3 / 77
第一章サラリーマン、オークの花嫁になる
サラリーマン、オークの花嫁になる【3】
しおりを挟む
「安心しなさい。君のことは私が守る」
きゅん。胸が痛い。ドキドキして顔が熱くなってるのが自分でもわかった。何か返事をしなければとまごついている間に、王太子が立ち上がり唸るように言った。
「ふん!孕ませ豚の末裔ごときが気取るな……ぎゃん!」
「うるせえパワハラ誘拐犯が!この人を馬鹿にするな!」
「王太子殿下あああああ!」
「おお!いい右だ。やるなあの人間」
「流石は国王陛下の花嫁だ」
色々限界だったので思いっきりぶん殴って踏んでやったのだった。
◆◆◆◆◆
この後、王太子一行は速やかに追い出された。
「彼は私が保護するが、不義理と暴言については改めて貴国に抗議する」
王太子は真っ青になっていたが、知ったことではない。
俺はオークの騎士さんたちに丁重に扱われ、城の一室に案内された。とんでもなく広くて豪華な部屋だが、壁も調度品も温かみのある色で落ち着く。それに、オークの侍女さんたちはとても上品で優しかった。
「まあ!こんなに細い腰をコルセットでさらに絞るなんて!」
「お労しい。さぞ、お苦しかったでしょう?」
「え、ええ。まあ……あ、後は自分で脱げますから!大丈夫です!」
侍女さんたちに花嫁衣装を脱がしてもらうのは恥ずかしかったが、おかげで元のスーツ姿に戻れた。
ちなみに何故スーツに着替えられたかというと、俺と一緒に召喚されたスーツ、ベッド、ベッドの上のホニャララも、クオーンへの献上品にされていたからだ。部屋の隅に置かれていたのでサクッと着替えられたのである。というか、侍女さんたちにも見られたってことだよな。ディルドとかを。辛い。
そんなことより、今後のことだ。楽な格好に着替えたら、改めてクオーンと話し合うことになっている。
「ツカサ様、ご体調はいかがでしょうか?陛下もご心配されています。お辛いようでしたら……」
気遣いの出来る人だな。またキュンとするが、今はそれどころじゃない。
「いえ!大丈夫です!」
俺はビシッとスーツに着替え臨戦態勢になった。交渉は初手が大事だ。
帰れないなら、出来るだけ良い条件で暮らせるようにしたい。例えば誰かの庇護の元で悠々自適生活とか。
『安心しなさい。君のことは私が守る』
そこで真っ先に浮かんだのが、クオーンの言葉と凛々しい立ち姿だった。ポッと顔が赤くなるのが自分でもわかったが、頭を振る。
あんなに格好いいし、庇ってもらったからトキメクのは仕方ない。だからこの感情は恋じゃない。そう、自分に言い聞かせながら。
◆◆◆◆◆
案内されたのは食堂だった。
俺とクオーンは、大きなテーブルの端と端に座る。体調に問題なければ、食事をしながら話そうということだった。召喚されてからろくに食べてないので、ありがたかった。
「どうか作法は気にせずくつろいで欲しい」
嬉しいが、声が遠い。顔もよく見えない。
「では、もう少し国王陛下のおそばに座らせて頂けないでしょうか?」
「私の側に?……いや、私は構わないが」
クオーンはまた驚いたようだが、嫌ではないらしい。俺はさっさと移動して隣に座った。改めてデカい身体だ。俺より一回りは大きいな。というか、周りのオークより明らかに大きい。うわあ、服越しでも筋肉がゴツゴツしてるのがわかるカッコいいな。顔も厳ついけど、頼もしいし眼差しが優しい。
「……そんなに見つめられると困ってしまうな」
「えっ!すみません!カッコよくて見惚れてました!」
「か、カッコいい?」
あっ!容姿について言及するのはセクハラだった!なんてことだ!社内研修受けたのに!俺はセクハラクソ野郎だ!
「す、すみません。不躾なことを言ってしまって……」
自己嫌悪で落ち込んでるのが伝わったのか、クオーンは優しい顔で笑ってくれた。
「謝らなくていい。嬉しいよ」
きゅんを通り越してギュン!心肺停止!に、なりかけたのだった。
「改めて名乗ろう。私は緑鉄国国王クオーンだ」
「俺は平元ツカサと言います。ツカサが名前なので、どうかツカサとお呼び下さい」
「わかった。君も陛下ではなくクオーンと呼んでくれたまえ」
きゅん。胸が痛い。ドキドキして顔が熱くなってるのが自分でもわかった。何か返事をしなければとまごついている間に、王太子が立ち上がり唸るように言った。
「ふん!孕ませ豚の末裔ごときが気取るな……ぎゃん!」
「うるせえパワハラ誘拐犯が!この人を馬鹿にするな!」
「王太子殿下あああああ!」
「おお!いい右だ。やるなあの人間」
「流石は国王陛下の花嫁だ」
色々限界だったので思いっきりぶん殴って踏んでやったのだった。
◆◆◆◆◆
この後、王太子一行は速やかに追い出された。
「彼は私が保護するが、不義理と暴言については改めて貴国に抗議する」
王太子は真っ青になっていたが、知ったことではない。
俺はオークの騎士さんたちに丁重に扱われ、城の一室に案内された。とんでもなく広くて豪華な部屋だが、壁も調度品も温かみのある色で落ち着く。それに、オークの侍女さんたちはとても上品で優しかった。
「まあ!こんなに細い腰をコルセットでさらに絞るなんて!」
「お労しい。さぞ、お苦しかったでしょう?」
「え、ええ。まあ……あ、後は自分で脱げますから!大丈夫です!」
侍女さんたちに花嫁衣装を脱がしてもらうのは恥ずかしかったが、おかげで元のスーツ姿に戻れた。
ちなみに何故スーツに着替えられたかというと、俺と一緒に召喚されたスーツ、ベッド、ベッドの上のホニャララも、クオーンへの献上品にされていたからだ。部屋の隅に置かれていたのでサクッと着替えられたのである。というか、侍女さんたちにも見られたってことだよな。ディルドとかを。辛い。
そんなことより、今後のことだ。楽な格好に着替えたら、改めてクオーンと話し合うことになっている。
「ツカサ様、ご体調はいかがでしょうか?陛下もご心配されています。お辛いようでしたら……」
気遣いの出来る人だな。またキュンとするが、今はそれどころじゃない。
「いえ!大丈夫です!」
俺はビシッとスーツに着替え臨戦態勢になった。交渉は初手が大事だ。
帰れないなら、出来るだけ良い条件で暮らせるようにしたい。例えば誰かの庇護の元で悠々自適生活とか。
『安心しなさい。君のことは私が守る』
そこで真っ先に浮かんだのが、クオーンの言葉と凛々しい立ち姿だった。ポッと顔が赤くなるのが自分でもわかったが、頭を振る。
あんなに格好いいし、庇ってもらったからトキメクのは仕方ない。だからこの感情は恋じゃない。そう、自分に言い聞かせながら。
◆◆◆◆◆
案内されたのは食堂だった。
俺とクオーンは、大きなテーブルの端と端に座る。体調に問題なければ、食事をしながら話そうということだった。召喚されてからろくに食べてないので、ありがたかった。
「どうか作法は気にせずくつろいで欲しい」
嬉しいが、声が遠い。顔もよく見えない。
「では、もう少し国王陛下のおそばに座らせて頂けないでしょうか?」
「私の側に?……いや、私は構わないが」
クオーンはまた驚いたようだが、嫌ではないらしい。俺はさっさと移動して隣に座った。改めてデカい身体だ。俺より一回りは大きいな。というか、周りのオークより明らかに大きい。うわあ、服越しでも筋肉がゴツゴツしてるのがわかるカッコいいな。顔も厳ついけど、頼もしいし眼差しが優しい。
「……そんなに見つめられると困ってしまうな」
「えっ!すみません!カッコよくて見惚れてました!」
「か、カッコいい?」
あっ!容姿について言及するのはセクハラだった!なんてことだ!社内研修受けたのに!俺はセクハラクソ野郎だ!
「す、すみません。不躾なことを言ってしまって……」
自己嫌悪で落ち込んでるのが伝わったのか、クオーンは優しい顔で笑ってくれた。
「謝らなくていい。嬉しいよ」
きゅんを通り越してギュン!心肺停止!に、なりかけたのだった。
「改めて名乗ろう。私は緑鉄国国王クオーンだ」
「俺は平元ツカサと言います。ツカサが名前なので、どうかツカサとお呼び下さい」
「わかった。君も陛下ではなくクオーンと呼んでくれたまえ」
41
お気に入りに追加
289
あなたにおすすめの小説
勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中
一色孝太郎
ファンタジー
VRMMOでネカマをするのが趣味の大学生が新作をプレイしようとしていたが気付けば見知らぬ場所に。それを新作のキャラメイクと勘違いした彼は目の前のハゲたおっさんから転生設定のタブレットを強奪して好き勝手に設定してしまう。「ぼくのかんがえたさいきょうのきゅうけつき」を作成した彼は、詳しい説明も聞かず勝手に転生をしてしまう。こうして勘違いしたまま女吸血鬼フィーネ・アルジェンタータとして転生を果たし、無双するべく活動を開始するが、あまりに滅茶苦茶な設定をしたせいで誰からも吸血鬼だと信じてもらえない。こうして予定調和の失われた世界は否応なしに彼女を数奇な運命へと導いていく。
No とは言えない日本人気質、それなりに善良、そしてゲームの世界と侮って安易な選択を取った彼女(?)が流れ着いた先に見るものとは……?
※小説家になろう様、カクヨム様にも同時投稿しております
※2021/05/09 タイトルを修正しました
転生先がハードモードで笑ってます。
夏里黒絵
BL
周りに劣等感を抱く春乃は事故に会いテンプレな転生を果たす。
目を開けると転生と言えばいかにも!な、剣と魔法の世界に飛ばされていた。とりあえず容姿を確認しようと鏡を見て絶句、丸々と肉ずいたその幼体。白豚と言われても否定できないほど醜い姿だった。それに横腹を始めとした全身が痛い、痣だらけなのだ。その痣を見て幼体の7年間の記憶が蘇ってきた。どうやら公爵家の横暴訳アリ白豚令息に転生したようだ。
人間として底辺なリンシャに強い精神的ショックを受け、春乃改めリンシャ アルマディカは引きこもりになってしまう。
しかしとあるきっかけで前世の思い出せていなかった記憶を思い出し、ここはBLゲームの世界で自分は主人公を虐める言わば悪役令息だと思い出し、ストーリーを終わらせれば望み薄だが元の世界に戻れる可能性を感じ動き出す。しかし動くのが遅かったようで…
色々と無自覚な主人公が、最悪な悪役令息として(いるつもりで)ストーリーのエンディングを目指すも、気づくのが遅く、手遅れだったので思うようにストーリーが進まないお話。
R15は保険です。不定期更新。小説なんて書くの初めてな作者の行き当たりばったりなご都合主義ストーリーになりそうです。
記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー
コーヒー微糖派
ファンタジー
勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"
その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。
そんなところに現れた一人の中年男性。
記憶もなく、魔力もゼロ。
自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。
記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。
その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。
◆◆◆
元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。
小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。
※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。
表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。
いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。
リィナ・カンザーの美醜逆転恋愛譚
譚音アルン
ファンタジー
ぽっちゃり娘のリィナ・カンザーこと神崎里奈はある日突然異世界トリップ。放り出された先はブリオスタという王国。着の身着のままでそれなりに苦労もしたが、異世界人は総じて親切な人が多く、運良く住み込みで食堂のウェイトレスの職を得ることが出来た。
しかしそんなある日の事。
彼女は常連さんである冒険者、魔法剣士カイル・シャン・イグレシアに厳めしい表情で呼び出される。
自分が何か粗相をしたのかと戦々恐々としながらテーブルに行くと――。
※2018-08-09より小説家になろうで連載、本編完結済。
※アルファポリスでの掲載も2020-03-25で完結しました。
兄たちが溺愛するのは当たり前だと思ってました
不知火
BL
温かい家族に包まれた1人の男の子のお話
爵位などを使った設定がありますが、わたしの知識不足で実際とは異なった表現を使用している場合がございます。ご了承ください。追々、しっかり事実に沿った設定に変更していきたいと思います。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる