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第一章 追放
第1話 レアジョブ【精霊騎士】の俺、突然【勇者パーティ】を追放される
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「【精霊騎士】ハルト・カミカゼ。平民を扇動し謀反を企てた罪により、君を勇者パーティから追放する!」
ある日、街の酒場で飲んでいたところ突然【勇者】から呼び出された俺――【精霊騎士】ハルト・カミカゼは、挨拶をする間ももなくいきなりそんな言葉を投げかけられていた。
「いや、いきなり呼び出してなに言ってんだよ? 意味が解らないし俺はそんなことした覚えはないぞ?」
「言い訳はいい! 証拠はあがっているんだ!」
「証拠ってなんだよ?」
全く心当たりのなかった俺が首をかしげていると、
「ことあるごとに街に繰り出しては平民どもにあることないこと語って聞かせ、自分のシンパを募っていることは既に調査済みだ」
「はぁ? あれはそんなんじゃねーよ、ただ街で飲み歩いてるだけだっつーの」
「ふん、白を切る気かい?」
「白を切るもなにも、全く身に覚えがないからなぁ……」
「ならなぜ平民どもは【北の魔王】を討伐した【勇者】の僕ではなく、【精霊騎士】ハルト・カミカゼをこうまで持ち上げるんだ! まるで【北の魔王】を討伐したのが君であるかのように、平民どもは君を熱烈に支持しているじゃないか!」
「そりゃよく街で飲んでるから単に親近感がわいてるんだろ」
遠くのお姫様より、近くの幼馴染が可愛く思えるようなもんだ。
いやちょっと違うか?
だって言うのに――、
「シャラップ! 黙れ! 事ここに至って居直るつもりか!」
「だから居直ってなんかないってば――」
「黙れと言っているだろう! 挙句の果てに、吟遊詩人どもは【勇者】である僕よりも【精霊騎士】ハルト・カミカゼの武雄譚を歌い奏でる始末ときた!」
よほど腹が立っているのか、そう言い捨てた【勇者】は終始苦り切った表情だった。
「先の大戦で【北の魔王】を討伐したのは【勇者】であるこの僕だ! 君は【四天王】の一人を――確かに奴は【北の魔王】討伐において最大の障壁だったが――援護できないように、ひたすらくぎ付けにしただけじゃないか!」
「だからそれも分かってるって。別に俺は【北の魔王】を倒したなんて一言も言ってないだろ?」
「どうだかな。少なくとも平民どもは【精霊騎士】ハルト・カミカゼが【北の魔王】討伐において大活躍をしたと、この僕よりも持ち上げているんだよ! これは揺るぎのない事実だ! まったくこれだから道理を知らぬ学のない平民どもは……」
「ああ、それなら今度お前も街で飲んでみたらどうだ? 堅苦しいマナーとか一切ないから気楽に飲めていいぞ?」
「どうして【勇者】であるこの僕が、薄汚い平民ごときと肩を並べて酒を飲まないといけないんだ! 君は馬鹿にしているのか!」
「お前こそさっきから平民平民って馬鹿にしたみたいに言うけどさ。俺もお前も元々は平民出身じゃないか」
ほんの半年ほど前、【北の魔王】を討伐した功績を認められた俺は下級貴族である【騎士】の位を授与され、『剣も使える精霊使い』から正式に【精霊騎士】になった。
そして【勇者】は貴族の中でも一握りの【上級貴族】へと取り立てられたのだ。
つまり裏を返せば、ちょっと前まではどちらも根も葉もない平民だったということでもある。
「不敬な……! 僕は【勇者】であり【上級貴族】だ、それ以外の何者でもない。もういい、話は終わりだ。もう一度だけ言うぞ。【精霊騎士】ハルト・カミカゼ、謀反の疑いにより君を勇者パーティより追放する。数日内に帝都を出ていきたまえ。これは【勇者】が受けた【神託】――神の言葉である」
「【神託】ってお前、冗談だろおい――」
【勇者】の得る【神託】とはすなわち神の啓示だ。
それは皇帝や王、法律の上に存在し、何者も抗うことは許されない絶対の命令――!
「話は終わりと言ったはずだ――さようならハルト。もう顔を見ることもないだろう」
この言葉を告げたことで溜飲が下がったのか、【勇者】は薄ら笑いを浮かべている。
この馬鹿にしたような態度……間違いない、この【神託】は十中八九【勇者】が勝手に作った偽の【神託】だ。
人間の希望と未来を指し示す【神託】が、こんな事実無根で個人的なものであるはずがないからだ。
けれど【神託】は【勇者】にしか聞くことができない以上、【勇者】以外の誰もそれを証明することはできないのだった。
「マジ……かよ……」
こうして。
【北の魔王】の討伐を成し遂げた勇者パーティのメンバーの一人、俺こと【精霊騎士】ハルト・カミカゼは――。
ある日突然、理不尽にも勇者パーティを追放されたのだった。
ある日、街の酒場で飲んでいたところ突然【勇者】から呼び出された俺――【精霊騎士】ハルト・カミカゼは、挨拶をする間ももなくいきなりそんな言葉を投げかけられていた。
「いや、いきなり呼び出してなに言ってんだよ? 意味が解らないし俺はそんなことした覚えはないぞ?」
「言い訳はいい! 証拠はあがっているんだ!」
「証拠ってなんだよ?」
全く心当たりのなかった俺が首をかしげていると、
「ことあるごとに街に繰り出しては平民どもにあることないこと語って聞かせ、自分のシンパを募っていることは既に調査済みだ」
「はぁ? あれはそんなんじゃねーよ、ただ街で飲み歩いてるだけだっつーの」
「ふん、白を切る気かい?」
「白を切るもなにも、全く身に覚えがないからなぁ……」
「ならなぜ平民どもは【北の魔王】を討伐した【勇者】の僕ではなく、【精霊騎士】ハルト・カミカゼをこうまで持ち上げるんだ! まるで【北の魔王】を討伐したのが君であるかのように、平民どもは君を熱烈に支持しているじゃないか!」
「そりゃよく街で飲んでるから単に親近感がわいてるんだろ」
遠くのお姫様より、近くの幼馴染が可愛く思えるようなもんだ。
いやちょっと違うか?
だって言うのに――、
「シャラップ! 黙れ! 事ここに至って居直るつもりか!」
「だから居直ってなんかないってば――」
「黙れと言っているだろう! 挙句の果てに、吟遊詩人どもは【勇者】である僕よりも【精霊騎士】ハルト・カミカゼの武雄譚を歌い奏でる始末ときた!」
よほど腹が立っているのか、そう言い捨てた【勇者】は終始苦り切った表情だった。
「先の大戦で【北の魔王】を討伐したのは【勇者】であるこの僕だ! 君は【四天王】の一人を――確かに奴は【北の魔王】討伐において最大の障壁だったが――援護できないように、ひたすらくぎ付けにしただけじゃないか!」
「だからそれも分かってるって。別に俺は【北の魔王】を倒したなんて一言も言ってないだろ?」
「どうだかな。少なくとも平民どもは【精霊騎士】ハルト・カミカゼが【北の魔王】討伐において大活躍をしたと、この僕よりも持ち上げているんだよ! これは揺るぎのない事実だ! まったくこれだから道理を知らぬ学のない平民どもは……」
「ああ、それなら今度お前も街で飲んでみたらどうだ? 堅苦しいマナーとか一切ないから気楽に飲めていいぞ?」
「どうして【勇者】であるこの僕が、薄汚い平民ごときと肩を並べて酒を飲まないといけないんだ! 君は馬鹿にしているのか!」
「お前こそさっきから平民平民って馬鹿にしたみたいに言うけどさ。俺もお前も元々は平民出身じゃないか」
ほんの半年ほど前、【北の魔王】を討伐した功績を認められた俺は下級貴族である【騎士】の位を授与され、『剣も使える精霊使い』から正式に【精霊騎士】になった。
そして【勇者】は貴族の中でも一握りの【上級貴族】へと取り立てられたのだ。
つまり裏を返せば、ちょっと前まではどちらも根も葉もない平民だったということでもある。
「不敬な……! 僕は【勇者】であり【上級貴族】だ、それ以外の何者でもない。もういい、話は終わりだ。もう一度だけ言うぞ。【精霊騎士】ハルト・カミカゼ、謀反の疑いにより君を勇者パーティより追放する。数日内に帝都を出ていきたまえ。これは【勇者】が受けた【神託】――神の言葉である」
「【神託】ってお前、冗談だろおい――」
【勇者】の得る【神託】とはすなわち神の啓示だ。
それは皇帝や王、法律の上に存在し、何者も抗うことは許されない絶対の命令――!
「話は終わりと言ったはずだ――さようならハルト。もう顔を見ることもないだろう」
この言葉を告げたことで溜飲が下がったのか、【勇者】は薄ら笑いを浮かべている。
この馬鹿にしたような態度……間違いない、この【神託】は十中八九【勇者】が勝手に作った偽の【神託】だ。
人間の希望と未来を指し示す【神託】が、こんな事実無根で個人的なものであるはずがないからだ。
けれど【神託】は【勇者】にしか聞くことができない以上、【勇者】以外の誰もそれを証明することはできないのだった。
「マジ……かよ……」
こうして。
【北の魔王】の討伐を成し遂げた勇者パーティのメンバーの一人、俺こと【精霊騎士】ハルト・カミカゼは――。
ある日突然、理不尽にも勇者パーティを追放されたのだった。
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