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第51話
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「私はな、上に立たれるのが嫌いなんだ。特に若い奴にな。だから、二条の若いのに私の上を立たれるのは気に食わなかったんだよ。たしかに金は必要だったからお前で得た金は全て使わせてもらったが、いつまでも上だと思われているのは違うよな。」
父さんがそう話し始める。
父さんは自分よりお金を持ってて裕福に暮らしている紫苑さんが気に入らないみたいだった。
「だから、私の方が上だということを教えるために協力してくれる人を探したんだ。Mr.ショーン。」
ミスターショーン?誰だ?
聖君も同じようにピンと来ていないと思って聖君の方を向くと顔が固まっていた。
まるでミスターショーンと呼ばれる人を知っているようだった。
「Hello」
現れたのは金髪で青い目をした外国人さんだった。白い帽子に白いスーツ、幅の広いコートには毛皮がついていてもふもふしていた。
父さんと同じぐらいの歳でお腹がぽっこり出ている大柄な男性だった。
ヤクザじゃない。
多分 マフィアと言われる人たちだ。
「キミは売られたんダヨ。可愛い子猫チャン。」
俺の目をじっと見つめてそう流暢に話した。
日本語喋れるんだ。
「キミは僕が買ったから僕のモノね。それに…。」
流暢な日本語で紡がれる言葉は俺が聞きたくなかった言葉たち。
口を塞がれているせいで聞きたいことも聞けない。
誰が売ったのか。
俺にとってそこが一番気になるところなのだ。
これがもし紫苑さんなら聖君も仲間だったのかもしれないし、思っているような助けも来ないだろう。
その後目隠しをされ、家から出される。
なんで家に連れていかれたのかよくわからない。初めから目的地に行けば良かったのに。
車に入れられ、走り出したと思ったら途中で止まった。聖君がもごもご言っていたが聞こえなくなってしまったし、隣に存在感がないということは降ろされたんだろう。
思ったより冷静な自分がいる。
もっと怖がって、怯えて、泣いた方がいいんだろうけど、全くもって冷静だった。
降ろされたのはどこかの港だった。
海の音が聞こえるから多分港。
「おやおや、お客サマだ。」
そうショーンが言うと、目隠しを外された。
50メートルほど離れた場所に止まった黒塗りの車から出てきたのは紫苑さん。
銃を構えながら徹さんや、篠宮さんも出てきた。
撃たれたんじゃないの?
昏睡って聞いてたのに。
「杏を離せ。」
「?????????」
英語で話し始めたので何も分からない。
ただ、紫苑さんより上の相手ということは紫苑さんの顔からわかった。
俺は助かるかわからなくなった。
二人の会話が終わったのか、紫苑さんがこちらに目を向けた。
「杏…帰ろう?おいで。」
手を差し出す紫苑さんに、俺の脳裏で先ほど言われた言葉がよぎる。
「紫苑さんが…売ったんですか…?俺…」
「あぁ。売ったが、それは未来がないからだ。なにか…勘違いしてないか?杏。説明するから…ほら、帰ろう?」
俺の勘違いは紫苑さんに大切にされていると感じたこと?それとも信用しようって思ったこと?
俺、信じられないや。やっぱり。
「俺、そっちに行けません。本当に拾っていただきありがとうございました。でも、俺の死に方は俺で決めさせて下さい。」
頭を下げて紫苑さんに背を向く。
「杏?杏。勘違いしている。何かおかしい。杏、噛み合ってない。行くな。行かないでくれ。」
ショーンの方へ向かい、自ら目隠しをつける。
「キミは実験台より死を選ぶんダネ。面白い!」
あぁ、俺、紫苑さんのこと信用してたかも。
だって悲しいんだ。
虐められてたときより、親に殴られていたときより、クラスメイトにレイプされてた時より心が痛いんだ。
俺、紫苑さんのこと好きだったんだ。
初めて会った時からどんな人より気になって、心が動かされて、楽しかったから。
愛が重いなんて言われても、俺はそれが普通だと思ったからもっと恋愛って縛るものって思っていたから全然気にならなかったのに。
なにより、紫苑さんと幸せになる夢を見てたから。
でも、言えない。
もう紫苑さんの方を向けない。
あぁ、心に棘がいっぱい刺さってちくちく痛い。ギュッて絞られるように苦しい。
でも、これは俺が選んだ道。
幸せになんてならなくていい道。
父さんがそう話し始める。
父さんは自分よりお金を持ってて裕福に暮らしている紫苑さんが気に入らないみたいだった。
「だから、私の方が上だということを教えるために協力してくれる人を探したんだ。Mr.ショーン。」
ミスターショーン?誰だ?
聖君も同じようにピンと来ていないと思って聖君の方を向くと顔が固まっていた。
まるでミスターショーンと呼ばれる人を知っているようだった。
「Hello」
現れたのは金髪で青い目をした外国人さんだった。白い帽子に白いスーツ、幅の広いコートには毛皮がついていてもふもふしていた。
父さんと同じぐらいの歳でお腹がぽっこり出ている大柄な男性だった。
ヤクザじゃない。
多分 マフィアと言われる人たちだ。
「キミは売られたんダヨ。可愛い子猫チャン。」
俺の目をじっと見つめてそう流暢に話した。
日本語喋れるんだ。
「キミは僕が買ったから僕のモノね。それに…。」
流暢な日本語で紡がれる言葉は俺が聞きたくなかった言葉たち。
口を塞がれているせいで聞きたいことも聞けない。
誰が売ったのか。
俺にとってそこが一番気になるところなのだ。
これがもし紫苑さんなら聖君も仲間だったのかもしれないし、思っているような助けも来ないだろう。
その後目隠しをされ、家から出される。
なんで家に連れていかれたのかよくわからない。初めから目的地に行けば良かったのに。
車に入れられ、走り出したと思ったら途中で止まった。聖君がもごもご言っていたが聞こえなくなってしまったし、隣に存在感がないということは降ろされたんだろう。
思ったより冷静な自分がいる。
もっと怖がって、怯えて、泣いた方がいいんだろうけど、全くもって冷静だった。
降ろされたのはどこかの港だった。
海の音が聞こえるから多分港。
「おやおや、お客サマだ。」
そうショーンが言うと、目隠しを外された。
50メートルほど離れた場所に止まった黒塗りの車から出てきたのは紫苑さん。
銃を構えながら徹さんや、篠宮さんも出てきた。
撃たれたんじゃないの?
昏睡って聞いてたのに。
「杏を離せ。」
「?????????」
英語で話し始めたので何も分からない。
ただ、紫苑さんより上の相手ということは紫苑さんの顔からわかった。
俺は助かるかわからなくなった。
二人の会話が終わったのか、紫苑さんがこちらに目を向けた。
「杏…帰ろう?おいで。」
手を差し出す紫苑さんに、俺の脳裏で先ほど言われた言葉がよぎる。
「紫苑さんが…売ったんですか…?俺…」
「あぁ。売ったが、それは未来がないからだ。なにか…勘違いしてないか?杏。説明するから…ほら、帰ろう?」
俺の勘違いは紫苑さんに大切にされていると感じたこと?それとも信用しようって思ったこと?
俺、信じられないや。やっぱり。
「俺、そっちに行けません。本当に拾っていただきありがとうございました。でも、俺の死に方は俺で決めさせて下さい。」
頭を下げて紫苑さんに背を向く。
「杏?杏。勘違いしている。何かおかしい。杏、噛み合ってない。行くな。行かないでくれ。」
ショーンの方へ向かい、自ら目隠しをつける。
「キミは実験台より死を選ぶんダネ。面白い!」
あぁ、俺、紫苑さんのこと信用してたかも。
だって悲しいんだ。
虐められてたときより、親に殴られていたときより、クラスメイトにレイプされてた時より心が痛いんだ。
俺、紫苑さんのこと好きだったんだ。
初めて会った時からどんな人より気になって、心が動かされて、楽しかったから。
愛が重いなんて言われても、俺はそれが普通だと思ったからもっと恋愛って縛るものって思っていたから全然気にならなかったのに。
なにより、紫苑さんと幸せになる夢を見てたから。
でも、言えない。
もう紫苑さんの方を向けない。
あぁ、心に棘がいっぱい刺さってちくちく痛い。ギュッて絞られるように苦しい。
でも、これは俺が選んだ道。
幸せになんてならなくていい道。
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