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オペレーション『Water Side Angel』(水辺の天使作戦)
第52話 爆撃
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激しく衝撃から少し遅れて、
ヒュウウウウゥゥゥゥ――!
鋭い風切音が聞こえてきた時には、衝撃で車が横回りに宙を舞い、わずかな浮遊感の後に、車は屋根から地面に落下し、2回3回と横転して止まった。
「ぐっ!? げほっ、ごほっ……。これは――まさか爆撃を受けたのか!?」
遅れてきた飛翔音と発生した結果から、すぐ間近にミサイルか榴弾砲か、その辺りの高威力長距離攻撃兵器が着弾したのだと、俺は即座に状況を推察・把握する。
衝撃で開いたエアバッグのおかげで、俺の身体にダメージはない。
すぐにでも動き出せる。
「ミリアリア、サファイア大丈夫か!」
見事に役目を果たし、既にしぼみ始めたエアバッグの残骸をかき分けながら、俺が急ぎ後部座席を振り返ると、
「サファイアは、だいじょうぶ。でも、ママが……」
「ぅ……ぁ……」
ミリアリアがサファイアを抱きしめるようにして、衝撃からその小さな身体を守っているのが目に映った。
ミリアリアの脇の下からサファイアの不安そうな顔がのぞき見える。
後部座席のエアバッグも開いてはいたが、空間を埋めることで衝撃を殺すエアバッグは、かなり硬くて結構痛い。
エアバッグの圧迫で骨折するなんてこともザラにある(もちろん骨折で命が助かるなら安いものだが)。
しかも車は跳ね飛ばされて数回横転した。
エアバッグでも抑えきれない衝撃だ。
だからミリアリアは攻撃を受けた瞬間に、何をするべきか瞬間的に判断して――サファイアの身の安全を最優先したのだ――サファイアを抱きしめることで、その小さな身体を守ってみせたのだ。
「ママ! ママ、ママ!」
サファイアが必死に問いかけると、
「わたしは……だい、じょうぶ、です……少し身体を打っただけ、です……から……あぐ……」
弱々しい声と、小さなうめき声が返ってくる。
意識はある。
か細いが声も返せる。
エアバッグは正常に作動していた。
出血もない。
戦闘は無理でも命に別状はないと、既に戦闘モードに入っている俺の頭は、ミリアリアの容態を冷静に判断した。
「敵は俺が迎撃する。ミリアリアはサファイアと一緒に車の中にいろ。絶対に出てくるな。いいな、これは隊長命令だ」
「了解……です……。護衛部隊の、掩護は……」
「この状況でまだ無線連絡がこない。つまり護衛部隊も攻撃を受けて厳しい状況にあると推察される。援護は期待できないだろうが、なーに。誰が来ようが、何が来ようが俺一人で十分だ。すぐに片を付けて病院に連れて行ってやるから、少しだけ待っててくれ」
「はい……」
ミリアリアの弱々しい返事を聞きつつ、今やガスが抜けて完全にしぼんだエアバッグを払いのけると、俺は運転席から車外に飛び出た。
敵の目的はまず間違いなくサファイアの拉致だ。
となれば長距離攻撃で先制攻撃をした後、必ず近接要員が地上戦を仕掛けてくる。
「まずは敵を探し、片っ端から殲滅する。俺の大切なミリアリアに怪我をさせやがった礼は、1000倍返しにして返してやる!」
俺は頭を徹底して冷静にしながら、同時に激しく燃え盛る怒りの炎を心に燃やしていたのだが――。
『敵』は隠れるでもなく、堂々と車から少し離れたところに立って、堂々と俺を待ち受けていた。
魔法具と思われる機械を身体中に装備した、中年の男性だ。
白みがかった頭髪はオールバックに撫でつけられていて、柔和な笑みを浮かべている。
そいつは俺を見ると、笑みを深くしながら言った。
「初めましてカケル・ムラサメ。私の名前はエンドレス・ウォーカー。治安機関イージスの誇る最強エージェントとお会いできて光栄です」
男――エンドレス・ウォーカーは、名を名乗ると、まるでお芝居から抜け出てきたかのように仰々しくお辞儀をした。
ヒュウウウウゥゥゥゥ――!
鋭い風切音が聞こえてきた時には、衝撃で車が横回りに宙を舞い、わずかな浮遊感の後に、車は屋根から地面に落下し、2回3回と横転して止まった。
「ぐっ!? げほっ、ごほっ……。これは――まさか爆撃を受けたのか!?」
遅れてきた飛翔音と発生した結果から、すぐ間近にミサイルか榴弾砲か、その辺りの高威力長距離攻撃兵器が着弾したのだと、俺は即座に状況を推察・把握する。
衝撃で開いたエアバッグのおかげで、俺の身体にダメージはない。
すぐにでも動き出せる。
「ミリアリア、サファイア大丈夫か!」
見事に役目を果たし、既にしぼみ始めたエアバッグの残骸をかき分けながら、俺が急ぎ後部座席を振り返ると、
「サファイアは、だいじょうぶ。でも、ママが……」
「ぅ……ぁ……」
ミリアリアがサファイアを抱きしめるようにして、衝撃からその小さな身体を守っているのが目に映った。
ミリアリアの脇の下からサファイアの不安そうな顔がのぞき見える。
後部座席のエアバッグも開いてはいたが、空間を埋めることで衝撃を殺すエアバッグは、かなり硬くて結構痛い。
エアバッグの圧迫で骨折するなんてこともザラにある(もちろん骨折で命が助かるなら安いものだが)。
しかも車は跳ね飛ばされて数回横転した。
エアバッグでも抑えきれない衝撃だ。
だからミリアリアは攻撃を受けた瞬間に、何をするべきか瞬間的に判断して――サファイアの身の安全を最優先したのだ――サファイアを抱きしめることで、その小さな身体を守ってみせたのだ。
「ママ! ママ、ママ!」
サファイアが必死に問いかけると、
「わたしは……だい、じょうぶ、です……少し身体を打っただけ、です……から……あぐ……」
弱々しい声と、小さなうめき声が返ってくる。
意識はある。
か細いが声も返せる。
エアバッグは正常に作動していた。
出血もない。
戦闘は無理でも命に別状はないと、既に戦闘モードに入っている俺の頭は、ミリアリアの容態を冷静に判断した。
「敵は俺が迎撃する。ミリアリアはサファイアと一緒に車の中にいろ。絶対に出てくるな。いいな、これは隊長命令だ」
「了解……です……。護衛部隊の、掩護は……」
「この状況でまだ無線連絡がこない。つまり護衛部隊も攻撃を受けて厳しい状況にあると推察される。援護は期待できないだろうが、なーに。誰が来ようが、何が来ようが俺一人で十分だ。すぐに片を付けて病院に連れて行ってやるから、少しだけ待っててくれ」
「はい……」
ミリアリアの弱々しい返事を聞きつつ、今やガスが抜けて完全にしぼんだエアバッグを払いのけると、俺は運転席から車外に飛び出た。
敵の目的はまず間違いなくサファイアの拉致だ。
となれば長距離攻撃で先制攻撃をした後、必ず近接要員が地上戦を仕掛けてくる。
「まずは敵を探し、片っ端から殲滅する。俺の大切なミリアリアに怪我をさせやがった礼は、1000倍返しにして返してやる!」
俺は頭を徹底して冷静にしながら、同時に激しく燃え盛る怒りの炎を心に燃やしていたのだが――。
『敵』は隠れるでもなく、堂々と車から少し離れたところに立って、堂々と俺を待ち受けていた。
魔法具と思われる機械を身体中に装備した、中年の男性だ。
白みがかった頭髪はオールバックに撫でつけられていて、柔和な笑みを浮かべている。
そいつは俺を見ると、笑みを深くしながら言った。
「初めましてカケル・ムラサメ。私の名前はエンドレス・ウォーカー。治安機関イージスの誇る最強エージェントとお会いできて光栄です」
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