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暑い暑い教室で
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親世代では教室にエアコンが無かったらしい。
信じられない、と茹るような室内で机に突っ伏した。
「江崎、生きてる?」
ひょいと背中に冷たい感触。
思わずビクリと反応して身体を起こすと、楽しそうな森永の顔。
この暑さの中でよく元気だな。
森永の顔にかかる髪の毛を払ってやるとじっとりと汗ばんでいる。
なんだ、暑くない訳じゃないのか。
「はい、お土産。めっちゃ急いで帰ってきたんだぜ~。杏仁アイスとバニラ、どっちにする?」
昼休みに学校を抜け出して、いつもつるむ奴らとコンビニに行った森永の手には二つの袋。これがさっき背中に当たったのか。
見れば森永のグループの奴らの姿はない。相変わらず自由だな、多分俺にアイスを渡すために一人走ってきたんだろう。
「ん……バニラ」
「はいはーいどうぞ!」
森永の好物は決まっているのに、いつも俺に選択させてくれる。アホみたいだけどこいつなりに気を使っているんだよな。
だから俺はいつだってそうじゃない方を選ぶ。
ほら、こんなに嬉しそうな顔をするんだから。自分の買ってきたアイス一つでご機嫌だなんて可愛いじゃないか。
袋を開けて口に入れればヒンヤリと冷たい。
はあ生き返る。この蒸し暑い教室では、アイスのアイデンティティを最大限に発揮するな。
「エアコン夕方には直るって先生言ってたぜ」
「……今直してくれ。もしくは早退させてくれ」
「はははっ江崎暑いの駄目だもんなー」
森永はいつも元気だ。暑い室内はクラス全員同じ環境のはずなのに、暑くてもいつもと大差ないこいつの身体の作りはどうなっているのか。
固かったはずのバニラアイスがあっという間に柔らかくなり、溶けたアイスが手を汚した。
「わ、江崎!制服汚れる!」
もったいない、と言う幼馴染は俺のそれを舌でぬぐった。
それは一瞬だったけど、確かに江崎の唾液の感触で。
「……サンキュ」
「ん、気を付けろよー」
分かってる、小さい妹のいるこいつにとったら、気にするほどでもない些細な事なんだって。家族にするのと大差ない、普段の事なんだろう。
残っていたバニラアイスを一気に口に入れて嚥下する。
喉を潤す冷たさは身体もひやしてくれるはずなのに。
「おーい、江崎どした?腹いっぱい?」
再び机に突っ伏した俺を、森永はのんびりアイスを齧りながらツンツンとつつく。
その顔は暑さに汗ばんでいて少し上気している。
整った顔をくしゃくしゃにして笑いながら、自分だって手にアイスが垂れてきているの、気付いていないじゃないか。
ぐっとその手を寄せて、べろりと舌を這わせる。
杏仁の味と、森永の汗の味。
初めて味わう幼馴染の肌は少し熱っぽくて興奮した。
「ちょ……!江崎、そんな舐めなくても……ははっくすぐってぇ!」
ふざける行為に紛れ込ませて、俺は身体の中に籠る熱を少しだけ森永にぶつけた。
いつか本当に、お前の肌を全部舐めてやりたい。
「杏仁味だな、森永」
ちら、と視線をやれば、暑さのせいだけじゃない赤い顔をしている。
少しは意識してくれただろうか?
いや、そんなに察しの良いやつなら俺も何年も苦労はしない。
自分に向けられる好意に、一番近い俺からの行為に、鈍すぎるほど鈍いのがこの森永なんだから。
「……うまかったかよ」
「ごちそうさま」
ふてくされるように呟くけれど、付き合いの長い俺には分かる。照れてる顔だ。
ごちそうさま森永。今夜はお前の肌を思い出す事にするよ。
手洗い場に向かいながら、俺はその汗ばむうなじをジッと見つめた。
信じられない、と茹るような室内で机に突っ伏した。
「江崎、生きてる?」
ひょいと背中に冷たい感触。
思わずビクリと反応して身体を起こすと、楽しそうな森永の顔。
この暑さの中でよく元気だな。
森永の顔にかかる髪の毛を払ってやるとじっとりと汗ばんでいる。
なんだ、暑くない訳じゃないのか。
「はい、お土産。めっちゃ急いで帰ってきたんだぜ~。杏仁アイスとバニラ、どっちにする?」
昼休みに学校を抜け出して、いつもつるむ奴らとコンビニに行った森永の手には二つの袋。これがさっき背中に当たったのか。
見れば森永のグループの奴らの姿はない。相変わらず自由だな、多分俺にアイスを渡すために一人走ってきたんだろう。
「ん……バニラ」
「はいはーいどうぞ!」
森永の好物は決まっているのに、いつも俺に選択させてくれる。アホみたいだけどこいつなりに気を使っているんだよな。
だから俺はいつだってそうじゃない方を選ぶ。
ほら、こんなに嬉しそうな顔をするんだから。自分の買ってきたアイス一つでご機嫌だなんて可愛いじゃないか。
袋を開けて口に入れればヒンヤリと冷たい。
はあ生き返る。この蒸し暑い教室では、アイスのアイデンティティを最大限に発揮するな。
「エアコン夕方には直るって先生言ってたぜ」
「……今直してくれ。もしくは早退させてくれ」
「はははっ江崎暑いの駄目だもんなー」
森永はいつも元気だ。暑い室内はクラス全員同じ環境のはずなのに、暑くてもいつもと大差ないこいつの身体の作りはどうなっているのか。
固かったはずのバニラアイスがあっという間に柔らかくなり、溶けたアイスが手を汚した。
「わ、江崎!制服汚れる!」
もったいない、と言う幼馴染は俺のそれを舌でぬぐった。
それは一瞬だったけど、確かに江崎の唾液の感触で。
「……サンキュ」
「ん、気を付けろよー」
分かってる、小さい妹のいるこいつにとったら、気にするほどでもない些細な事なんだって。家族にするのと大差ない、普段の事なんだろう。
残っていたバニラアイスを一気に口に入れて嚥下する。
喉を潤す冷たさは身体もひやしてくれるはずなのに。
「おーい、江崎どした?腹いっぱい?」
再び机に突っ伏した俺を、森永はのんびりアイスを齧りながらツンツンとつつく。
その顔は暑さに汗ばんでいて少し上気している。
整った顔をくしゃくしゃにして笑いながら、自分だって手にアイスが垂れてきているの、気付いていないじゃないか。
ぐっとその手を寄せて、べろりと舌を這わせる。
杏仁の味と、森永の汗の味。
初めて味わう幼馴染の肌は少し熱っぽくて興奮した。
「ちょ……!江崎、そんな舐めなくても……ははっくすぐってぇ!」
ふざける行為に紛れ込ませて、俺は身体の中に籠る熱を少しだけ森永にぶつけた。
いつか本当に、お前の肌を全部舐めてやりたい。
「杏仁味だな、森永」
ちら、と視線をやれば、暑さのせいだけじゃない赤い顔をしている。
少しは意識してくれただろうか?
いや、そんなに察しの良いやつなら俺も何年も苦労はしない。
自分に向けられる好意に、一番近い俺からの行為に、鈍すぎるほど鈍いのがこの森永なんだから。
「……うまかったかよ」
「ごちそうさま」
ふてくされるように呟くけれど、付き合いの長い俺には分かる。照れてる顔だ。
ごちそうさま森永。今夜はお前の肌を思い出す事にするよ。
手洗い場に向かいながら、俺はその汗ばむうなじをジッと見つめた。
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