恋を諦めた君に恋する

婚約者達は初めて出会う

出会いの話


※史人視点


　今日は俺と結婚するかもしれない相手に会う日。学校が終わるとすぐに両親と合流しいつもだったらいかないようなお高めの店に入る。
相手は俺と同じ高校生で一つ下のアルファの男。政略結婚は第一の性より第二の性が相手選びに優先されるから男同士、女同士は普通だ。

高校生の俺にとって結婚はまだ先の話だと思っていたけど、仲良くなるための期間はいるのでは？となり、今日対面する事になったのだ。

店の席に両親と並んで着席してると、結婚するかもしれない相手とその両親が入ってきた。相手が来ていたのは俺と同じ制服で……見覚えのある下級生男子だった。
ウチの学校の剣道部のエースで容姿端麗と名高い、雪野千紘だ。俺のクラスにも剣道部員がいてソイツからよく聞いていた。

(嘘だろ！？　なんでここに？)

俺と結婚するかもしれない相手、いや婚約者は雪野千紘だった。クラスメートが言った通り無口で取っ付き難い感じだ。アルファ特有のフェロモンが僅かに香る。

「――史人くん、改めて利くがうちの千紘と結婚してくれるかい？」

「勿論です」

雪野千紘の父に利かれて答える。お見合いという名の政略結婚だ。俺は相手が誰でも断る気はない。今の婚約だって親達の仕事の状態次第で破棄される事もある。だから受け入れられた。

「……千紘くん、よろしく」

俺は雪野千紘に笑いかけてみる。責めて普通に先輩と後輩の関係になれると良いけど。

「勝手にしてろ」

雪野千紘はずっと素っ気ないままだった。オメガとは言えやっぱりよく知らない男の先輩との婚約は嫌だったのかな……