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第27幕 三人の日常

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 『この前は驚いたアルネ。ファントム・ローズが出たの聞いたアル』
数日後。小学校の休み時間中の美翔と真幌に式部からの連絡が来た。
「びっくりやったで。変な格好で」
「兄ちゃんあんまり恰好のことは言わないほうがいいよ。怪しい感じだったけど」
美翔と真幌はファントム・ローズに対する感想を語る。二人はあれから数日、学校が終われば小空と共に中央武道場に通う日々を送っている。
『お前らあれからランクどんだけ上がったアル?』
「あても真幌もランク30になったで!」
中央武道場の登録者らは道場内で一戦勝利するたびにひとつ『ランク』と呼ばれる階級があがる。ランクが上がれば上がるほど、格闘技のプロリーグや軍隊、治安組織からのスカウトをされやすくなる等メリットもある。ちなみにランク10までは負けてもランクが上がる。
『そうかアル。30から強い選手が増えていくから気をつけるネ』
「おー。そりゃええやん」
式部の忠告に美翔は笑う。
『かなり自信あるみたいアルネ』
「当たり前や。あては強いで?」
「うん」
真幌は美翔に頷く。式部は連絡した理由の本題に入る。
『突然だが二人に修行課題アル。明日、美翔は名谷の、真幌は立花の任務に参加するネ』
「タイシの?」
「副長さんの?」
言い渡された二人は少し驚く。
「参加て何するん?」
『お前らには実戦も重ねてほしいからな、シティナイツの任務でお前らも戦ってもらうアル』
「あー、ああいうあれやな。鉄子でなんや運ぶんやね」
美翔は以前目撃した、太志郎が鉄子を操縦し危険物を運んでいた際に襲撃を受けた光景を思い出す。
『そうアル』
「タイシと鉄子と一緒におれるんならなんでもええで!」
美翔は二つ返事で納得する。
「副長さんか……」
真幌は立花恒星の顔を浮かべる。
「? 真幌どないしたん?」
「あ、なんでもないよ」
真幌はぼんやりと浮かべた恒星の顔を掻き消す。
「式部、……小空をシティナイツに入れることってできひんの? アイツどないしても入りたいみたいやけど」
美翔は式部に問う。
『それは俺が決めることじゃないネ。決めるのはミツテル達アルが……あの子の兄ちゃんは確か……』
「小空の兄貴があかん言うかもか……」
小空のシティナイツ加入は三騎士、特に小空の兄、胡蝶が認めるかどうかにかかっているようだった。
『俺が兄ちゃんだったらちょっと心配になるネ』
「そういうもん?」
『まあとにかく明日はそれぞれの任務に付いていくアル』
式部は通話を終えて切る。
「小空ちゃん、武道場でスカウトされるの待つって言ってたよね」
「おー、アイツ大変やな」
小空が少し気の毒に思う二人。
「今日はボク達が小空ちゃんの学校に行く日だよ」
「せやな」


 ※


 「小空、最近どうよ? スカウト来た?」
中央区内の高校の教室。私服姿の生徒らが授業を終えた小空はクラスの友人の女子・みつみに話しかけられる。
「全然。ランク30になったしそろそろかなって思うけど」
「小空なら鬼強いからすぐ来るって」
もう一人の女子・英子も入る。
「ん? あれ美翔くんと真幌くんじゃない?」
「え?」
みつみが教室の窓から高校の正門を見る。そこには男子小学生二人の影がある。
「アイツら……私もう行かなきゃ! じゃあね!」
小空は荷物を持って走り出す。
「通報されるんじゃないよー」
「がんばってねー」
彼女をみつみと英子は見送る。

 ※

 「美翔! 真幌くん!」
「おー来た」
「小空ちゃん!」
走ってきた小空を美翔と真幌は見つける。
「なあなあ見て! お前のツレや言うたら飴もらったわ」
「あんたあんまり貰いすぎるんじゃなわよ。真幌くんも」
「はあい」
美翔は高校の生徒らから貰った飴を小空に見せる。三人は今日も中央武道場に行く。
出会いはやや成り行きなものだったが、それぞれが『家族』だと信じている人達のため三人は行く。それが『家族』だと信じている人達のためと……

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