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第2章 ブレイビア学園
第36話 夜這い?アリエッタ
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◇
その日の夜。
授業や戦闘訓練といった一日のカリキュラムを完ぺきにこなし。
アリエッタと同棲――俺は共同生活ではなく同棲と言い続けるぞ!――している部屋でシャワーも済ませた後。
ハーフパンツとTシャツに着替えた俺は、日中、俺が学園にいる間に自室に運び込まれていたベッドに、身を投げ出した。
「おおっ、ふかふかだ。昨日アリエッタと一緒に寝た時も思ったけど、いいベッドだよなぁ。さすが姫騎士を育てる学園だ。衣食住に関する費用は惜しんでないよ」
これもソシャゲの画面と会話パートを見ているだけじゃ実感しきれない、リアルな生活から来る生の感覚だ。
「ふわぁ……。なんかもうこのまま気持ちよく眠ってしまいそうだ……」
スマホ1つでエンドレスに時間を潰せる元の世界と違って、この世界は娯楽過多ってわけでもない。
そもそも着の身着のままこの世界に来たから私物もなくて、当然することもないし、できることもない。
「たしか設定だと学園内に大きな図書館があったはずだから、本でも借りてきたらよかったな」
起きてる理由もないし、もうこのまま寝ちゃおうかな……?
なんて思っていると、
コンコン。
俺の部屋のドアが軽やかにノックがされた。
「空いてるよ」
俺が声をかけるとドアが開いて、パジャマ姿のアリエッタがヒョコっと顔を出した。
すっかり寝る準備が完了といった様子だ。
「そろそろ寝ようかなって思っているの」
「そっか、俺もだよ。わざわざ伝えてくれてありがとな。でもルームメイトだからって、律義に報告なんてしてくれなくていいんだぞ?」
俺は、今から寝ますと毎日報告させるような、前時代的な悪しき価値観――亭主関白って言うんだっけ?――は持ち合わせてはいない。
というかアリエッタとはそもそも夫婦でもないしな。
「報告しにきたんじゃないもん」
「え? じゃあ何をしに来たんだ? 話でもしに来たのか? でもそろそろ寝ようって思ってるんだよな?」
アリエッタの行動の意図が掴めずに俺が首をかしげていると、アリエッタが言った。
「だから一緒に寝るために来たの」
と。
その言葉の意味を数秒、俺は頭の中で考えて、
「…………いや、もう俺用のベッドを用意してもらったから、一緒に寝る必要はないぞ?」
そういや『お世話係だから一緒に寝る』みたいな話を昨日していたのを思い出す。
「なんでよ」
「なんでって、普通は男女は一緒には寝ないだろ?」
「私はユータのお世話係なのよ。だから昨日だって一緒に寝たわけでしょ?」
「昨日はベッドがなかったからあくまで緊急避難的な行動であって、俺はアリエッタに迷惑をかけるつもりはないからさ」
推しに迷惑をかけるなんてとんでもない!
むしろ厄介オタは一番の害悪!
俺の推し活は、清く正しくがモットーだ!
「迷惑でもなんでも、私はユータのお世話係なんだもん。やるべきことは最後までやり通すわ。ローゼンベルクの家名にかけてね」
アリエッタはそう言うと、俺の部屋の明かりを消して、有無を言わさず俺のベッドに上がり込んできた。
「お、おい。アリエッタ――」
俺は戸惑いつつも、ベッド半分のスペースを空けた。
俺が空けたスペースに、アリエッタがゴロンと寝転がる。
まぁ、その?
実を言うとね?
俺としては別にそこまで断固として拒否する理由はないというか?
推しと一緒に寝られるとか、ご褒美でしかないわけで?
推しのアリエッタが今日も一緒に寝てくれることに喜びを感じちゃうし、抗議する声も小さくなっちゃうし、強引に迫られたらオーケーしちゃうよね?
ぶっちゃけ表向き、世間一般に求められるであろう常識的な態度を取っただけで、内心では小躍りしちゃいそうな俺だった。
もちろん、だからといってアリエッタに不埒な真似を働くつもりはないからな。
推しの嫌がることはしない。
その大原則を破るつもりはない。
俺はこの世界で『正しい推し活』をやりとげる!
そんなことを内心で思っていると、
「今日は戦闘訓練に付き合ってくれてありがとね」
アリエッタが小さな声でポツリと呟いた。
その日の夜。
授業や戦闘訓練といった一日のカリキュラムを完ぺきにこなし。
アリエッタと同棲――俺は共同生活ではなく同棲と言い続けるぞ!――している部屋でシャワーも済ませた後。
ハーフパンツとTシャツに着替えた俺は、日中、俺が学園にいる間に自室に運び込まれていたベッドに、身を投げ出した。
「おおっ、ふかふかだ。昨日アリエッタと一緒に寝た時も思ったけど、いいベッドだよなぁ。さすが姫騎士を育てる学園だ。衣食住に関する費用は惜しんでないよ」
これもソシャゲの画面と会話パートを見ているだけじゃ実感しきれない、リアルな生活から来る生の感覚だ。
「ふわぁ……。なんかもうこのまま気持ちよく眠ってしまいそうだ……」
スマホ1つでエンドレスに時間を潰せる元の世界と違って、この世界は娯楽過多ってわけでもない。
そもそも着の身着のままこの世界に来たから私物もなくて、当然することもないし、できることもない。
「たしか設定だと学園内に大きな図書館があったはずだから、本でも借りてきたらよかったな」
起きてる理由もないし、もうこのまま寝ちゃおうかな……?
なんて思っていると、
コンコン。
俺の部屋のドアが軽やかにノックがされた。
「空いてるよ」
俺が声をかけるとドアが開いて、パジャマ姿のアリエッタがヒョコっと顔を出した。
すっかり寝る準備が完了といった様子だ。
「そろそろ寝ようかなって思っているの」
「そっか、俺もだよ。わざわざ伝えてくれてありがとな。でもルームメイトだからって、律義に報告なんてしてくれなくていいんだぞ?」
俺は、今から寝ますと毎日報告させるような、前時代的な悪しき価値観――亭主関白って言うんだっけ?――は持ち合わせてはいない。
というかアリエッタとはそもそも夫婦でもないしな。
「報告しにきたんじゃないもん」
「え? じゃあ何をしに来たんだ? 話でもしに来たのか? でもそろそろ寝ようって思ってるんだよな?」
アリエッタの行動の意図が掴めずに俺が首をかしげていると、アリエッタが言った。
「だから一緒に寝るために来たの」
と。
その言葉の意味を数秒、俺は頭の中で考えて、
「…………いや、もう俺用のベッドを用意してもらったから、一緒に寝る必要はないぞ?」
そういや『お世話係だから一緒に寝る』みたいな話を昨日していたのを思い出す。
「なんでよ」
「なんでって、普通は男女は一緒には寝ないだろ?」
「私はユータのお世話係なのよ。だから昨日だって一緒に寝たわけでしょ?」
「昨日はベッドがなかったからあくまで緊急避難的な行動であって、俺はアリエッタに迷惑をかけるつもりはないからさ」
推しに迷惑をかけるなんてとんでもない!
むしろ厄介オタは一番の害悪!
俺の推し活は、清く正しくがモットーだ!
「迷惑でもなんでも、私はユータのお世話係なんだもん。やるべきことは最後までやり通すわ。ローゼンベルクの家名にかけてね」
アリエッタはそう言うと、俺の部屋の明かりを消して、有無を言わさず俺のベッドに上がり込んできた。
「お、おい。アリエッタ――」
俺は戸惑いつつも、ベッド半分のスペースを空けた。
俺が空けたスペースに、アリエッタがゴロンと寝転がる。
まぁ、その?
実を言うとね?
俺としては別にそこまで断固として拒否する理由はないというか?
推しと一緒に寝られるとか、ご褒美でしかないわけで?
推しのアリエッタが今日も一緒に寝てくれることに喜びを感じちゃうし、抗議する声も小さくなっちゃうし、強引に迫られたらオーケーしちゃうよね?
ぶっちゃけ表向き、世間一般に求められるであろう常識的な態度を取っただけで、内心では小躍りしちゃいそうな俺だった。
もちろん、だからといってアリエッタに不埒な真似を働くつもりはないからな。
推しの嫌がることはしない。
その大原則を破るつもりはない。
俺はこの世界で『正しい推し活』をやりとげる!
そんなことを内心で思っていると、
「今日は戦闘訓練に付き合ってくれてありがとね」
アリエッタが小さな声でポツリと呟いた。
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