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第二章王太子、オークの花嫁になる
王太子、オークの花嫁になる【16】
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シスルが緑鉄国に連れて来られて一週間と少し経った。今日は、クオーンとツカサの結婚式だった。無事に終わり、後は披露宴だ。待ち時間の間、ツカサとクオーンは控え室でイチャイチャしていた……のだが、今のツカサはブチ切れていた。
「このむっつりオーク!すけべ!すけべ!」
「ツカサ、落ち着きたまえ」
「落ち着いてられるかー!」
罵られているのは、シスルと共に挨拶に来たオグルである。
「うるせえ!テメェにだけは言われたくねえんだよ!万年発情期が!」
「オグル落ち着け!王配陛下に向かって失礼だろうが!」
オグルもまた怒鳴り返す。シスルが止めるが止まらない。
どうしてこうなってしまったのか。話は少しだけさかのぼる。
◆◆◆◆◆
オグルが王族の一員として、自分の花嫁であるシスルを伴い控え室に挨拶に来てくれた。オグルは近衛騎士隊長であり、今回の披露宴の警備責任者だ。それと同時に参列者でもある。始まってしまえば話す間も無いので、披露宴が始まる前に挨拶をしたかったのだという。
「オグル叔父、シスル殿、お越しいただきありがとうございます。どうか楽になさって下さい」
「二人ともいらっしゃい。お茶とお菓子もあるから食べてくれ」
「おう。邪魔するぜ」
「お邪魔します」
ツカサは人払いをし、大喜びで席をすすめた。二人からの挨拶と祝福を受けつつ様子を観察する。色々と心配だったのだ。
シスルは、オグルの婚約者になったその日の内に花嫁に……要するに初夜を迎えて婚姻していた。
知らせを受け、ツカサとクオーンは度肝を抜かれたものである。オグルは『あくまで保護だ。手は出さん』とか言っていた。なのに一日経つか経たないかで手を出したのだ。
ツカサは、『くっ殺王子RTA』『頭の固いことばかり言ってたけど肉棒の方が固かったか』などと、自分のことを棚上げして下品極まりない感想を抱いた。同時に、シスルのことが心配だった。かつての拉致誘拐の恨みはもう無い。だってあの女王様怖すぎる。シスルの身の上にひたすら同情していた。クオーンも同じ気持ちだ。
「シスル、この砂糖菓子は美味いぞ」
「どれ……ほう、これは花の香りか?美味いな」
(大丈夫だったみたいだな。よかった)
二人は仲睦まじそうだ。また、シスルは以前の険しさや傲慢さが薄れて朗らかになっている。
クオーンとこっそり視線を交わし『よかった。うまく行ったみたいだ』『ああ、安心したよ』と伝え合う。二人はシスルに微笑みかけた。シスルは何を思ったか居住まいをただして頭を下げる。
「国王陛下、王配陛下、私のこれまでの不敬を謝罪します。私の罪は全て私が負います。どうか生まれてくる子供には寛大な処置をお願いします」
「もちろんだよ!俺はいま最高に幸せだし気にしないで!これからはオグルと一緒に俺たちを支え……は?子供?」
「その通りだ。シスル殿の罪はすでに償われている。これからはオグル叔父の伴侶として、私たちを支えてくれれば……は?」
シスルはポッと頬を染め、オグルはドヤ顔でその肩を抱きのたまった。
「今朝わかったんだが、俺らの間にも子供が出来た。式は出産後にするからよろしくな」
こうして、事態は冒頭に戻るのだった。
「このむっつりオーク!すけべ!すけべ!」
「ツカサ、落ち着きたまえ」
「落ち着いてられるかー!」
罵られているのは、シスルと共に挨拶に来たオグルである。
「うるせえ!テメェにだけは言われたくねえんだよ!万年発情期が!」
「オグル落ち着け!王配陛下に向かって失礼だろうが!」
オグルもまた怒鳴り返す。シスルが止めるが止まらない。
どうしてこうなってしまったのか。話は少しだけさかのぼる。
◆◆◆◆◆
オグルが王族の一員として、自分の花嫁であるシスルを伴い控え室に挨拶に来てくれた。オグルは近衛騎士隊長であり、今回の披露宴の警備責任者だ。それと同時に参列者でもある。始まってしまえば話す間も無いので、披露宴が始まる前に挨拶をしたかったのだという。
「オグル叔父、シスル殿、お越しいただきありがとうございます。どうか楽になさって下さい」
「二人ともいらっしゃい。お茶とお菓子もあるから食べてくれ」
「おう。邪魔するぜ」
「お邪魔します」
ツカサは人払いをし、大喜びで席をすすめた。二人からの挨拶と祝福を受けつつ様子を観察する。色々と心配だったのだ。
シスルは、オグルの婚約者になったその日の内に花嫁に……要するに初夜を迎えて婚姻していた。
知らせを受け、ツカサとクオーンは度肝を抜かれたものである。オグルは『あくまで保護だ。手は出さん』とか言っていた。なのに一日経つか経たないかで手を出したのだ。
ツカサは、『くっ殺王子RTA』『頭の固いことばかり言ってたけど肉棒の方が固かったか』などと、自分のことを棚上げして下品極まりない感想を抱いた。同時に、シスルのことが心配だった。かつての拉致誘拐の恨みはもう無い。だってあの女王様怖すぎる。シスルの身の上にひたすら同情していた。クオーンも同じ気持ちだ。
「シスル、この砂糖菓子は美味いぞ」
「どれ……ほう、これは花の香りか?美味いな」
(大丈夫だったみたいだな。よかった)
二人は仲睦まじそうだ。また、シスルは以前の険しさや傲慢さが薄れて朗らかになっている。
クオーンとこっそり視線を交わし『よかった。うまく行ったみたいだ』『ああ、安心したよ』と伝え合う。二人はシスルに微笑みかけた。シスルは何を思ったか居住まいをただして頭を下げる。
「国王陛下、王配陛下、私のこれまでの不敬を謝罪します。私の罪は全て私が負います。どうか生まれてくる子供には寛大な処置をお願いします」
「もちろんだよ!俺はいま最高に幸せだし気にしないで!これからはオグルと一緒に俺たちを支え……は?子供?」
「その通りだ。シスル殿の罪はすでに償われている。これからはオグル叔父の伴侶として、私たちを支えてくれれば……は?」
シスルはポッと頬を染め、オグルはドヤ顔でその肩を抱きのたまった。
「今朝わかったんだが、俺らの間にも子供が出来た。式は出産後にするからよろしくな」
こうして、事態は冒頭に戻るのだった。
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