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第31話 婚前旅行
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水龍さまの神通力暴走問題を解決して、ブリスタニア王国に平和が戻り。
そしてわたしとライオネルが婚約した、その1週間後。
わたしはライオネルとリリーナさんと一緒に、王室が所有する別荘に遊びに来ていた。
大きな湖のほとりにあるコテージに、3泊4日で宿泊するんだって。
わたし、孤児院の時は内職のお手伝いがあったからあまり外で遊べなかったし。
『神龍の巫女』になってからは毎日、神龍さまに付きっきりだったから、実は旅行に行ったことって一度もないんだよね。
だから、すごく楽しみなんだ~!
旅行ってだけでワクワクしちゃうよ。
みんなで馬車から荷物を下ろすと、
「私は晩ご飯の用意をするから、ライちゃんとクレアちゃんは、適当にデートでもしてきたら?」
リリーナさんが、そんな提案をしてきた。
「それならわたしもお料理を手伝いますよ? リリーナさんに全部させるわけにはいきませんし」
リリーナさんは年上だし、王族だし、ライオネルのお姉さんだし、いつもわたしにとても良くしてくれるし。
だからわたしは、ごくごく自然な流れでお手伝いしますよって、言ったんだけど――、
「もうクレアちゃんったら。『リリーナさん』じゃなくて『お義姉ちゃん』でしょ?」
いきなりそんなことを、言われてしまって、
「ふえぇぇっ!? えっと、それはその……」
思わずわたしは、ライオネルの顔を見てしまった。
た、たしかに?
わたしがライオネルと結婚したら、ライオネルのお姉さんのリリーナさんは、わたしの義理のお姉さんということになるけれど……。
改めてそう言われると、なんていうかその、わたしにも心の準備がですね!?
まったくできて、いないのですよ!
というのもだ。
婚約してからもライオネルは、今まで通りに優しく接してくれていて。
だから全然そんな、婚約してるとか結婚前だなんていう実感が、ないといいますか?
リリーナさんの言葉で、改めて今の状況(これってもしかして、婚前旅行だったの!?)を認識しちゃったわたしが、「ふぇぇぇっ!?」って感じであたふたしていると、
「姉さん、クレアが困ってるでしょ?」
ライオネルが、そっと優しく助け船を出してくれた。
「えー? 私はただ、クレアちゃんにお義姉ちゃんって呼んでもらいたいだけなんだけどぉ……」
「姉さん、物ごとには順番とか順序ってものがあるんだよ。そんなに焦らなくても、クレアだってそのうち自然と、姉さんのことを『お義姉ちゃん』って呼んでくれるようになるさ」
「私は今すぐにでも呼んで欲しいんだけどなぁ。ねっ、クレアちゃん、1回だけ、1回だけでいいから! だからお願い。わたしのことを『お義姉ちゃん』って呼んでみて? ねっ? 一生のお願い!」
なぜにそこまで!?って感じで、やたらと必死に懇願されたわたしは、
「リ、リリーナお義姉ちゃん……」
恥ずかしさを押し殺して、小さな声でそう言った。
ううっ、わたし孤児院出身で家族とかいなかったから、身内に対する親しい呼び方をするのって初めてで、だから嬉しいけど、恥ずかしいよぉ……。
「クレアちゃんに、お義姉ちゃんって呼ばれちゃった……もう死んでもいいかも……」
身悶えるリリーナさんを見て、
「なにを大げさな……ごめんねクレア、こんな姉さんで……」
さすがのライオネルも、ちょっと呆れちゃってたみたいだった。
「ちょっとライちゃん、『こんな』とは何よ『こんな』とは! こう見えて私は、若い貴族の男子からモテモテなんだからね?」
「姉さんがすごくモテるのは知ってるよ。ボクも姉さんの好みの男性がどんなのか、よく聞かれるんだから」
「でしょう? だっていうのに、ライちゃんに『こんな姉さん』なんて言われるなんて……およよ、クレアちゃん。可哀そうな私を、慰めて~」
「あはは……」
抱きついてきたリリーナさんの頭を、わたしはそっと優しくなでてあげる。
そんなわたしとリリーナさんを、ライオネルはやれやれって感じで、だけど優しく見守ってくれていたのだった。
そしてわたしとライオネルが婚約した、その1週間後。
わたしはライオネルとリリーナさんと一緒に、王室が所有する別荘に遊びに来ていた。
大きな湖のほとりにあるコテージに、3泊4日で宿泊するんだって。
わたし、孤児院の時は内職のお手伝いがあったからあまり外で遊べなかったし。
『神龍の巫女』になってからは毎日、神龍さまに付きっきりだったから、実は旅行に行ったことって一度もないんだよね。
だから、すごく楽しみなんだ~!
旅行ってだけでワクワクしちゃうよ。
みんなで馬車から荷物を下ろすと、
「私は晩ご飯の用意をするから、ライちゃんとクレアちゃんは、適当にデートでもしてきたら?」
リリーナさんが、そんな提案をしてきた。
「それならわたしもお料理を手伝いますよ? リリーナさんに全部させるわけにはいきませんし」
リリーナさんは年上だし、王族だし、ライオネルのお姉さんだし、いつもわたしにとても良くしてくれるし。
だからわたしは、ごくごく自然な流れでお手伝いしますよって、言ったんだけど――、
「もうクレアちゃんったら。『リリーナさん』じゃなくて『お義姉ちゃん』でしょ?」
いきなりそんなことを、言われてしまって、
「ふえぇぇっ!? えっと、それはその……」
思わずわたしは、ライオネルの顔を見てしまった。
た、たしかに?
わたしがライオネルと結婚したら、ライオネルのお姉さんのリリーナさんは、わたしの義理のお姉さんということになるけれど……。
改めてそう言われると、なんていうかその、わたしにも心の準備がですね!?
まったくできて、いないのですよ!
というのもだ。
婚約してからもライオネルは、今まで通りに優しく接してくれていて。
だから全然そんな、婚約してるとか結婚前だなんていう実感が、ないといいますか?
リリーナさんの言葉で、改めて今の状況(これってもしかして、婚前旅行だったの!?)を認識しちゃったわたしが、「ふぇぇぇっ!?」って感じであたふたしていると、
「姉さん、クレアが困ってるでしょ?」
ライオネルが、そっと優しく助け船を出してくれた。
「えー? 私はただ、クレアちゃんにお義姉ちゃんって呼んでもらいたいだけなんだけどぉ……」
「姉さん、物ごとには順番とか順序ってものがあるんだよ。そんなに焦らなくても、クレアだってそのうち自然と、姉さんのことを『お義姉ちゃん』って呼んでくれるようになるさ」
「私は今すぐにでも呼んで欲しいんだけどなぁ。ねっ、クレアちゃん、1回だけ、1回だけでいいから! だからお願い。わたしのことを『お義姉ちゃん』って呼んでみて? ねっ? 一生のお願い!」
なぜにそこまで!?って感じで、やたらと必死に懇願されたわたしは、
「リ、リリーナお義姉ちゃん……」
恥ずかしさを押し殺して、小さな声でそう言った。
ううっ、わたし孤児院出身で家族とかいなかったから、身内に対する親しい呼び方をするのって初めてで、だから嬉しいけど、恥ずかしいよぉ……。
「クレアちゃんに、お義姉ちゃんって呼ばれちゃった……もう死んでもいいかも……」
身悶えるリリーナさんを見て、
「なにを大げさな……ごめんねクレア、こんな姉さんで……」
さすがのライオネルも、ちょっと呆れちゃってたみたいだった。
「ちょっとライちゃん、『こんな』とは何よ『こんな』とは! こう見えて私は、若い貴族の男子からモテモテなんだからね?」
「姉さんがすごくモテるのは知ってるよ。ボクも姉さんの好みの男性がどんなのか、よく聞かれるんだから」
「でしょう? だっていうのに、ライちゃんに『こんな姉さん』なんて言われるなんて……およよ、クレアちゃん。可哀そうな私を、慰めて~」
「あはは……」
抱きついてきたリリーナさんの頭を、わたしはそっと優しくなでてあげる。
そんなわたしとリリーナさんを、ライオネルはやれやれって感じで、だけど優しく見守ってくれていたのだった。
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