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第23話 聖女、謁見する。(2回目)

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 王宮に帰ると、汗を流して身支度を整えてから、わたしとライオネルは謁見えっけんの間に向かった。

 無事にミッションを終えたことを、王さまに報告をするためだ。


「――以上が、今回の一件の、事の顛末てんまつになります」

 王さまへの説明はライオネルが全部、手際よくやってくれた。

 理路整然って言うのかな?
 だからわたしは隣で、うんうんうなずいてるだけでよかったよ。

 ほんとやることなすこと完璧な、ステキ王子さまのライオネルだね!

「そうか、うむ、うむ! こたびの一件、よくぞ解決してくれたクレア殿。ブリスタニア国王として、全国民を代表し、クレア殿に心からの感謝の意を申し上げる」

 王さまが深々と頭を下げた。
 その目には、うっすらと涙まで浮かんでいる。

 やっぱりこの人も、ライオネルのお父さんだけあって、すごくいい人なんだなぁ。
 ちょっと――ううん、かなり顔は怖いけど……。

褒美ほうびは後ほどとらせるとして。取り急ぎ、まずはクレア殿には、子爵ししゃくの位を与えようと思うのだが」

 王さまの言葉を、

「ふぇ――?」

 わたしは思わずアホみたいに聞き返した。
 だって、ねぇ……?

 子爵ししゃくってあれだよ?
 貴族のことだよ?

 わたしだって、それくらいは知ってるんだ。

 男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵の順番に偉くなっていって、その上に大公――大公爵がいる。

 子爵は、だから下から2番目の貴族ってことだ。
 下から2番目とはいえ、貴族は貴族。

 そんなまさか、わたしが貴族なんてねぇ(苦笑)

 すると王様は、

「ふむ、子爵では不服であるか。では伯爵はくしゃくの位を与えよう」
 さらにそんなことを言ってくるんだよ。

 いやいや王さま、逆ですから逆!

「えっと、あの、不服とかじゃなくてですね。むしろその逆で、えっと、それってわたしを貴族にしてくれるってことでしょうか?」

 わたしは「まさかねー(半笑い)」と思いながら、おっかなびっくり聞いてみたんだけど。

 なのに――、

「ブリスタニア王国を救ってくれた英雄クレア殿に、爵位しゃくいを与えるのは、別に不思議なことではあるまいて」

 王さまのほうが、不思議そうな顔をするんだもん!

「えっと、あの、えーと……」
 わたしはビックリしすぎて、しどろもどろになってしまった。

 そんなドンくさいわたしに、

「ふむ、話に聞いているとおり、クレア殿はとても控え目な性格をしているようじゃの。なに、今まで通りに過ごしてもらって、まったくかまわん。『水龍の巫女』として、末永くこのブリスタニアを守って欲しい」

 王さまは優しく言ってくれたんだ。

「わ、わかりました……。こほん」

 わたしは小さくセキをして、のどの調子を整えると、

「栄誉あるブリスタニアの貴族にれっしていただき、光栄の極みです。感謝の言葉もありません。この大恩だいおんには、ただただ忠義をもって応えまちゅ」

 わたしは、なんとなく知ってる(つまりよく知らない)貴族のしゃべり方を、どうにかこうにかひねくりだして、言った。

 そしてあと一歩というところで、また噛んでしまった……。

 でも王さまとライオネルは、そんなわたしを優しく見守ってくれていて――。


 とまぁそういうわけでして?

 リストラされてシェンロン王国を追放されたわたしが、なんとブリスタニア王国で貴族になってしまいましたとさ!

 あはは、こんな都合のいい話、誰に言っても信じてもらえないよね、きっと。

 はっ!?

 もしかして夢だったり?
 ありえるよ!?

 わたしはほっぺを思いっきりつねってみたけど、うん、普通に痛かった。
 ほっぺがひりひりするよ……。

 王さまに謁見えっけんしてるっていうのに、いきなりほっぺをつねりだしたアホなわたしを、だけど王さまはぜんぜん怒るでもなく、

「ところでクレア殿は、まだ結婚はしていないと聞いているが」

 急にそんな話題を振ってきたんだ。
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