【本編完結】白紙の未来

Popo

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第20話

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3回目の食事会をした次の日予定通り発情期がきた。

…が、そこまではよかったのに、終わらない。

発情期がもう2週間続いてる。1日のうち理性があるのは2、3時間程度。

発情期中は番を呼び戻そうとしているからか、あの部屋にいた時のように体が重くなって足に力が入らなくなり歩けなくなったこともあった。

というのもうろ覚えで多分あったが正しい。

そして現在。

あれから全く発情期が来ないのだ。
もう2ヶ月以上経ったし、予定日も過ぎているがこない。

でも発情期はしんどいからこないならそれはそれでいっかと思っていた俺が甘かった。

俺が発情期に気がついていなかっただけで発情していたのだ。

まさか蓮にヤられてようやく気がつくなんて。
α欠乏症のパンフレットじゃ順番に来るような書き方だったのに全く違うじゃないか。
一緒に起きるなんて聞いてない。

よくよく考えてみたら紫苑さんはαなのにαのにおいがわからなかった。けど、発情期は来ていた。あの病気はなんでもありなのか?

家の中は大惨事だ。

俺が誑かしたって怒る女に、俺を殴る蓮、
父はいつも通りいない。

発情期なのに部屋から出てた俺が悪いのもわかるけど俺にはわからなかったんだから仕方ないなんて言えない。


「…そうよあんたなんてさっさと死ねばいいのよ。」

あ、これ死ぬかも。って思った頃にはお腹が刺されてた。

「あああああぁぁぁぁぁ。」

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
すぐ死ぬ感じはないけどまた刺されたら死ぬ。

蓮は母に怯えて固まっていた。

今が最後のチャンスかもしれない。
この家から逃げなくては。

痛むお腹を無視して急いで服を適当に着て、残りの制服を学校のカバンに詰めて裸足のまま家を出た。外はもう夜だった。

とにかく遠くへ逃げろ。

ズキズキと痛かったはずのお腹は全く痛みを感じず走ってれば痛くないと勘違いした。どこに向かっているのかもわからない。そもそも道もわからない、けど走った。


しばらくすると駅のロータリーのところに出た。
駅なら警察があるから助けてくれるのでは?…いや、未成年だからって家に連絡されたらたまったもんじゃない。また地獄に戻るわけにはいかない。

じゃあ、どこに行けばいい?

居場所がない。行く宛がない。寒い。
途端に寒くなってしゃがみ込んでしまった。

誰か俺を…僕を助けて。

そう弱気になったとき一台の車が目の前に止まった。高そうな黒い車の中は見えないようになっていて怖かった。

もう見つかったのかもしれない。父さんの車もこんな感じだった気がする。逃げなきゃ。

そう思ったのに、立ち上がれなかった。

怖い。助けて。

「…紫苑さん。」

なぜかぼろっと口に出たのは彼の名前だった。お医者さんでもなく保健室の先生でもなく警察官でもないけど、彼に助けて欲しかった。

「呼んだか。」

車から出てきた男の人に目線が奪われる。
あぁ、この人だ。俺を助けてくれる人。
誰よりも綺麗で男らしくてかっこいい大人の人。いつもと雰囲気は違うけれどそんなところも色っぽくてかっこいい。

「…たす…けて。」

意識を保ってられなくなった俺は白くなる世界に身を預ける。

「勿論だ。俺の全てを注いで助けてやる。」








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