95 / 126
それぞれを縛るもの1※
しおりを挟む
あれほど熱く熱を持っていた患部は、気味が悪いほどに落ち着き痛みさえ引いてしまった。
意識は変わらずぼうっとするが、眠いわけではない。むしろ感覚は研ぎ澄まされている。
「痛みはございませんか、ユノン様」
最後、ミロがユノンの右手首を縛り上げてから不安げに訊ねてきた。
赤黒い打撲の部位を避け、右腕は左腕と同じように天蓋から吊された縄に括り付けられている。
両足首も寝台の脚から伸びる縄にそれぞれ繋がれ、少し脚を開いた立ち膝姿勢のまま、それ以上脚を閉じられなくされている。
「ああ、大丈夫だ」
答えると、ミロは小さく「よかった」と呟きユノンから離れた。
少しでも身体を動かせば、ユノンの全身を戒める縄が敏感な部分を擦り、攣れるような快感が走る。
全裸に剥かれた上に発熱しているというのに、寒気はない。感覚が澄んでいくにしたがって、身体は火照ってきた。
「ユノン、……ああ、なんと美しい。言葉が出ない」
伏せていた顔を上げると、ガウン一枚の姿になったタリアスが寝台のそばに立ち、垂らされた天蓋幕を持ち上げて陶然とユノンを見つめていた。
はだけられた袷の隙間からは暗い茂みと、雄々しくそそり立つ長大なものが覗く。
「タリアス様……」
縄で裸の身体を拘束された、こんなみっともない姿に興奮されているのだとはにわかに信じ難かった。
自分が今どんな様子でどんな顔をしているのかなど、想像することすら恐ろしい。
「どうだ、身体の具合は辛くないか?」
「はい。怪我の痛みも、熱による悪寒や震えもありません」
「酩楽酒が効いているのだな」
タリアスが呟くように言い、寝台に乗り上げて来た。そしてユノンの頬を包み、口づけた。
息は甘ったるく、酒気を含んでいる。
ライルが去った後、タリアスはミロに言いつけ濃い桃色の液体で満たされた小瓶と杯を一つ持ってこさせた。
そしてタリアス自ら杯を液体で満たすと、身体が楽になるから飲むようにとユノンに命じたのだ。ユノンは命じられるまま、喉が焼けそうに甘いその桃色の液体を飲み干した。
結果として、タリアスの言葉は本当だった。痛みは和らぎ、今現在身体は楽だ。
しかし、これはおそらく健全なものとして出回っている代物ではない。
なぜなら、いやに身体が疼く。少し縄が肌を擦っただけでびくびくと官能が走り、物足りない気分になる。
このおかしな酒を、タリアスも煽ったのだろう。ミロによって拘束されるユノンを、透ける天蓋越しに眺めながら。
「……ん……っ、ふっ……ん」
「ん……ユノン……私のユノン……」
舌を絡め合う接吻が、次第に唇に噛みつくような荒々しいものになる。ユノンは必死に答えながら息を継ぐ。
「あっ、……あん……んっ、タリアス、さま……ひうっ」
唇を解放されたが、ぞろりと頬の傷を舐め上げられた。途端、暗い悦楽が脳内を貫いていく。
「ああ……ああっ……!」
びくびく痙攣する身体の線を、タリアスの熱い手がゆっくりと撫でていく。
「かわいそうに。もうこんなになってしまったのか。……お前はこうされるのが、好きなのか?」
縄で割られた尻を撫でられ、根元を戒められた陰茎を包まれる。ただやんわりと触られただけなのに、それだけでもユノンの身体は過剰に快楽を汲み取ってしまう。
「やんっ、あんっ、だめえ……」
ガクガク腰を揺らし、もう達したいと訴えてしまう。それでも根元を絞められているうえに、実際には吐精に至るような大きな快感は与えられていないため、絶頂を迎えることなどできるはずもない。
「あん、あうう……」
ユノンは言葉にもならない呻き声を上げながら、物欲しそうな表情を隠そうともせずタリアスを見上げる。
「ユノン、達したいのか?」
こくこくと頷く。まだ何もされていないも同然なのに。
おそらくは酒のせいだ。それでもどうしても抑えられない淫の性質は、生来のもの。これを何度呪ったことか、もう覚えてさえいいない。
タリアスは愛おしげにユノンを見下ろす。うっとりと細められた目は、満足げに輝いている。
「本当に愛らしいよ、我が妻。縄に戒められてなお、こうして怯えることなく堂々と私に向き合うとは」
大きな手が尻を包み込み、左右に割り開き、そして肉を捏ねるように揉みしだく。その度に無骨な縄の瘤と敏感な粘膜の入り口が擦れ、ユノンはもどかしくて大きく腰を回してしまう。
吊された縄が、ぎしぎしと鈍い音を立てた。
「あっ、あ、ん……あなた様は、僕の、夫ですから、怯えるなど……ん、ひあっ!」
入り口に当てられているのに入って来ない塊が、気になってしょうがない。
ユノンは、自らの粘膜がぱくぱく収縮しながらそれを呑み込もうと足掻いているのを感じていた。止めたいのに、生来の淫乱である自分にはできるはずもない。
神経を後ろに集中させていると、まったく気にもしていなかった脇の下にぬるぬると柔らかなものが滑らされた。
「あ、あ、おやめ、くださいっ! ……んうっ、だめ……ひゃ、あん、あああっ」
濡れた舌が、じっとりと味わうように両脇を交互に舐めあげる。
あまりのくすぐったさに激しく身を捩るが、そのせいで縄が余計に身体に食い込んでしまう。
「あ、あ……」
胸の先がじんじんと疼く。痛みとも痒みともつかない感覚がぽちりと突き出た二つの乳首を支配し、今すぐ触って慰めてほしいと狂おしいほどに欲している。
それなのに、縄は乳首には触れない。
両胸をそれぞれ囲むように這わされてはいるものの、そこに幾何学的な模様を刻むばかりで肝心な部位を刺激してはくれないのだ。
夢中で脇に顔を埋めていたタリアスは気が済んだのか顔を上げ、ユノンからわずかに距離を取ると改めて上から下まで舐めるように見回した。
ユノンははあはあと息をつきながらぐったりしている。
「白い肌に、綿の縄が完成された衣装のようによく映えている。まるで神聖なる儀において差し出された、純潔の贄のようではないか。ミロ、よくここまで美しく仕上げた」
「……恐れ入ります」
視界から消えたミロが、再び天蓋の陰から現れた。
先ほどまでの見慣れた衣ではなく、今は明らかに女物の肌着を身に着けている。
胸だけを覆い隠す形状の上半身の肌着や、腰に回した紐から布を回し局部を覆う下帯は何度かユノンも着けたことがある。
ふんだんにあしらわれた繊細な飾りは、確かレースというものだとタリアスに教わった。西方の女物の衣服によく使われているそうだ。
「お前も、よく似合っている。やはり私の見立ては正解だった」
タリアスから寝台に上がるように促されたミロは、「失礼いたします」と呟いてユノンのそばまでやってきた。
ミロの背後にタリアスが膝立ちになり、脇腹から腰の線を撫でながら二人の少年を向き合わせる。
「あ……」
主人の手が体を這い回ると、緊張が覗くミロの表情は途端に蕩けたものになった。
「……ん、陛下、ユノン様の前で、こんな姿……恥ずかしゅう、ございます」
言いながら、ミロは赤い顔をユノンから逸らした。
「何を今更だろう? お前は、ユノンにすべてを見られているはずだ」
「……はい。陛下と、ユノン様になら、私のすべてを見られても構いません」
ミロにはにかんだように微笑まれた気がして、今度はユノンが顔を逸らしたくて俯いた。
タリアスはどういうつもりなのか。拘束した妻と、事実上寵姫のように扱う妻の侍男を突き合わせ……。
ユノンは考えるのも嫌になった。
今は早くこの身体の疼きをどうにかしてほしい。どうせタリアスの命には背けない。今宵もミロとまぐわって見せろと命じられれば、ユノンはそうするしかないのだ。
「ミロ、ユノンの辛いところを慰めてあげなさい」
「はい……」
タリアスに軽く肩を叩かれ、ミロはユノンの背後に回った。腹を腕で押さえられて身体を密着され、尻にはごりごりと固いものが当たる。
欲しかった、人の身体の熱が与えられる。夫ではない人間の、という点が不本意だけれども。
ユノンは快楽を期待し暴走しそうな身体のまま、にわかに焦る。
「ミロ、何を」
「ユノン様、一番お辛い場所はどこにございますか?」
耳元で囁かれるように問われ、ミロの指が身体を這い回る。
脇、へそ、下腹のまろみや脚の付け根を指先でかすかに撫でていかれ、ユノンは身じろいだ。
違う、そこではないと叫びたいのに、なけなしの理性が邪魔をしてできない。
「ミロ、やめろっ! 僕に、触れるな」
大きく動けば動くほどに縄が身体に食い込み、切なくなる。入口の粘膜は擦られて熟んでいるし、陰茎も勃ち上がったまま根元に刺激を加えられ続けている。これはこれで辛いが、乳首だけが触られず、それが切なくてたまらない。
「さあユノン様、私にどうぞ教えてください。今一番、物足りない場所はどこですか?」
「あんっ、ああっ、タリアス様っ、やめさせてくださいっ!」
ユノンは涙目でタリアスに訴えた。ミロの指先は見当違いなへその周りをくるくるなぞっている。
「いやっ、嫌です、なぜミロなどに任すのですか?」
頬を涙が伝う。憐れむような目をしたタリアスの手が伸びてきて、それを優しく拭う。
「僕は、あなた様に触れてほしい……」
「ユノン。お前は泣き顔まで芸術的だ。湖の精霊として、いつかあちらの世界に帰ってしまうのではないかと私は恐れているのだよ」
タリアスの口から漏らされたのはユノンの問いに対する答えではなかった。夫の憐憫の眼差しには、しっかりと欲に燃える炎が灯っている。
ユノンは怖くなり、ぞくりと身震いした。
今現在夫を支配しているのは、狂気だ。
意識は変わらずぼうっとするが、眠いわけではない。むしろ感覚は研ぎ澄まされている。
「痛みはございませんか、ユノン様」
最後、ミロがユノンの右手首を縛り上げてから不安げに訊ねてきた。
赤黒い打撲の部位を避け、右腕は左腕と同じように天蓋から吊された縄に括り付けられている。
両足首も寝台の脚から伸びる縄にそれぞれ繋がれ、少し脚を開いた立ち膝姿勢のまま、それ以上脚を閉じられなくされている。
「ああ、大丈夫だ」
答えると、ミロは小さく「よかった」と呟きユノンから離れた。
少しでも身体を動かせば、ユノンの全身を戒める縄が敏感な部分を擦り、攣れるような快感が走る。
全裸に剥かれた上に発熱しているというのに、寒気はない。感覚が澄んでいくにしたがって、身体は火照ってきた。
「ユノン、……ああ、なんと美しい。言葉が出ない」
伏せていた顔を上げると、ガウン一枚の姿になったタリアスが寝台のそばに立ち、垂らされた天蓋幕を持ち上げて陶然とユノンを見つめていた。
はだけられた袷の隙間からは暗い茂みと、雄々しくそそり立つ長大なものが覗く。
「タリアス様……」
縄で裸の身体を拘束された、こんなみっともない姿に興奮されているのだとはにわかに信じ難かった。
自分が今どんな様子でどんな顔をしているのかなど、想像することすら恐ろしい。
「どうだ、身体の具合は辛くないか?」
「はい。怪我の痛みも、熱による悪寒や震えもありません」
「酩楽酒が効いているのだな」
タリアスが呟くように言い、寝台に乗り上げて来た。そしてユノンの頬を包み、口づけた。
息は甘ったるく、酒気を含んでいる。
ライルが去った後、タリアスはミロに言いつけ濃い桃色の液体で満たされた小瓶と杯を一つ持ってこさせた。
そしてタリアス自ら杯を液体で満たすと、身体が楽になるから飲むようにとユノンに命じたのだ。ユノンは命じられるまま、喉が焼けそうに甘いその桃色の液体を飲み干した。
結果として、タリアスの言葉は本当だった。痛みは和らぎ、今現在身体は楽だ。
しかし、これはおそらく健全なものとして出回っている代物ではない。
なぜなら、いやに身体が疼く。少し縄が肌を擦っただけでびくびくと官能が走り、物足りない気分になる。
このおかしな酒を、タリアスも煽ったのだろう。ミロによって拘束されるユノンを、透ける天蓋越しに眺めながら。
「……ん……っ、ふっ……ん」
「ん……ユノン……私のユノン……」
舌を絡め合う接吻が、次第に唇に噛みつくような荒々しいものになる。ユノンは必死に答えながら息を継ぐ。
「あっ、……あん……んっ、タリアス、さま……ひうっ」
唇を解放されたが、ぞろりと頬の傷を舐め上げられた。途端、暗い悦楽が脳内を貫いていく。
「ああ……ああっ……!」
びくびく痙攣する身体の線を、タリアスの熱い手がゆっくりと撫でていく。
「かわいそうに。もうこんなになってしまったのか。……お前はこうされるのが、好きなのか?」
縄で割られた尻を撫でられ、根元を戒められた陰茎を包まれる。ただやんわりと触られただけなのに、それだけでもユノンの身体は過剰に快楽を汲み取ってしまう。
「やんっ、あんっ、だめえ……」
ガクガク腰を揺らし、もう達したいと訴えてしまう。それでも根元を絞められているうえに、実際には吐精に至るような大きな快感は与えられていないため、絶頂を迎えることなどできるはずもない。
「あん、あうう……」
ユノンは言葉にもならない呻き声を上げながら、物欲しそうな表情を隠そうともせずタリアスを見上げる。
「ユノン、達したいのか?」
こくこくと頷く。まだ何もされていないも同然なのに。
おそらくは酒のせいだ。それでもどうしても抑えられない淫の性質は、生来のもの。これを何度呪ったことか、もう覚えてさえいいない。
タリアスは愛おしげにユノンを見下ろす。うっとりと細められた目は、満足げに輝いている。
「本当に愛らしいよ、我が妻。縄に戒められてなお、こうして怯えることなく堂々と私に向き合うとは」
大きな手が尻を包み込み、左右に割り開き、そして肉を捏ねるように揉みしだく。その度に無骨な縄の瘤と敏感な粘膜の入り口が擦れ、ユノンはもどかしくて大きく腰を回してしまう。
吊された縄が、ぎしぎしと鈍い音を立てた。
「あっ、あ、ん……あなた様は、僕の、夫ですから、怯えるなど……ん、ひあっ!」
入り口に当てられているのに入って来ない塊が、気になってしょうがない。
ユノンは、自らの粘膜がぱくぱく収縮しながらそれを呑み込もうと足掻いているのを感じていた。止めたいのに、生来の淫乱である自分にはできるはずもない。
神経を後ろに集中させていると、まったく気にもしていなかった脇の下にぬるぬると柔らかなものが滑らされた。
「あ、あ、おやめ、くださいっ! ……んうっ、だめ……ひゃ、あん、あああっ」
濡れた舌が、じっとりと味わうように両脇を交互に舐めあげる。
あまりのくすぐったさに激しく身を捩るが、そのせいで縄が余計に身体に食い込んでしまう。
「あ、あ……」
胸の先がじんじんと疼く。痛みとも痒みともつかない感覚がぽちりと突き出た二つの乳首を支配し、今すぐ触って慰めてほしいと狂おしいほどに欲している。
それなのに、縄は乳首には触れない。
両胸をそれぞれ囲むように這わされてはいるものの、そこに幾何学的な模様を刻むばかりで肝心な部位を刺激してはくれないのだ。
夢中で脇に顔を埋めていたタリアスは気が済んだのか顔を上げ、ユノンからわずかに距離を取ると改めて上から下まで舐めるように見回した。
ユノンははあはあと息をつきながらぐったりしている。
「白い肌に、綿の縄が完成された衣装のようによく映えている。まるで神聖なる儀において差し出された、純潔の贄のようではないか。ミロ、よくここまで美しく仕上げた」
「……恐れ入ります」
視界から消えたミロが、再び天蓋の陰から現れた。
先ほどまでの見慣れた衣ではなく、今は明らかに女物の肌着を身に着けている。
胸だけを覆い隠す形状の上半身の肌着や、腰に回した紐から布を回し局部を覆う下帯は何度かユノンも着けたことがある。
ふんだんにあしらわれた繊細な飾りは、確かレースというものだとタリアスに教わった。西方の女物の衣服によく使われているそうだ。
「お前も、よく似合っている。やはり私の見立ては正解だった」
タリアスから寝台に上がるように促されたミロは、「失礼いたします」と呟いてユノンのそばまでやってきた。
ミロの背後にタリアスが膝立ちになり、脇腹から腰の線を撫でながら二人の少年を向き合わせる。
「あ……」
主人の手が体を這い回ると、緊張が覗くミロの表情は途端に蕩けたものになった。
「……ん、陛下、ユノン様の前で、こんな姿……恥ずかしゅう、ございます」
言いながら、ミロは赤い顔をユノンから逸らした。
「何を今更だろう? お前は、ユノンにすべてを見られているはずだ」
「……はい。陛下と、ユノン様になら、私のすべてを見られても構いません」
ミロにはにかんだように微笑まれた気がして、今度はユノンが顔を逸らしたくて俯いた。
タリアスはどういうつもりなのか。拘束した妻と、事実上寵姫のように扱う妻の侍男を突き合わせ……。
ユノンは考えるのも嫌になった。
今は早くこの身体の疼きをどうにかしてほしい。どうせタリアスの命には背けない。今宵もミロとまぐわって見せろと命じられれば、ユノンはそうするしかないのだ。
「ミロ、ユノンの辛いところを慰めてあげなさい」
「はい……」
タリアスに軽く肩を叩かれ、ミロはユノンの背後に回った。腹を腕で押さえられて身体を密着され、尻にはごりごりと固いものが当たる。
欲しかった、人の身体の熱が与えられる。夫ではない人間の、という点が不本意だけれども。
ユノンは快楽を期待し暴走しそうな身体のまま、にわかに焦る。
「ミロ、何を」
「ユノン様、一番お辛い場所はどこにございますか?」
耳元で囁かれるように問われ、ミロの指が身体を這い回る。
脇、へそ、下腹のまろみや脚の付け根を指先でかすかに撫でていかれ、ユノンは身じろいだ。
違う、そこではないと叫びたいのに、なけなしの理性が邪魔をしてできない。
「ミロ、やめろっ! 僕に、触れるな」
大きく動けば動くほどに縄が身体に食い込み、切なくなる。入口の粘膜は擦られて熟んでいるし、陰茎も勃ち上がったまま根元に刺激を加えられ続けている。これはこれで辛いが、乳首だけが触られず、それが切なくてたまらない。
「さあユノン様、私にどうぞ教えてください。今一番、物足りない場所はどこですか?」
「あんっ、ああっ、タリアス様っ、やめさせてくださいっ!」
ユノンは涙目でタリアスに訴えた。ミロの指先は見当違いなへその周りをくるくるなぞっている。
「いやっ、嫌です、なぜミロなどに任すのですか?」
頬を涙が伝う。憐れむような目をしたタリアスの手が伸びてきて、それを優しく拭う。
「僕は、あなた様に触れてほしい……」
「ユノン。お前は泣き顔まで芸術的だ。湖の精霊として、いつかあちらの世界に帰ってしまうのではないかと私は恐れているのだよ」
タリアスの口から漏らされたのはユノンの問いに対する答えではなかった。夫の憐憫の眼差しには、しっかりと欲に燃える炎が灯っている。
ユノンは怖くなり、ぞくりと身震いした。
今現在夫を支配しているのは、狂気だ。
0
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
初めてなのに中イキの仕方を教え込まれる話
Laxia
BL
恋人との初めてのセックスで、媚薬を使われて中イキを教え混まれる話です。らぶらぶです。今回は1話完結ではなく、何話か連載します!
R-18の長編BLも書いてますので、そちらも見て頂けるとめちゃくちゃ嬉しいですしやる気が増し増しになります!!
浮気疑惑でオナホ扱い♡
掌
恋愛
穏和系執着高身長男子な「ソレル」が、恋人である無愛想系爆乳低身長女子の「アネモネ」から浮気未遂の報告を聞いてしまい、天然サドのブチギレセックスでとことん体格差わからせスケベに持ち込む話。最後はラブラブです。
コミッションにて執筆させていただいた作品で、キャラクターのお名前は変更しておりますが世界観やキャラ設定の著作はご依頼主様に帰属いたします。ありがとうございました!
・web拍手
http://bit.ly/38kXFb0
・X垢
https://twitter.com/show1write
突然現れた自称聖女によって、私の人生が狂わされ、婚約破棄され、追放処分されたと思っていましたが、今世だけではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
デュドネという国に生まれたフェリシア・アルマニャックは、公爵家の長女であり、かつて世界を救ったとされる異世界から召喚された聖女の直系の子孫だが、彼女の生まれ育った国では、聖女のことをよく思っていない人たちばかりとなっていて、フェリシア自身も誰にそう教わったわけでもないのに聖女を毛嫌いしていた。
だが、彼女の幼なじみは頑なに聖女を信じていて悪く思うことすら、自分の側にいる時はしないでくれと言う子息で、病弱な彼の側にいる時だけは、その約束をフェリシアは守り続けた。
そんな彼が、隣国に行ってしまうことになり、フェリシアの心の拠り所は、婚約者だけとなったのだが、そこに自称聖女が現れたことでおかしなことになっていくとは思いもしなかった。
どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら
風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」
伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。
男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。
それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。
何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。
そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。
学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに!
これで死なずにすむのでは!?
ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ――
あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?
回帰令嬢ローゼリアの楽しい復讐計画 ~拝啓、私の元親友。こまめに悔しがらせつつ、あなたの悪行を暴いてみせます~
星名こころ
恋愛
ルビーノ公爵令嬢ローゼリアは、死に瀕していた。親友であり星獣の契約者であるアンジェラをバルコニーから突き落としたとして断罪され、その場から逃げ去って馬車に轢かれてしまったのだ。
瀕死のローゼリアを見舞ったアンジェラは、笑っていた。「ごめんね、ローズ。私、ずっとあなたが嫌いだったのよ」「あなたがみんなに嫌われるよう、私が仕向けたの。さようならローズ」
そうしてローゼリアは絶望と後悔のうちに人生を終えた――はずだったが。気づけば、ローゼリアは二年生になったばかりの頃に回帰していた。
今回の人生はアンジェラにやられっぱなしになどしない、必ず彼女の悪行を暴いてみせると心に誓うローゼリア。アンジェラをこまめに悔しがらせつつ、前回の生の反省をいかして言動を改めたところ、周囲の見る目も変わってきて……?
婚約者候補リアムの協力を得ながら、徐々にアンジェラを追い詰めていくローゼリア。彼女は復讐を果たすことはできるのか。
※一応復讐が主題ではありますがコメディ寄りです。残虐・凄惨なざまぁはありません
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる