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第7章

第124話 義妹サクラ

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「あ、でもそれならアタシたちもお土産を用意した方がいいんじゃない?」
 シャーリーがふと気づいたように提案をしてきた。

「そうだな、なにか適当に見繕って買っていくか」

「あ、ケイスケ。それなら近くのお菓子屋さんのマカロンが、すごく綺麗でとっても美味しいから買っていこうよ。焼き菓子なら日持ちもするし。もちろんケイスケの奢りで」

「そりゃこんな時くらいはお金を出すけどさ? 俺はパーティの実質リーダーなわけだしな?」
 サクラの言葉に俺は頷いた。

 でもさらっと当たり前のように俺の奢りと言われると、なんとなく腑に落ちないものがなくはない……。
 何度も言うけど、この中でぶっちぎりで一番のお金持ちはサクラなんだからな?

 ちなみにパーティ『アルケイン』の実質リーダーは俺だが、対外的な正式なリーダーはもちろん俺ではなくアイセルである。
 誰しも、20代後半の冴えない後衛職より、凄腕の美少女魔法戦士がリーダーとして活躍する冒険譚を好むからだ。

「あとはお酒も用意した方がいいかもね」
 シャーリーのつぶやきに、

「お酒なら、パパのお気に入りのワインを何本かもらってくるね。なんかね、この前実家に帰った時にパパが言ってたんだけど、30年物のいいワインがあるんだって! 超おすすめって言ってたよ」

 サクラが任せなさいといった感じで上機嫌に応えた。

「なぁサクラ。30年物のワインとか、そんな特上中の特上を何本も融通してもらって本当に大丈夫なのかな? 俺としてはそこが果てしなく不安なんだけど」

 サクラのパパさんといえば、この辺りで一番の名士ヴァリエール家の当主である。
 そんなパパさんが太鼓判を押す超お気に入りのワイン(×複数本)とか、金額的にヤバいのではないだろうか?

「パパはケイスケのことをすっごく気に入ってるから、これくらい全然平気だし。ケイスケが欲しがってたって言ったら、多分10本でも20本でも用意してくると思うよ?」

「頼むからやめてくれな。30年前って、俺の記憶がたしかなら100年に一度のワインの当たり年で、その年のワインの値段は他の年よりゼロが1つ2つ多かったりするんだよ」

「ふーん、ケイスケってワインのことも詳しいんだね」

「だからサクラのパパさんに図々しい奴だって思われて、俺の心証が悪くなったら困るんだ」

 せっかく気に入ってもらえているのなら、このまま良好な関係を維持していきたいです。

「だから大丈夫だってば。この前帰った時もね、ケイスケをヴァリエール家の養子にして家督を継がせてもいいとか言ってたし」

「ははは、サクラにしては面白くない冗談だなぁ」
「だって冗談じゃないもん」

「えっ!?」

「だからほんとの事だし。ケイスケはパパの超お気に入りだもん。若いのに苦労してそうなところが実にいいって言ってたよ。上に立つ人間向きだって」

「なんとも微妙な褒められ方で、コメントに困るんだけど……」
「え、そう?」

 でもヴァリエール家の養子かぁ。
 ってことは超がつくほどのお金持ちになれるってことではあるんだよな。

 ただまぁお金持ちにはなれても「この辺り一帯の顔役」っていうものすごく大きな責任がついてくるから、個人としての自由はあまりなさそうなんだよなぁ。

 あともし養子になったら俺はサクラのお義兄にいさんになるわけだけど、それはサクラ的には問題ないんだろうか?

「ま、さすがにそれは俺には荷が重いかな――っていうか、なんでいつの間にかサクラがこの場を仕切ってるんだよ」

「んー、人徳?」

「おいこらサクラ、言うに事欠いて人徳だと? 俺には人徳がないって言いたいのか?」
 今さらっと酷いこと言ったよね?

 とまぁ、話がいつものように無駄に盛り上がったところで、

「まぁまぁケースケ様、素敵なワインを用意してくれるということですし、今日はサクラを立てあげるのが度量の見せ所ではないかと」

 最後にアイセルが綺麗に締めて、次の方針を決める話し合いは――いつものように途中でちょっと脱線しかかったけど――今日も無事に終わったのだった。
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