上 下
6 / 132
第1章 突然のゲーム内転移

第6話「精霊と契約して騎士になれるのは、女性だけ――それがこの世界の理だ。でも俺だけは例外なのさ」

しおりを挟む
「それは確かに悪いことだけど……でもアリエッタも、本当は殺そうなんて思ってないでしょ? 私、アリエッタがそんな酷いことはできない優しい女の子だって、知ってるもん」

「う、うるさいうるさいうるさい! もういいでしょ! さっさと決闘を始めるわよ! 話していたらいつまで経っても始まらないわ」

 うがーっ!
 っと、顔を真っ赤にして吠えたてた後、

 シュピン!
 怒りをぶつけるかのように、アリエッタが俺にレイピアの切っ先を向けた。

「その意見には同意だな。とっとと始めよう」
「あんたと同意見なのはしゃくだけどね」

「言ってろ――ってわけで。武具召喚コネクト、神竜剣レクイエム」

 俺がその名を呼ぶと、俺の身体に黄金の鎧が装着され、同時に俺の手に闇を携えたような漆黒の刃を持った大振りな剣――バスターソードが顕現した。

「ちょ、なっ!? ええええっ!? どうして男が武具召喚コネクトを使えるわけ!?」

 アリエッタの目が大きく見開かれ、その顔が驚愕に染まる。
 だがそれも当然と言えば当然だ。

「精霊と契約して姫騎士になれるのは、女性だけ――それがこの世界の絶対のルールだ。でも俺だけは例外なのさ」

 ソシャゲ『ゴッド・オブ・ブレイビア』の世界では、女性だけと絆を結ぶ『精霊』と契約することで、姫騎士になることができる。
 しかし記憶をなくしたユーザープレイヤーだけは、なぜか男性なのに精霊と契約ができるのだ。

 そして世界で1人しかいない男の姫騎士となって、王立ブレイビア学園に入学するという設定だ。

(ちなみに男なのに姫騎士なのはおかしくね? とオープンβから散々ツッコまれているのだが、運営は仕様ですという回答を繰り返している)

 そういう世界観ってのもあって、俺が男の姫騎士であることに、アリエッタはこれほどまでに驚いたのだ。

「ふ、ふーんだ! 男の姫騎士だから何だっていうの? ちょっと珍しいだけの珍獣じゃない!」

「珍獣って、おい……」
 俺はツチノコかい。

「たかが珍獣が、このアリエッタ・ローゼンベルクを馬鹿にしないことね! 我が盟約を結びし偉大なる炎の精霊サラマンダーよ、我に力を!」

 アリエッタのレイピアが紅蓮の炎をまとう。

 それを見て、ここまでなんとか仲裁できないかな、みたいな態度を取っていたリューネが、もうこれは仲裁は無理だと、慌てたように距離を取った。

 さてと、口ではいろいろといったが、平和な日本で、しかも目立たないように日陰で生きてきた俺の人生で、初めての実戦だ。

 俺は取り立てて運動神経がいいわけでもないし、どうするかな。
 とりあえず、まずは相手の分析をしておくか。

 アリエッタが使う炎魔法の特徴は、なにせ攻撃力が高いこと。
 ゆえに炎魔法を使う姫騎士は、強大な魔獣を倒すには欠かせない存在だ。

 そして姫騎士同士の戦いにおいては――姫騎士は皆、契約精霊の防御加護をまとって戦うが――炎魔法はその防御加護を、無理やり破壊するのが大の得意なのだ。

 さらに火傷やけど、延焼といった追加効果でダメージが継続するのも特徴だ。

 しかし攻撃力が高い反面、トリッキーな攻撃方法は少なく、攻撃が読まれやすいのが欠点だ。

 俺は初めての実戦を前に、ソシャゲの知識を元にいろいろと状況を整理して分析をしながら。
 対するアリエッタはおそらく、初めて戦う男の姫騎士である俺を警戒して。

 お互いに出方をうかがうように、しばらくにらみ合っていると、

「ふん! 精霊と契約できるからなんだっていうの! 喰らいなさい、フレイム・アロー!」

 先に動いたのはアリエッタの方だった。

 ま、アリエッタの情熱的(思い込みが激しいとも言う)な性格からして、自分から吹っ掛けた決闘で、受けに回ることはありえないよな。

 アリエッタの眼前に現れた数十本の炎の矢が、高速飛翔して俺を襲ってきた――!
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

転移少女百合魔界~魔界へ転移した彩花とクリスティア、そこには女の子しかいない新たなる世界~

小鳥遊凛音
ファンタジー
ごく普通の女子高校生の黒澤 彩花 (くろさわ あやか)、そしてとある小さな国のお姫様であるクリスティア=カーマイオーネ。 クリスティアは自身の国が魔族によって滅ぼされてしまいそうになった時、日本にいる対魔師と呼ばれる存在を知り対魔師である黒澤 鷹人に協力を要請した。 それ以来お互いの親睦が深まりクリスティアは自身の要望もあり、日本で対魔師の事について勉強も兼ね留学して来た。鷹人のフィアンセの舞花も対魔師をしていたがその間に生まれた娘である彩花と共に同じクラスに在籍し、日本では黒澤家に厄介になっていた。 ある日、同じクラスで学校内の情報屋と呼ばれる新聞部の羽井賀 聖(はいが ひじり)に学園7不思議には8つ目の不思議が存在している事を耳にする。 その8つ目の不思議とは、学園の3階の階段フロアで深夜0時になると階段が出現し4階が存在すると言うもの・・・ それを聴いた彩花は冗談話だろうと笑いながら話を流していた。 一方クリスティアは、何かが引っ掛かっていた。 それは、自身の国を魔族たちに滅ぼされようとしていた為であった。 ひょっとするとその階段の上には魔界へ繋がるゲートの様なものが存在していたのだろうか? その様にクリスティアが真剣に考えていると、帰宅後、彩花から昼間学校で笑い飛ばしていたとは考えられない様な発言を口にする。 彩花もまた、階段の存在は事実では無いかと・・・ その日の真夜中、ふたりは確認すべく学校の3階の階段のあるフロアで確かめてみることに・・・実際に0時になり何事も無いと確信を持ったクリスティアが彩花に「帰ろう」と申し出ようとしたその時だった!?・・・ 眩しい光が現れると同時に4階へと進む為の階段が目の前に現れふたりは早速昇って行く事に・・・そしてゲートが存在していた為進んで行く事にしたふたりだったが・・・

学園のマドンナの渡辺さんが、なぜか毎週予定を聞いてくる

まるせい
青春
高校に入学して暫く経った頃、ナンパされている少女を助けた相川。相手は入学早々に学園のマドンナと呼ばれている渡辺美沙だった。 それ以来、彼女は学校内でも声を掛けてくるようになり、なぜか毎週「週末の御予定は?」と聞いてくるようになる。 ある趣味を持つ相川は週末の度に出掛けるのだが……。 焦れ焦れと距離を詰めようとするヒロインとの青春ラブコメディ。ここに開幕

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……

踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです (カクヨム、小説家になろうでも公開中です)

異世界は選択の連続である[Re:] ~ブラック社員、自らのチート能力に叛逆す~

八白 嘘
ファンタジー
異世界に転移した主人公・鵜堂形無に与えられたのは、選択肢が見える能力 青枠は好転 白枠は現状維持 黄枠は警告 赤枠は危険 青い選択肢を選べば、常に最善の結果が得られる 最善以外を選択する意味はない 確実な成功を前にして、確実な失敗を選ぶことほど愚かな行為はないのだから だが、それは果たして、自らが選択したと言えるのだろうか 人は、最善からは逃げられない 青の選択肢を与えられた形無は、神の操り人形に過ぎない だからこそ── これは、神に与えられた"最善"に抗う物語である 八白 嘘 https://x.com/neargarden

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

 殺陣を極めたおっさん、異世界に行く。村娘を救う。自由に生きて幸せをつかむ

熊吉(モノカキグマ)
ファンタジー
こんなアラフォーになりたい。そんな思いで書き始めた作品です。 以下、あらすじとなります。 ────────────────────────────────────────  令和の世に、[サムライ]と呼ばれた男がいた。  立花 源九郎。  [殺陣]のエキストラから主役へと上り詰め、主演作品を立て続けにヒットさせた男。  その名演は、三作目の主演作品の完成によって歴史に刻まれるはずだった。  しかし、流星のようにあらわれた男は、幻のように姿を消した。  撮影中の[事故]によって重傷を負い、役者生命を絶たれたのだ。  男は、[令和のサムライ]から1人の中年男性、田中 賢二へと戻り、交通警備員として細々と暮らしていた。  ささやかながらも、平穏な、小さな幸せも感じられる日々。  だが40歳の誕生日を迎えた日の夜、賢二は、想像もしなかった事態に巻き込まれ、再びその殺陣の技を振るうこととなる。  殺陣を極めたおっさんの異世界漫遊記、始まります! ※作者より  あらすじを最後まで読んでくださり、ありがとうございます。  熊吉(モノカキグマ)と申します。  本作は、カクヨムコン8への参加作品となります!  プロット未完成につき、更新も不定期となりますが、もし気に入っていただけましたら、高評価・ブックマーク等、よろしくお願いいたします。  また、作者ツイッター[https://twitter.com/whbtcats]にて、製作状況、おススメの作品、思ったことなど、呟いております。  ぜひ、おいで下さいませ。  どうぞ、熊吉と本作とを、よろしくお願い申し上げます! ※作者他作品紹介・こちらは小説家になろう様、カクヨム様にて公開中です。 [メイド・ルーシェのノルトハーフェン公国中興記]  偶然公爵家のメイドとなった少女が主人公の、近世ヨーロッパ風の世界を舞台とした作品です。  戦乱渦巻く大陸に、少年公爵とメイドが挑みます。 [イリス=オリヴィエ戦記]  大国の思惑に翻弄される祖国の空を守るべく戦う1人のパイロットが、いかに戦争と向き合い、戦い、生きていくか。  濃厚なミリタリー成分と共に書き上げた、100万文字越えの大長編です。  もしよろしければ、お手に取っていただけると嬉しいです!

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...