上 下
62 / 132
第3章 1年生タッグトーナメント

第60話「魔法が使えないおにーさんに、勝ち目はあるかな?」

しおりを挟む
「その勾玉はとある古代遺跡から出土した、世界でただ一つしか存在しない唯一無二のアイテムですわ」

「そりゃまたえらくレアなアイテムを持ち出したもんだな」

「といっても、その効果は一時的に武具召喚コネクトを阻害して武器を失わせるだけですけど」

「一時的に武具召喚コネクトを阻害だって?」

「ええ、ただそれだけですわ。対象にできるのも至近距離の1つだけ。効果時間も極めて短く、時間が経てば再召喚もされてしまいます。もちろん決勝戦の間は十分にもつでしょうけど」

「短時間だろうが武具召喚コネクトに干渉するなんて、下手をしたらSSランクだろ。そんなアイテムを用意するとは、さすがは姫騎士の中でも群を抜いてお金持ちのリリィホワイト家だな」

「これくらい別に大したことありませんわ。せいぜい20億といったところですので」

「に、20億だと……!!!!!!!」

 20億もあれば人生何周もできるんだが?
 最高の推し活ライフを送れるんだが?
 それをまるではした金みたいにいうの止めてくれないかなぁ!
 1割(=2億)でいいから分けてくれ!

「本来、姫騎士にとって武具召喚コネクトによって召喚した武器は、象徴の意味合いしかありませんわ。無くても特に困ることもありません」

「まぁ、そうだよな」

 例えばアリエッタならレイピア『炎の牙ティンカーベル』を武具召喚コネクトによって召喚するが、それで斬ったり刺したりするのが主目的なわけではない。

 武具召喚コネクトすることで契約精霊との繋がりが強化され、魔法の発動が早く、そして強力になる。
 そのために武具召喚コネクトをする。
 (といってもわずかな差なのだが、高次元の戦いにおいては、そのわずかな差が勝敗を分けることもある)

「ですがユウタ・カガヤ、あなたのその剣は違いますよね? 自身の契約精霊とは別のルーツを持つ剣です。Aランク以下の魔法を触れるだけで無効化するという、極めて強力な効果を保持しているので、敢えて使っているのでしょう?」

「つまり俺の神龍剣レクイエムを、ピンポイントで封じにきたってことか」
「そういうことですわ」
 なるほどと、納得がいったところで、
 
「ちょっと待ちなさいよ」
 アリエッタが話に割り込んできた。

 ちなみになんだけど、この2人は今もなおハイレベルな撃ち合いの真っ最中である。
 ながら作業で魔法の打ち合いしながら会話をするとか、わりとマジでこの2人ってすごいよな。

「あらなんですの、アリエッタ・ローゼンベルク」

「なんですのじゃないわ。そもそもアイテムの持ち込みは禁止されているでしょ。そのアイテムを使った時点で反則じゃないの。はい論破」

「たしかにアイテムは持ち込めません。ですが、武器は一つまで持ち込めますわ。あなたの『炎の牙ティンカーベル』や、わたくしの『てつく息吹ブリザーディア』のように、武具召喚コネクトする武器として。はい、論破返しですわ」

「ちっ、そういうことね」

「ご察しの通り、この『ヤサカニノ勾玉』もキララの武器として申請してあるので、反則にはなりませんのよ」

「ああ、そっか。そもそも精霊と同化して戦うキララは武具召喚コネクトそのものをしてないから、その分フリーで1個アイテムが使えちゃうわけか」

「そういうことですわ。男の癖になかなか理解が早いじゃないですのユウタ・カガヤ。改めて見直して差し上げますわよ」

 うわーい!
 ユリーナに改めて見直されちゃったー!

「ふふーん、キララ知ってるんだもんねー」
 と、そこで今度はキララが口を挟んできた。

「知ってるって何をだ?」
「もちろん、その不思議な剣がないと、おにーさんは魔法を使えないってこと! 模擬戦でつい口を滑らせちゃったでしょ?」

「え? あー、アリエッタに話した時のか」

「魔法が使えない、つまりもうさっきみたいに光の矢は撃てないおにーさんに、勝ち目はあるかな?」

 キララが不敵な笑みを浮かべながら戦闘態勢を取った。
 どうやら一連の全ては、事前に俺への対策として用意していたことらしい。

「あー、まー、その、なんだ。せっかく長々と説明してくれたところ申し訳ないんだけどさ――」

「問答無用! 勾玉のタイムリミット前に、残りの防御加護も削り取っちゃうんだから! せいやー!」

 俺の言葉を遮るように、キララが攻撃を再開した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男女比1/100の世界で《悪男》は大海を知る

イコ
ファンタジー
男女貞操逆転世界を舞台にして。 《悪男》としてのレッテルを貼られたマクシム・ブラックウッド。 彼は己が運命を嘆きながら、処刑されてしまう。 だが、彼が次に目覚めた時。 そこは十三歳の自分だった。 処刑されたことで、自分の行いを悔い改めて、人生をやり直す。 これは、本物の《悪男》として生きる決意をして女性が多い世界で生きる男の話である。

普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜

セカイ
ファンタジー
いたって普通の女子高生・花園 アリス。彼女の平穏な日常は、魔法使いを名乗る二人組との邂逅によって破られた。 異世界からやって来たという魔法使いは、アリスを自国の『姫君』だと言い、強引に連れ去ろうとする。 心当たりがないアリスに魔の手が伸びた時、彼女を救いに現れたのは、魔女を名乗る少女だった。 未知のウィルスに感染したことで魔法を発症した『魔女』と、それを狩る正統な魔法の使い手の『魔法使い』。アリスはその戦いの鍵であるという。 わけもわからぬまま、生き残りをかけた戦いに巻き込まれるアリス。自分のために傷付く友達を守るため、平和な日常を取り戻すため、戦う事を決意した彼女の手に現れたのは、あらゆる魔法を打ち消す『真理の剣』だった。 守り守られ、どんな時でも友達を想い、心の繋がりを信じた少女の戦いの物語。 覚醒した時だけ最強!? お伽話の様な世界と現代が交錯する、バイオレンスなガールミーツガールのローファンタジー。 ※非テンプレ。異世界転生・転移要素なし。 ※GL要素はございません。 ※男性キャラクターも登場します。 ※イラストがある話がございます。絵:時々様( @_to_u_to_ )/SSS様( @SSS_0n0 ) 旧タイトル「《ドルミーレ》終末の眠り姫 〜私、魔女はじめました〜」 ※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載中。

姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……

踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです (カクヨム、小説家になろうでも公開中です)

僕は弟を救うため、無自覚最強の幼馴染み達と旅に出た。奇跡の実を求めて。そして……

久遠 れんり
ファンタジー
五歳を過ぎたあたりから、体調を壊し始めた弟。 お医者さんに診断を受けると、自家性魔力中毒症と診断される。 「大体、二十までは生きられないでしょう」 「ふざけるな。何か治療をする方法はないのか?」 その日は、なにも言わず。 ただ首を振って帰った医者だが、数日後にやって来る。 『精霊種の住まう森にフォビドゥンフルーツなるものが存在する。これすなわち万病を癒やす霊薬なり』 こんな事を書いた書物があったようだ。 だが、親を含めて、大人達はそれを信じない。 「あての無い旅など無謀だ」 そう言って。 「でも僕は、フィラデルを救ってみせる」 そして僕は、それを求めて旅に出る。 村を出るときに付いてきた幼馴染み達。 アシュアスと、友人達。 今五人の冒険が始まった。 全くシリアスではありません。 五人は全員、村の外に出るとチートです。ご注意ください。 この物語は、演出として、飲酒や喫煙、禁止薬物の使用、暴力行為等書かれていますが、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。またこの物語はフィクションです。実在の人物や団体、事件などとは関係ありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

ドラゴンなのに飛べません!〜しかし他のドラゴンの500倍の強さ♪規格外ですが、愛されてます♪〜

藤*鳳
ファンタジー
 人間としての寿命を終えて、生まれ変わった先が...。 なんと異世界で、しかもドラゴンの子供だった。 しかしドラゴンの中でも小柄で、翼も小さいため空を飛ぶことができない。 しかも断片的にだが、前世の記憶もあったのだ。 人としての人生を終えて、次はドラゴンの子供として生まれた主人公。 色んなハンデを持ちつつも、今度はどんな人生を送る事ができるのでしょうか?

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

処理中です...