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第二章王太子、オークの花嫁になる

元サラリーマン、どすけべウェディングドレスを着る【7】

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 クオーンは顛末を聞き、湯気越しにもわかる程度に顔をしかめた。おや?っと思って見つめると、苦く笑う。

「オグル叔父たちと仲が良いのだな。喜ばしいが複雑だ」

「え?まさか嫉妬?嬉しいけど絶対無いぜ。オグルはくッ殺騎士派だし、ソーイは旦那さんとラブラブだし、他の奴らも恋人とか妻とか夫とかご主人様がいるし」

「クッコロキシハ?言葉の意味はよくわからないが、言いたいことはわかっている。君のことも叔父上たちのことも疑っていない。しかし……」

 ちゃぷんと音が立つ。クオーンの腕の中に閉じ込められた。クオーンは片膝を立てて、その上に俺を乗せる。目線があう。

「時々、君を閉じ込めてしまいたくなる。君は魅力的な人だ。叔父たち以外の臣下も国民たちも心から君を慕っている。私でなくても……と、どうしても不安になる時がある」

「俺にそんな魅力なんてないのに大袈裟だな」

 大体、周りが俺を歓迎してるのは『クオーンとの潤滑油』だからだ。
 クオーンはいわゆる先祖返りで、始祖のオークキングの特徴が出過ぎているそうだ。その為、周りはクオーンが無意識に出している覇気に圧倒されてしまう。オークに至っては、本能的に絶対服従してしまうという。幼い頃はともかく成人後は、あのオグルでさえそうだったらしい。今まで、会話はジェスチャーと筆談でなんとかしていたらしい。
 それが、俺が来て一変した。俺を交えて話すだけでまともに会話できるのだ。このため、俺は来て早々国政に関わる場にバンバン連れて行かれることになる。この世界に来て間もない俺がいいのか?とおもったけれど、教育と実践を同時進行でこなした方が早いし、クオーンとのやり取りも円滑に済むとの事だった。
 どうやらクオーンは、俺の前だと覇気を引っ込めれるらしい。また、俺は覇気を受けても平気だ。なんか気合い入ってるなーとか、ちょっと機嫌悪い?くらいにしか思わない。

「みんなが俺を大事にしてくれるのは、この国を立派に治めているクオーンを慕っているからだよ」

 クオーンはムッとした顔になった。子供っぽくて可愛い。

「皆の気持ちは理解している。しかし、ツカサは自分の魅力をわかっていない。明るい笑顔も、強い心も、おやかな肢体も魅力的だというのに……」

「不安なら閉じ込めてもいいぞ」

「は?」

 びっくりするクオーンの顔を両手で包み、唇に自分のそれを重ねる。軽い重ねるだけのキスだった。

「クオーンにされるならいいよ。だって、俺にはクオーンだけだ。俺のケツまんこを受け入れて抱いてくれるのは……それに、クオーン以外に抱かれたくないし」

 クオーンが感極まった様子で俺を抱きしめた。湯で温められた肌同士が密着してたまらない気持ちになる。

「君は本当に包容力があるというか……ツカサお兄ちゃんは頼もしいな」

「弟扱いは嫌じゃなかったの?クオーンくん」

「嫌というか……私に頼り甲斐がないようで不安だっただけだ。ただでさえ私は君が初めてだったのだし……」

「は?」

 今度は俺がびっくりして固まる番だった。

「ツカサ?どうしたのだろうか?」

 どうした?どうとは?どう……。

「ど、童貞だったの!?嘘だろおおおおお!?」

 新たな衝撃の事実に、俺は絶叫したのだった。

 後に、オークは本能的にどう相手を抱けばいいかわかると聞いて「何そのエロ設定。たぎる」と、なったのだった。
 まだまだお互い知らない事ばかりだとわかった夜だった。

◆◆◆◆◆

 時は流れ、結婚式まで半月を切った。いよいよ準備も大詰めだ。
 今日は式のリハーサルをする日だ。花嫁の控室に入ると、仕立て屋のソーイたちが完成した衣装を用意して待っていてくれた。着付けは女官たちだが、衣装の最終確認を兼ねているらしい。

「良くお似合いです!」

「ありがとう。俺も気に入ったよ。これを着るのが式だけなんてもったいないな」

 結局、花嫁衣装はスーツに似た形の純白の衣装になった。俺はドレスでもよかったけど、クオーンが『ツカサのスーツ姿が凛々しくて好きだ。衣装もぜひそれに倣ってほしい。……それに、君がドレス姿だとその場で襲いかかりそうなのだ』と言った。俺は式の真っ最中に致してもいいけれど、オグルがブチ切れるからやめた。
 こうした経緯があって、ソーイが俺のスーツを元にデザインしてくれたのだ。
 デザイン画の段階で一目で気に入っていたが、出来上がりは期待以上だった。金糸と深緑色の糸で刺繍が施され、赤色の宝石が品よく散りばめられている。かなりカッコいい。ソーイは嬉しそうに頷いた。

「最高傑作です!王配陛下がご懐妊された時はこの世の終わりかと思いましたが、体型があまりお変わりにならなくて助かりました!」

「いやー。あの時は俺も焦った。盛り上がって俺もクオーンも避妊するの忘れてたんだよ。まあ、おかげでクルーガに会えたんだけど」
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