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第29幕 太志郎との任務②
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「捕まえたで!」
美翔はドライバーを抑えたままだった。
「おいこら離せ!!」
ドライバーは美翔から離れようとしても、美翔は離れない。
「お前、囚人の、ライザーで間違いないな?」
太志郎は指輪のボタンを押して空中ディスプレイを浮かべて、ドライバーの顔と脱獄した囚人の顔写真を見比べる。ドライバーは囚人、ライザーで間違いなかった。
「てめえはシティナイツか?」
「ああ」
ライザーは太志郎を睨む。
「くっそ、中央区のカモが……」
「うるさい」
太志郎はライザーの身柄を確保しようとした。美翔もそれを見てライザーから手を離す。その瞬間、
――ザシュ!!
「! タイシ!?」
ライザーは隠し持っていたナイフを出して太志郎の懐を刺した。
「……」
太志郎の動きは止まる。
「おいお前なにしてんねん!!」
美翔はライザーを再び抑える。勢いでライザーは倒れ太志郎から離れる。
「タイシ! タイシ!」
美翔はライザーを抑えながら太志郎に向かって叫ぶ。
「……大丈夫だよ美翔さん」
太志郎は顔を上げる。太志郎の腹には傷はある。しかし、太志郎は無事だった。美翔がすぐにライザーを抑えたのもあっては深くはならずかすり傷だけで済んだのだ。
「ほんま? 大丈夫?」
「ああ、美翔さんがいて助かったよ。まあ痛いけど」
「よ、よかったぁ~。あて心臓止まりかけたわ」
「なんであんたが止まりかけてるの」
ライザーを抑えながら美翔は安堵する。太志郎も一緒にライザーを抑えてナイフを奪う。
「もうお前ええ加減にせえよおっさん!」
美翔はライザーに怒る。
「お前もだおっさん言うな!」
ライザーは美翔に怒鳴る。
「もう諦めろ。お前は終身刑の身。大人しく戻ってもらう」
太志郎はライザーの腕を美翔と共に抑え、縄で縛る。
「俺を捕まえたことを後悔するぞ!! 俺の下僕が中央区をぶっ壊すからな!!」
ライザーは大声を出す。
「うるさいねんお前!」
「お前もだよ!」
美翔とライザーは怒鳴りあう。
「ちょっとあんたら黙れよ! こっちは今本部に連絡してんだよ!」
太志郎は右手を指電話にし、指輪の通話機能で通話をしていた。
「「すんません……」」
彼の勢いに美翔とライザーは黙る。
「タイシ、こいつどないする? まだ二人見つけなあかんやろ」
「あー、縛り上げて鉄子の後部座席に乗せるか」
「おい離せよ! マジで下僕を暴れさせるぞ!」
ライザーを連れて美翔と太志郎は鉄子のほうに歩いていくのだった。
※
鉄子の運転席に乗り込むと太志郎は鉄子を走らせる。助手席には美翔、そして後部座席には縄で拘束されたライザーがいる。
「あと二人こんなんおるんか大変やな」
「こんなってなんだ!?」
美翔のぼやきにライザーはまだ黙らない。
「そろそろ二人目の居場所につくぞ」
太志郎は気にせず運転する。鉄子は山の中の車道を走っていく。
「なんや街から離れてへん?」
「ああ、区の外側の山の中の寺に向かってる」
美翔は窓から外の山道を見る。
「二人目は寺の中に立てこもっているらしい」
――キキ!!
太志郎は鉄子を止めて、美翔と降りる。美翔の視界に写ったのは……
「ほわぁ!! でかい寺や」
森の中に大きく黒い瓦に茶色い塗装をした木製の本堂が見えた。本堂の前にある立て札には『大亜嵐寺』と刻まれている。
「あ! 名谷さん!」
太志郎と美翔の耳に聞き覚えのある声が聞こえた。
「ええ!? ナガレ!?」
美翔はナガレを見て驚く。修行着にスカジャンを着た彼は二人の元に走ってくる。
「美翔の旦那? なんでここに?」
美翔とナガレはお互いの姿に驚く。
「あてはタイシの手伝いでおるんよ。ていうかお前は?」
「俺はここで修行してんだよ。名谷さんに情報送ったのはウチの住職!」
ナガレは寺のほうを見る。
「ナガレ、囚人は寺の中に立て籠もってるのか?」
「はい……住職を人質にして中にいます」
太志郎に問われるとナガレは冷や汗を見せる。
「名谷さんに情報送ってすぐに捕まって……囚人が何をしたいのかはわからねえ」
「……」
囚人と住職が中にいるであろう寺を、美翔と太志郎は見つめるのだった。
美翔はドライバーを抑えたままだった。
「おいこら離せ!!」
ドライバーは美翔から離れようとしても、美翔は離れない。
「お前、囚人の、ライザーで間違いないな?」
太志郎は指輪のボタンを押して空中ディスプレイを浮かべて、ドライバーの顔と脱獄した囚人の顔写真を見比べる。ドライバーは囚人、ライザーで間違いなかった。
「てめえはシティナイツか?」
「ああ」
ライザーは太志郎を睨む。
「くっそ、中央区のカモが……」
「うるさい」
太志郎はライザーの身柄を確保しようとした。美翔もそれを見てライザーから手を離す。その瞬間、
――ザシュ!!
「! タイシ!?」
ライザーは隠し持っていたナイフを出して太志郎の懐を刺した。
「……」
太志郎の動きは止まる。
「おいお前なにしてんねん!!」
美翔はライザーを再び抑える。勢いでライザーは倒れ太志郎から離れる。
「タイシ! タイシ!」
美翔はライザーを抑えながら太志郎に向かって叫ぶ。
「……大丈夫だよ美翔さん」
太志郎は顔を上げる。太志郎の腹には傷はある。しかし、太志郎は無事だった。美翔がすぐにライザーを抑えたのもあっては深くはならずかすり傷だけで済んだのだ。
「ほんま? 大丈夫?」
「ああ、美翔さんがいて助かったよ。まあ痛いけど」
「よ、よかったぁ~。あて心臓止まりかけたわ」
「なんであんたが止まりかけてるの」
ライザーを抑えながら美翔は安堵する。太志郎も一緒にライザーを抑えてナイフを奪う。
「もうお前ええ加減にせえよおっさん!」
美翔はライザーに怒る。
「お前もだおっさん言うな!」
ライザーは美翔に怒鳴る。
「もう諦めろ。お前は終身刑の身。大人しく戻ってもらう」
太志郎はライザーの腕を美翔と共に抑え、縄で縛る。
「俺を捕まえたことを後悔するぞ!! 俺の下僕が中央区をぶっ壊すからな!!」
ライザーは大声を出す。
「うるさいねんお前!」
「お前もだよ!」
美翔とライザーは怒鳴りあう。
「ちょっとあんたら黙れよ! こっちは今本部に連絡してんだよ!」
太志郎は右手を指電話にし、指輪の通話機能で通話をしていた。
「「すんません……」」
彼の勢いに美翔とライザーは黙る。
「タイシ、こいつどないする? まだ二人見つけなあかんやろ」
「あー、縛り上げて鉄子の後部座席に乗せるか」
「おい離せよ! マジで下僕を暴れさせるぞ!」
ライザーを連れて美翔と太志郎は鉄子のほうに歩いていくのだった。
※
鉄子の運転席に乗り込むと太志郎は鉄子を走らせる。助手席には美翔、そして後部座席には縄で拘束されたライザーがいる。
「あと二人こんなんおるんか大変やな」
「こんなってなんだ!?」
美翔のぼやきにライザーはまだ黙らない。
「そろそろ二人目の居場所につくぞ」
太志郎は気にせず運転する。鉄子は山の中の車道を走っていく。
「なんや街から離れてへん?」
「ああ、区の外側の山の中の寺に向かってる」
美翔は窓から外の山道を見る。
「二人目は寺の中に立てこもっているらしい」
――キキ!!
太志郎は鉄子を止めて、美翔と降りる。美翔の視界に写ったのは……
「ほわぁ!! でかい寺や」
森の中に大きく黒い瓦に茶色い塗装をした木製の本堂が見えた。本堂の前にある立て札には『大亜嵐寺』と刻まれている。
「あ! 名谷さん!」
太志郎と美翔の耳に聞き覚えのある声が聞こえた。
「ええ!? ナガレ!?」
美翔はナガレを見て驚く。修行着にスカジャンを着た彼は二人の元に走ってくる。
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「あてはタイシの手伝いでおるんよ。ていうかお前は?」
「俺はここで修行してんだよ。名谷さんに情報送ったのはウチの住職!」
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「ナガレ、囚人は寺の中に立て籠もってるのか?」
「はい……住職を人質にして中にいます」
太志郎に問われるとナガレは冷や汗を見せる。
「名谷さんに情報送ってすぐに捕まって……囚人が何をしたいのかはわからねえ」
「……」
囚人と住職が中にいるであろう寺を、美翔と太志郎は見つめるのだった。
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