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第三章 ゲーゲンパレス・スローライフ(前編)
第22話 「うーーーーーみーーーーーーーー!!!!」
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天気が良く、気温もかなり上昇したとある日。
「見えてきた、海だ!!」
俺と幼女魔王さまとミスティは『海』にやってきていた。
「ハルト様、馬車から身を乗り出すと危ないですよ。もうすぐ着きますので、そうしたらいくらでも見れますから」
「だってすげーんだもん! これが海か! 間近で見るとほんとでかいな!」
「おやおや、ハルトがまるで子供のようにはしゃいでおるのじゃ」
ワクワク期待感を隠せないでいた俺を見て、幼女魔王さまはご満悦のようだった。
「おっ、塩っぽいにおいが強くなってきたぞ?」
「これは『磯の香』というのじゃよ」
「『磯の香』……! なんとシャレた風流な言葉か! さすが文化的最先端だ!」
「いや割と普通の言葉じゃが……まぁハルトが嬉しそうなので良いとするのじゃ」
そうこうしている間に、馬車は海と隣接する砂浜の手前までやってきて停止した。
止まると同時に俺は馬車を飛び出し、海に向かって砂浜を走ってゆく。
ザザーン、ザザーン。
寄せては返す波打ち際までやってきた俺は、その大きさに改めて目を奪われていた。
「海……これが海……! あ、そうだ! ぺろっ――」
俺はその場に屈みこむと、海に指を入れるとそれを舐めてみた。
「――うわっ、しょっぱ! すごい、これも本で読んだ通りだ! 本当にこれが全部塩水なんだな! やべぇ、マジやべぇ!! 俺今、海ってるよ!」
初めての海を目の前にして、俺は今モーレツに感動していた。
そんな風に目を輝かせてはしゃいでいた俺の隣に、魔王さまとミスティが遅れてやってきた。
そして幼女魔王さまは海初心者の俺に、文化的最先端のアドバイスを教えてくれた。
「ハルトよ。海に来たらこう叫ぶのが『お約束』なのじゃ」
魔王さまは息を思いっきり吸い込むと、海に向かって大きな声で叫んだ。
「うーーーーーみーーーーーーーー!!!! とな」
「そ、そうだったのか! それは俺が読んだ本には書いていなかったな……! はっ、わかったぞ!」
俺の頭に一条の閃きが舞い降りた。
「きっと『海』という偉大なる存在に対して、大きな声でその名を呼ぶことで敬意を示すと言うことだな?」
「えっとハルト様?」
ミスティがちょっと不思議そうな顔をしたけれど俺は構わず言葉を続ける。
「確かに『海』のこの雄大さを見せつけられれば、誰しも敬意を払いたくなるというもの! いやー、こんなことがパッと分かってしまうなんて、俺もだいぶん最先端文化に馴染んできたよなぁ」
「いえハルト様、これはただの遊びで――」
「ミスティよ無粋はやめるのじゃ。せっかくハルトが初めての海を堪能しておるのじゃから、我らはそっと側で見守るだけでよいのじゃよ」
「……そうですね。魔王さまの言う通りです」
幼女魔王さまとミスティが何か話している間にも、俺は思いっきり息を吸い込んでは、
「うーーーーーみーーーーーーーー!!!! うーーーーーみーーーーーーーー!!!!」
最大限の敬意をもって「うーみー! うーみー!」と、偉大なその名を叫び続けていたのだった。
「見えてきた、海だ!!」
俺と幼女魔王さまとミスティは『海』にやってきていた。
「ハルト様、馬車から身を乗り出すと危ないですよ。もうすぐ着きますので、そうしたらいくらでも見れますから」
「だってすげーんだもん! これが海か! 間近で見るとほんとでかいな!」
「おやおや、ハルトがまるで子供のようにはしゃいでおるのじゃ」
ワクワク期待感を隠せないでいた俺を見て、幼女魔王さまはご満悦のようだった。
「おっ、塩っぽいにおいが強くなってきたぞ?」
「これは『磯の香』というのじゃよ」
「『磯の香』……! なんとシャレた風流な言葉か! さすが文化的最先端だ!」
「いや割と普通の言葉じゃが……まぁハルトが嬉しそうなので良いとするのじゃ」
そうこうしている間に、馬車は海と隣接する砂浜の手前までやってきて停止した。
止まると同時に俺は馬車を飛び出し、海に向かって砂浜を走ってゆく。
ザザーン、ザザーン。
寄せては返す波打ち際までやってきた俺は、その大きさに改めて目を奪われていた。
「海……これが海……! あ、そうだ! ぺろっ――」
俺はその場に屈みこむと、海に指を入れるとそれを舐めてみた。
「――うわっ、しょっぱ! すごい、これも本で読んだ通りだ! 本当にこれが全部塩水なんだな! やべぇ、マジやべぇ!! 俺今、海ってるよ!」
初めての海を目の前にして、俺は今モーレツに感動していた。
そんな風に目を輝かせてはしゃいでいた俺の隣に、魔王さまとミスティが遅れてやってきた。
そして幼女魔王さまは海初心者の俺に、文化的最先端のアドバイスを教えてくれた。
「ハルトよ。海に来たらこう叫ぶのが『お約束』なのじゃ」
魔王さまは息を思いっきり吸い込むと、海に向かって大きな声で叫んだ。
「うーーーーーみーーーーーーーー!!!! とな」
「そ、そうだったのか! それは俺が読んだ本には書いていなかったな……! はっ、わかったぞ!」
俺の頭に一条の閃きが舞い降りた。
「きっと『海』という偉大なる存在に対して、大きな声でその名を呼ぶことで敬意を示すと言うことだな?」
「えっとハルト様?」
ミスティがちょっと不思議そうな顔をしたけれど俺は構わず言葉を続ける。
「確かに『海』のこの雄大さを見せつけられれば、誰しも敬意を払いたくなるというもの! いやー、こんなことがパッと分かってしまうなんて、俺もだいぶん最先端文化に馴染んできたよなぁ」
「いえハルト様、これはただの遊びで――」
「ミスティよ無粋はやめるのじゃ。せっかくハルトが初めての海を堪能しておるのじゃから、我らはそっと側で見守るだけでよいのじゃよ」
「……そうですね。魔王さまの言う通りです」
幼女魔王さまとミスティが何か話している間にも、俺は思いっきり息を吸い込んでは、
「うーーーーーみーーーーーーーー!!!! うーーーーーみーーーーーーーー!!!!」
最大限の敬意をもって「うーみー! うーみー!」と、偉大なその名を叫び続けていたのだった。
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