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第18話 聖女、水龍さまと対話する。

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 水龍さまとは初めてのコンタクトだけど、怖がる必要はなかった。

 いつもイライラして荒れ狂うような神龍さまとは違った、優しそうな力がもうすでに十分なほどに伝わってきてるから――。

「お初にお目にかかります、水龍さま。新たな『水龍の巫女』、クレアにございます。どうぞお見知りおきください」

 わたしが巨大な「力」にそっと話しかけると、すぐに返事が返ってきた。

『あらあら、可愛い女の子だねー。こちらこそよろしくね。それで、早速で悪いんだけどね、ちょっとお願いがあるの』

「どうぞ、なんなりとお申し付けください」

『あ、そんな堅苦しい話し方はしなくていいよ? だって私たちお友だちでしょ?』
「いえ、水龍さまとお仕えする『水龍の巫女』ですが……」

 友だちでは、ないんじゃないかな……?

『お話しするってことは、もうお友だちだよ、はい決定』
「では、普通にしゃべらせて――しゃべりますね?」

 ……なんだろう。
 神龍さまとはえらく違って、すごくフレンドリーで親しげな感じだ。

『うんうん、じゃあそれでよろしくー。それでね、多分、長雨のことで来たと思うんだけど』

「はい、みんな困ってるので、雨を止めてもらいたいんです」

『それなんだけど。今ね、私の神通力が暴走しちゃってるの』

「暴走ですか? ってことは、水龍さまが怒って雨を降らせているわけじゃ、ないんですか?」

『もう、そんなことするわけないじゃない。私、そんな嫌がらせなんてしないもん』
「も、申し訳ありません!」

『あ、責めたわけじゃないの。それでね、多分っていうか間違いなく、私の神通力の元になってる山頂の小川が、岩か何かでせき止められちゃってると思うんだ。それを取りのぞいてほしいんだけど』

「そうすれば、神通力の暴走が止まって、雨も上がるというわけですか?」

『うんうん、そーゆーこと! 話が早くて助かるよー』

「わかりました。それで、それはどこの山頂なんでしょうか?」
『それはわかんない!』

「えっと……」
『だって、私は水龍なんだもん。山の上なんか行かないし? 今は神通力も使えないから、探すこともできないし?』

「わ、わかりました。こっちでなんとかして探してみます」

『よろしくね! ところでクレア。さっきの奉納の舞、すごかったね! あんなの初めてでびっくりしたよ』

「あれは『神龍かぐら』です。実はわたし、先日まで神龍国家シェンロンで『神龍の巫女』をやっておりまして」

『神龍……あー、あいつね。あいつ、パワーはスゴいくせに、幼稚でいつもイライラしてるから、落ち着かせるのが大変だったでしょ?』

「い、いえ、それほどでは……」
 やや返答に詰まったわたしは、言葉をにごした。

『あはは、隠さなくていいから。別にあいつに告げ口とかしないし』

「ま、まぁ、その……少々大変でした」

 実際はすごく大変だったけど、まぁそこまでは言うまい。

『だよね、うんうん。あ、わたしはアイツみたいに五月蠅うるさいことは言わないから、安心してねー。時々てきとうに『奉納の舞』をして楽しませてくれたら、それ以上は特にあれこれ言う気はないし』

「えっと、毎日でなくていいんですか?」
 わたしはビックリして水龍さまに聞き返した。

『その言いかた……もしかして神龍のやつってば、毎日クレアに『奉納の舞』を躍らせてたの? うわっ、ほんと最悪だね、あいつ。ドメスティック・バイオレンスD Vってやつ? 死ねばいいのにね』

「ええ、ああ、まぁ、その、どうなんでしょう……」
 水龍さまのストレートな物言いに、わたしは終始たじだじだった。

『それにしても5年ぶりくらいかな、巫女の人とお話しするの。ねぇねぇ、せっかくだから世間話でもしていかない?』

 そのあと、話好きな水龍さまが満足するまで世間話をしてから、わたしは意識を現実に引き上げた――。
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