのは田中なんだし」
俺の部屋のティッシュを惜しみなく使う森永は、大きな目を赤くして鼻水を垂らしながら悲しみにくれていた。友達に彼女ができてそしてフラレるなんて、俺たちの年代ならよくある話だろうに。
「だってさ……あんな、あんなに仲良かったじゃん田中と彼女……元カノ。それ、それなのに乗り換えられるなんて……っあんまりじゃん……っ!田中結婚考えてたのにさぁ」
いや、高校生の恋愛で結婚を視野に入れるのはだいぶ……重いぞ田中。
「はぁ……森永、友達の失恋でそんな泣いててどうするんだお前。自分が失恋したら死ぬんじゃないか?」
呆れ気味にそう伝えれば、一瞬で森永の動きが止まる。そして、まるで錆び付いた玩具のように俺の顔を眺めると。
「うえ……っうええええ……!!」
「ちょ、森永……っえっおい泣くなって!」
滝のように泣き出したから俺は慌てに慌てた。さっきまでの涙は序の口だと言わんばかりの流れっぷりだ。慌ててティッシュを引き出して森永の目元に当ててやる。
「えざきぃ~ばかぁ~あほぉ~っ!おま、おまええ~っ!」
俺の腕にしがみついて、何を想像したのか号泣しながら悪態をつくのが、俺の長年の片思いの相手だ。
一体誰を相手に失恋の想像をしたのやら。俺は意識して恋愛の話なんてした事が無かったけれど、こいつにも好きな相手が居るんだろうか。
ひっくひっくとしゃっくり上げる森永を胸に抱いて、背中をトントンと叩いてやる。少しずつおさまる涙に照れが湧いたのか、ギュッとしがみついてくる森永が可愛くて仕方がない。
「大丈夫、おまえが失恋したらまた慰めてやるよ」
伝えられないこの想いは、お前の失恋を喜ばないように努力できるだろうか?
森永の返事はない。ただしがみつく力が少しだけ強くなった。
今はしばらく、この幼馴染の距離感でお前を守るよ。
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