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第三章 恋する季節

第31話 お疲れさま会

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 そうして予定時間を大幅に超えて行われた視察が終わった帰りの馬車の中で。

「お疲れさま、ジェイク」

「ミレイユも疲れただろ? 午後はずっとあちこち回りっぱなしだったし」

 わたしとジェイクは向かい合って、お疲れ様会をやっていた。

 またもやアンナは随伴スタッフたちと一緒に別の馬車に乗っている。
 なんていうかその、気を使われてるわよね、間違いなく。

「ま、わたしは途中馬車に残って休んでたりもしたからね。ジェイクほど疲れてないわよ。で、どうだったの、自分の目で見て回った感想は?」

「そうだな……復興はそれなりに上手くいっていると思う。一部物資の滞っているところに必要なものを優先的に配布していけば、そう遠くないうちに西地区も元の賑わいを取り戻すんじゃないかな」

「良かった……」

「ミレイユはどうだった?」

「そうね……わたしも自分の目で見てやっと実感できたって気がするかな。今まではほら、やっぱりどこか机上の空論だったし」

 『破邪の結界ver.エルフィーナ』によりヴァルスは収束に向かい、ロックダウンも解除された。

 そう言葉だけで理解するのと、復興をはじめた西地区をこの目で実際に見てみるのでは、やっぱり理解の深さが違うっていうか。

 自分の目で見てみて、ジェイクやスタッフの人に説明もしてもらって。

 そうしてやっとわたしも、ヴァルスが収束したことを実感することができたのだった。
 やれやれと、わたしは胸をなでおろした。

「それもこれもミレイユのおかげだよ。ミレイユが守ってくれたんだ。ありがとう聖女ミレイユ・アプリコット。エルフィーナ王国の王子として、心から君に感謝の気持ちを伝えたい」

 ジェイクがいつになく真面目モードで、感謝の意を伝えてくる。
 だけど――、

「いいえ、それはちょっと違うわね」

「……違う? ……とは?」

 わたしの言葉にジェイクが首をかしげる。

「エルフィーナはみんなで守ったのよ。歯を食いしばってロックダウンに耐えた住民たち。必死に最前線で治療を続けた医療従事者。わたしをサポートしてくれたアンナ。そして倒れるまで自分にやれることをやり続けたジェイク――みんなの力が1つになって、こうして乗り切ることができたのよ」

 だからわたしはきっと、その中のピースの1つに過ぎないんだ。
 もちろん一番大きなピースであることは確かだけどね!

 とまぁ、わたしはちょっとクサいかもって感じのセリフを言ったんだけど、

「……」
「……」

「…………」
「な、なんで急に無言になるのよ!? なにか言いなさいよねっ!?」

 ガラにもなくいい感じのことを語っちゃったんだから、反応がないと恥ずかしいでしょ!?
 無言スルーの塩対応とか、泣いちゃうわよ!?

「ミレイユ、こんな時になんなんだけど――」

「ああもう! どーせ似合ってないとか言うんでしょ!? 自分でもガラじゃないって分かってるわよ!」

 自虐しつつ半ギレで騒ぎたてたわたしに、

「ごめんごめん、違うんだ。ちょっと感動してしまってさ、言葉が出なかったんだ。うん、とても素敵な言葉だったよ。近々、復興祈願の祭典が行われるから、その時にでも聖女ミレイユの言葉として使わせてもらうよ」

「いやあの、勢いでしゃべっちゃったけど、正直恥ずかしいからあんまり他の人には聞かれたくないかなーって……」

「いいや使わせてもらう。やると決めたら貫き通す、それがオレの流儀なんでね」

「演説くらい自分の言葉で話しなさいよね!?」

 あんたはどこまで他力本願なのよ!?

 ――と、

「それとミレイユ――いや『破邪の聖女』ミレイユ・アプリコット殿」

 ジェイクが急に超真剣な表情でわたしを見つめてきた。

「な、なによ急に改まって?」

 その雰囲気に思わずのまれちゃいそうになるわたし。

 ジェイクはまぁその、ポンコツ王子さまなんだけど、かなりのイケメンであるわけで。
 つまりキリッとした表情をすると。めちゃくちゃカッコイイんだよね……。

「今の言葉を聞いて、改めて確信したことがあるんだ。聞いてくれないかな」

「な、なによ? あとその話しかたは何なの?」

 まるでプロポーズでもするみたいに、変にかしこまっちゃって。
 やめてよね、なんだか変に緊張しちゃうじゃないの。

 そんなの全然――ってことはないんだけど、ちょっとくらいしかジェイクには似合ってないんだからね!

 するとジェイクは、一度大きく深呼吸をしてから意を決するように言ったんだ、

「ミレイユ、オレはキミが好きだ」
 ――って。

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