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第二部 「極光の殲滅姫」 第5章

第73話 Sランクパーティ『アルケイン』、初クエスト!

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 俺たちの住む南部諸国連合の統治機構である「南部諸国連合評議会」――通称「評議会」。

 レインボードラゴンを討伐し勇者パーティを救出したことで、晴れてSランクとなったパーティ『アルケイン』は、評議会から特別指名クエストの依頼を受けられるようになった。

 Aランク以下の普通のパーティでは手に負えない高難度の未解決クエストを、優先して割り振られるのだ。

「そういうわけだからこのクエストはとても名誉なことであり、決して油断することなく誠心誠意、真心を込めて心してかかるように」

 俺はアイセルとサクラに、パーティのリーダー&年長者として訓示を行ったんだけど――、

「そうですね」
「はいはい。っていうか、なんで私たちがこんなことを……」

 2人の反応は極めて薄いものだった。

「まぁそう言うな。Sランクパーティは現在4つある。そして俺たちはその中で一番の新参者、どころか出来立てほやほやの赤ちゃんSランクパーティだ。評議会も俺たちの実力の程を、まずは小手調べって言ったところだろうよ」

「だからってこれはないでしょ?」

「Sランクの指名依頼だから報奨金はちゃんと高額だぞ? まずはこれをきっちりこなすことで、評議会に俺たちの実力を見せつけてやろうじゃないか」

 俺がいかにもそれらしい風に説明してあげても、

「実力って言ってもねぇ……」

 俺の言うことならなんでもほいほい聞いてくれるアイセルは別として、サクラの方はまったくもって乗り気じゃないみたいだった。

「今回は必要な作業は俺が全部やるから、2人は離れたところで見ててくれたらいいからさ。何も起こらないように周囲の警戒だけしといてくれ」

 そう言うと俺は分厚い皮手袋を両手にはめた。
 防水加工がしてあり、手首の上まで覆ってくれて、臭いも完全シャットアウトしてくれるとても高価な皮手袋だ。

 このクエストのために評議会から用意してもらったものだった。

「じゃあお言葉に甘えてケイスケに任せるわね」

 俺の言葉に、サクラはこれ幸いとばかりに完全に不参加モードを決め込んだんだけど、

「わたしはやります。ケースケ様だけを死中に飛びこませる訳にはいきませんので」

 アイセルはいつになく強い口調でそう言った。

 まるで自分自身を鼓舞するために言ってるみたいだなと、俺は思った。
 なんかもう悲壮感がにじみ出ちゃっていた。

 アイセルも本音のところではやるのが嫌なのだろう。

 でもさすがの意志の強さで、己の弱い心を抑え込んでみせるアイセル。
 パーティのエースとして最前線で戦い続けてきただけのことはあるな。

 だけど、

「今回に限ってはアイセルも見学だ。誰にも向き不向きってのがあるからな」

 年頃の女の子であるアイセルにこのクエストをやらせるのは、さすがに忍びない。

「わたしはこれくらい平気です」

「まぁ待てアイセル。これは俺にこそ向いたクエストだと思うんだよ。なにせこの中じゃ俺が一番お世話になってるんだからさ。まさに俺こそがやるべきクエストじゃないか?」

「ですが……」

「悪いが今回はアイセルも見ていてくれ。俺が1人でやる、これはもう決定事項だ。異議は認めない」

 俺はそう言うと、なおも一緒にやろうとするアイセルを視線で制止しながら、茂みの奥へと踏み入った。

 アイセルすらも恐れをなすSランククエストの目的地。
 そこはいったいどんな魔境なのかというと――、

「く、臭い……、おぇぇぇぇぇ……」

 クサヤ・スカンクがふんをする場所だった。
 つまりクサヤ・スカンク・トイレだった。

 俺は口呼吸で必死に悪臭に耐えながらそこにあった糞をいくつか掴むと、革袋の中に入れてきつくきつく口を縛った。

 全部は取らない。

 なんでも取り過ぎるとクサヤ・スカンクが警戒して場所を変えてしまうので、半分は残しておく必要があるんだと。

「よし、まずは1つ目だ。すぐ次に行こう」

 俺たちは次の場所、さらに次の場所、さらに次の次の場所と回って十分な糞を集めてから、少しでも早く受け渡すべく急ぎ冒険者ギルドへと帰還したのだった。

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