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体育の時間

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独占欲が無いのか?と聞かれたら答えはノーだ。
人並み以上に独占欲も執着心もあるつもりだし、できることなら縛り付けて俺以外見て欲しくない。

ただそれが出来る、許される関係なのか?と聞かれればそれも答えはノーだ。
ただの片思いの俺にはそんな権利はない。

だから俺はただじっと森永を見守るだけだし、行動を阻害するつもりは無い。
いつもつるんでる森永のグループの奴らが森永の肩を抱いても耐えている、つもりだ。

「よし、じゃあ2人組になれよー」

体育教師のこの提案は割と残酷だ。ボッチな訳では無いが特にクラスで特定の相手とつるまない俺はいつも最後までペアが決まらない。
とはいえクラスの男子は偶数なので、欠席でもない限りはあぶれる事はないのだが。

「森永~今日は俺と組もうぜ!」
「うえーやだよお前柔軟めっちゃおすじゃん!江崎!今日一緒にやろうぜ!」

何故かいつものグループの輪を抜けて俺のところにやってきた森永。
嬉しいが……複雑な心境だ。

「ん……あ、や……きつい、って」

「まだいけるだろ」

「ひ、やだ……む、り……えざきやめて……っ」

見ろ、柔軟体操をしてるだけでこの状況。前屈をする森永の背中を押しているだけなのに。

俺は俺の息子が反応しないようにする事に必死になるしかない。
多少強く押しても許されるだろう。

「やだぁ……裂け、裂けちゃう、からっ」

……わざとか?と聴きたくなる位、それっぽい言葉を連呼する。
だから俺は森永と組みたくないんだ。

だがそれは同時にこの声この体を他のやつに渡すと同意義であり、かなりの苦痛を伴う。
そして結局俺は、森永の身体に触れこの声を聞く甘い地獄に身を投じているという訳だ。

「ん、強くしないで……くれよ、江崎ぃ……」

「……ああ、悪い」

静まれ俺の息子。身体の固い森永の身体はいつもこんな感じだ。

「ん、いい。あいつらより優しいから助かる」

痛めた訳はないだろうに、さも痛そうに内ももを摩る。
捲りあがったハーフパンツのその内側、際どい部分の白い肌が見えて目を逸らせない。

「ふふふー!じゃあ次は江崎な!めっちゃ押してやる!」

イタズラでもらしようと企む子供のように、本当にこういう時の森永は楽しそうな笑顔を見せる。
可愛い顔が余計にキラキラと輝くんだからまいってしまう。

「……もー!おまえ柔らかすぎる!!雑技団かよ!」

そう言われても。
元々の柔軟性に加えて、毎晩のストレッチと筋トレで割と身体は柔らかい。
背中を押す必要がない程に。森永は面白くなさそうだけど。

「いいな~江崎。身体柔らかいし筋肉ついてんじゃん」

背中を押していた手で、ぎゅっと後ろから抱きつく森永。
俺の理性を試しているのか?

背中には森永の硬い胸の感触。胸の先端の感触はどこかと神経を研ぎ澄ませる俺を誰が責められようか。

「いいなーいいなーおまえの身体、うらやましー」

だから森永、腹やら胸やら触るのはやめろ。

「おーい森永江崎ー!じゃれてねーで始めっぞ!」

級友に声をかけられ見れば、周りの奴らはもうバスケットボールを手に持っていた。

俺たちは立ち上がって合流する。

「なっ、江崎。おまえ身体鍛えてるんだろ?今度、俺も一緒にしていいか?」

森永のお誘いに、俺はできるだけ平静を装って頷いた。
俺は理性を保てるのだろうか。

片思い歴が長くなり、強靭になったと信じたい無けなしの理性に期待を寄せた。
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