22 / 99
3
第20話
しおりを挟む
3回目の食事会をした次の日予定通り発情期がきた。
…が、そこまではよかったのに、終わらない。
発情期がもう2週間続いてる。1日のうち理性があるのは2、3時間程度。
発情期中は番を呼び戻そうとしているからか、あの部屋にいた時のように体が重くなって足に力が入らなくなり歩けなくなったこともあった。
というのもうろ覚えで多分あったが正しい。
そして現在。
あれから全く発情期が来ないのだ。
もう2ヶ月以上経ったし、予定日も過ぎているがこない。
でも発情期はしんどいからこないならそれはそれでいっかと思っていた俺が甘かった。
俺が発情期に気がついていなかっただけで発情していたのだ。
まさか蓮にヤられてようやく気がつくなんて。
α欠乏症のパンフレットじゃ順番に来るような書き方だったのに全く違うじゃないか。
一緒に起きるなんて聞いてない。
よくよく考えてみたら紫苑さんはαなのにαのにおいがわからなかった。けど、発情期は来ていた。あの病気はなんでもありなのか?
家の中は大惨事だ。
俺が誑かしたって怒る女に、俺を殴る蓮、
父はいつも通りいない。
発情期なのに部屋から出てた俺が悪いのもわかるけど俺にはわからなかったんだから仕方ないなんて言えない。
「…そうよあんたなんてさっさと死ねばいいのよ。」
あ、これ死ぬかも。って思った頃にはお腹が刺されてた。
「あああああぁぁぁぁぁ。」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
すぐ死ぬ感じはないけどまた刺されたら死ぬ。
蓮は母に怯えて固まっていた。
今が最後のチャンスかもしれない。
この家から逃げなくては。
痛むお腹を無視して急いで服を適当に着て、残りの制服を学校のカバンに詰めて裸足のまま家を出た。外はもう夜だった。
とにかく遠くへ逃げろ。
ズキズキと痛かったはずのお腹は全く痛みを感じず走ってれば痛くないと勘違いした。どこに向かっているのかもわからない。そもそも道もわからない、けど走った。
しばらくすると駅のロータリーのところに出た。
駅なら警察があるから助けてくれるのでは?…いや、未成年だからって家に連絡されたらたまったもんじゃない。また地獄に戻るわけにはいかない。
じゃあ、どこに行けばいい?
居場所がない。行く宛がない。寒い。
途端に寒くなってしゃがみ込んでしまった。
誰か俺を…僕を助けて。
そう弱気になったとき一台の車が目の前に止まった。高そうな黒い車の中は見えないようになっていて怖かった。
もう見つかったのかもしれない。父さんの車もこんな感じだった気がする。逃げなきゃ。
そう思ったのに、立ち上がれなかった。
怖い。助けて。
「…紫苑さん。」
なぜかぼろっと口に出たのは彼の名前だった。お医者さんでもなく保健室の先生でもなく警察官でもないけど、彼に助けて欲しかった。
「呼んだか。」
車から出てきた男の人に目線が奪われる。
あぁ、この人だ。俺を助けてくれる人。
誰よりも綺麗で男らしくてかっこいい大人の人。いつもと雰囲気は違うけれどそんなところも色っぽくてかっこいい。
「…たす…けて。」
意識を保ってられなくなった俺は白くなる世界に身を預ける。
「勿論だ。俺の全てを注いで助けてやる。」
…が、そこまではよかったのに、終わらない。
発情期がもう2週間続いてる。1日のうち理性があるのは2、3時間程度。
発情期中は番を呼び戻そうとしているからか、あの部屋にいた時のように体が重くなって足に力が入らなくなり歩けなくなったこともあった。
というのもうろ覚えで多分あったが正しい。
そして現在。
あれから全く発情期が来ないのだ。
もう2ヶ月以上経ったし、予定日も過ぎているがこない。
でも発情期はしんどいからこないならそれはそれでいっかと思っていた俺が甘かった。
俺が発情期に気がついていなかっただけで発情していたのだ。
まさか蓮にヤられてようやく気がつくなんて。
α欠乏症のパンフレットじゃ順番に来るような書き方だったのに全く違うじゃないか。
一緒に起きるなんて聞いてない。
よくよく考えてみたら紫苑さんはαなのにαのにおいがわからなかった。けど、発情期は来ていた。あの病気はなんでもありなのか?
家の中は大惨事だ。
俺が誑かしたって怒る女に、俺を殴る蓮、
父はいつも通りいない。
発情期なのに部屋から出てた俺が悪いのもわかるけど俺にはわからなかったんだから仕方ないなんて言えない。
「…そうよあんたなんてさっさと死ねばいいのよ。」
あ、これ死ぬかも。って思った頃にはお腹が刺されてた。
「あああああぁぁぁぁぁ。」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
すぐ死ぬ感じはないけどまた刺されたら死ぬ。
蓮は母に怯えて固まっていた。
今が最後のチャンスかもしれない。
この家から逃げなくては。
痛むお腹を無視して急いで服を適当に着て、残りの制服を学校のカバンに詰めて裸足のまま家を出た。外はもう夜だった。
とにかく遠くへ逃げろ。
ズキズキと痛かったはずのお腹は全く痛みを感じず走ってれば痛くないと勘違いした。どこに向かっているのかもわからない。そもそも道もわからない、けど走った。
しばらくすると駅のロータリーのところに出た。
駅なら警察があるから助けてくれるのでは?…いや、未成年だからって家に連絡されたらたまったもんじゃない。また地獄に戻るわけにはいかない。
じゃあ、どこに行けばいい?
居場所がない。行く宛がない。寒い。
途端に寒くなってしゃがみ込んでしまった。
誰か俺を…僕を助けて。
そう弱気になったとき一台の車が目の前に止まった。高そうな黒い車の中は見えないようになっていて怖かった。
もう見つかったのかもしれない。父さんの車もこんな感じだった気がする。逃げなきゃ。
そう思ったのに、立ち上がれなかった。
怖い。助けて。
「…紫苑さん。」
なぜかぼろっと口に出たのは彼の名前だった。お医者さんでもなく保健室の先生でもなく警察官でもないけど、彼に助けて欲しかった。
「呼んだか。」
車から出てきた男の人に目線が奪われる。
あぁ、この人だ。俺を助けてくれる人。
誰よりも綺麗で男らしくてかっこいい大人の人。いつもと雰囲気は違うけれどそんなところも色っぽくてかっこいい。
「…たす…けて。」
意識を保ってられなくなった俺は白くなる世界に身を預ける。
「勿論だ。俺の全てを注いで助けてやる。」
0
お気に入りに追加
498
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
いつかコントローラーを投げ出して
せんぷう
BL
オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。
世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。
バランサー。
アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。
これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。
裏社会のトップにして最強のアルファ攻め
×
最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け
※オメガバース特殊設定、追加性別有り
.
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる