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第9幕 中央武道場
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「さっき誰と話してたん?」
「え? えっと誰だっけ?」
「あてが訊いとうんやて」
美翔はホットドッグにかぶりつく。
「ん。これ真幌に」
「?」
真幌は美翔にドリンクを渡される。透明のプラスチックカップに入ったそれは、真幌の好きなタピオカが入ったピーチジュースだった。
――兄ちゃんまさかこのために?
「……ありがと兄ちゃん!」
「んー。はふ」
美翔はホットドッグを食べ続ける。真幌はジュースを飲む。
「美翔! 真幌くん!」
「あ、小空や」
そうしている二人のところに名を呼びながら小空がやってきた。
「久しぶり、って何食べてるのよ。ごはんくらい私が奢るってのに」
「安心せえ、奢られたるから」
美翔はホットドッグを食べ終える。
「夕方にタイシが迎えに来るからそれまで時間あるんよ」
「とりあえず小空ちゃんにはまず会おうって来たんだ」
「そうそう、あのおっちゃんには怒られんかった?」
美翔は留吉のことが気になっていた。
「あーパパ? ちょっと怒られたわ。でも大丈夫よ」
小空は平気そうだった。
「時間あるんだったら中央武道場行かない? てかあんた達あそこで修行するんでしょ?」
「せやで。ほんまは先週からやったみたいやけど、お前があれして」
「あれは悪かったわね……」
小空は痛いとこを突かれる。
「とにかくここから近いし今から行くわよ。私も今日選手登録しに行くし」
「え? 小空も?」
「もちろんよ。あんた達拳法家だけじゃなく、剣士や術者、私みたいな銃使いもいるわよ。とにかく戦えれば登録できるんだし」
「本当に色んな人いるんだね」
拳法家やプロの格闘家しかいないと思っていた美翔と真幌だった。
「とりま行くわよ! 今日はシティナイツの人達も来てるみたいだし」
「なんでシティナイツ?」
「シティナイツの人もほとんどが選手登録してるのよ。武道場の盛り上げと防犯も兼ねてね」
三人は中央武道場に向かって歩き出す。
※
緑の瓦で出来た大きな屋根が目立つ巨大な東洋の城を模した体育館。それが中央武道場。
「式部は今日か明日に行け言われたけど、まずどないしたらいいんやったっけ」
「ボク達は身分証のデータ渡しただけで手続きは式部さんがしてくれたもんね」
受付窓口前のロビー。小空の手続きが終わるまで美翔と真幌は待っていた。
「他の人と戦って武道場でランクを上げろって先週説明されたけど、その対戦相手はどうやって決めるのかな?」
そう話していると、小空が戻ってきた。
「お待たせ。早速体育館行くわよ。もう何人か対戦してるかも」
小空が二人を連れて行こうとする。
「どうやって対戦相手を決めるの?」
「ランクが似たような数値の人を見つけてその人と戦うの。負けても下がらないけど勝ったらひとつ上がる。ランクはそうやって上げていくって受付の人から聞いたわ」
「えらい地道やね」
三人は歩きながら中央武道場内の複数ある体育館のひとつに向かう。
門をくぐると、囲むような観客席のある広い空間が見えた。
「お、何人かおるやん」
体育館内には、手合わせをしている選手らとそれを審査する審判、審判と対戦相手を探す選手らがいた。しかも、武術をする人間ならではの緊迫さや緊張、戦慄もある。
「おー、すごいなぁ」
「あんたこのフンイキわかってる?」
それらを感じつつも美翔は呑気そうにしている。
「確かにちょっと緊張するかも」
もちろん真幌も感じていた。
その緊迫の中で、一人の人間に目が行く。
「? あれは……」
真幌の見覚えのある黒髪の美青年が、東洋剣を振るい同じく剣を握る男と対戦している。
対戦相手の男を相手に火花を散らすような剣の動きを見せる。
美青年の雄々しくも優雅な戦いに、真幌は一瞬目を奪われた。
「まさか、あの人は!?」
美青年は黒い漢服を着ている。真幌は気付いた。
その瞬間、美青年の対戦相手は剣を落とし、敗戦した。
「――勝者、立花恒星!!」
その立ち合いを審査していた審判は、美青年の名を呼んだ。
「え? えっと誰だっけ?」
「あてが訊いとうんやて」
美翔はホットドッグにかぶりつく。
「ん。これ真幌に」
「?」
真幌は美翔にドリンクを渡される。透明のプラスチックカップに入ったそれは、真幌の好きなタピオカが入ったピーチジュースだった。
――兄ちゃんまさかこのために?
「……ありがと兄ちゃん!」
「んー。はふ」
美翔はホットドッグを食べ続ける。真幌はジュースを飲む。
「美翔! 真幌くん!」
「あ、小空や」
そうしている二人のところに名を呼びながら小空がやってきた。
「久しぶり、って何食べてるのよ。ごはんくらい私が奢るってのに」
「安心せえ、奢られたるから」
美翔はホットドッグを食べ終える。
「夕方にタイシが迎えに来るからそれまで時間あるんよ」
「とりあえず小空ちゃんにはまず会おうって来たんだ」
「そうそう、あのおっちゃんには怒られんかった?」
美翔は留吉のことが気になっていた。
「あーパパ? ちょっと怒られたわ。でも大丈夫よ」
小空は平気そうだった。
「時間あるんだったら中央武道場行かない? てかあんた達あそこで修行するんでしょ?」
「せやで。ほんまは先週からやったみたいやけど、お前があれして」
「あれは悪かったわね……」
小空は痛いとこを突かれる。
「とにかくここから近いし今から行くわよ。私も今日選手登録しに行くし」
「え? 小空も?」
「もちろんよ。あんた達拳法家だけじゃなく、剣士や術者、私みたいな銃使いもいるわよ。とにかく戦えれば登録できるんだし」
「本当に色んな人いるんだね」
拳法家やプロの格闘家しかいないと思っていた美翔と真幌だった。
「とりま行くわよ! 今日はシティナイツの人達も来てるみたいだし」
「なんでシティナイツ?」
「シティナイツの人もほとんどが選手登録してるのよ。武道場の盛り上げと防犯も兼ねてね」
三人は中央武道場に向かって歩き出す。
※
緑の瓦で出来た大きな屋根が目立つ巨大な東洋の城を模した体育館。それが中央武道場。
「式部は今日か明日に行け言われたけど、まずどないしたらいいんやったっけ」
「ボク達は身分証のデータ渡しただけで手続きは式部さんがしてくれたもんね」
受付窓口前のロビー。小空の手続きが終わるまで美翔と真幌は待っていた。
「他の人と戦って武道場でランクを上げろって先週説明されたけど、その対戦相手はどうやって決めるのかな?」
そう話していると、小空が戻ってきた。
「お待たせ。早速体育館行くわよ。もう何人か対戦してるかも」
小空が二人を連れて行こうとする。
「どうやって対戦相手を決めるの?」
「ランクが似たような数値の人を見つけてその人と戦うの。負けても下がらないけど勝ったらひとつ上がる。ランクはそうやって上げていくって受付の人から聞いたわ」
「えらい地道やね」
三人は歩きながら中央武道場内の複数ある体育館のひとつに向かう。
門をくぐると、囲むような観客席のある広い空間が見えた。
「お、何人かおるやん」
体育館内には、手合わせをしている選手らとそれを審査する審判、審判と対戦相手を探す選手らがいた。しかも、武術をする人間ならではの緊迫さや緊張、戦慄もある。
「おー、すごいなぁ」
「あんたこのフンイキわかってる?」
それらを感じつつも美翔は呑気そうにしている。
「確かにちょっと緊張するかも」
もちろん真幌も感じていた。
その緊迫の中で、一人の人間に目が行く。
「? あれは……」
真幌の見覚えのある黒髪の美青年が、東洋剣を振るい同じく剣を握る男と対戦している。
対戦相手の男を相手に火花を散らすような剣の動きを見せる。
美青年の雄々しくも優雅な戦いに、真幌は一瞬目を奪われた。
「まさか、あの人は!?」
美青年は黒い漢服を着ている。真幌は気付いた。
その瞬間、美青年の対戦相手は剣を落とし、敗戦した。
「――勝者、立花恒星!!」
その立ち合いを審査していた審判は、美青年の名を呼んだ。
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