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第二章王太子、オークの花嫁になる
おまけ番外編「ツカサとシスルのお茶会」後編。11月09日から三章「エルフ、オークの花嫁になる」更新予定
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「その体勢のまま二人で寝て、破水で起きたんだよなー。あれは焦ったぜ」
なんか股があったかいなー?と、思ったらびしょ濡れで、しかもクルーガの頭が出かかっていた。クオーンと共に絶叫して、主治医たちが駆け込んできたのでなんとかなったのだ。
後で主治医たちに「妊娠中に!あんな体勢で!寝てはなりません!」「陛下!あれほ王配陛下に流されないようお気をつけ下さいと申し上げましたよね!」「絶対安静の意味を調べてください!」「御子に影響があったかもしれなかったのですよ!」「飢餓感がゆえとはいえヤリすぎです!」などとバチくそ怒られた。
仰る通りです。クオーンともども反省してます。信じてください。でもめっちゃ気持ちよかった……。
「破水で!?た、大変でしたね……。私たちも気をつけます……」
「オグルもスケベそうだもんなあ。シスル、身体は大丈夫か?」
「オグルは優しい男ですから……」
ポッと頬を赤らめて照れるシスル。人間って変われば変わるものだなあと、しみじみ思う。
「妊娠中だから過保護なんですよね。私が何かしようとする度に先回りしますし、閨でも優しくて……。まだ口淫が上手く出来ないのですが、どうしたらいいか教えてくれますし、褒めてくれます。精液もお腹いっぱい飲ませてくれますし……」
思い出しているのか、シスルの顔が艶めく。おっと。発情しかけてないか?凛々しい系美青年が蕩けた顔になると破壊力凄いな。
「オグルの手で頭を撫でられると……はぁ……私は……なんでもしたくなって……ふぅ……犬のように腹を見せて服従して、もっと褒めてとねだって……ああ、私は誇り高き王子であり……んんっ……剣と魔法で戦う戦士であったというのに……はぁはぁ……今や愛しい夫に抱かれる以上の幸福を知らない花嫁なのです……」
「うん。発情してるな」
そしてなんか詩情が爆発してる。シスルって、最初は傲慢かつ脳筋っぽい言動をしてたけど、あの流れでオグルに惚れたし、本来はロマンティックが止まらない性格なんだろうな。おまけに妊娠中はテンションおかしくなるもんだし。
ともかく、このままでは詩集が出来そうだ。そろそろお開きにするかと考えていると、ドアを叩く音がした。
「はぁはぁ……入れ」
一瞬で正気に戻ったシスルが入るよう言うと、案の定オグルが入ってきた。
「おい。万年発情期野郎。シスルに無理させてないで帰りやがれ」
開口一番の不敬発言。訴えたら俺が勝つぞ。
「オグル!ツカサ殿に失礼なことを言うな!」
「いいよ。そろそろ帰ろうと思ってたし。シスルが元気そうでよかったよ」
俺は素直に立ち上がり、シスルをなだめた。一応、これは伝えておくか。営業時代の知恵だ。善意は口にしろ。伝わらないと意味がない。
「シスル。俺はシスルのことが心配だったから、今日ここに来たんだ」
「心配、ですか?」
「うん。シスルって、オグルと結婚するまで自分が妊娠するなんて考えてもなかっただろ?俺もそうだった。クオーンとの子が欲しくて作ったけど、いざそうなると不安もあったんだ。大丈夫そうだけど、同じ人間の男同士話したいことがあったらいつでも言ってくれ。相談でも愚痴でも惚気でも、なんでもいいから」
「ツカサ殿……ありがとうございます」
シスルの目が潤み、重たい腹を抱えて立ち上がる。俺の手を握りながらしみじみと話した。
「私は果報者です。あれだけこの国と貴方に迷惑をかけたというのに、夫にも友にも恵まれました」
俺の胸もいっぱいになる。
「これからも、そう言ってもらえるようにするからよろしくな。……もちろん、君にも誓うよ」
シスルの腹の子に向けて語りかける。これからもしっかり、クオーンと一緒に緑鉄国を盛り立てて、そしてシスルたち周囲を守ってい……。
「触るな。離れろ。俺のシスルだぞ」
「オグル!いい加減にしろ!」
オグルにバシッと手を引き離され睨まれる。しかもシスルを背後から抱きしめて威嚇しやがる。
「おいおい。近衛隊隊長様よう。いくらなんでも不敬が過ぎるんじゃないですかねー?」
「今は公務中じゃねえでございますし、貴方様には相応しい扱いでございます。だからさっさと帰れ俺のシスルに触るな近づくな」
「嫉妬大爆発かマタニティブルーか知らねえが!見苦しいぞおっさん!」
「猥談で周囲を威嚇してた奴に言われたくねえな!クソガキ!」
「オグル!止めろと言ってるだろ!ツカサ殿も煽らないで下さい!」
俺たちのクソくだらない口喧嘩は、困り果てたシスルが泣き出すまで終わらなかった。シスルを泣かせたことは深く反省したが、オグルだけは許さないし守らなくていいなと思う俺なのだった。
なんだかんだで幸せで楽しいある日のことだった。
おしまい
◆◆◆◆◆
三章「エルフ、オークの花嫁になる」に続きます。
三章の更新は、もちろん11月09日(良いオークの日)からです。よろしくお願いします。
なんか股があったかいなー?と、思ったらびしょ濡れで、しかもクルーガの頭が出かかっていた。クオーンと共に絶叫して、主治医たちが駆け込んできたのでなんとかなったのだ。
後で主治医たちに「妊娠中に!あんな体勢で!寝てはなりません!」「陛下!あれほ王配陛下に流されないようお気をつけ下さいと申し上げましたよね!」「絶対安静の意味を調べてください!」「御子に影響があったかもしれなかったのですよ!」「飢餓感がゆえとはいえヤリすぎです!」などとバチくそ怒られた。
仰る通りです。クオーンともども反省してます。信じてください。でもめっちゃ気持ちよかった……。
「破水で!?た、大変でしたね……。私たちも気をつけます……」
「オグルもスケベそうだもんなあ。シスル、身体は大丈夫か?」
「オグルは優しい男ですから……」
ポッと頬を赤らめて照れるシスル。人間って変われば変わるものだなあと、しみじみ思う。
「妊娠中だから過保護なんですよね。私が何かしようとする度に先回りしますし、閨でも優しくて……。まだ口淫が上手く出来ないのですが、どうしたらいいか教えてくれますし、褒めてくれます。精液もお腹いっぱい飲ませてくれますし……」
思い出しているのか、シスルの顔が艶めく。おっと。発情しかけてないか?凛々しい系美青年が蕩けた顔になると破壊力凄いな。
「オグルの手で頭を撫でられると……はぁ……私は……なんでもしたくなって……ふぅ……犬のように腹を見せて服従して、もっと褒めてとねだって……ああ、私は誇り高き王子であり……んんっ……剣と魔法で戦う戦士であったというのに……はぁはぁ……今や愛しい夫に抱かれる以上の幸福を知らない花嫁なのです……」
「うん。発情してるな」
そしてなんか詩情が爆発してる。シスルって、最初は傲慢かつ脳筋っぽい言動をしてたけど、あの流れでオグルに惚れたし、本来はロマンティックが止まらない性格なんだろうな。おまけに妊娠中はテンションおかしくなるもんだし。
ともかく、このままでは詩集が出来そうだ。そろそろお開きにするかと考えていると、ドアを叩く音がした。
「はぁはぁ……入れ」
一瞬で正気に戻ったシスルが入るよう言うと、案の定オグルが入ってきた。
「おい。万年発情期野郎。シスルに無理させてないで帰りやがれ」
開口一番の不敬発言。訴えたら俺が勝つぞ。
「オグル!ツカサ殿に失礼なことを言うな!」
「いいよ。そろそろ帰ろうと思ってたし。シスルが元気そうでよかったよ」
俺は素直に立ち上がり、シスルをなだめた。一応、これは伝えておくか。営業時代の知恵だ。善意は口にしろ。伝わらないと意味がない。
「シスル。俺はシスルのことが心配だったから、今日ここに来たんだ」
「心配、ですか?」
「うん。シスルって、オグルと結婚するまで自分が妊娠するなんて考えてもなかっただろ?俺もそうだった。クオーンとの子が欲しくて作ったけど、いざそうなると不安もあったんだ。大丈夫そうだけど、同じ人間の男同士話したいことがあったらいつでも言ってくれ。相談でも愚痴でも惚気でも、なんでもいいから」
「ツカサ殿……ありがとうございます」
シスルの目が潤み、重たい腹を抱えて立ち上がる。俺の手を握りながらしみじみと話した。
「私は果報者です。あれだけこの国と貴方に迷惑をかけたというのに、夫にも友にも恵まれました」
俺の胸もいっぱいになる。
「これからも、そう言ってもらえるようにするからよろしくな。……もちろん、君にも誓うよ」
シスルの腹の子に向けて語りかける。これからもしっかり、クオーンと一緒に緑鉄国を盛り立てて、そしてシスルたち周囲を守ってい……。
「触るな。離れろ。俺のシスルだぞ」
「オグル!いい加減にしろ!」
オグルにバシッと手を引き離され睨まれる。しかもシスルを背後から抱きしめて威嚇しやがる。
「おいおい。近衛隊隊長様よう。いくらなんでも不敬が過ぎるんじゃないですかねー?」
「今は公務中じゃねえでございますし、貴方様には相応しい扱いでございます。だからさっさと帰れ俺のシスルに触るな近づくな」
「嫉妬大爆発かマタニティブルーか知らねえが!見苦しいぞおっさん!」
「猥談で周囲を威嚇してた奴に言われたくねえな!クソガキ!」
「オグル!止めろと言ってるだろ!ツカサ殿も煽らないで下さい!」
俺たちのクソくだらない口喧嘩は、困り果てたシスルが泣き出すまで終わらなかった。シスルを泣かせたことは深く反省したが、オグルだけは許さないし守らなくていいなと思う俺なのだった。
なんだかんだで幸せで楽しいある日のことだった。
おしまい
◆◆◆◆◆
三章「エルフ、オークの花嫁になる」に続きます。
三章の更新は、もちろん11月09日(良いオークの日)からです。よろしくお願いします。
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