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第13話 歓迎会

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 夜にはささやかながら、わたしの歓迎会が開かれた。

 ささやかと言っても、それは王族や上級貴族の「ささやか」であって、庶民のわたしからしたら「超はなやか」なんだけども。

 参加者は、給仕係を除けばわたしと、ライオネルと、リリーナさんだけだった。
 わたしの向かいにライオネル、その隣にはリリーナさんが座ってる。

「申し訳ない、クレア。盛大なパーティを開いたりと、もう少し華やかにしてあげたかったんだけど。国民が苦しんでいる中、ボクたちだけが贅沢ぜいたくするわけにはいかなくてね」

 ライオネルが、心底申し訳ないって顔をして言ってくれる。

「いえいえ、とんでもありません。料理はどれもすごく美味しですし。いくらでも食べられちゃいそうです」

 わたしは満面の笑顔で言った。

 だって今日の晩ご飯はお肉がメインのフルコース。
 前菜からスープから、そのどれもこれもが信じられないような美味しさなんだもん。

 幼少期にお腹を空かせ続けていたわたしは、食べることが大好きだった。

 今はメインディッシュのステーキを、モリモリ食べている。
 ううっ、こんなおいしいお肉、食べたことないよぉ!

 脂がのってて、口の中で雪みたいにフワーってとろけるの……なにこれ、なにこれ、なにこれ最高!
 生きててよかった!!

 そんな、食べる喜びに満ち満ちていたわたしを見て、

「良かったら、お代わりもあるよ?」
 リリーナさんが優しくそんな素敵なことを、言ってくれるんだ!

「ほんとですか!? いいんですか!?」

「うふふ、じゃあもう1枚、ステーキを焼いてもらうわね?」

「ぜひお願いします!」

 わたしは超ハッピーな気分で、1枚目のステーキを食べ終えようとして――ライオネルがジッとわたしを見ているのに、ハッと気がついた。

 うげげっ、しまった……!
 これじゃ完全に、食い意地の張った女の子だよぉ!?

 いやまぁその、事実そうなんだけどね?
 文句なしに、そうなんだけどね?

 高級ステーキをもう1枚食べたくて食べたくて仕方のない、食い意地の張りまくった女の子なんだけどね!?

 だって高級ステーキすごく美味しいんだもん!

 でもでも!
 ううっ、ライオネルみたいな素敵な男性に、食い意地の張った意地汚い女の子だって思われたらイヤだし、恥ずかしいよぉ……。

 やっぱりお代わりはいりません――なんて失礼なことは、もう今さら言えないし。
 っていうか、高級ステーキをどうしてももう1枚食べたいから、言いたくないし。

 ど、ど、ど、どうしよう……!?
 どうしたらいいかな!?

 食欲の命ずるがままに、やらかしてしまったわたしが、心の中でくよくよしていると、

「クレアは本当に美味しそうに食べるよね。見てると、こっちまで楽しい気分になってくるよ」
 ライオネルは優しい笑顔のまま、そんな風に言ってくれたんだ。

「あ、ライちゃんも思った? クレアちゃんったら本当に嬉しそうに食べるもんね。つられてわたしも、いっぱい食べちゃったし」

 続いてリリーナさんも、優しく笑いながらそんな風に言ってくる。

「よし、せっかくだから、ボクもお代わりしようかな」
「あら、小食のライちゃんがお代わりだなんて、珍しいね?」

「クレアを見てたら、なんだか物足りなくなっちゃってさ」
「じゃあわたしも、この後のデザートをお代わりしよーっと」

「姉さんはいつも、デザートをお代わりしてるでしょ」
「あはは、そうでした。てへっ」

 ライオネルに突っ込まれたリリーナさんが、てへぺろっと可愛く舌を出した。

「えっと、その、ありがとうございます……」

 わたしは2人にお礼を言った。
 もしかしなくても、アホなわたしに気を使ってくれたんだろうから。

 ライオネルもリリーナさんも、すごくすごく優しい人だ。
 偉ぶってばかりだったシェンロンの王宮の人たちとは、ぜんぜん違ってる。

 わたしは庶民の出なのに、しっかりと見て気にかけてくれるんだから。

 こんなに良くしてくれるんだから。
 明日から『水龍の巫女』として本気の本気で、がんばらないとだよね!

 わたしはとっても幸せな気分で、すぐに用意された2枚目のステーキも、ぺろりと完食した。

 さすがに、3枚目はいかなかった。
 いけたけど、いかなかった。

 えてね、ふっ。

 わたしにだって年頃の女の子としての、節度と言うものがありますから?

 楽しいディナーを最後までハピハピな気分で終えると、わたしとライオネルは同棲するお部屋に向かったのだった。
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