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第一章サラリーマン、オークの花嫁になる

サラリーマン、オークの花嫁になる【1】

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 俺、平元ひらもとツカサは現代日本に暮らすサラリーマンだった。
 歳は二十七歳。背は高い方でやや痩せ型。顔は平凡そのもの。食品会社の営業をやっている。業績は突出して良くも悪くもない。
 上司からは『君は安定して業績を上げているのが良いところだけど、もっと貪欲になってもいいんじゃない?』と、評価されている。
 ついた渾名が『平凡の平元さん』あるいは『平均の平元さん』だ。相応しいと思うし、実は気に入っている。
 こんな渾名だから、あまり周りに興味を持たれない。おかげで、特殊な趣味があるのもバレないからね。
 何が言いたいかというと、俺はびっくりするくらい普通の男で、特に秀でたものも無いってことで。まさかこんな事になるなんて想像もしていなかったんだ。

「ツカサ、愛している。君を幸せにすると誓う」

 たくましい腕が俺を抱きしめて離さない。
 その筋肉の塊のような腕も、押し付けられたバインバインの雄っぱいも緑色。ムチムチの感触から顔をあげれば、これまた緑色の、顎も唇も鼻もゴツいハゲた……ファンタジーでお馴染みのオークの男の顔だ。
 十人中十人が怖い顔だというだろう。下唇から牙がでてるし。でも、赤い目は誰よりも優しい光をたたえているし、顔だって俺の目には最高にカッコ良く見える。

「どうか私、緑鉄国国王クオーンの伴侶になって欲しい」

 カッコいい。クオーンって良い男……いや、良いオークすぎる!
 そのせいで、俺の胸はさっきからドキドキしてうるさい。きっとクオーンにもバレてる。
 大きなベッドの上、裸で抱き合っているから。向こうは平静なのに悔しいやら恥ずかしいやらで、顔を赤くしてうつむくばかりだ。

「ツカサ、私とこうなったことを後悔しているのか?」

「まさか!」

 顔を上げて即否定する。営業ではコミュニケーション不全による誤解、不和が一番怖い。特に否定すべき時に否定しないと後々まで響く。
 いやそんな社畜知識はどうでもいい。恥を捨てて正直に話す。

「クオーンに抱かれて嬉しい。好きだから……だから、その、ちょっと恥ずかしいだけなんだ……おれ、あ、あんな声出したし……おかしくなってたし……」

 そう、昨夜の俺はどうかしていた。クオーンの見た目通りのぶっといモノを咥え込んでアンアン言っていた。
 そりゃあ、特殊な趣味によってそれなりに拡張していたけど、男に抱かれるのは初めてだったのに。
 オークの体液には媚薬効果があるとか、雌雄関係なく孕むよう肉体を改造するとは聞いていたけど、それ以前の問題だ。ただ抱きしめられたり、背中や下腹を撫でられたりしただけで甘ったるい声を出してた。
 二十七歳にもなってしがみついてもっととおねだりして……恥ずかしい。
 羞恥に悶えているとくぐもった笑い声がした。

「わ、笑うなよ!俺は恥ずかしかったんだ!」

「くくっ!す、すまない。君があまりに愛らしくて……こんなに愛してもらえて、私は幸せだ」

「クオ……んんっ!」

 大きな口が開き、俺の唇に分厚い舌が触れる。俺は素直に口を開いて中に招いた。クオーンの舌、クオーンの唾液、クオーンの熱に脳が痺れて快楽の虜になる。こんな口内から犯されて蕩けるようなキスなんて知らなかった。
 けれど心まで蕩けているのは、クオーンに恋をしてしまったからだ。

「クオーン……」

「ツカサ……私の伴侶になってくれ」

「うん。なる。だからもっとキスして」

 結局俺は、この日もあられもない声で喘ぎまくったのだった。

 ◆◆◆◆◆

 クオーンと俺の出会いは三日前に遡る。唐突だった。というか、犯罪だった。
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